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12/26、『米粒写経のガラパゴスイッチ』 完売御礼
12/26(金)『米粒写経のガラパゴスイッチ』@新宿レフカダ、おかげさまで完売しました。
ありがたいです。
この期待に添う内容でお送りしますのでお楽しみに。
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 14:51 | comments(1) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク)12月14日レビュー #rakugo
12/14 日
14:00-16:00
「渋谷らくご」
瀧川鯉八-俺ほめ
柳家わさび-松曳き
玉川奈々福-寛永三馬術 曲垣と度々平
橘家文左衛門-笠碁
 ◎トーク「落語体験」:木村万里(演芸プロデューサー)

文左衛門師匠の「笠碁」、すごかった。
喧嘩に至るプロセス、喧嘩してからのお互いの負けず嫌いな感じ。正常な心情から異常な心情へと移り変わる説得力。
この師匠、いいわァ。
特に「渋谷らくご」に初登場の奈々福先生からの繋がりで、古典の風が心地よく吹いているところに、こちらは微笑ましい喧嘩のエピソードだったのでこの並びも最高だった。

奈々福先生は曲師・沢村豊子先生を引き連れて、この日はなにをやってくださるのだろうと楽しみにしていた。初見の人はどうしたって戸惑うかもしれない観たことも聴いたこともない演芸に対して、本物をぶつけてくるあたり、シビれました。この先生の笑顔と語り口は大変わかりやすくすいすい頭に入ってくる。度々平が何者なのか半信半疑で聴いているお客さんの様子がこの日の出来を物語っていたと思う。ありがたいことです。

この日も破壊者がトップ。瀧川鯉八さんの落語は文句のつけようのない面白さだ。シュールだの「不思議な空気」とか言われるかもしれないがこれが落語だ。どんな空間でどんな人たちがいてどういう造詣なのか、まったくわからなくてもいい、演じ分けなくてもいい、それが落語だ。私が落語を聴きだしたころにはこういう方は東京にはいなかった。昔の桂福團治師匠のような空気感にも似た、客席を包み込む温かい空気がなによりこの人の芸の魅力を語っていた。大好きだ。他に代えがたい。

わさびさんの「松曳き」も良かった。この方は非常に姿勢がよくて惚れぼれする。先月は「まくら王」で慣れないことをさせてしまったけど、あの場でもしっかり結果を残してくれた腕はたしかにいい落語の語り手であることを想像させた。
落語から入り、徐々に古典の空気感に包まれていったこの回、演芸の魅力に溢れた回だった!

この回は私の「演芸お姉さん」である木村万里さんにトークゲストで出演していただいた。
万感の想いである。万里さんは立ち上げたばかりのこの回の魅力を語ってくださった。客席でも何度も「渋谷らくご」に来てくださっていて、本当にこの方はずっとブレない。ずっと、ずっーーと見続けているのだ。尊敬しかない。ありがとうございます。


17:00-19:00
「渋谷らくご」
春風亭正太郎-堪忍袋
橘家圓太郎-浮世床
神田松之丞-トメ
春風亭一之輔-子別れ

この回は説明不要、トークゲストなども必要ないほどに終わったあとの余韻に浸ってほしいなと思い、対談は設けなかった。
たしかな力を持った古典の実力派たちが、観客の想像力を信じて高いところまで連れていってくれると信じてこういう番組になった。
マニアックなことだったので表向きは言わなかったのだが、個人的には先代柳朝の孫弟子会、みたいなことを楽しんだ。先代正蔵師匠の一門、なかでも柳朝師匠の一門はとにかく明るくてうまい!

正太郎さん、圓太郎師匠という並びで古典の世界へ誘って、さあ講談界に現れた若き才能、松之丞さんがどうするかと思ったら、あれほど場内を沸かすことになった。たしかに一発目の出方としてはあの一手。討ち入りの日だからといって銘々伝を読むかと思いきや、そこまでウットリもしないらしい。観客本位で一席ぶつけてきた。後ろに一之輔師匠が控える意味も理解して、しっかり自分を売り込みつつ、講談を背負って登場、「この人、次も観たい!」と思わせるに充分な高座をつとめてくれた。
ライブ感も俄然高まり観客が一体となったところで、一之輔師匠へ。

一之輔師匠の「子別れ」、いまだ余韻がさめない。いいんだよなァ、この師匠の落語。
まくらなし。こういう演じ方に至ったのも、松之丞さんの仕事のおかげだ。満足しきっているお客さんにまくらは必要ない。
行書。自然な会話。感情の流れ。子どもを子どもっぽく演じない。女を女っぽく演じすぎない。
10のうち3くらいの子ども、10のうち3くらいの女。ベタと演じずに、ちょっとした口調と仕草の変化だけでそれとわかる「落語の芝居」。
すでに序盤の熊五郎の会話で、昔なにがあっていまどう思っているのか、その「悔い」を感じ取れる。そしてあくまでその「悔い」は、取り返しをつかないことをした自分の情けなさを受け止めて前を向いて生きるくらいには消化してある。すがすがしい悔いなのだ。この時点で終盤を迎えずとも「予感」だけでうるっとくる。
亀坊を見つけて二人で交わす会話に、みじめな思いをさせてしまっていることを実感し悔しがる熊五郎を観て、涙が出るのが禁じ得ない。しかしベッタリやらない。だからこそ余韻が残り続ける。想像の勢いを止めるほどではなく、キッカケさえ与えれば観客の想像は広がり続ける。「予感」だけであれほどまでに感動させる演じ手はなかなかいない。
一之輔師匠、ありがとうございます!

最高の満足感と、満席にできなかった申し訳なさに包まれる夜だった。

明日は喜多八師匠の「文七元結」が待っている。夜は「創作らくご」、めちゃくちゃ楽しみだ!
「渋谷らくご」はあと2日間ある。ひとりでも来てください。


2014.12.15
 
posted by: サンキュータツオ | - | 14:49 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク)12月13日レビュー #rakugo
12/13土
14:00-16:00「渋谷らくご」
立川談吉-たらちね
柳亭小痴楽-大工調べ
立川志ら乃-反対俥
入船亭扇辰-鰍沢
 ※トーク「落語体験」:しまおまほ(作家、イラストレーター)

扇辰師匠の「鰍沢」は、イメージすることの気持ちよさを体感させてくれる、まさに落語の神髄がつまった一席であった。冬の大ネタ祭り、ということで今回は「芝浜」と「文七元結」をネタだししているが、「鰍沢」まで飛び出すとはありがたすぎて泣きそう。
落語のスピードが観客の想像するスピードにほど良い。決して置いていかれることなく、寒い雪の晩、外の吹雪の音までずっと鳴っている残像が脳裡にやきついていて、そこに人間の動きであるとか心の動きであるとかが、ほんの小さい目線やシグサで確実に表現されていた。「純米大吟醸は下戸でも呑める」と私は言い続けているが、この日の扇辰師匠もまた一級品の純米ダイン吟醸であった。客席に子どもが二人いたが、決して子どもだからといって寄せるわけでもなく、とはいえ置いていくわけでもなく、人間の想像力と落語の力を信頼した演じ方で最後まで魅了し続けた。扇辰師匠、素敵!

