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書籍:『東京ポッド許可局 ~文系芸人が行間を、裏を、未来を読む~』

著者:マキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオ、みち、みずしな孝之 (イラスト)
判型:四六版・ソフトカバー
価格:¥ 1,890
発売日: 2010/9/24
出版社:新書館
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DVD『珍遊記〜太郎とゆかいな仲間たち〜』(1)(2)(3)

サンキュータツオの初声優作品!? 漫☆画太郎先生の傑作が春日森監督によってフラッシュアニメ化! 酒の肴にどうぞ。
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3/9(月)サンキュータツオ感謝祭『サンキュー祭』@道玄坂ヒミツキチラボ、発売開始




イベント詳細はこちらをご覧ください

e+で発売開始しております。と、書き込んでいたら完売したようです。
ありがとうございます。
あと手売りを10枚くらいします(『米粒写経のガラパゴスイッチ』かな 今日の『熱量と文字数』でもお名前いただければ取り置きします)。

この日は、感謝祭ということで、限定50名のタツオファンのみなさんとティーパーティをします。
当日はアンケートなどで、タツオをどういう経緯で知ったか、どこが好きか、など、私の魅力を語り倒してもらいます。

私のなかではテーマは一貫しているのですが、
米粒写経、東京ポッド許可局、TBSラジオ「デイキャッチ」、TOKYO FM「アキバノイズ」、ポッドキャスト「熱量と文字数」、ポッドキャスト「弱り目に祟られろレディオ」、「WOWOWぷらすと」、
アニメ、BL、国語辞典、おもしろ論文、NBA、
その他連載各種、単発での番組出演、大学での講義など、
いろいろな入口から私を知っていただいているお客様のなかでも、私の活動と向かっている先を把握している人は少ないのではないかと思います。
把握する必要もないのですけれど、どういうことを志向し、なにをおもしろいと思っていて、なにをやっているのか、この日集まるお客さんには知ってもらいたいなっていう、そういう洗脳セミナーみたいなものです。

初の試みですが、本年39歳になることもあり、3月9日にいい場所を見つけたので、ヒミツキチラボ吉村さんのご厚意で、この日思いきることにしました。
当日は小冊子を販売する予定です。

なお、オリジナルの菓子パンをご用意します。
ティーパーティーですので、ティーカップを持参していただけると嬉しいです。

タツオ

 
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 14:35 | comments(2) | trackbacks(0) |-
<『BRUTUS』:「つぎのひと」特集 インタビュー掲載>
15日発売の雑誌『BRUTUS』。


特集「つぎのひと」。次代を担う人を紹介する記事。



落語の「つぎのひと」として、瀧川鯉斗さんを推薦しました。
p88です。
ここでは、鯉斗さんです。

なお、この雑誌には我が相方、居島一平が連載をもっております。
「都道府県生まれてはみたけれど」という連載です。
持ちネタ 人を気持ちよくさせる歴史 を、読ませるという。
これが居島文体炸裂で、恥ずかしげもなくいいますが、面白いです。
気づいたらもう17回も連載していました。

米粒写経をよろしくお願いします。


 
posted by: サンキュータツオ | 書き物 | 22:43 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク #rakugo)2月17日 20-22時「渋谷らくご」 レビュー 創作らくごネタおろし会「しゃべっちゃいなよ」春風亭昇々/昔昔亭A太郎/春風亭吉好/立川吉笑/林家彦いち
「渋谷らくご」2015年2月公演
▼五日目 2月17日 火 20:00-22:00
林家彦いちプレゼンツ 創作らくごネタおろし会
「しゃべっちゃいなよ」
春風亭昇々-ないものとして
昔昔亭A太郎-(タイトル募集)
春風亭吉好-ヲタク漂流 〜2015winter
立川吉笑- t i o n
林家彦いち-検索の森
 ◎トーク「落語体験」ゲスト:大山卓也さん(ニュースサイト「ナタリー」代表取締役社長)


▼見どころ解説(渋谷らくご公式読み物「どがちゃが」より抜粋)

「そりゃまあ、オレもやりますよ」。
林家彦いち師匠からこの会のご提案をいただいたとき、まさかのこの一言が出たのである!
彦いち師匠が二つ目時代、旧・池袋文芸坐ル・ピリエ、なかの芸能小劇場、渋谷ジャンジャン、いろんなところで新ネタを難産で産み落とす師匠の姿を観てきた。ジャンルはちがうけれど、新ネタをつくるしんどさはなんとなくわかるが、キャリアをつめばつむほどその大変さは増していく。「やったこと」が自分で見えてくるから、新しく作るものは「やっていないこと」になる。自分のやれることとやれないことも見極めがついて、向き不向きを理解しはじめたとき、じょじょに「やっていないこと」が増えていくことに気づく。
「定期的に出る、ホームみたいな場所を作りたい」、と彦いち師匠は「渋谷らくご」が出来たばかりの11月におっしゃってくださいました。いまだ動員苦戦中、しかも11月は試運転中の閑古鳥まっさい中なのにも関わらず、である。涙が出るほどうれしかったが、まさかあの頃の苦しみを自ら背負いこむとは!
創作ネタおろし。生みの苦しみはお客さんにも苦痛を伴う危険もあるし、自分の殻を破るため、限界を壊すために無理なことにも挑戦するときもある。リスクと快感が等価交換される、エキサイティングな場なのである。
そんな彦いち師匠の呼びかけに賛同し、「赤紙」を受け取った四人の若き獅子たち。
先月は「落語」のお約束を破壊し場内を混乱と爆笑に陥れた昇々さん。
小噺や漫談、そしてネタに入ってもおなじピッチで観客の脳を溶かしていくA太郎さん。
十年前にもいなかった、オタク的知識をだれにでもわかりやすい形に変換する吉好さん。
もっとも疎ましがられるロジックの積み重ねで、なぜか共感と笑いを生み続ける吉笑さん。
緊張するのは演者さんだけでいいです。お客さんは、緊張せずに、ドSな気持ちで聴いてください。
文字通り「創作らくごネタおろし」の回。


▼レビュー
この回は、私の知っている方のなかで創作らくごに一番造詣が深い、木下真之さんというプロのライターさんにモニターをお願いしました。木下さんとは、古い知り合いなのですが、私が落語を離れた時間ごと、お会いすることがなくなっていたのですが、「渋谷らくご」の客席に毎月いらして、思わずお声かけして、今回のレビューをお願いしました。


トーク「落語体験」ゲスト:大山卓也さん(ナタリー代表取締役社長)


オープニング:林家彦いち師匠&サンキュータツオ

以下、木下真之さんのレポートです。
***

彦いち師匠の呼びかけに応じて集まった4人の二ツ目さん。「ねたおろし」として、初めてのねたを披露しました。気軽に笑える落語が続くのかと構えていたら、脳みそをフル回転させるハイレベルなストーリーの連続。この会にかける演者さんの意気込みと、他の演者に負けたくないという意地を感じました。そういえば、彦いち師匠が若手の頃の「応用落語」も「落語ジャンクション」もそんな雰囲気でした。渋谷らくごのお客さん、きちんと演者の投げたボールを受け止めようと食いついてきて、新作落語との相性は悪くないと思います。
 
 
春風亭昇々(しょうしょう)さん-ないものとして
 
昇々さんは、古典落語の中に演者自身を割り込ませたり、古典のフレームワークで新作落語を作ったりするのがうまい落語家さん。今回も、古典のパターンをうまく使いながら、突拍子もない落語を作り出しました。こまっしゃくれた子供が、親を理屈でやりこめる「桃太郎」という古典があるのですが、「ないものとして」は、サンタクロースは親なんじゃないかと疑うこまっしゃくれた小学生を、理論の通じない破天荒なおやじがやりこめます。そういえば、中学校の理科の時間「重さや摩擦はないものとして考える」って先生はよく言っていたよね。それに加えて、サンタを信じたり、疑ったりしていた小学生時代。懐かしさ覚えながら、変なおやじの面白さを堪能できた新作でした。予想外だったのは、おやじのへりくつに観客が洗脳されて、本来盛り上がっておかしくないサゲの前でみんなが聴き入ってしまったところ。新作の場合、面白い落語ほど聞き漏らすまいと、食いついてしまうんですよね。

