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【東北芸術工科大学に勤めることになりました】

今日放送のTBSラジオ「東京ポッド許可局」でほんのり触れましたが

この2023年の4月から 山形県にある東北芸術工科大学に勤めることになりました。

文芸学科です。ひとまず数年です。

 

これまで非常勤講師として都内の大学で教壇に立っていましたが

今回は常勤で、公募に出して採用してもらいました。

いわゆる客員(非常勤)や、特任(期限付き)ではないです。このへんのことは、大学関係者以外には違いがよくわからないと思いますが、知りたい人は検索すればすぐわかります。一般企業でいう社員みたいなものです。


授業期間のある火曜、水曜、木曜は山形で過ごします。

宿舎もあるので安心です。

 

ランドマークとなる三角形の入り口校舎と、池に浮かぶ剥き出しの能舞台


とにかく芸術大学おもしろそうだったんですよね。

これまでも東北芸術工科大学(略して芸工大)の「文芸ラジオ」など、文芸学科で出版している雑誌に都度インタビューしてもらうなど、 関わりはあったのですが、

通常の学部での研究とかとちがって、

「研究」と「実践」の両輪で「作品」という形にしていく学修スタイルがとても本来的だなと思いました。

入ってみないとわからないですが、

これまで模擬授業や面接、卒展などに赴き、 雰囲気良さそうな大学だなと思いました。

 

なにそれ環境激変じゃん、芸人活動続けられるの? と思うかもしれませんが、

これまで複数の大学で非常勤をやってていて、寄席にも出ていたので、 大きく環境は変わりません。むしろ延長線上です。

 

私のように作文の添削、日本語教育などをやっていた立場からすると、

授業前の準備にとても時間がかかり、荷物が多く移動も大変な非常勤の掛け持ちをするよりも、

常勤で宿舎もある場所で、研究室を持ち授業ができるのは、とても助かります。

移住とかではないです。宿舎あるのはありがたし。

 

マジで作文教育たいへんなんすよ。

大学行って決まった内容とか知ってることわかりやすく喋る、みたいなスタイルではないので。担当する人数によってはホントに一日仕事になっちゃうんです。添削鬱になる人もいるくらいで。

 

往復の移動も、新幹線座れるし、書評する本読んだりアニメ観れたりするので、思っていたよりも快適かもしれません。

あと意外と山形近い。行きやすい。東京から直通新幹線もあるし、仙台から大学まで高速バスあるし。

 

これまで都内の大学の公募に出したりしたこともあって、何度か模擬授業や面接もしてもらいましたが、

とにかく私のような「異分子」を採用するにはどこの大学としても勇気がいるようで、

面接にまでいっているのに面接側で積極派と消極派にわかれているのがよくわかりました。

たしかにこんな怪しい、

テレビでもあまり見たこともない芸人がきたら、

問題を起こされるかもしれないし、

授業放棄されたらどうしようと思うのも無理ないです。

 

こういうとき、知っている人は知っているけど知らない人はとことん知らないという私のような存在は弱いっす。

それも縁っちゃ縁でしょう。

あと勇気が持てる大学じゃないとこれからの日本の大学は生き残れないかもしれないです。

いろんな大学で非常勤やってきてなんとなくそう感じています。

 

東北芸術工科大学では、屋号を使っても良いということだったので、

面白そうなのでこのままサンキュータツオでいくことにしました。

芸術大学では、現役のデザイナーさんやクリエイターの先生方がたくさんいらっしゃるので、

このようなフレキシブルなスタイルが普通なのも楽しそうです。話がはやい。

おなじ文芸学科にはトミヤマユキコさんもいるので、

オールカタカナの名前の日本人の先生が複数いるというナゾ学科ですね。

 