終演後、しまおまほさんとトークしていたところに志ら乃師匠乱入。高座に上がる前と、上がってからになにを考えていたか(言い訳?)をお客さんにダイレクトに伝えてくれるサービス精神、ありがたいなァ!こういう人がいてくれると俄然リアリティが増すのだ。志ら乃師匠はどの出番でも確実に仕事をしてくれることが読める人なので、トップか二番手か三番手かと悩んだものだが、ここは扇辰師匠とのコントラストで三番手。しっかり沸かせてくれた。
談吉さんの「たらちね」には、古典の世界を崩さないなかにもハッとするようなくすぐりもあった。小痴楽さんはこの30分を使って「大工調べ」という野心的な演目をかけてくださり、言わずとも会の趣旨を理解してくださっていて嬉しい。
見応えたっぷりな会で、「鰍沢」のあとにトークなんて野暮だなと自分でも思っているのだが、あの感動をお客さんとしまおさんとも共有できたことはなによりの幸福だった。

しまおまほさん『マイ・リトル・世田谷』、
献本いただきました。この方の小説は温かみもあってディテールは小説好きならうなるものばかり。
多くを語らずともそこに目線を置いている意味を考えると、じんわりきてしまうシーンばかり。
短編集となっている。「わたしの叔父さん」は、落語にも出てきそうなどうしようもない叔父さんなのだが、ブンガクだなーと声が出るほど素敵な短編だった。
しまおさんは落語のイメージというと「入院」だって(笑)。おもしろいこと言う人いるなァ。またトークゲストでお声かけしたい。

 iPhoneImage.png


17:00-19:00「まくら王」
笑福亭羽光-セックスできるかランキング!
春風亭吉好-オタク落語あれこれ
柳亭小痴楽-ハイテク化に追いつかない
瀧川鯉斗-マイクロソフト
立川こしら-宗論
三遊亭歌太郎-片棒
 ※トーク「落語体験」:プチ鹿島(時事芸人)

業界初の試みである「まくら」だけの会、「まくら王」。
なんとなく主旨がつかめてきつつあるのか、お客さんのほうも演者さんのほうにも心地よい緊張感と、そんなに頭使わなくても楽しめる雰囲気があって独特の会になっている。今回は落語界のアウトローたちを集めて「現代人が落語を語っている」ということをダイレクトに知ってもらうべく、このような番組になった。

羽光さんはどこまでも明るい下衆でもはやかわいらしくもあり、吉好さんはオタク的知識がある時点で「こういう時代がきたんだな」と一発でお客さんに生々しい同時代感を与えてくれた。小痴楽さんは普段慣れないことをさせてしまい申し訳なかったのだが、それでも二十分近くしゃべってくれ会場を沸かしてくれた。こういう演者が思ってもみなかった方向にいって予測できない部分を楽しめるのもこの企画のいいところだ。

この日一番ぐっときたのは鯉斗さんだ。時間がないなかでも、しっかりと観客を魅了し、自虐をするでもなく武勇伝を語るでもなく、お客さんを優しい笑顔で包み込むあのパワー。「どんなことをしてでも笑わせる」ではなく「品よく笑わせる」という教育が行き届いているというか、盆栽でいうといい剪定されてるね!っていうくらい、しっかり自分のPRを入れたり「好きな小噺」で締めて降りた。かっこよかったァ。この方はとにかく品がいい。そ、「渋谷らくご」のテーマは品だからね!(はじめて言った!)。

こしら師匠はこの日も安定感のあるクズっぷりで、体験談のなかにキラーフレーズが何度も出てくるので腹を抱えて笑う。この人の引き出しの多さは随一だろう。いずれだれしもが認めざるを得ない日が来る。前日の「農業ってマクロです、あれ。botです。茄子が勝手に生えてきて食べるでしょ、でも食べきれないんですよ、余ったのほっとくとまたなるんですよ、botですよ」という感覚も現代的すぎて爆笑したが、この日は「教えって大事ですね」とシラジラしくも言ってのけるあたりに芸人性の高さを感じずにはいられない。

歌太郎さんはトリで落語をお願いしていた。演目は「片棒」。
小痴楽さんの「まくら」を選択して「片棒」という流れとも解釈できるから、この会はそういうことにしようかな。自分の前にしゃべった人のどの「まくら」を採用して続きをやるか、というのを現場で決めてもらう、という。
楷書の芸、みたいなすべてをキッチリ記号的に演じる歌太郎さんの落語も好きだ。楷書も行書も草書も、たぶん美しければ良いのだろう。それにしても「片棒」は、次男が変なやつなのだが、それがケチなやつより前なのはなんでなんだろうと思っていた。そのことをアフタートークでしゃべったら、鹿島さんにドン引かれた。

トークゲストの鹿島さんはとても喜んでくれていた。時事ネタはこしらさんの話にもちょろっと出ていたが、芸人の琴線にはだれが触れるのかなと思ったが、PK的には羽光さんの泥臭さがハマったようだ。
こういう軽い会はやはり貴重だなと実感した会である。歌太郎さんありがとうございます。


2014.12.15
posted by: サンキュータツオ | - | 12:53 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク)12月12日レビュー #rakugo
私がキュレーション(簡単に言うとメンバー選考って意味)する「渋谷らくご」、12月は12日からの5日間です。
年末の忙しい時期にも関わらず来て下さるお客さんには大感謝です。

12日はこういった番組でした。

12/12金
18:00-19:00「ひとりらくご」
橘家文左衛門-芝浜

20:00-22:00「渋谷らくご」
立川こしら-時そば
昔昔亭A太郎-表と裏
立川吉笑-舌打たず
立川生志-紺屋高尾
 ※落語体験ゲスト:早織(女優)、池田裕子(タレント)
  ニコニコ生放送『WOWOWぷらすと』生中継あり

ひとりの落語家さんをじっくり見たいという欲求を叶える「ひとりらくご」。
これを独演会と謳ってしまうと演者の負担も重くなるし、なにより「場所」にお客さんをつけたいので、演者さん頼みになってしまう面がある。
あくまでひとりの演者による落語一席。
今月は12月なので、今月だけはネタだしで「芝浜」をお願いした。
文左衛門師匠による「芝浜」が聴けるなんてこんな贅沢な会はない。
先月からやっていることであるが、落語家でもなんでもない私が、落語家さんの熱演に関してあれやこれや言うのも野暮な話だし、そんな資格も知識もないのは重々承知なのだが、一観客としてお客さん同士が「あれをどう見たか」という感想の交換の面白さを共有することを提唱している身として、畏れ多くもこんなことを書いている。
「芝浜」の聴きどころはたくさんあって、
飲んだくれた勝と女房の会話からはじまる。酒におぼれる勝と、それに苦しめられ生活を圧迫され続けている女房。だが二人はまだ夫婦。そんな難しい関係性のなか、ある日のはじまりのシーンからはじまる。勝と女房のパワーバランスをどうするか、そしてそれぞれの人物描写、つまり勝の極道具合や、女房の「許容度」など。
勝が芝の浜につき、寒さのあまりこごえながらも顔を洗う、朝日を眺めるシーン。
金を拾って酒を飲んで騒ぐシーン。追い打ちをかけるように女房が酒を飲ましたり。
勝が起きて、あれは全部夢だったと思い込ませるシーン。
勝が心を入れかえる過程のディテール。
女房の告白。それに対する勝のリアクション。
まだまだあるが、すべてが説得力を持たねばこの噺は成立しない。勝は腕のいい魚屋だが酒のせいで得意先の信用を失っているが、宴会を催すくらいは仲間がいる。つまりどこかで「いいやつ」でもあるかもしれない。そんな勝の幻影を見続けて離縁できていない女房。バカップルなのか、あるいは辛抱強いのか。しかし夫をだますだけの芝居は打てる。それが大家の入れ知恵だろうがなんだろうが、あそこの説得は「バレたときは殺される」ことも覚悟しての大芝居ということになるわけだから、なかなかのできる妻だ。
これらの人物の説得力もないと、ラストシーンの感動はない。
コワモテの文左衛門師匠がトツトツと語り出す「芝浜」は、魚勝のキャラをダイレクトに伝えていて、コワくていいやつ!
かっこいいなぁ、文左衛門師匠!
女房の告白、序盤にウソだったという結果だけ聞かされたときには殴りかかっているので、勝はこの時点でまだ正確には改心していないとみる。だからこそ女房の告白の重みがある。結果、最後に告白を聴きおわって、もったりまったりすることもなく、非常にあっさりと「気づき」があって、「また、夢になるといけねえ」に繋がる。おっしゃれー!
このサゲは本来はたぶん、江戸っ子一流のユーモアというか、照れというか、女房がやったことへの感謝と皮肉の両面が混ざった、とてもおしゃれなサゲだと私は思う。師匠の「芝浜」にはそういったおしゃれな雰囲気が随所にあって、圧倒的だった。
ノッケからいい噺を聴けた! 文左衛門師匠ありがとうございます!
動員厳しくて本当にすみません! ホントにごめんなさい、師匠。