 
昔昔亭A太郎(せきせきてい えーたろう)さん-タイトル募集
 
昇々さんもそうですが、みなさん初めてのお客さんを前にして、自己紹介から入ります。それが最も効果的に働いたのが、A太郎さんでした。「転校が多くて、人を覚えてない」という前ふりが本編で生きてきます。1000円の金にも困った男が、何とかならないかと街をさまよううちに、知人を名乗る人から声をかけられて……というシンプルなストーリーですが、話が進むにつれて、頭が混乱してきました。余白の多い話なので、観客はそれぞれで意味を読み取れるのですが、私の頭に浮かんだのはカフカの「変身」ですね。ある日突然虫に変身していて、次第に家族の厄介者にされて、最後にはひからびて死んでしまうってやつ。疎外されていく人間の孤独を重ね合わせて見ていました。落語の場合、演者の外観が最後まで変わることはないので、小説と同じように、言葉だけで観客をだましたり、想像させたりする利点があります。今回、5本の新作の中では、これが一番頭を使いました。
 

 春風亭吉好(よしこう)さん-ヲタク漂流記〜2015winter〜
 
「永遠の17歳」がキャッチフレーズの声優、歌手が大好きな吉好さんの妄想が爆発した話。オタク、アキバ系を公言する落語家さんはいますが、ここまでストレートに押してくる人を見たことはありません。そこにあえてチャレンジする精神は好きですね。渋谷のお客さんとかみ合うのか不安でしたが、見事に合っていました。吉好さん、マクラで慎重に観客のオタクリテラシーを探り、その声優・歌手の良さを説明し、自分がどれだけファンであるかを浸透させることに力を注いでいました。地ならしが効果的だったので、アキバ系のジャンルが弱い自分もちゃんとついていくことができました。そして、本編の1人コントに入ったシーンはひっくり返って笑いました。中に出てくるオタクのディテールはわかりませんでしたが、異次元の世界の人を見ているようで楽しかったです。1人コントなので、熱意やメッセージはダイレクトに伝わってきます。理由があって1人コントを選択したことはわかるのですが、聞かせるなら2人の会話のほうがいいですね。吉好さんならできると思うので頑張ってください。
 

立川吉笑(きっしょう)さん- t i o n
 
吉笑さんは、身体を題材にした変わった創作落語。私は勝手に「アーティストっぽい人」と思っているのですが、目に触れるものを何でも落語化してしまいそうな、感覚の鋭さ、企みの深さを感じます。花粉症の「くしゃみ」と「鼻水」が分離され、「2015年の鼻水は2023年に繰り越されて出てくる」という一発目のボケで、あっけに取られました。ただ「この面白さを超えるボケは出てこなくて、尻つぼみで終わってしまうんじゃないか」ということがすぐに心配になります。しかしそれも取り越し苦労。それを上回る奇想天外な身体を使ったボケが次々と展開され、パニック的状況を経て、着地も見事に決まりました。身体落語といえば「全身日曜日」「横隔膜万歳」など数々のネタを持つ彦いち師匠。第一人者の前で聞けたのは運命を感じます。
 

林家彦いち師匠-検索の森
 
アウトドアばかりでなく、デジタルグッズやITにも造形が深い彦いち師匠。「ネット検索」だけで落語を作ってしまいました。「木を森に隠す」は実際のITの世界でやられている対策なんですよね。で、登場人物の探偵さんのコードネームが、検索窓に入れるキーワード。「中央線 遅延」はよく使います。そんなワードの選び方にセンスが溢れています。ただ語呂のよさや面白さを追求しているだけかと思いきや、それが伏線として効いてくるとは! SWA!メンバーとして新作モンスターたちと切磋琢磨し、修羅場を乗り越えてきた彦いち師匠の強さです。新作真打の風格を見せつけたのは笑いの数の多さ。ギャグの連射で笑わせ続け、途中では「ラッスンゴーレライ」までぶっ込んでくる。4人の二ツ目に負けられない気迫と自負が伝わってきました。そんなねたを、前日に代官山の蔦屋のカフェで作っていたという彦いち師匠。今回の出演者はほとんどがそんな状況だと思いますが、前日作った話を高座でいきなりしゃべれてしまう新作落語家のすごさを、お客さんには感じてもらえたらうれしいです。
 
(木下真之/ライター Twitter@ksitam

▼この日の客席の反応はこちら!
 「渋谷らくご」2015年2月17日公演 感想まとめ


熱のハンパない回でした。途中、冷房入れるほどでした。
歴史的なライブとなりました、そしてエンディングでは、次回4月に開催することを約束しました。
ご来場のお客様、演者さま、まことにありがとうございます。

今月も5日間の「渋谷らくご」、ありがとうございます。
来月も第二金曜からの5日間、
3月13日から17日まで、どうぞよろしくお願いします。

 
posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 22:24 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク #rakugo)2月17日 18-19時「渋谷らくご」 レビュー 「ひとりらくご」柳家喜多八
「渋谷らくご」2015年2月公演
▼五日目 2月17日 火 18:00-19:00「ひとりらくご」
柳家喜多八-噺家の夢/二番煎じ


▼見どころ解説(渋谷らくご公式読み物「どがちゃが」より抜粋)

 贅沢な一時間である。
 師匠は公開稽古でもするかのように、お客さんに語りかけながら、こんなネタをやってみようかな、なんて言いながら次々と落語を演じる。ドヤ感がないのに、内側からふつふつとわきあがるものを感じずにはいられない。
 12月の「文七元結」では、見ず知らずの人に50両をあげてしまう長兵衛を説得力ある造詣で熱演、さらに山場のあとの夫婦喧嘩で笑いの山場を作り、1月の「明烏」では若旦那を騙して遊郭に連れて行く源兵衛と太助というふたりを愉快に演出した。
この師匠は、「市井の大人たち」がとにかく素晴らしい! 歴史に名前は残っていないけれど、たしかにそういう人が昔存在していたんだろうな、そしていまの日本人の心のなかにいるんだろうなあという人たち。思ったことをそのまま言わず、シャレた言い方とか照れた言い方とか色っぽい言い方をする大人たち。そこに人生の「時間」を感じさせるからこそ、私たちは体感時間よりも多くの濃密な「時間」を、この師匠の落語で味わうことができる。
 そんな人を一人占めできるのだ。幸運なことである。ぜひ聴いて!


▼レビュー
「渋谷らくご」にはさまざまな落語家さんに出ていただき、お客さんにはどこの人から入ってもよし、そのまま聴き続けていると、新たに別の人の魅力に気づく楽しさを味わってもらいたいと思っている。「純米大吟醸は下戸でものめる」をモットーにしているため、どの回にいっても私が「本物」と思う方に出ていただいている。
喜多八師匠は、そういう意味では「渋谷らくご」の年長者であり、最後に魅力を気づいていただいても、最初に魅力を知っていただいてもよい、「渋谷らくご」のひとつの回答です。
私がとにかく好き。それだけです。この師匠にはそういう意味で、一時間独り占めできる「ひとりらくご」にもっとも多く出ていただいている。申し訳ないことなのであるが、それでも師匠は決して文句を言わないで快諾してくださる。
この師匠の出る回が、超満員になってこそ、はじめて一人前の主催者だと思う。

この会は、18時から19時というハンパな時間なのだが、師匠は力むことなく、淡々と、それでいてところどころ力を入れつつ、ほどよい加減の高座をつとめてくださっているように見える。これが、公開の稽古を見ているようで、たしかにお客さんを意識してくださっているサービス精神も感じられ、なにか特別なものを見せてくださっているように見えてくる。
「ひとりらくご」、これは柳家喜多八師匠という人間の「定点観測」なのである。

出囃子先行で開演したため着替えが間に合わず3回まわしするという事態。まったく申し訳ないことですが、これもまたライブ。
見事に笑いに変えてくださった。
マクラ的に「噺家の夢」。地方公演、こうだったらいいな、という噺家の夢をそのまま落語にしたような。
笑っちゃう噺。
いいなァ。