したがってゼミの名前もそのまま「タツオゼミ」です。

初年度は7人のゼミ生を受け持つということです。

行ったらいきなり3人とかになっているかもしれませんが。

お笑い研究する人とかもいるかもしれません。

私の専門は、笑いの文体論なのです。


早稲田で中村先生のゼミに拾ってもらって以降、

数年でもどこかで自分も恩返しとしてだれかを育てないといけないなとは

育ててもらった立場としてうっすら思っていました。

 

心残りなのは、15年務めた一橋大学の非常勤です。

一橋は素晴らしい大学でした。

こんな私を使い続けてくれて、留学生たちもみんなやる気に満ち、

大変だったけど、この大学で講師経験を積めたことは本当に幸せでした。クビにもせず、機会を与え続けてくれました。

国立駅に行かなくなるのがマジでさびしい。思い出がありすぎます。

忘れられない学生ばかりです。

もし生活のリズムをつかめたらもう一度。


 

とにかくコロナ禍に入って、

寄席芸人と非常勤講師という生活では

週5でバイト入ったほうが生きていけるぞ

ということに気づき、

どうやったら寄席芸人を続けられるかなと考えたんですよね。

『東京ポッド許可局』と「渋谷らくご」も、どうやったら続けられるかなと考えました。


専任という選択肢を考えたのは、成城大学で日本人クラスの初年次教育の授業を担当させてもらい、

めきめきと成長する学生たちの姿を見て、

でも非常勤切りというバカげた法で、ただでさえ不安定な非常勤が5年で切られるので、いろいろ空しくなったときからなんですよね。

 

とにかく有名になりたいとか、むちゃくちゃテレビ出まくりたいとかはなく、

そりゃおもしろい芸人としてメディア出られればそれに越したことはないんですけど、

いまの文脈だと米粒写経という独自路線芸人をフィットさせるのは、

よほど素敵なプロデューサーさんとの出会いがなければ無理っぽいし、

コンテストの価値観にはフィットしてないし、

ってことで、

やはり板の上に立って、とにかく漫才に集中したいなと思ったわけです。

 

その環境を整えるためにも、寄席に立ち続ける道を模索した結果ということです。

いつまで続くかわかりませんが。

最初に伝えて、理解してくれた相方の居島さんには感謝しかありません。どこまでもカッコいい男なのです。漫才これからもがんばります。

 

というわけで、火水木を山形、金土日月を東京で過ごします。

もちろん夏休みとかはずっと東京なので、

機会を与えていただければ寄席にも出続けます。

(お席亭さんから出演の機会を与えられないと、ヒマでも出られないのです。これは芸人として当たり前のことなので、使ってもらえるよう今後も努力します)。

 

例大祭も続けます。

米粒写経の談話室もあります。

「渋谷らくご」は第二金曜から5日間です。火曜は戻れるときは戻ります。

 

TBSラジオ『東京ポッド許可局』も月曜収録だし、4月からはじまるNHKラジオ『国語辞典サーフィン』も東京で収録です。ライフワークである、畑亜貴さんとのYouTubeラジオ『感情言語化研究所』も収録です。

ポッドキャスト『渋谷らくご まくら』と『熱量と文字数』は日本どこでも収録可能て

なんなら山形でラジオやりたいくらいっす。

 

人生の残り時間を考えた時、

これまでの専門と教育、米粒写経の漫才のことをシンプルに考える環境を作れればと思ったのもあります。

 

とはいえ、単純にいってしまえば「おもしろいほう」に振ったって感じです。

むちゃくちゃ生き方変わるってわけではないのですが。

 

詳しいところは、

4月10日の「米粒写経 談話室」(米粒写経Youtube)で少しお話できればと思います。

 

今日はこれから博多百年蔵で林家きく麿師匠との会

後半は「米粒写経 芸人探訪」の公開収録です。

 

タツオ

posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 10:12 | comments(8) | - |-
【電子書籍『yomyom』連載 はじまりました】

電子書籍ですが、

新潮社『yomyom』という雑誌で連載はじめました。

61号、2020年4月号。

 

 