20:00回は初の試み、ニコニコ生放送でMCをつとめる「WOWOWぷらすと」が「渋谷らくご」のために中継企画を立ててくれた。落語をニコ生で生中継。もちろん演者さんにはアーカイブをしない前提で了承を得て、いつものぷらすとの流れから本番へ。もう了承していただいただけで感謝なのだが、そこへきて全員が熱演してくれたのに感無量だ。
ニコ生の客層というよりも、これはここ3年で「WOWOWぷらすと」が作り出してきた視聴者のリテラシーの高さもあって、2万7千人弱が視聴、満足度も97%以上を記録した歴史的な回となった。

こしら師匠は復帰間もないとは思えないほど、その才気がほとばしった高座。「時そば」、以前にも観たが、この人の時そばはまくらから笑いだけに特化したものだった。この二ヶ月であの会場が一番ウケたというウワサもある。現場対応力と適当力ナンバー1のこしら師がトップであれだけの存在感を示したので、あとのメンバーにプレッシャーがかかる。やはり落語会は一番手が出来が決める。私が「破壊者」をトップにもってくる傾向を好むのはこういう理由からだ。徐々に温めるのを待つよりも、最初に温めたほうが、深いところまでいける。

ほかの三人が立川勢となった間に挟まったA太郎さんはたぶん一番やりにくかったかもしれない。いっそこの日は立川勢で固めようかなとも思ったのだが、落語を生まれてはじめて味わう人や、ニコ生視聴者には、落語というジャンルの懐の深さを知っていただきたい。とはいえ笑いには貪欲な人が欲しい。まったく別角度から笑いを取りに來る人が欲しい。A太郎さんしかいない。この人の高座にはほかの人にない「くだらなさ」が満載で、それでいて品もあってさわやかという魅力がある。昔昔亭百太郎師匠、さらには春風亭柳昇師匠から連綿と続く「くだらない」イズムが受け継がれている。いいなァA太郎さん。他に負けないワールドを展開してくれた。池田裕子さんが「A太郎さんのやる女性は、絶対ブスなんだろうなと思った」というコメントが秀逸で、まさしくそんな「性格ブス」の感じが「表と裏」の奥さんやお母さんからほとばしっていた。

吉笑さんはロジックの畳み掛け、「起承転結」ではなく「起承転転転転結」くらいのコント的ひっくり返しがあって毎回舌をまく「舌打たず」。吉笑さんは二つ目さんでまだネタの格納庫がどれだけあるのかわからないのだけれど、同パターンのまくらのバリエーションを試していたり、言葉そのものが持つ意味の外にあるもの(言外の意味)=舌打ちがあるなら舌打たずがある、といったことに端を発する発想力のようなものの強度を試している感じ、それをこの「渋谷らくご」でやってくださっていることに大変ありがたく思っている。こういう才能は追い込めば追い込むほどなにかを生む。自分だったら絶対いやだけど、それを他人がやるところを見たい、ということで最終日は最後にやってもらうことにした。楽しみだ。

そしてこの日の生志師匠。
談志師匠の命日に、九州での高座で起こったこと。談志師匠をはじめて聴いた日のこと。そんな想い入れを最初にポロっと語ってからの「紺屋高尾」。
この噺は恋愛もので、まことの心が伝わるという噺だが、この日聴衆のすべてを飲みこんだ感動は、「会いたい人に会えなくなる」という恐怖や不甲斐なさ、寂しさやみじめさ、そして愛おしさを、久蔵の告白に込めた部分にあると思った。
花魁の品と粋、久蔵と彼を囲む棟梁をはじめとした仲間たち、吉原を先導する藪医者の「海千山千」ぶり。高尾が絶世の美女に見え、久蔵が心から気持ちのよい一途な職人に見えてくる。久蔵が、両親への感謝や暖簾分けにも目もくれず吉原に行くと言い出す「業」の深さ、久蔵の腕を染めてしまう紺屋という職業の哀しさ、高尾は真実に気づきつつも黙っていてそれを聞いたときの久蔵のリアクション。
絶品の「紺屋高尾」! 泣いたねー。みんな泣いたね。
生志師匠、かっこいい!


初日なのでたっぷりめに書いてしまいました。
内容には自信があります。
この記事を読んだあなた一人が、実際に会場に足を運んでくれたらと思って、書いちゃいました。

2014.12.14


 
posted by: サンキュータツオ | - | 01:05 | comments(0) | trackbacks(0) |-
渋谷らくご(シブラク) 12月12日(金)~16日(火) プレビュー #シブラク 
2012年12月
12日(金) 夕席
18時─19時
「ひとりらくご」 橘家文左衛門「芝浜」
夜席
20時─22時
「渋谷らくご」 立川こしら、立川吉笑、昔昔亭A太郎、立川生志
13日(土) 昼席
14時─16時
「渋谷らくご」 立川談吉、柳亭小痴楽、立川志ら乃、入船亭扇辰
夜席
17時─19時
「まくら王」 笑福亭羽光、春風亭吉好、瀧川鯉斗、柳亭小痴楽、立川こしら、三遊亭歌太郎
14日(日) 昼席
14時─16時
「渋谷らくご」 瀧川鯉八、柳家わさび、玉川奈々福、橘家文左衛門
夜席
17時─19時
「渋谷らくご」 春風亭正太郎、橘家圓太郎、神田松之丞、春風亭一之輔
15日(月) 夕席
18時─19時
「ひとりらくご」 柳家喜多八「文七元結」
夜席
20時─22時
「創作らくご」 三笑亭夢吉、春風亭昇々、春風亭百栄、玉川太福、林家彦いち
16日(火) 夕席
18時─19時
「ひとりらくご」 立川談笑「芝浜」
夜席
20時─22時
「渋谷らくご」 春風亭昇々、三遊亭遊雀、春風亭百栄、立川吉笑
開場:各開演時間の30分前。(出演者は予告なく変わることがあります)「渋谷らくご」は持ち時間は30分。

先月の試運転を経て、今月から正常スタートの「渋谷らくご」。
「落語の興廃この一戦にあり」とまではいかないけれど、いままで落語に触れたことのない人たちがこれだけ多く入る落語会もないし、また同時に落語ファンも足を運ぶような落語会はますます少ない。
「落語国」の入り口でもあり、またそこに住むくらいの勢いの落語会にしたい。ディズニーランドでいうところの「ワールドバザール」みたいな場所であればいいと思う。
ここから落語に興味をもち、さらに「落語家」(噺家)に興味をもち、彼らに引っ張られる形で、寄席やホール落語にも足を運んでくれる人がいてくれたらうれしい。
先月から、早くもそういううれしい報告がたくさん届いている。


まずは今月の見どころです。

▼「ひとりらくご」で冬の大ネタを聴く会 「芝浜」「文七元結」
私は本来、ネタだしには否定的だ。
「立ちきれ線香」をやるよ、とか、「へっつい幽霊」やるよ、と事前に告知して、「よし、じゃあ観に行こう!」となる人をそもそも相手にしていてはいけないと思うのだ。
もちろん、普段新作しかやらない人が古典をやります、という意味でネタだしをするのはいいことだし、持ちネタを大々的に宣伝する意味でネタだしをするのもいい。また、「わかっている人向け」の会があっていいと思う。
ただ、落語を聴いたことがない人でも知っている落語のタイトルとして、「寿限無」「まんじゅうこわい」「目黒のさんま」、その次くらいにくるのが「芝浜」(しばはま)だ。
ただ、芝浜は冬の噺でもあるし、寿限無とかまんじゅうこわいとかとちがって、大ネタ、しかも人情噺である。
古くは、三遊亭圓朝という、落語界の神様的存在の人が三題噺として作った噺が、いまは国民の常識として受け入れられている。
歌舞伎の演目にもなっている。
なので、唯一、12月にはネタだしアリ、と思い、これを機会にぜひ「芝浜」に触れてもらいたい。
さらに、それと同等に、とくに江戸落語の「粋」を語るとき必ず引き合いにだされるのが「文七元結」(ぶんしちもっとい)。これも圓朝作であり歌舞伎にもなっている国民の常識だろう。

大ネタは演者の体力も気力もそうとう削る。こんなことを引き受けてくださる人はいないかもなー、と思っていたのだが、なんと願ったりかなったりのお三方がお引き受けくださいました。
独演会でも必ず聴けるというものではありません。各師匠のご厚意でこの企画は成り立っています。こんなチャンスはありません。
平日にだけ行われる「ひとりらくご」、12日 文左衛門「芝浜」、15日 喜多八「文七元結」、16日 談笑「芝浜」、
聴き比べのおもしろさも、大ネタの粋も、なめつくしていただきたいです。

▼「創作らくご」
新しく「創作らくご」の回を設けました。各演者さんが自分で作った、新作落語のことです。
おのおのが問題意識を感じ、あるいは創作意欲をふるって、ゼロから作った落語。「芝浜」だって「文七元結」だって、創作らくご。
言ってみればその演者さんにとっては最大の売り物かもしれませんが、それを惜しげもなく「渋谷らくご」で披露してくださることになりました。
トリは前回「長島の満月」を演じてくださり、大好評だった 林家彦いち 師匠。
古典と新作がどれだけちがうのか、興味のある方はぜひ!