柳家喜多八師匠「二番煎じ」

早く終わるかもしれないし、1時間なんて難しいよと言いながら、演目は「二番煎じ」。
大火事が多かった江戸。寒い時期にもかかわらず、夜の火の用心に見回りにでる町人たち。
あまりに寒いので二班にわけて見回りを交互にすることに。
しかし、最初の見回りが終わった一班は、休憩場所で、こっそり用意してきたお酒を飲んだり、こっそり用意してきた鍋をつついたり。
騒いではいけない、バレてもいけない、そんな緊張感のなかでヒソヒソ楽しそうに話合う市井の人々。
一人一人の演じ分けが難しいのと、酒が好き、鍋がうまい、バレちゃいけないというフリがあるぶん、その緊張感のなかで小さい演技で笑わせる技量が必要です。だが、見事にやると終始楽しい噺。
私が喜多八師匠の「二番煎じ」をはじめて聴いたのは、たしか98年11月頃。上野鈴本演芸場の独演会でのことでした。
相方、居島一平もその場におり、終演後は席を立てなくなるほどの圧倒的高座だったと言ったことを覚えています。



17年経った今、その喜多八師匠は、いい意味で力まずに、あくまで楽しそうに「二番煎じ」を御していました。
このことに度胆を抜かれる。ドヤ感ゼロ。
酒がうまそう。猪鍋もうまそう。点検にきた侍までをも愛おしい。
脳のなかには江戸の夜風。狭い納屋のような休憩場所で、あたためたお酒の匂いや鍋の匂いがする。
つらいときでも楽しく生きていた人たちのことに思いを馳せる。
情景がふぁーっと広がっていく。
時間が空間に溶けていき、幸福な時間が訪れる。
唐突にサゲを迎え、その時間は終わりをつげる。脳だけが帰ってこられなくなる。夢をみているよう。

時計を見ると、19時ちょうどでした。

(タツオ)

▼この日の公演の反応はこちら!
 「渋谷らくご」2015年2月17日公演 感想まとめ

posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 22:10 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク #rakugo)2月16日 20-22時「渋谷らくご」 レビュー 立川志の春/立川吉笑/隅田川馬石/桃月庵白酒
「渋谷らくご」2015年2月公演
▼四日目 2
立川志の春-ナンシー
立川吉笑-何時材
田川馬石-粗忽の使者
桃月庵白酒-文違い

ただただひたすら観たかった公演。なのに仕事というトラップにハマり見られず。
というわけで、今回もモニターは、会場の雰囲気を中心にレポートしてくれる23歳男性、重藤くんです。

▼見どころ解説(渋谷らくご公式読み物「どがちゃが」より抜粋)

楽しみすぎるガチンコ対決、どの出演者にも「絶対に負けられない戦い」である。
立川流の二つ目ふたり VS 五街道雲助一門、という構図。しかし、そんな構図のなかにも、さらに 談笑の弟子・吉笑 VS 志の輔の弟子・志の春、兄弟子・白酒師匠 VS 弟弟子・馬石師匠という構図もあるのだ。
白酒師匠は「渋谷らくご」初登場! いま日本でとても忙しい落語家のなかのひとりなのだが、どうにか関係各所への配慮とスケジュールのやりくりをして、出演の運びとなりました。
この回はもっとも「スリリング」な回。どこでも見たことがない番組です。今後もたぶんないでしょう。まったく想像がつきません。だれがどんなネタをやるのか、どう存在感を残すのか。

なにも考えずに見届けるだけで、幸せになれることが保証されているような番組だと思います。


帰り道わくわくしてしまってスキップして渋谷駅に向かいたくなってしまうほど、とても素晴らしい回でした。幸せです。客席は開演前から熱がすごくて、この熱が白酒師匠終わるまで一度も下がることがなく、最後の最後まで上がり続け、最高潮で終演!観客が多いことは良いものが生まれる必要充分条件ということを改めて感じました!

なにはともあれ「渋谷らくご」に初出演してくださった白酒師匠の横綱相撲っぷり。圧巻・圧倒・最高でした。これには4名のそれぞれの出演者の方々の巧妙な技と、個性が際立った回だったからこそだったんだろうと思います。いやぁとっても熱くて最高でした。


立川志の春さん「ナンシー」

志の春さんの、枕の妙。釘付けでした。枕は日常生活と地続きで、婚活や
Apple storeといったフレーズが繰り広げられれば、演者と観客の距離感は自然と縮まっていき、バラバラだった客席の熱がひとつの方向に自然とまとまっていく。この技が抜群でした。
落語にも「Facebook」というフレーズも登場したりして、落語を見慣れない人でも、きっと親近感を持ってしまう新作。
もちろん志の輔師匠ゆずりのロジックによって伏線が張られ、期待が高まった最高の状態で、最後にきっちりと回収する。抜群でした。



立川吉笑さん「何時材(いつざい)」

吉笑さんも、斬新な新作。この新作では相変わらず言葉と戯れて格闘していることが感じられました。言葉そのものの面白さ。言葉のトリックで頭の中で映像が再生されてしまう。枕での「喉から手が出る」という言葉もさることながら、「何時材」では分数が約分されている様子さえも頭の中で再生されてしまう。

斬新なテイストなのに隠し包丁がいい味を出すような、実は丁寧にじっくりと状況を描き続けている様子もバシバシ感じられました。言葉の強度の限界への挑戦はまだまだ続きそうで、これからが楽しみです。

インターバル前までの志の春さんと、吉笑さん。このお二方の新作落語は、落語初心者でも親しみやすい「古臭さ」とは無関係の気持ちの良い刺激がありました。



隅田川馬石師匠「粗忽の使者」

インターバル後には、馬石師匠のゆったりとした登場。しかし目は狂っているように見えて、静かな狂気のようなものを感じました。人柄の良さが伝わる枕から、「粗忽の使者」が開始。しかしこれが古典の古さを感じさせないすごさがありました。
落語の「型」を明確に踏襲しつつ、けれども「生」っぽい会話を入れることで異様なリアル感を生み出し、そこに古典落語の人物が見えてしまう。会場が登場人物の一挙手一投足から目が離せなくなり、客席では何人もの観客の息をのむ音が聴こえてくるほどのリアル感。これが本当にすごかった。「古典落語は登場人物がお侍さんだから、ちょんまげをしているから、前の時代のお話だろう」という印象は今日の馬石師匠の落語で間違えだと証明されたと思います。古典落語が、現代のドキュメンタリー映画のようでした。



桃月庵白酒「文違い」

そしてトリの白酒師匠。前の出演者の誰よりも毒が強く、誰よりも刺激的な枕から始まりました。この枕を聴いてしまったら、それが最後。白酒師匠のペースに会場は飲み込まれてしまいました。テンポ良く、心地よいスピードで毒が積み重なっていき、笑いが積み重なっていく。その勢いがトップスピードになってボルテージが最高になった瞬間、一気に「文違い」が開始。この回で唯一、女性のキャラクターが登場して、なおかつ男女の恋模様を描く「文違い」。この古典落語が白酒師匠のパワーで、誰にでも届くであろう落語に生まれ変わっていました。キャラクターは全員可愛くて、愛くるしい。デフォルメしつつ、登場人物の感情の機微が痛いほど伝わってくる。これが笑えないわけがない。とても面白く、会場の熱が凄まじかったです。


落語のすごさをまざまざと実感した夜でした。

(文責・重藤暁 しげふじぎょう 23歳 男性 大学院生)
 

▼この日の公演のお客さんの反応はこちら!
 「渋谷らくご」2015年2月16日公演 感想まとめ


いいなあ、ちくしょう!(タツオ)
posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 22:05 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク)2月16日 18-19時「ふたりらくご」 レビュー 瀧川鯉八/春風亭百栄 #rakugo
「渋谷らくご」2015年2月公演
▼四日目 2月16日 月 18:00-19:00「ふたりらくご」
18-19「ふたりらくご」
瀧川鯉八-ぷかぷか
春風亭百栄-弟子の強飯
瀧川鯉八-魔術
春風亭百栄-船越くん