期限つきの連載で、3ヶ月に一度の掲載。

分量は6000〜8000字ということで、

私にしてはけっこうな文字数です。

しんどいです。

 

でも、現在いろいろ考えていることを、

なんとなくでも言語化するいい機会だと思って

覚悟を決めて書きました。

 

円城塔さん、トミヤマユキコさんとの交互連載で

「世界のαに関するカルチャー時評」

というコーナーらしいです。

 

ですので、季刊連載ということになるのでしょうか。

 

初回は、

「失った感覚と手に入れた感覚、

 私たちはいつだって諦めず漸近線上」

というコラムを書きました。

 

友人の山下陽光が、最近「20代の男の子で、エロ本でオナニーしたことがないって人が居た」という話をしていたのですが、まさにそんなことを考えていたので、ビタッときました。

そんなコラムです。

 

タツオ

 

posted by: サンキュータツオ | 書き物 | 00:58 | comments(3) | - |-
【『柳家花緑 特選まくら集 多弁症のおかげです!』あとがき担当】

『柳家花緑 特選まくら集 多弁症のおかげです!』竹書房文庫

 

2020/03/26に発売になりました、

花緑師匠の文庫、そのあとがきを!

 

なんとタツオが書きました。

畏れ多いよ!

 

 

ゲラ段階で拝読しましたが、

めちゃくちゃ面白い!

これは、話が面白いのもあるんだけど、

花緑師匠の面白さなんですよ。

 

 

タイトルだけで読みたいのでてくるでしょう。

 

花緑師匠は、「努力を努力とも思っていない努力の人」つまり、天才だと思っています。

弟子の緑太さんが、入門前に師匠をはじめてみたとき「師匠が光ってみえた」とおっしゃっていたのですが、

その理由がわかります。

 

この師匠は、眩しいです。

 

想いの丈を、書かせてもらいました。

納期一週間とかでビックリしましたけど、死ぬ気で書かせてもらいました。

普段はこういう納期では受けませんので、編集者の方々、私には頼まないように。

締切が怖いのです。

 

「渋谷らくご」の花緑師匠、すごくいいのだ!

これまでの落語の文脈を知らない人に、どれだけこの師匠がぶつかっていくのか。

そのドキュメントがほんとに見ごたえあるんです。

花緑師匠は進化し続けてます。そこが楽しい。幸せになります。

 

桃李もの言わざれど下自ら蹊を成す

といいますが、この師匠の場合は、

桃李もの言いまくり下自ら蹊を成す

ですね。

 

タツオ

posted by: サンキュータツオ | 書き物 | 00:44 | comments(0) | - |-
【月刊会報誌「スカパー!と暮らす」 レコメンドコーナー連載】

月刊会報誌「スカパー!と暮らす」レコメンドコーナー

 

アニメ担当として3ヶ月に一度、スカパー!で観られるアニメの見どころをご紹介しています。

 

 

こんな感じです。

 

 

編集者の方やまとめてくださっている方も、アニメ詳しくない方なので新鮮。

そういう方に聞き手になってもらえるというのは本当にありがたいですね。

 

読んだ人のなかで、一人でも印象に残ってくれている人がいたら、嬉しいな。

 

タツオ

 

 

posted by: サンキュータツオ | 書き物 | 01:39 | comments(0) | - |-
【『早稲田文学』笑い特集 インタビュー掲載】

『早稲田文学 増刊号 「笑い」はどこからくるのか?』

にてインタビューを受けたものが掲載されております。

ありがたいことに巻頭です。

 

 

こちらの様子は、早稲田文学2020年春号 にも転載されています。

 

1995年に早稲田大学に入学し、

平岡篤頼先生にすすめられる形ではじめた早稲田文学の学生編集委員。

私は、年が明ける頃には学生編集郷で「笑い」の特集をしていました。

こないだまで高校生だったのに。

そこから四半世紀たつとインタビューされるっていうストーリーができちゃうんですね。不思議です。

学術的にも職業的にも専門でもあるので、光栄なことです。

 