▼講談、浪曲の俊英が登場
落語とは似て非なる演芸である「講談」。
日本人のリズム感の結晶がつまっているといっても過言ではない、しゃべること・聴くことの気持ちよさを追求した芸能です。
テンションあがったりさがったり、勇ましい気持ちになったりと人の心をゆさぶって離しません。
神田山陽さんがなかなか聴く機会がなくなってしまったのですが、当代随一の才能が現れました。
神田松之丞(かんだまつのじょう)さんです。まだ若いですが、私は「才能」がみたい。だから来てもらうことにしました。

さらに日本人ならではの感覚である「義理人情」、そしてメロディ。
この二つを追求した芸能があります。それが「浪曲」です。
古くは日本の演芸のトップに君臨するほどの人気だった浪曲も、私のまわりではその存在を知っている人があまりいません。
若い人でも平易にわかる言葉遣いで、古典もさることながら、新作を作って浪曲の本質を伝えてくれる、玉川奈々福(たまがわななふく)さん、玉川太福(たまがわだいふく)さんをお呼びしました。

講談も浪曲も、落語に劣らずめちゃくちゃおもしろい芸能です。一生をかけて追うに足る。そういう才能がいるのです。
なんとそういう人たちも、「渋谷らくご」に来れば見られるという、なんというラッキー!
お楽しみに。

*****

以下、各回の見どころです。

※「渋谷らくご」には、二席目と三席目の間に「3分間のインターバル」が入ります。
これは、休憩ではなく、「脳を休める時間」です。
落語は脳をつかい想像し楽しむものです。普段あまり使っていない人でも、使っている人でも、一時間3分休めると、より楽しめると思います。
※また、「脳の筋肉使用」の目安を三段階で設けました。初心者でも楽しめるかと思いますが、脳筋肉痛に注意してください。
※「渋谷らくご」は、開演してすぐ出てくる人から30分をお任せし、「トリ」のつもりでやってもらいます。出演者全員「トリ」です。
※開演前と終演後に「落語体験」というトークコーナーがある回があります。あくまでおまけのようなもので、いろいろな仕事の方をお呼びして、落語を生で体験し、現代人としての意見をうかがいます。お時間ある方はおつきあいください。



▼12日 金 18:00〜19:00 「ひとりらくご 〜芝浜〜」 脳の筋肉使用★★★
橘家文左衛門 たちばなや ぶんざえもん

文左衛門師匠の芝浜には定評があり、前から聴きたい聴きたいと思っていたところに、この「渋谷らくご」があったので、ダメもとでお願いしてみたのです。
会の趣旨をご理解してくださったうえで、「ちょうどやりたい時期だったので」と快諾してくださいました。
文左衛門師匠は文吾といった二つ目時代に頻繁に聴いていたのですが、明るさと暗さ、軽さと重さ、繊細さと図太さという、相反するものを同時に持ち合わせている、非常に魅力的な落語家さんです。
「芝浜」という噺は、解釈や演じ方次第で、暗い噺にも明るい噺にも、いい噺にも悪い噺にもなります。
今年のこの日の「芝浜」を、どう演じてくださるのか、とても楽しみです。

 

▼12日 金 20:00〜22:00 「渋谷らくご」 脳の筋肉使用★★
立川こしら たてかわこしら
昔昔亭A太郎 せきせきていえーたろう
立川吉笑 たてかわきっしょう
立川生志 たてかわしょうし
 ◎この回は、ニコニコ生放送「WOWOWぷらすと」生中継 が入ります。
 (アーカイブは残りません)
 落語体験:早織、池田裕子 サンキュータツオ

誤解を承知で言う。
落語家でもっとも落語を愛していない、それが「立川こしら」だ。
この人の脳はすごい。落語という、一度入ったら気持ちよくなる「ぬるま湯」の世界に引き込まれず、ただひたすら「ここにいいお湯ありますよ」と呼び込みをして生きているように見える。
落語に自我を食われていないのだ。お笑い的に、そして現代人が落語に感じる「違和感」を肌感覚で、ダイレクトに表現する方法もこの人は持ち合わせていた。
ところが。真打になることが難しいとされている落語立川流にあって、真打になってすぐに謎の休養、その後一切姿を観なくなる。立川こしらはどうしたんだ。いったいどこにいったんだ。熱狂的なファンと、熱狂的なアンチが、こしらの動向を騒ぎ立てた。
あれから8か月。ある日唐突に、その男は「復帰」することになる。
復帰ほやほやの立川こしら師匠の姿を焼き付けてほしい。
そして、それを迎え撃つA太郎さん、吉笑さん、生志師匠!
みんながみんな「やりにくい」、そんな回を作ってみました。なぜならそのほうが聴いていてスリリングだからです。
「渋谷らくご」初の試みである、ニコニコ生放送での中継つき。一万人以上が彼らの落語を聴く。その現場に、ぜひ来てください。

 

▼13日 土 14:00〜16:00 「渋谷らくご」 脳の筋肉使用★★
立川談吉 たてかわだんきち
柳亭小痴楽 りゅうていこちらく
立川志ら乃 たてかわしらの
入船亭扇辰 いりふねていせんたつ
 ◎落語体験:しまおまほ(作家 イラストレーター)、サンキュータツオ

力と力のぶつかり合いが見たい、際立つ個性のほとばしりを見たい、そんな人にオススメのこの回。
「渋谷らくご」記念すべき第一回の初日最初の高座で「野ざらし」を演じてくださった談吉さん。
「渋谷らくご」初登場の小痴楽さんが、どうやって30分をつとめるのか。
先月は「火焔太鼓」で爆笑をさらった志ら乃師匠は、達人・扇辰師匠の前でいかに存在感を残すか。
非常に見応えのある回になると思います。どんなネタを演じるのかも注目です!
「落語体験」には、ラジオ好きにはおなじみのミューズ、イラストレーターのしまおまほさんが登場!


▼13日 土 17:00〜19:00 「まくら王」 脳の筋肉使用★
笑福亭羽光 しょうふくていうこう
春風亭吉好 しゅんぷうていよしこう
柳亭小痴楽 りゅうていこちらく
滝川鯉斗 たきがわこいと
立川こしら たてかわこしら
三遊亭歌太郎 さんゆうていうたたろう ※落語あり
 ◎落語体験:プチ鹿島(時事芸人)、サンキュータツオ

前回、落語ファンからは物議をかもし、初体験の方からは絶賛をいただいた企画「まくら王」が12月も登場。
最近あったこと、気になっていること、自分の問題意識などなど。あくまで現代人として生きている落語家さんの噺の「まくら」、つまり漫談だけを聴いて、笑っていただいたり考えていただいたりするこのコーナー。
「なんかやりにくい」とか、そういう状況いじりはあまり歓迎されない場所なので、思い切り個性がでると思います。
落語はおもしろい人がやるからおもしろい。
そんなシンプルなことを教えてくれる試みだと思います。
今回は、羽光さんに「こんな落語家もいるんだー」と教えてもらい、前回暴走族の総長時代の話をしてくれた鯉斗さん、復帰明けのこしらさん、オタクでもある吉好さん、さらに初登場の小痴楽さんをお迎えし、最後に歌太郎さんに落語で一席お願いしています。
若い才能のぶつかりあい、芸人力がもろにでる衝撃回、ぜひ目撃しにきてください!
「落語体験」は、時事ネタといったこの人、プチ鹿島さんです。

 