18時からの1時間、初の「ふたりらくご」公演。
個人的には「イリュージョン落語会」である。いつかはこのコンセプトでやりますが。ひとまずはいま一番見たいふたりの落語。
と、自分で番組を組んでは見たものの、どうしても外せない仕事がありこの日は鑑賞できず、よって、モニターを用意いたしました。
渋谷らくごでは、今後私の信用しているモニターさんによるレビューを充実させていこうとも思っています。

ライブは聖なる一回性のものです。会場にいる人と演者さんで作り上げるものです。ですが、一回性だからといって、記録を残さなくていい、というわけではありません。観客は演者さんがたしかになにかを考えしゃべっている姿を見ていますが、それとおなじエネルギーでお客さんも見ているんだよってことをお互いが認識しあうことによって、お客さんも主人公になれる場所にしたいと思うのです。こういったアーカイブ化も、その日たしかにお客さんがいた、ということの証。
その場所にいなかった人なら「自分だったらどう思うだろう」、とか、その場所にいた人なら「自分はそうは思わなかった」「そうそう、うんうん!」と、自分の感想を相対化するのも、自分を知り、落語会を楽しんでもらうためのキッカケ。
ゆえに、私はレビューとプレビューは同価値で重要視しています。
これは「渋谷らくご」ならではのものにしていきたいと思います。

評論なんてしなくて、個人的な感想を自分の言葉で、オタク的でなく表現できる人に出会えたら、いいな☆
ということで、今回は、23歳男性の落語ファン、重藤くんに、会場の雰囲気中心のレビューを書いてもらいました。

▼見どころ解説(渋谷らくご公式読み物「どがちゃが」より抜粋)

この回はお買い得!
このふたりを嫌いな人はいないでしょう!
語り口からして「芸人くさい」、出で立ちからしてかわいい。やるネタは独特。独特すぎて癖になる。
「ワールド」を展開するふたりだけを、粒立ててみてみたい。そんなことから、「ふたりらくご」が始動しました!
相撲の国・ニッポンに、メキシコの元プロレスラーの力士と、ブラジルの元柔術家の力士が来た、みたいな気持ちで観てください。
はじめて観る人は、「落語ってこんな幅広いんだ」と思っていただければと思いますが、これが落語のすべてだとは思わないよう注意していただきたく存じます。
まちがいなくおもしろい!

 

落語界の新しい異端児を思う存分満喫出来て、思う存分笑えたふたりらくごでした。「脳の筋肉使用★」でありながら、知らず知らずのうちに脳の筋肉をフル活用していたことを実感する素晴らしい会でした!
落語に慣れていない人であれば、慣れていないほど衝撃が強くて、きっと落語が身体から離れられなくなってしまうであろうとても不思議な1時間でした!!

聴いてみて感じたことは、
お二方の落語で違うことは、落語の世界の作り方が違うこと。

鯉八さんは落語の構成する上での最小限の会話を提示することで、世界をつくりあげて
百栄師匠はシチュエーションと登場人物の描写で、世界をつくる。

お二方の落語で同じことは、聴いた直後から、もうお二方が大好きになってしまうこと。
今日もお二人の虜がたくさん生まれたでしょう!また次が観たくなっているはずです!

鯉八さんは、開演前の期待と緊張が混ざり合った空気を見事に暖かく包み込んで、でも緊張を保ちつつ笑いのきっかけを着実に逃さないすごさを実感しました。



瀧川鯉八さん

「ぷかぷか」は展開が早く、映像を思い浮かべることをさせない、けれども、そこで人間関係をくっきりと描く。その人間関係の中では「日常に一度は聴いたことがあって、胸がざわつくのにも関わらず、流されてしまう日常のキラーフレーズ」がいたるところに溢れ、そしたらもうニヤニヤ止まらなくなってしまう。
日常生活ではきっと体験できないパラレルワールド。でもそのパラレルワールドから抜け出せなくなってしまう魔力。この魔力は「魔術」でも存分に味わうことができて、もう笑わざるを得ない世界でした。堪能しました!


百栄師匠の世界のつくられかたを、今日もまた目撃することになりました!



春風亭百栄師匠

「弟子の強飯」は、最初はキャラクターの全貌が掴めず、戸惑いからはじまる。けれども忠実に丁寧にキャラクター像が描かれ続けることで、徐々に観客の頭の中には確固たる一つのキャラクターが誕生して、そしたら誰でも笑わざるを得なくなる。そんな状況を突然崩すように百栄師匠のマジックが炸裂!観客の頭の映像を大きくひっくり返すことで、予定調和を裏切り、最後には笑いが爆発する!!

そのひっくり返し方は落語ならではの、百栄師匠だからこその大きなマジックでした!

「船越くん」の断崖絶壁の様子、観客の頭の中に波の様子まで描かせてしまう、百栄師匠恐るべしといわざるをえないものを見てしまいました!このようなシチュエーションでの落語が面白くない訳が無いと、いま思い出すだけでニタニタしてしまいます。
お二方には、落語初心者だろうと落語ファンだろうと、関係無く頭の中のイメージを刺激し続けられました。この強烈な感覚はもう癖になっていませんか?
今回の4席は、「落語だからこそ面白いんだ!」と実感できたとてもお得な会でした!


(重藤暁 しげふじぎょう 23歳 男性 大学院生)


補足:
開演五分前に事務局から電話がかかってきまして、「二席ずつ交互にやってもいいですか?ということなんですけれども」と相談。「もちろん!」と即答。演者さん側からの提案はまず断りません。
その相談だけ聴いて、今日はいい会だろうな、観たかったな、と思ったわけです。
(タツオ)

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 「渋谷らくご」2015年2月16日公演 感想まとめ


 
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「渋谷らくご」(#シブラク)2月15日 17-19時 レビュー 桂宮治/玉川太福/立川志ら乃/橘家圓太郎 #rakugo
「渋谷らくご」20152月公演
▼三日目 2月15日 土 17:00-19:00「渋谷らくご」
桂宮治
-反対俥
玉川太福-銭湯激戦区(曲師:玉川みね子)
立川志ら乃-唖の釣
橘家圓太郎-
化物使い

▼見どころ解説(渋谷らくご公式読み物「どがちゃが」より抜粋)

 若手爆笑王の名をほしいままにしている宮治さん再登場! 11月公演では風邪のなか、過去に出会った仕事の数々のエピソードを紹介してくださり、毒もふんだんに盛り込んで『笑点』などでのイメージとはまたちがう一面を見せた。あの時はただひたすらに「怖っ」と思ったものだが、よく考えてみたら芸人はみんな怖い。目も怖い。性格も怖い。けど、この落語家さんはどこからどう見ても「優しい人」でもある。そして実際は、すべての面を持っているのだ。いろんな面を持っていることがなによりの力の証。そのあとをつぐ浪曲の太福さんもやりにくければ、この日立て続けに浪曲のあとを引きつぐ志ら乃師匠もやりにくければ、きっと志ら乃師匠のあとを引きつぐ圓太郎師匠もやりにくいだろう。
 なので、この回のNGワードは「やりにくい」。これ芸人が言ったら負けワードです。落語界はどうかわからないけれど、少なくとも私のいる若手お笑いの世界では言ったら負けなワードです。
 そんな、ちょっと窮屈の想いをしたほうが、実は芸人は存外に力を発揮する生き物で、やる側は自由にやりたいと思っているけど、なにか制限があったりしたほうが観る側が求めるものが出たりすることもある。
 この回は、そんな裏に潜むやりにくさとも戦うことで演者さんの120%が観られるといいなという「やりにくい」回です!


「渋谷らくご」はとにかく一番手。一番手が元気づけてくれると、次の人はそれに合わせてさらに高みに連れていってくれる。その相乗効果で四重奏を奏でるのである。


桂宮治さん「反対俥(はんたいぐるま)」

この人の、時にはく毒。小気味よく手数を出して笑わせてくる話術。ときとして垣間見させる腹黒さは「売れたい!」という気持ちがまっすぐに伝わってくる野心だと思っている。こういう芸人を昔は嫌いだった。が、私も芸人になってみてわかったことがある。こういう人がいる現場は、間違いなく「負けられない」という緊張感が走る。
どういう人が先輩に引き立てられて、どういう人がプロデューサーに使われて、どういう人がお客さんに愛されて、「仕事」としてこの職業を成り立たせていくのか。
その点、宮治さんはその教科書のような存在であり、豆で努力家、しかも才能もある。こういう人はなにをしても食べていける。いままでのパターンでいうと、地方のドサまわりと結婚式の司会などで荒稼ぎして、芸をおろそかにしてしまうパターンも散見されるが、この人にはそうなってほしくないなァと思うのだ。どうしてもこの人の落語を聴き続けたい。この人はたぶん、落語家という職業が好きなのだ。こんなに愛嬌があって人懐っこい人はいない。売れている理由もよくわかる!将来『笑点』のレギュラーメンバーとして日曜の顔になっている姿が容易に想像つくもの!
でも、宮治さん、「反対俥」をやってくれた。気の早い、江戸の人力車の人夫たち。
明るくて、楽しくて、あァ、漫談もいいけど、やっぱこの人は落語に愛されていんだなーって、ほっこりする。



玉川太福さん「銭湯激戦区」

玉川太福さんは、創作浪曲「銭湯激戦区」。
昔住んでいらっしゃった荒川区界隈の銭湯激戦区。そこでのオススメ銭湯ベスト3。
なんてことはない、ただ銭湯の魅力を謳いあげているだけなのだが、この人の視点には「愛」がある。
いま一軒一軒潰れていっている銭湯。江戸の昔から人々の社交場、テレビのようなメディアとしても機能し、みんなが気持ちよくなっていた場所、銭湯。
熱すぎる銭湯、ぬるい銭湯、サウナに入れる銭湯、夜遅くまでやっている銭湯、雰囲気たっぷりの銭湯……。だれしも一度は経験したことがある、あの銭湯の佇まいをイメージし、あの空間がなくなったら寂しいな、と思う「心」に訴えかけてくる、銭湯への愛である。
ではなぜその「愛」が生まれたのか。番台を通して会話した記憶。少しのやさしさに触れて感謝した気持ち。そんなささやかな記憶の数々が、銭湯という空間への「愛」を形作っていく。
もしかしたら、100年後にはなくなってしまっているいるかもしれないモノ、そしてココロ。でも忘れてはいけないと思われるモノ、そしてココロ。
それらを、あれだけわかりやすく、コミカルに、幸せに表現して「愛おしい!」と思わせてくれるのは、浪曲という芸能の力、そして太福さんの芸の力のタマモノだと思う。素晴らしい演目でした。それにしても、いい顔でうなる! いちいち爆笑。


曲師 玉川みね子さん

この日、奈々福さん、太福さん、ふたりの曲師をつとめてくださった、玉川みね子先生。
舞台ではしゃべらないのだが、楽屋では「あんなり私のことしゃべるんじゃないわよ」と太福さんを叱る、ということを高座で太福さんがおっしゃってくださるので、そのエピソードひとつだけでもグッと人間味を感じられて、たしかにそこに「人間」がいるんだ、と思わせてくれる。


立川志ら乃師匠「唖の釣(おしのつり)」

昼は古典で「狸」を演じ、夜は創作浪曲のあとになにをやるのか―。
きっと師匠の脳裡には高座にあがるまで複数の選択肢で揺れ動いていたにちがいない。
30分で二席やるとか、新作落語をかけるとか。先月も「シネマ落語」を演じたばかりだ。とはいえ後ろは古典本格派の圓太郎師匠。ほぼ昼とおなじ構成の位置で、直前にはおなじ浪曲だけど創作。袖で聴いていてなにを想っただろう。
すでに満足感を感じているお客さんの前で、この日はあくまで古典での勝負に挑んできた。大福を食した後の満腹感のところに、アッサリ味の聴きやすい古典。それでいて、一番手は気の早い俥屋、二番手はお風呂の話。与太郎に近い存在感のキャラが笑わせてくれる定番のナンバー。
釣り好きが一計を案じ、釣りを禁じられている池で釣りをする。兄貴と与太郎のふたりは、もし見張りに見つかったときの対応策まで詰めておいて、この禁じられた釣りに出かけるのだが、案の定見つかって…という噺である。
ベテランを前に「繋ぎ」に徹する道。身近にいるドジな人のマクラから、見事に古典につなげる構成。
……どうした、無難だぞ志ら乃師匠!! 疲れたの?
悪いことではない。「うまさ」が前景化した高座だ。
ドジな人のエピソードも、与太郎も、語り方によってはイジメや語る側の意地悪さが際立ってしまう、実はけっこう繊細なタッチが求められる部分だが、志ら乃師匠はそんな彼らを「好きだ、おもしろい、いいぞもっとやれ」という視点で語ってくれるので嫌味がない。気持ちいい。
なかなか難しい場所での連続高座、嫌な顔をひとつくらいだけでとどめてくださって、本当にありがとうございます!
こうなると、圓太郎師匠はそのまま無理なくグイッと大ネタに挑める。


橘家圓太郎師匠「化物使い」

キターーーー!!
大好きな噺。人使いの荒いご主人様は、せっかく見つけた「できる使用人」の杢助の願いもきかず、化け物がでるというウワサの屋敷に引っ越してしまう。杢助は化物が怖くて辞めちゃった。
化物なんかちっとも怖くないご主人さまは、案の定でてきた化物も、てきぱきと指示して家の手伝いをさせてしまう。めちゃくちゃおもしろい噺だ。
しかも化物のイジリ方が圓太郎流。一つ目小僧に、大入道、のっぺらぼう、言葉のかけ方が多様でどこからでも笑いが取れるし、時間の伸縮も可能ときている。終わったときはぴったり2時間経って19時。す、すげえ!!
いいもん聴いたなーっていう空気が、渋谷ユーロライブに充満した、圧巻の回でした。
たまらんなもう!

 
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「渋谷らくご」2015年2月15日公演 感想まとめ

(タツオ)
 
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「渋谷らくご」(#シブラク)2月15日 14-16時 レビュー 柳家わさび/玉川奈々福/立川志ら乃/柳家喜多八 #rakugo
「渋谷らくご」20152月公演
▼三日目 215日 土 14:00-16:00「渋谷らくご」
柳家わさび-厩火事
玉川奈々福-清水次郎長伝  お民の度胸 (曲師:玉川みね子)
立川志ら乃-狸の鯉
柳家喜多八-うどんや
◎トーク「落語体験」:松蔭浩之(現代美術家)


神保町「美学校」でも教鞭をとっていらっしゃる、松蔭浩之さんをお迎えしての土曜日昼公演。
天気もよくって、渋谷の街はたいそうな人だかりなのだが、ここユーロライブは今日も贅沢で静かな空間でした。

見どころ解説(渋谷らくご公式読み物「どがちゃが」より抜粋)

「本格派」回。
「渋谷らくご」では、11月、12月と「ひとりらくご」をお願いしている喜多八師匠。その魅力のとりこになった方は、ぜひ「渋谷らくご」での喜多八師匠も観ていただきたい。とにかくこの師匠に惚れこんでいる私は、今月の「ひとりらくご」をお願いしていますので、この回で喜多八師匠にやられた方も聴きに来てください!
 2時間の公演の最初からお客さんを楽しませたいと考え、「渋谷らくご」では一番手を最重要視しているのだが、この回であがるわさびさん、古典を演じても創作を演じても、同世代にほかにいない独特の存在感をもった芸人さん。とにかく噺の解釈も演じ方もシグサも「丁寧」。でも堅苦しくない。「動」と「静」でいえば、完全に「静」のヒトなのだがどう観客を沸かせてくれるのか、今月も楽しみである。
 奈々福さんの浪曲にははやくも「渋谷らくご」からのファン層も形成されていると聞く。ニコニコしながらも雄々しく歌い上げるカッコよさ。女性的な部分と男性的な部分を双方持ち合わせた浪曲。ぜひ堪能していただきたい。
 そして志ら乃師匠である。15日、志ら乃師匠は14時回と17時回、ともに三番手として出ていただく。「志ら乃のあとはやりにくい」、多くの師匠はそう語る。圧倒的なスピードで落語の世界に引きずり込み、見たことも聴いたこともないようなクスグリが飛び出す。それでいて古典の世界を崩さない。伸び盛りの芸がそこにある。
 「静」「動」「動」「静」という組み合せがどんな風を吹かせるのか。乞うご期待!
トークゲストには私の大好きな、現代美術家の松蔭浩之さんをお迎えしました。神保町の「美学校」で美術も教える松蔭さんの目に、この起伏の激しい「渋谷らくご」はどう映るのか。楽しみです。