▼14日 日 14:00〜16:00 「渋谷らくご」 脳の筋肉使用:★★
瀧川鯉八 たきがわこいはち
柳家わさび やなぎやわさび
玉川奈々福 たまがわななふく
橘家文左衛門 たちばなやぶんざえもん
 ◎落語体験:木村万里(演芸プロデューサー)、サンキュータツオ

前半の、鯉八さんとわさびさんという、若い才能のぶつかりあい。新作をやってくれるのか!?
あの手この手でお客さんをくすぐり続ける技が炸裂すると思います。
わさびさんは、先月「まくら王」に出演してくださいまして、失礼なお願いにも堂々たる「まくら」で落語とはこういうものだと示してくれました。今度は、まくらと噺もセットです。
そこに「浪曲」の玉川奈々福さん登場!
文左衛門師匠が、最後に30分落語をしてくださいます。
刺激しかないこの回! 
「落語体験」は、私の演芸鑑賞の師ともいうべき、プロデューサーの木村万里さんです。
人前には滅多にお出になりませんが、どうしてもとお願いして出ていただくことになりました。
このコーナーでははじめての落語をよく聴く人の登場ですが、演芸ってそんなに難しいものじゃないんだよ、楽しいんだよってことを、万里さんに語っていただこうと思います。

 

▼14日 日 17:00〜19:00 「渋谷らくご」 脳の筋肉使用★★
春風亭正太郎 しゅんぷうていしょうたろう
橘家圓太郎 たちばなやえんたろう
神田松之丞 かんだまつのじょう
春風亭一之輔 しゅんぷうていいちのすけ

この回には「落語体験」も、解説もありません。必要ありません。
「渋谷らくご」のひとつの形です。初心者も上級者を自認する人も、ともに聴きごたえのある回になるでしょう。想像することの楽しさが詰まった回になると思います。
とにかく聴きに来てください。それだけです。

 

▼15日 月 18:00〜19:00 「ひとりらくご 〜文七元結〜」 脳の筋肉使用★★★
柳家喜多八 やなぎやきたはち

当初、12月の「ひとりらくご」は、「芝浜」縛りでいこうと考えてみました。
喜多八師匠に、失礼を承知でお願いしてみました。
「まだ披露できるレベルにない」という返答でした。
諦めるしかありません。残念ですが、そういった師匠だからこそ、一席一席が輝くのです。その美学に惚れてお願いしているわけなので、、無理はいけません、来年またダメもとでお願いしよう……と思っていたところ。
師匠から電話がありました。「文七だったら、演る」。
思ってもみないご提案でした。あの喜多八師匠の「文七元結」が、確実に聴ける機会が、ほかにあるんだろうか。
こんなにありがたいことはありません。
落語を聴いたあと、こんなにも疲れて、こんなにも気持ちよくて、なんとも言えない気持ちになる。
そんな体験を、みなさんにしてもらいたいと思います。

 

▼15日 月 20:00〜22:00 「創作らくご」 脳の筋肉使用★★
三笑亭夢吉 さんしょうていゆめきち
春風亭昇々 しゅんぷうていしょうしょう
春風亭百栄 しゅんぷうていももえ
玉川太福 たまがわだいふく
林家彦いち はやしやひこいち
 ◎落語体験:宮地昌幸(アニメーション監督)、サンキュータツオ

この回、早くも楽しみで仕方がない!
夢吉さん、昇々さん、百栄師匠には各20分、太福さん、彦いち師匠には30分、お任せしています!
落語は古典だけでも演者によって解釈が変わるうえに、これが創作となると、演者本人の表現力、編集能力、志向性もでてくるからがぜん幅広い芸能の側面をみせる。
だがそれゆえに、演者は創作の苦しみを味わう。
この回で演じられる噺に、きっと演者さんそれぞれの苦悩や葛藤、積み上げ考え抜いてきたこと、落語観がつまっている。
創作を聴く楽しみは、ただ噺やくすぐりを追うだけではなく、その落語家の落語観や身体性をもあますところなく味わえるところにある。
なんでもアリ! そう思わせてくれる会になると思います。
「落語体験」には、TVアニメ『亡念のザムド』、劇場版アニメ『伏 鉄砲娘の捕物帳』などで知られる宮地昌幸監督をお呼びしました。

 

▼16日 火 18:00〜19:00 「ひとりらくご 〜芝浜〜」 脳の筋肉使用★★★
立川談笑 たてかわだんしょう

まさか、である。
あの談笑師匠が、芝浜を演じてくださるとは!
談笑師匠とはネットラジオの対談や、今年四月の談志師匠の追悼イベントの際にお会いしている。が、実はこっそりツイッターのフォローをはずされていたので、「これはツイートしすぎて、失礼なこと言いすぎて、しくじってしまった…」と思っていました。
そんな個人的な話はどうでも良かったのですが、「芝浜」を聴く会、ということになると、どうしても、骨太でありながら異端もできる、という方にお願いしたくなるものだ。談笑師匠はどちらもいける。それこそ当日の会場の雰囲気でいかようにも演じ方が変わる。失礼を承知でダメ元でお願いしてみたところ…なんと演じていただけることに! ひゃっほーい!
緊張と想像の一時間を疾走せよ! 文左衛門師匠の「芝浜」を聴いた人は、演者でこれだけちがうのか、という聴き比べの楽しさを味わうまたとない機会です。
談笑師匠という案内人によって、どこまで連れていってもらえるのか、体験していただければと思います。

 

▼16日 火 20:00〜22:00 「渋谷らくご」 脳の筋肉使用★★
春風亭昇々 しゅんぷうていしょうしょう
三遊亭遊雀 さんゆうていゆうじゃく
春風亭百栄 しゅんぷうていももえ
立川吉笑 たてかわきっしょう
◎落語体験:トミヤマユキコ(ライター、研究者)、サンキュータツオ

12月最後の「渋谷らくご」はスリリングな回です。
ただし、どう転がっても確実の楽しいことは保証できる。
この番組、ルール破りの失礼な番組なんです。
二つ目、真打、真打、二つ目、という並びは、ほかの落語会ではまず見ない。
最初の出演者から「トリ」というコンセプトのこの「渋谷らくご」ならではだと自負しています。
遊雀師匠、百栄師匠という古典、新作の両巨頭、いま油がのりまくっている時期の方たちを味わいつくしたあと、最後に一番キャリアの短い吉笑という才能はなにを見せてくれるのか。追い込んでみました。
昇々さんが一番爪痕を残すかもしれません。二つ目が真打を食うか、真打が安定感をみせつけてくれるのか。
楽しみで仕方ありません。


2014年12月の「渋谷らくご」、どうぞよろしくお願いします。
渋谷、ユーロスペース二階、「ユーロライブ」でお会いしましょう。
最高の落語体験を、演者と観客で作り上げましょう。永遠の一回性を共有したくおもいます。


 
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 17:26 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク) 2014年11月公演 レビュー
「渋谷らくご」は2014118日、渋谷ユーロライブで記念すべき一回目が行われました。
試運転公演の意味合いが強く、動員に関しては苦戦した面もあるものの、意欲的な番組構成や演者さんの熱気が伝わっていく、なにかいままで見たこともないものが生まれているという、歴史的な場面に遭遇しているようだでした。

はじまる直前に、落語に関して「WOWOWぷらすと」で、この渋谷らくごのGMというべきWOWOWの射場Pとお話した様子が動画にアップされていますので、良かったら渋谷らくご成立の経緯と合わせてご覧になってください。

WOWOWぷらすと 落語の現在
※やはりいくつか私の事実誤認箇所がありました。自分で気づけるレベルもの。怒らないで「こいつなんも知らねえな」と思って聴いていただければと思います。

 
はじめてみると、やれ開演時間が早いとか、開演時間が遅いとか、インターバルってなんだよとか、休憩いるとかいらないとか、料金が高いとか、予約導入してくれとか、するなとか、あの人入ってないのおかしいだろとか、いろいろな保守層からのワガママな声が多く届くのですが、
文句がある人は、もっと開演時間の早い落語会、安い落語会、休憩のある落語会に行くことをオススメします。
あくまでこの「渋谷らくご」は、現代人のライフスタイルに落語という選択肢を作るべく設計しています。

「ひとりらくご」は仕事を早めに切り上げてでも、たっぷり見るべき人を。
公演後に食事をするのではなく、公演前に食事を済ませて「渋谷らくご」に来てほしい、そして帰りは仲間がいれば軽く一杯だけ、とか。
とにかくどういうライフスタイルにしっくりくるのか、仕事終わりに映画などを観に行くように、落語をフラっと観に来てもらいたいなと思ってこういう形にしています。
都内に素晴らしい落語会はたくさんあります!