柳家わさびさん「厩火事」。
この顔(笑)。
この人は古典も創作も、キャラクターを記号的に、わかりやすく丁寧に演じているので、とっても聴きやすくて楽しい。
若い人がやる「厩火事」らしく、年上女房のおさきさんが焼くのもかわいらしい。これ、年取った人がやるとただ口の悪いワガママなおさきさんになるだけで、おばさん感が強調されるだけで、かわいく思えないのだ。
自分では憎たらしいと思っていても、人から言われると、そんなことないと否定したくなったり。人の心の動きのおもしろさがこの噺の楽しいところ。旦那は旦那で良い人かどうか、最後までわからない雰囲気がとってもいいけれど、総じて「バカップル」に見えたらいい噺なんだよね。
楽しかったなァ、わさびさんの「厩火事」。
いざ本番、ということになったときの、一喜一憂するおさきさんをオーバーに演じたのも、とっても楽しかった!



続いての玉川奈々福さん「お民の度胸」。次郎長伝のなかから、「厩火事」のおさきさんとは対極にある、肝の座った女を演じる。かっこいいねえ!
冒頭でもお話があったとおり、広沢虎造と言ってもピンとこない人たちが増えたなか、浪曲をやることの意義ですね。これは戦いなのです。
私も車のなかで虎造聞いちゃうくらい好きなんだけど、でも、忘れたいんですもう。
落語でいえば志ん生を文楽、円生、ひいてはいまなら談志師匠や志ん朝師匠を知らない人がいる。そして、その「知らないこと」がプラスに働くこともある。いつまでも先人の呪縛から解き放たれないマニアがたくさんいる。でも、知らない人だからこそ、フラットに「おもしろい」「いい!」と評価できる人たちが、次の時代の演者を育てていくのだ。
女性の浪曲師ならではの「お民の度胸」。奈々福さんがやると説得力あるんだよねぇ!
そして、わかりやすくって、ニコニコしてくれてて、「情」も伝わってきて。
なぜこの芸能に惚れこんでいるかっていうと、「人情」がそこにあるからで。「厩火事」にも言えることなんだけど、半信半疑のなかでも信じたいって気持ちが強いのが惚れた人間ならば、お民のように信じ続ける強さもあるのが人間。わざわざ説明しなくっても、「こういう人が、気持ちいい人だよね!」って思える、日本人の倫理観。
これを渋谷でやってほしいのです。
奈々福先生(もとい、奈々福さん 先生というと叱られてしまう模様)、毎月ありがとうございます!



さて、この日の2公演の両方で三番手の出演をお願いした志ら乃師匠。
「志ら乃のあとはやりにくい」と紹介したことからまくらでそれに触れる。
ギャハハ。
でもこうやって「流れ」のなかにあって演者がなにを考え、どういう心理で高座に臨むのか、ダイレクトに、楽しくお客さんに伝えてくれるから、志ら乃師匠には絶大な信頼を寄せちゃっている私。
なんてこと書きやがるんだとか保守的なお客さんは言うけれど、そういう「わかっている人の聴き方の美学」みたいなもの捨てないと。まずは目線付けすることが大事で、それがわかっているからこそ、師匠もあえて高座でそれに触れるのだ。
そして、こんな視覚的で楽しい「狸」があるのかというほど、スピード感とエンタメ性を存分に盛り込んだ一席。助けてもらった恩返しに、狸がいろんなものに化けてピンチをすくうというお話。
ああ、いい! この師匠のリズム感。内容がおもしろいかどうか以前に、おもしろいリズムかどうかで私は落語を聴いたりするのだが、この師匠の年々リズム感が「おもしろ」くなっている感じ、たまらない。「ああ、次にここで盛り上がって笑いがきてほしいな」ってところでしっかり取りに來る。師匠の高座を聴いていると、芸人として、ウケても滑ってもやりきることが、観客をだんだん集中させていく一気に爆笑空間へと導くコツなのかもしれないと思う。
掛け値なしに楽しい! そして、古典、古典、古典ときたから、この日は最後まで古典だぞ、と期待感が高まり、喜多八師匠を迎える。



喜多八師匠の「うどんや」。
志ら乃師匠の「動」のあとの、喜多八師匠の「静」。
ずっと聴いていたい、聴いたまんま眠りたい。そういう欲望にかられるほどに、静かな時間と会話。
酔っ払いの繰り言、お客さんだと思ってそれを黙ってきくうどんやのすすけた背中。寒い夜となると思いだす高座のひとつになる!
そばとうどん、どっちがいいか、なんて話から、うどんやに。ロクな目に合わないうどんや。情けなくなっちゃうほどに哀しいうどんや。そんなうどんやが滑稽に見える。これこそが落語。
渋すぎ! 渋すぎる喜多八師匠! 




終演後には、松蔭浩之さんと感想戦。
昔はあまり落語にいいイメージをもっていなかったという松蔭さん。
夏目漱石が好きで、上京後に根津のあたりに住んでいて、フラッと立ち寄った上野鈴本で桂文朝師匠を聴いてハマったという話。
美学校の学生にも落語を聴かせているようですよ!
そんな松蔭さん、喜多八師匠の圧倒的なうどんやの前に、「このまま寝たい」まで言ってくださいました。
そうなんですよ、幸せな空気に包まれ、都内の喧噪を忘れ、落語を聴きながらしびれた脳のまま、そっと目を閉じたい。
それこそが落語体験。

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「渋谷らくご」2015215日公演 感想まとめ




(タツオ)
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「渋谷らくご」(#シブラク)2月14日 17-19時 レビュー 三遊亭遊雀/柳亭市楽/春風亭百栄/瀧川鯉斗 #rakugo 
「渋谷らくご」20152月公演
▼二日目 214 17:00-19:00「渋谷らくご」
三遊亭遊雀-熊の皮
柳亭市楽-宮戸川
春風亭百栄-寿司屋水滸伝
瀧川鯉斗-芝居の喧嘩


見どころ解説(渋谷らくご公式読み物「どがちゃが」より抜粋)

 この番組の異常さは、少し落語をかじったことのある人ならおわかりいただけると思う。
 ベテラン真打が一番手、トリが二つ目である。
 「え、バレンタインデーだからって、もしかして後ろに行くにしたがってイケメンになるの!?」と思った方、いろいろ失礼ですけど半分正解で半分間違い。正解の部分は、鯉斗さん、激イケメンです。私は男ですが、この落語家さんは推せます! 落語界の未来はこういう人にかかっていると考えてもいいと思う。間違いの半分は、ほかのお三方もなかなかのイケメンだということです。百栄師匠も、10人いたら、熱狂的にタイプ!かわいい!とかいう女性が2人はいると思います。芸人が見たら、10人中10人が「かわいい」というでしょう。
 遊雀師匠から一本の電話。「後ろにどうしてもはずせない仕事があり、出番を前に…」。となれば、ピンチをチャンスにするしかない! 過去、「渋谷らくご」でトリをとった二つ目は、立川吉笑さん、と三遊亭歌太郎さん(まくら王で)のふたりだけ。
 落語界には必要なのは、うまい人よりおもしろい人。大器がほしい! そんなときに突如現れたリアル『タイガー&ドラゴン』、元暴走族族長の笑顔のやさしい男前。姿勢といい、言いよどみのない点といい、しゃべりの品がハンパない。「マジっすか?」とか言ってる若者が、着物を着て落語を語るというリアリティー。しかも漫談の構成力のなさとか一周まわってかわいいほどに、構成なんてどうでもいい面白さ。かと思ったら、至極自然に古典に入ってるから「ウソつけ! お前さっきまでマジっすかとか言ってただろ、その時代よく知らないだろ!」と思わず笑っちゃうほど。ああ、こういう人がついに、遂に出て来てくれた! あとは、そのまままっすぐスンスン伸びていってくれたら最高。鯉昇師匠だから安心してます!
 というわけで。競馬でいえば「バレンタイン記念」。いったいトリがどうなるのか、まったく想像がつかない「前代未聞」回です。

 
まさに異常な番組となったこの公演。
本来であれば、遊雀師匠に後ろがあることが決まった時点で、百栄師匠のトリなのだが、ここはひとつ鯉斗さんという未知数に賭けてみたい。そんな想いの編成で望んだバレンタイン公演。
 

 
本来ならこのキャリアの落語家がトップであがることなどあり得ないのであるが、たまたま後ろに仕事が入ったために、若手を追いこむ意味でも前のほうに出たいと志願してくださった遊雀師匠、この上ない安定感で客席を安心させてくれた「熊の皮」。
夫婦の軽口。奥さんに言われたことをそのままやろうとして失敗する亭主。「鮑のし」とおなじ構造だが、「熊の皮」は夫婦のやりとりがおもしろい。
というか、そもそも遊雀師匠の演じる「夫婦」そのものが、どこかリアルで、だけどどこにもいない愛らしさで、熱すぎず冷たすぎずの、「なりゆき夫婦」でとっても楽しい。
「熊の皮」は、そういう意味では亭主がそこまでバカでない配合なので、夫婦の掛け合いパートの面白さが増幅する。女房がパワーバランスの上で上位なのだが、それは亭主が愚鈍なのではなく、あくまで対等に話し合ったうえで尻に敷かれている。「熊の皮」の亭主は、当時の人としては、少しバカ、くらいの感じで、与太郎ではない。
あっという間の30分。この師匠の醸し出す「時間」は、ずっと浸かっていられる温泉のようだ。



この師匠のあとに二つ目があがるなどなかなかないことだ。そこにフレッシュな市楽さん。
おなじカップルでもういういしいカップルを演じる「宮戸川」。
これまた楽しい噺である。
市楽さんの人柄もあるのだろうけれど、お花は初々しさのなかにも物怖じしないやり手な雰囲気、対して半七は年頃で、お花を意識しながらも、自分には分不相応と思って「どうせオレは」みたいなブサイク感が漂う初々しさ。
抜群だったのは、半七をなかば女性恐怖症的に扱ったことで、この噺をより味わい深いものにした点であった。
あまりにも微笑ましすぎるカップルのやりとりに、さらにそこに「話の早すぎるおじさん」が登場する。おじさんにはまた天然の奥さんなんかもいたりして。「明烏」の時次郎のもつ女性恐怖症的な側面を微笑ましく味わう要素を、宮戸川にも入れてきた感じ。んー、いいね!
気持ちいい人だ。今後も追いかけたい。



百栄師匠。
しゃべってるだけでかわいい。この師匠の噺はずっと聴いていられるし、なんなら百栄師匠をBGMに寝たいくらいだ。
落語家らしからぬ風貌、語り口。場合によっては落語らしからぬ噺。
好きで好きでしょうがない。どうしようもなく「芸人性」を感じてしまう師匠である。いまや漫才やコントにすら、こういった人は少なくなった。
この日はご自身が昔滞在していたロサンジェルスでの話から。最初は3週間くらいの旅行のつまりが10年いたという、そこでの寿司バーに働きにいった話。もうどれもがおもしろすぎる。
そんな実話がくっついているものだから、この落語にも説得力がある。
こういった落語家としては「周辺」の人が、結果的に落語の外延を拡張する。落語界には絶対に必要な人なのだ。
さんざっぱら笑わせてもらったあとに、トリの鯉斗さんへ。



あとで聴いたらことのほか緊張していたようだったが、それを高座からまったく感じさせないところは、この人の本来持っている風格というか気品というか。
トリなのに楽屋一番ノリ。気持ちがいい人である。
とにかく待ちに待った逸材、おもしろい経験を一番してきている人でもある。これが落語のおもしろさに直結するのは真打になる頃なのだろうが、こういった「器」が、落語という「器」に入ろうとして、でもなかなかすんなりおさまらなくて、ゴツゴツしている感じは、二つ目のころにしか味わえない。
最初から現段階での完成など見たくない。ひたすらスケールの大きさを感じさせ、未来への期待を感じさせてくれるだけで充分だ。
「芝居の喧嘩」、人(ニン)にあった噺! はじめて鯉斗さんを生で聴いたときのネタも「芝居の喧嘩」だった。惚れたやつですよ。
正直言ってお客さんのなかには、途中なにが起こっているのかわからない、という意見や、そもそもなにを言っているのかよく聞き取れない、なんて意見もあったけれど、そこもご愛嬌。いいの! もうそういうの全部ひっくるめて、いいの! わかんなくて。
ちなみに、「芝居の喧嘩」、昼に松之丞さんのネタ候補にもあがっていた。これは、羽光さんが古典をやったことで不採用になったのが、羽光さんの余波がこんなところにまで! 結果、鯉斗さんに「芝居の喧嘩」がまわってきたというわけである。
私がこの人を評価したい点は、
・楽しそうにしゃべっているところ
・お客さんの反応をあまり気にしないところ
・小噺が好きなところ
である。
で、オプションで「かっこよさ」と「おもしろい経歴」である。
若手はどうしても反応を気にし過ぎる。けれども、そんなの気にしないでニコニコしていれば、幸せな気持ちになって笑うんだよ。で、鯉斗さんは若手には珍しく、談志師匠的な「小噺」、しかもブラックなものを好んでやっている。これはひとつ大きい可能性を感じさせる。
いま全力でそれやっている人いないから。どうしても小噺は照れるし、ウケなかったときの処理の仕方を間違うと大変なことになるからだ。
「やりたいようにやってください」、それだけ伝えた。そして、高座をつとめてくれた。この日に立ち会ったお客さんがいた。
それだけで充分だ。

見どころたっぷりな異常な回でした。

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「渋谷らくご」2015年2月14日公演 感想まとめ


タツオ
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「渋谷らくご」(#シブラク)2月14日 14-16時 レビュー 三遊亭夢吉/笑福亭羽光/神田松之丞/入船亭扇辰 #rakugo
「渋谷らくご」20152月公演
▼二日目 214 14:00-16:00「渋谷らくご」
三笑亭夢吉-身投げや
笑福亭羽光-はてなの茶碗
神田松之丞-桑原さん
入船亭扇辰-
徂徠豆腐

見どころ解説(渋谷らくご公式読み物「どがちゃが」より抜粋)

 松之丞さんを三番目に出すのには理由がある。トリの前は寄席では「ヒザ」と呼ばれ、最後の人がやりやすい空気を作る非常に器用な落語家か、色物の芸人が出るのが通例だ。爆笑させすぎるとトリを食ってしまう可能性があるし、さりとて落ち着きすぎるとせっかくそれまでに作った流れが消えてしまう。しかし、「渋谷らくご」に「流れ」はあっても「予定調和」はない。
 松之丞さんは、創作、古典、両方の講談を操る講釈師。しかも素しゃべり、まくらも絶品と来ている。若手のなかでは群を抜いて口跡鮮やかで、とにかく読み(講談は 読む という)がうまい! それでいてネタのチョイスも面白い。芸人は、ネタの内容以前に、「ネタ選び」で才能が出る。それはどれだけ空気を読めるか、ということに直結しているからだ。12月の「渋谷らくご」では、討ち入りの日に創作をやるなど、決して「自分が気持ちよくなる」ためにネタをやる人ではないことに私は感動した。「次も観たい!」と思わせるだけの自己主張をしっかりしたうえで、会場を沸かせると、トリの師匠はマクラをふることなく噺にスッと入れるようになる。しっかり古典の世界へと誘えば、トリの師匠は負けじと熱演する。
 さて、本日はどうか。夢吉さんは実力も認められている若手筆頭の成長株。下衆な羽光さんは笑わせるためならなんでもやる。そんななかで、その勢いを落ち着かせるか、つないで倍増させるのか。トリは当代随一の古典の鬼、扇辰師匠! 松之丞さんがネタを置きにいったら(無難に繋いだら)、印象なんて吹き飛ぶくらい強烈な落語を演じる師匠である。
 前には笑いの鬼、後ろにも古典の鬼、さて、どうするんだ松之丞!? どこまで連れていってくれるんだ!? 
 バレンタインの一切関係ない男たちの戦いを見届けてほしい。「戦い」の回。