ただ、渋谷らくごから発信するものは、ここでしかできないものをひとまずは追及していきます。
今月から、半分の席の予約をはじめました!
お客様の声を、聞かないわけではないのです。ただ、どうしてもネガティブなことしかつぶやかれない、言われない、アンケートに書かないという傾向がどのエンタメにもあるので(減点法でエンタメを見る人が多い)、
声になっていないポジティブな意見も同時に感じていきたいと思っております。

118 土曜日
14:00-16:00 「渋谷らくご」
立川談吉-野ざらし
三遊亭遊雀-初天神
昔昔亭A太郎-面会
柳家三三-粗忽の釘 
53
 
17:00-19:00 「渋谷らくご」
瀧川鯉八-やぶのなか
入船亭遊一-ねずみ
春風亭正太郎-時そば
林家彦いち-長島の満月
25
 
 記念すべき初日の一回目公演、最初に舞台にあがった立川談吉は、開口一番ではあり得ない演目「野ざらし」でこの落語会の方向を示した。
 「渋谷らくご」はひとり30分、4組の演者が自由にその時間を使い、ワールドを展開する。最初から「トリ」の構成。
 
 20代の学生の感想には、こう書かれていました。

 生まれて初めて、きちんと落語というものを鑑賞し、またその直前の彦いちさんの演目で完全にもっていかれていて、余韻でうまく言葉になりません。落語とは、こんなに面白い物なのかと、本当に感動しました。
 
2時からのプログラムの、談吉さん&A太郎さんのフレッシュな演目と、遊雀さん&三三さんの中道的な演目が並べられている構成も、とても面白かったのですが、落語初心者の私には、特に4時からのプログラムが圧巻でした。
 
鯉八さんの「藪の中」でまず引きこまれ、遊一さんの「鼠(?)」で日本人の美徳の息吹を感じ、正太郎さんの「時そば」でリラックスし、完全に準備が整った状態で「彦いち落語」を聴いて、最後に月が迫ってくるシーンでは圧倒され、不覚にも軽く放心状態になってしまいました。
 
僕は今まで、ずっとテレビで芸人の方を見てきて、しかし、その笑いに何となく限界を感じ、西洋のアートから何かヒントを得ようと勉強してきました。
 
しかし、西洋のアートは、やはり西洋人のもので、どんなにコンセプトが近くとも、そこで行われている行為は日本の芸能とは似て非なるものだと痛感しました。
 
そして僕は改めて「日本の笑い」が好きなのだと気付き、でもその「日本の笑い」とはどこから探せば良いのか、本当に探しあぐねていました。
 
今日は、その一つの解答を、鮮やかに目の前で見せていただいたと感じ、心から感謝しております。


「渋谷らくご」をはじめて、良かったなと思いました。こういう人がひとりいるということは、100人にも1000人にもなるということです。彼には勇気をもらいました。 
 

▼ツイートから

nobu @kinob5 
渋谷らくご。初めての落語でしたが楽しめました。迷ってたけど行って良かった。
無名の新人 @vp1850
第一回目の「渋谷らくご」楽しみました。開場はオーディトリウム時代から座席の配置が多少変わっているユーロライブ。ヴェーラの会員は割引があるのは嬉しい。今まで何度も聞いている「初天神」だが、今日の遊雀師匠のが一番面白い。おかしいのになぜか涙がにじむ。よい会でした。
無名の新人 @vp1850
「渋谷らくご」夜の部にも参戦。昼の部よりお客さんは少ない。トップの鯉八さんは、「会話の妙を楽しむ」ことに真っ向から歯向かう新作「やぶのなか」。いやあ、こんな噺を思いつくとはすごい。鯉八ワールドを堪能。正太郎さんの「時そば」聞いてたら蕎麦を食べたくなった。
グリママ @gurinomama
三三「粗忽の釘」ご自身は渋谷を歩いてても似合いそう。
多忙の中、手探りだろう会の初日のトリを引き受ける、芸の根性は、昔かたぎ?
結局、持ち時間45分。たっぷり、ノロケも聴け、本日だけのイレゴトも楽しめ、\(^-^)
atsushi oto(おいちょ) @atsushioto 
渋谷らくごっていうイベントで生まれて初めて生の落語を見た。春風亭正太郎さんて方が面白かった。あの聞いててワクワクさせる雰囲気は一体なんだ。

 
119日 日曜日
14:00-16:00「渋谷らくご」
春風亭昇々-最終試験
柳亭市楽-くしゃみ講釈
瀧川鯉斗-荒茶
立川吉笑-ぞおん
36
トーク「落語体験」サンキュータツオ、春日太一(映画史・時代劇研究家) ※動画配信中
 
17:00-19:00「渋谷らくご」
立川吉笑-狸の恩返し過ぎ
桂宮治-棒鱈
三遊亭歌太郎-転宅
橘家圓太郎-短命
40
トーク「落語体験」サンキュータツオ、中井圭(映画解説者) ※動画配信中
 
▼ツイートから

タロ芋 @taroimoa
落語を初めて生で観た。まったくの素人で、日本の伝統芸能を見に来た外国人ぐらいの感じだったけど、想像以上に面白かった!
やっぱり何でも生で見るのはいいな。
私にはまだまだ知らない噺がいっぱいあって、これから聞けるのだと思うと嬉しかった。
ごちょう: @fujinejima
立川吉笑さん、超面白かった!正直、今日は春日太一さん目当てで行ったのですが…今まで知らなかったのが悔やまれる。タツオさんの読み物も充実していて、イベントとしてもすごいお得感。
バッキー3NS @backy3ns  
「こうゆうの待ってました!」の渋谷らくごを昼夜味わう。ド素人でも分かるサンキュータツオさんの解説もあり、ますます落語が楽しく「また来よう」思います、いや誰か誘わなきゃな!
しんたろうふくもと @fukumotoQ10  
昨日に引き続き、今日もユーロライブの渋谷らくごへ。
昇々さんの汗だく熱演にこちらも息が詰まり、市楽さんのポップに演じる古典にハマり、鯉斗さんの暴走族話しには秘密基地気分になり、トリの立川吉笑さんは、日常の聴覚では感じ取れない、濃密な知覚へと誘ってくれた。
kaymiyazaki @kaymiyazaki
吉笑さんの「狸の恩返しのし過ぎ」て(笑)。題を聴いただけで笑ってしまいます。
ssk @ssksts
「渋谷らくご」の吉笑さん、まくらにファンペルシのヘッド・BPM・コンテンポラリーダンス・池田亮司・TBSラジオ等面白いだけじゃなく自分が興味ある香りがプンプン。明日は無理だが、次は一之輔と志ら乃を見に行こう。

 
 この日の昼は二つ目だけで構成した実験回でしたが、一番スリリングで刺激を受けました。
 また、夜も野心あふれる二つ目が三人続けて個性を発揮し、最後に圓太郎師匠が圧倒的なものを示してくださったのも大変おもしろかった!