「渋谷らくご」2月公演としては、松之丞さん二連戦の二日目であり、トリの扇辰師匠への期待感もあってか、土曜の午後の入りとしては「渋谷らくご」記録を更新した(ごめんなさい、動員がまだまだ苦戦しているもので)。ありがたい。



夢吉さんはこの日の夜、新宿末広亭での二つ目勉強会「深夜寄席」を卒業する。その日の昼の公演が「渋谷らくご」。
真打目前である。
このあたりまでくると技術は安定しているので、お客さんを笑わせつつ自分の「型」へと誘うすべも知っている。
聴き応えのある高座「身投げや」。
この噺を聴くと、有名な演目である「文七元結」の裏バージョンとも受け取れる。
「文七」は、娘を売って得た50両を、帰りぎわに、浅草の吾妻橋で身投げをしようとしていた文七を助けるために、名も名乗らずあげてしまう話だ。が、この「身投げや」というネタを聴くと、「身投げ」という商売があって、しかも彼らは「吾妻橋は人が多すぎる」と言っていることから考えると、文七の舞台は人通りも少なくなった夜、もしかしたら身投げやかもしれない人に、50両あげたかもしれない、ということを当時に人は聴きながら考えたのかもしれない。そういった予知不安があって聴いていると、「文七」のラストのファンタジー具合も引き立つから、そのカタルシスはハンパなものではなかっただろう。
そんな、江戸時代の人々の生活感もにじみでてくる楽しい高座。この噺がなぜ存在し、残っているのか、そういったことを考えるだけでも楽しい。
真打になってからも、出演してくれるとうれしいな。



過去2回の出演とも「まくら王」という、まくらだけをしゃべる公演だった羽光さん。
「落語もやりたい」という気持ちをストレートに伝えてくださったため、「渋谷らくご」に出演してもらった。
こういうまっすぐな気持ちには極力応えたい。そもそも私はこの人の落語、すきだ。
なにをしてでも笑わせようというサービス精神と、とはいえ落語を愛する気持ち、まさに笑福亭の名に恥じぬ「はてなの茶碗」。
茶金さんという目利きが「はてな」と首をかしげたことで、茶店の湯のみすら価値があると思わせた、「価値」に関する話。
その湯呑みをなかば強奪して茶金のところに買い取らせるという、えげつない大阪人と、舞台の京都。
こちらの価値観だといっしょくたにしてしまう京都と大阪というコントラストが、この噺にはある。
でいて、羽光さんの油屋は、商売人としての大阪人と、人情味のある大阪人とか同居する、にくめないかわいらしさがある。
これは素敵! 悪い人ではないことが、聴く者の気持ちを温めていく。
これに茶金などの年寄りたちが、演者が歳をとるごとに凄みを増していく噺なので、将来楽しみな一席だ。
二つ目のこういう志を観てもらいたいのが「渋谷らくご」だ。


(写真は13日のもの)

松之丞さん。
前日は古典でありながら、会場もニコ生視聴者も沸かせたが、この日はどうか。
予想では、羽光が創作を披露する、ということはその流れで扇辰師匠に繋ぐには、小気味のいい古典、というのがベストチョイスかな、と思っていたところに、観客としては嬉しい誤算、羽光さんが古典を演じたものだから、
松之丞さんはその葛藤をそのまま高座で口にして客席を沸かせながら、創作でこの日の観客と対峙した。
「桑原さん」、その名の通りの人物のエピソード集なのであるが、そこを創作でアレンジ。会話で「桑原さん」という人物のエピソードをつむぎ、舞台を田舎町とすることだけで、シンプルに可笑しいものに仕上げる。この人の力量をうかがわせる。
複雑なことはせず、みやすく、印象に残す。それでいてやっつけでなく全力で挑む。そうすると、お客さんは彼のことを忘れないほどの印象をもつ。
「あれ? これ落語じゃね? と思わないように。私がやればそれは講談です」と豪語する思い切りのよさも、講談を背負う気概をそのまま出していてくれて嬉しい。
衰退しつつある芸能だからこそ謙遜はしてほしくない。若さの躍動と自信をみなぎらせてほしい。少なくとも、いまの時代の観客に、謙遜は「観て損した」と思わせてしまう確率のほうが高い。それを知ってか知らずか、この人はそんな私の願望をことごとく叶えてくれる。
山陽再来、そして山陽越え。「松の山越え」である。この人にかける期待は日に日にますばかりだ。

ちなみに。細かいことではあるが。私はこの人がメガネをして高座にあがり、着座したところでメガネをはずして一席はじめるのが、いわく言い難い色っぽさを感じる。
目が悪い、けれどもコンタクトはかけない。高座まではメガネをして、着座したらすぐにはずす。つまり。視界的には客席はボヤっとした感じで一席やっていることになる。この一瞬に、「現代人」から「講釈師」へと変貌する。そのスイッチのように。むしろ現代人は世を忍ぶ仮の姿で、誠の正体は講釈師!という雰囲気だ。どうでもいいね、こういうことは。ごめんなさい。だって芸人は最初に語りはじめるまでで、ほぼカタはついているもんだから。



こうなるとトリの扇辰師匠は、三人の二つ目のガッツを一身に受け止め、古典「徂徠豆腐」。
当たり前のように絶品! すごすぎた。
この師匠は純米大吟醸である。だれでもがこの師匠の凄さを即座に理解できるのではないだろうか。
苦学をするも施しを受けない浪人。そんな浪人に、一日一丁の豆腐を届ける豆腐屋。
ふたりがお互いを尊敬し感謝するこころ、この「情」こそ、私たち日本人が忘れたくない、落語のなかにある魂だ。
「情」。説教くさいことをなにひとつ言わず、ただ人の気持ちと気持ちが共鳴しているシーンで、私は涙するのだ。
金も払えず一日一丁の豆腐をツケで手に入れて、これだけで一日をしのぐ貧乏な浪人。醤油も、塩も、もう買う金がない。
そんな浪人のところに、今日も払いがないことを予感しつつ、悪い気ひとつ起こさず豆腐を届け続ける豆腐屋。
ツケがたまったところで、はじめてらしい会話をすれば、豆腐屋は「えらい!えらい!」と言ってまったく咎める様子もない。
命より大切なものがある人間のプライドと、商売はさておきそれに共鳴する豆腐屋。彼らは住む世界も、生きてきた環境も、職業観すらちがうはずなのに、それでも「心」が繋がるのだ。見返りを求めない豆腐屋の心意気は、江戸らしい噺でもある。
笑いながら泣けるのだから、最高の経験。
この「徂徠豆腐」の余韻だけで一ヶ月は生きていける。
そんなことが毎月続いている。
だれがなんといおうと私はこの師匠が好き。たまんない! 
言葉はいらない。扇辰を聴け! それだけである。

まるで4本の映画を観たような充実感を持って、扇辰師匠のサゲを迎えた。時間はちょうど16時。
濃密な時間を操作する演者さんたちにただただ感服である。

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「渋谷らくご」2015年2月14日公演 感想まとめ


タツオ
 
posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 15:31 | comments(0) | trackbacks(0) |-