 この日のことは、立川吉笑さんのブログでも書かれておりましたので、良かったら読んでみてください。
 立川吉笑ブログ 2014/11/13「渋谷らくご」
 こういった感覚を持っている方とお仕事できるのはとてもやりがいがあります。
 

 
1110日 月曜日
18:00-19:00「ひとりらくご」
春風亭一之輔-富久
76
 
20:00-22:00「渋谷らくご」
立川吉笑-粗粗茶
入船亭扇辰-雪とん
立川志ら乃-火焔太鼓
春風亭一之輔-笠碁
83
 
この日は結果的に、11月最高の入りとなりました。
 
▼ツイートから

cibicibichihiro@bici123cm
渋谷らくご行ってきた、一之輔さんをたっぷり大根多きけたのは、贅沢だったなぁ、いい企画だとおもう
emi@emiemi0107
渋谷らくご【ひとりらくご・春風亭一之輔】 当日フラッと行ってたっぷり一席、19:00に終演(早く帰れる)って凄くイイ!ここで渾身の「富久」が聴けた。嬉しい〜!ジェットコースターの久さんと優しい旦那やご近所さんがますます愛すべき人達になってた。ふわふわの座席で気持ちよい夕べでした。
コクモッツ@cocmoz
あ〜面白かった!
どうして一之輔さんのお話に出てくる人て、こんなにキュートなの?お酒でしくじってるのにスグまた酔っ払って、どうしようもないんだけど、たまらなく好人物。久さんと一緒に一喜一憂しちゃったよ。
植村 真太郎@s_uemura
生まれて初めて落語を目の前で鑑賞。渋谷ユーロライブにて開演中の「渋谷らくご」で春風亭一之輔の落語を。1時間落語(江戸?)の世界に没頭しました。面白かった(^_^)vこの落語家は全く知らないが、その話芸にグイグイ引き込まれました。また落語聴いてみたい!
@akanetoon
渋谷らくご・一之輔。『富久』だった(わーい)。1時間で富久だけ聞くっていうの、わりといいなと思った。4人くらいのホール落語だと、トリが始まった頃には疲れちゃってて長講が辛いときがあるから。
 
中井圭@nakaikei
2夜連続で「渋谷らくご」、行ってまいりました。今夜も実に面白かったです。僕は落語素人ですが、芸能の凄みを感じる瞬間が幾度もあって痺れました。今夜はぷらすとスタッフだけではなく出演者も数人来ていて、みんな面白いものに関心高いなあと思いました。これは早めに参加したほうが良いですよ。
池田裕子@ikedayuko
『渋谷らくご』本日の回、2回とも観させて頂きました。落語ってこんなに個性が出るものなのかと驚きでした。特に私は入船亭扇辰さんの「雪とん」に衝撃を受けました!演劇を観た後ような満足感!登場人物の演じ分けがすごかったです。明日のまくら王も見る予定。
TAKE4@sheepdog4989
渋谷らくご終了。
確信犯か暴走か読めない吉笑さんと、喋り出したら止まらないスペクタクル落語の志ら乃さんを挟んでの王道落語の順番は、タツオさんのセンスを感じた!!
落語は志らく一門しか聴いたことなかったので、笠碁をこんな風にやるのかという発見もあり、有意義な落語体験ができた♪
ひぃす@heath_77
渋谷らくご終わり。とても良い流れの会でした。吉笑さんか引っ掻き回し、扇辰師匠が艶噺で場を整える。仲入りと呼ぶには短すぎる3分間のインターバルを挟んで、志ら乃師匠が十八番でどっかんとやって、一之輔師匠のこれぞという笠碁で〆。ほんと、来月以降、誰呼ぶんです、これw

 
 「ちょいと小噺」というブログでは、
 「渋谷らくご」のいいところ
 という記事で、この日の2公演をご覧になった感想がアップされています。
 勝手に紹介しますが、どういう感想であれば語りたくなるなにかを残せたのはいいことです。

1111日 火曜日
18:00-19:00「ひとりらくご」
柳家喜多八-七度狐、お直し
30
 
20:00-22:00「まくら王」
笑福亭羽光
柳家わさび
昔昔亭A太郎
立川生志
桂歌春-鍋草履
37
 トーク「落語体験」サンキュータツオ、岩崎太整(音楽家)、長田ゆきえ(ラジオプロデューサー) 
  ※動画配信中

▼ツイートより

谷口雄一郎 @you5569
僕が圧倒的に渋谷らくごを推すのは渋谷という落語とはかけ離れたカルチャースポットから発信される大衆芸能が、奇しくもユーロスペースのあるビルから発信され、かつ、そこに集うもの、表現者に必ず通じるものがあると思ってるからです。とキリンジを聴きながら全くの部外者なのに思ったのでした。
後藤 @tgoto_27
『渋谷らくご』面白かった!「まくら王」も良かったし、来月も行きたい。
池田裕子 @ikedayuko
昨日に引き続き、渋谷らくごを観てきました。本日は『まくら王』という企画!なんと落語なしで枕のみ。落語の世界って案外自由なんだなぁという印象でした。トリを務める桂歌春さんの喋り方がとても心地良かったです。来月も観に行く〜!

 
落語会なども主宰しておられる、四家正紀さんのブログでは、
趣向で勝負! 渋谷らくご まくら王 2014/11/11
なんて記事でも紹介してくださり、とてもうれしい。
 

11月の公演は、このような感想でした。まだまだ紹介しきれいものもたくさんありました。
可能であれば「渋谷らくご」公式ツイッターで、感想集などもありますので、ご覧ください。

ひとついえることは、
これほどまでにSNSやネットで話題になる落語会はあまりない!
ということです。
これは、年齢層が若いことの証拠です。
何百人のお客さんが入っても、だれひとり感想を公にしない会などもありますが、
「渋谷らくご」では、「落語に触れたことがないけど、どんなものか、行ってみたいな」と思っていただけるために、いろいろな工夫を考えております。
はじめて落語を味わう人の生の反応に触れる機会、そしてその瞬間に携わることもなかなかありません。
また、落語ファンが、この落語会をどう受け止めているのか、ちゃんと満足していただけるものなのかの指標にもなると思います。

どうぞ今後ともお引き立てのほどを!
 
今月はどんな公演が飛び出し、どんな感想が出るのか、楽しみです!
演者さんのツイートやブログもおもしろいものが多いです!
ツイッターでは「#シブラク」でつぶやいてくださいね!
 
アンケートにも、ドシドシご協力くださいませ!
 
2014.12.12

 
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 14:06 | comments(0) | trackbacks(0) |-
馬鹿よ貴方は と ルサンチマン
事務所の後輩が、今年の THE MANZAIに出る。
「馬鹿よ貴方は」というコンビだ。面白いネタをやります。

私は別に、彼らを育てたとか言うつもりは毛頭ないです。
ネタができる芸人がいるイメージのなかった(ないと言われていた)オフィス北野という事務所にあって、
ネタをやる芸人がいますよ、そして作りますよということで、
マキタさん、大神さん(現・ダイオウイカ夫)と立ち上げた「フライデーナイトライブ」。
彼らはそこに来ただけだ。
最初からネタもコンセプトも完成していたので、特にアドバイスすることもなく。
事務所のスタッフの尽力もあって、スクールのない当事務所では、
フライデーナイトライブから所属へと繋がっている、というひとつの明確な道筋がつけられ、
「チャレンジコーナー」というフリーの芸人が挑戦するネタコーナーで結果を出せば、
昇格していく、というシステムが構築された。

彼らは、そんなフライデーナイトライブを象徴する存在だった。
チャレンジコーナーでは圧勝して、3回優勝したら一本ネタに昇格、という条件をすぐに満たした。
当たり前といえば当たり前、ツッコミの新道はNSC、人力舎など名だたるお笑いスクールに複数通い、
家に帰ればお笑いのDVDを毎日見続ける、むしろ音楽変わりにかけつづけ、ネタを書くのがとにかく好き、
というお笑いジャンキーだ。単なるオタクではない、徹底したジャンキー、むしろ学者に近い。
その執着心たるや並みのものではない。
なぜお笑いやってるのかと聞くと、いままでネタみせでぼろくそ言ってた人たちを見返すため、
だなんて、リップサービスかなんか知らないけれど、そうとう鬱積したものを持っている。
当然こだわりも強い。相方を何度も変え続けてきたが、いまの平井ファラオ光になってから落ち着いたようだ。
平井ファラオ光の圧倒的な個性を際立たせるために、新道は極限まで自分の存在を消し主張しない。
新道の圧倒的なネタの個性を際立たせるために、平井ファラオ光は極限まで自分の存在を消し主張しない。
お笑いマシーンである。
だれが見たって面白いのだが、それでも彼らを所属させる事務所はほかになかった。
面白さと反比例するほどに、彼らに社交性がなかったからだ。だってマシーンなんだから仕方がない、挨拶ができないとか、そういうレベルで、彼らの評判は安定して悪かった。もちろん、先輩などの懐に飛び込むなどもってのほか。あいつらどうなってんだとお叱りを受けるのは、常に矢面に立たされる主催側であり、ああ、これ昔、浅草キッドさんもおなじ気持ちで私たちを観ていたんだなと思うと、博士さん玉さんすみません!って気持ちになるのだが、そんな状況を知ってか知らずかわからないけれども、彼らがまずいのはそこだけだった。
ホントにそこだけだったのだ。
新道は直接話せば悪いやつじゃないのはだれでもわかるし、平井ファラオ光は、めちゃくちゃコミュニケーションのポテンシャルが高い(こんなことを言ってしまうのはよくないかもしれないが)。デビュー当時の阿曽山大噴火に感じたオールマイティさとプロフェッショナリズムを、彼は最初から持ち合わせていた。
知ろうとすればかわいいやつらなのだが、そんなのだれだってそうだろうという意見もあって、あとは自分たちでその状況を打開するしかない、というところまで彼らは追い込まれていたのだが、
結局挨拶問題も改善の兆しをみせ、衣装だなんだもアドバイスしたりもしたけれど、基本的には頑固な人たちなのでそれはそれで個性だよねってところで、
最終的には力で周りを納得させた。そう、彼らはウケ続けた。ウケてウケて、結果を出し続けた。ライブも月15本以上出てた。
観客、芸人、事務所、三者の合意を得て、彼らは所属にいたった。そしてTHE MANZAIも勝ち進んだ。これはすべて彼らの力で勝ち取ったものである。
同業者としては、嫉妬もするし、畏敬の念もあるし、おなじ事務所にいる者として情もわいてるし応援したい気持ちもある。

彼らは最初からああだったし、これからもああなんだろうと、オフィス北野にいるのは、たまたまである。

そして、スクールがなく、ネタみせとライブだけで所属にいたり、出演できるのはフリーの芸人だけ、ということになると、
オフィス北野のネタみせに「流れ着く」のは、お笑いライブシーンの異端児、ということになる。
これからは、マキタスポーツや馬鹿よ貴方はの存在をしって、目指す人たちが来るかもしれないが、
(できれば自分たちも憧れられたいし、そういう存在になるべく努力し続ける)
いままではどこかのスクールを卒業して所属に至らなかった者、所属していたけど辞めた者、といった一度くじけてしまった人たちが多く来ていた。その面白さや暗鬱さが独特なテイストをかもしているのが、いまの「北野ファーム」である。
一般論として、お笑いスクール卒業生は、その場で力を評価されないと、才能がないと思って解散したり辞めてしまったりする場合が多い。それはあまりにもったいない話で、いまの時代を生きる芸人に必要なものはなにか、果たしてその事務所の「正義」や「理念」が正しいのかどうか、疑う必要がある。
そんなときに、フライデーナイトライブに現れたのが、うちの事務所に若いコント師が手薄と見てやってきた、マッハスピード豪速球であり、彼らもこれから売れる予定である。

しかし、忘れてはいけないコンビがいる。
ルサンチマンという漫才師だ。
彼らは、馬鹿よ貴方はと並んで、初期フライデーナイトライブを象徴する、もうひとつの存在だった。
早稲田大学で出会った二人、一度解散して再結成、というところまで我々米粒写経とも似たような漫才師だったのだが、
彼らの場合はキャリアのはじめにM-1の準決勝に進出したという経歴があり、アマチュアリズムのロマンを体現したような東京カルト芸人界の雄であった。

私たちも、結果としてフリーの期間が長かったため、知らない間に問題児扱いされていたわけであるが、馬鹿よに関してもルサンチマンに関しても、ビジュアルがとにかく暗すぎ。これは事務所が発信するメッセージとしてどうなんだ!? アングラ感出過ぎじゃないか!? この事務所インディーを欲しがっていると思われないか!? つか全体的に「黒い」衣装の人多いぞ!
と、さんざん気をもんだものだが、ひとまず若さとかさわやかさは置いておいて、力のある即戦力を取ろうとこの時期は動いたわけである。
その点で、ルサンチマンの力はだれもが認めるところであり、何年もキャリアがあるんだから当たり前なんだけど、コーナー優勝もあっさりやってのけて、馬鹿よ貴方はよりも、「若干」社交性があったため、結果的に早く所属にいたった。なにこの僅差。
馬鹿よ貴方はの場合は、コントも漫才もやる、というかあまり境界線のハッキリしない感じが彼らの良さでもあるのだが、ルサンチマンは漫才一本、しかも大胆に芸風をテコ入れし、常に攻めの姿勢を崩さない探求心はあった。
やたら喧嘩が絶えないコンビという印象があるが、あくまで芸のうえでの完成度や意図を問題にしたものなので、どちらかというと良い衝突のようにも見えた。
彼らも頑固で、コンテスト依存を覚悟でネタ主義を貫き通していた。まったく耳を貸さない。それならそれでよい。どこまで行けるのか、応援したい気持ちで眺めていた。

しかし不運というか、不幸は突然やってきて、吉尾が10月に亡くなってしまった。事務所のネタみせに参加していた翌日、というかその日の深夜に、突然死である。
これに関してはなにも語れない。ひたすら残念である。
10年も組んでいれば、葛藤も迷いも緊張も幸福も、すべてを分ってきた相方はもはや自分の分身である。衝突もして、爆笑を共有し、配偶者ともちがうもうひとりの共通体験者を、ある日突然失うのだ。想像するだけで怖いことである。
伝えておきたいこと、やりたかったこと、言い残していたもの、あの件に関してはあそこが悪かったとかこうすればよかったとか、ある日突然亡くなるものに、それらは全部取り残される。彼にはあまり存在を明かしていなかった奥さんもいた。

11月のフライデーナイトライブでは、まだ直後ではあったけれども、区切りをつける意味でも、芸人なりの追悼企画を催した。
場内爆笑であった。義太夫さんにも協力していただいた。
あの場を共有したお客さんならだれでも、あの日のことは忘れないと思う。

フライデーナイトライブからは鹿島さんやホロッコが所属になり、その後、哲学芸人のマザーテラサワや、ニート芸人の林健太郎、セクシーJ、銀座ポップといったピン芸人の面々が所属にいたり、ライブとしては今年もカオスななかさまざまなドラマを内包して、芸人の光と翳を作りだした。

吉尾の亡骸を見届け、彼が毎日往復していたであろう家から駅への道を、円い月を見ながら、彼はなにを考えていたのか想いながら歩いた。
芸人も続けていると、いろんなものを見てしまう。

そんなわけですので、馬鹿よ貴方は、応援してやってください。
そして、ルサンチマン、忘れないでやってください。

ひとまずは、二組ともありがとう。

次のフライデーナイトライブは、1月9日です。おまちしております。

2014.12.3

 
posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 00:01 | comments(0) | trackbacks(0) |-
<「東京ポッド許可局」チケット完売御礼>
 12月20日に開催されます、
「オレたちと聖夜と東京ポッド許可局2014」のチケットは、
手売り、アプリ先行、プレイガイド先行、一般発売と、
すべて数分から数時間で売り切れました。
 
今後チケットを高額でさばく人も、買う人も、私は許しません!
必ずつきとめてやります。3階席20番台後半の人!全チェック!

多くのお客様のご期待に添うよう、楽しいイベントにします。
チケット確保してくださった皆様、ありがとうございます。
残念ながら取れなかった方、ごめんなさい。
なんらかの形でご恩返ししたいと思います。
 
来年の夏は、また大きいところでやりたいと思います。番組が存続していて、かつそれができればですけれど。
あとそのときやる気があれば。なおかつ会場が空いていれば。かつスポンサーがつけば。
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<読売新聞 連載:サンキュータツオのただアニ!『四月は君の嘘』>


11/27、読売新聞夕刊。
連載「サンキュータツオのただアニ!」。

今回は『四月は君の嘘』を紹介しました。

満天の星空の下、おんぶされながら号泣するシーン。
詩的でした。



 
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<『DVD&ブルーレイ VISION』連載:サンキュータツオのアニメ論考『甘城ブリリアントパーク』>


毎月20日発行。
『DVD&ブルーレイ VISON』。
今月の「サンキュータツオのアニメ論考」は京都アニメーションの新作『甘城ブリリアントパーク』です。

この連載、命削って書かせてもらってますので、ぜひご一読を!
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