 

えらそうだね。生意気な。平岡先生には見せられないですね。江中先生が見たら発狂するねたぶん。

 

当時は泣きながら大日本印刷に自転車で入稿しにいったり再校ゲラ届けに行ったりしていた。

向井豊昭さんが新人賞を受賞した頃です。

 

古今亭右朝師匠、当時二つ目の柳家喬太郎師匠、立川志らく師匠、ピン芸人の清水宏さん、落語王の渡辺敏正さんにインタビューをしにいったことは私の財産です。

 

当時は携帯電話もなく、待ち合わせ場所を間違えたり、連絡が取れなかったりして、清水宏さんを激おこさせました。これがキッカケでこんな恐ろしいことは人生で二度とないと思えるようになったのでした。いやあ、何度も会うたびに、清水さんにはいまだに頭が上がらないのです。

 

読んでください。普段どういうことを考えているかわかるものです。

 

タツオ

posted by: サンキュータツオ | 書き物 | 01:30 | comments(0) | - |-
【今年の『M-1グランプリ』は上沼恵美子が優勝】 #tokyopod

TBSラジオ『東京ポッド許可局』に手塚とおるさんが来てくださったときに、けしかけられて見出した今年のM-1、

いろいろとメモったのだけれど吐き出し口がないやと思っていたら、そういえば半年以上放置しているブログがあった。

米粒写経の例大祭の御礼と、地方公演の告知もかねようと思って、久しぶりに更新しようとしたら、すっかりログインの暗証番号みたいなものまで忘れてしまっていた。更新したらしたで原稿を待たせてしまっている人たちにも怒られる。これが私がブログをずっと後進していなかった理由です。

 

◆『M-1グランプリ2019』のコンセプトは「自然な掛け合い(会話)」であった

 

第一期のM-1グランプリが2004年に大きく動いた(南海キャンディーズ、POISON GIRL BAND、千鳥、タカアンドトシ、トータルテンボス、東京ダイナマイト)のと同様に、

第二期のM-1は今年動いたのは、3回戦から準々決勝に残ったメンバー、そして準決勝のメンバーを見れば明らかだった。

今年の中盤に発売されたナイツ塙宜之さんの『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』では、第二期M-1が決勝15年以内の規定になった結果、ウマイ人大会になってしまったことに触れていたが(この本は朝日新聞の書評欄で紹介しました)、

そのことの影響も少しはあったのじゃないかと思えるほどに、決勝に残したメンバーはこれまでの保守本流路線とは別で、

「次の日にもどんなネタやったかだいたい覚えていられる」人たちだった。

 

個人的に注目していた後輩のキュウ(タイタン所属になりました)が満を持して挑んだにも関わらず、かなりウケて3回戦止まりだったこともあって、「今年は、掛け合い重視なんだな」と予感した。いかにも自然な会話ななかで笑いを取りに行く「活きた会話」。

方言だろうが、肯定したツッコミであろうが、ちゃんとキャラクターにウソがなく地に足のついた会話。コント的ではなく、その人たちが「台本を読んでいる」感じのない、普段からしゃべっていそうな会話。そんななかでも、ツッコミが「なんでだよ」系ではない、ひねりのあるもの。そういうコンビが結成10年以内にもゴロゴロいた。

なにより和牛を決勝に残さなかったのは、大会のそういうコンセプトを反映していたかもしれない。

 

ミルクボーイも、かまいたちも、気付いたら自然とネタに入っていた。じゃれ合いから生まれる笑いが、次第に「形」として反復され、計算された会話であることに気付いたときには次の展開に入っている。そういう漫才を良しとした。

「自然主義」的な漫才だ。

変なことを言うやつに「なんでだよ!」とか吠える様式を「ロマン主義」(お笑いご都合主義)とするなら、「自然主義」なんだよね。

 

GYAO!で見た決勝進出メンバーの3回戦のネタを見るにつけ、この課題がクリアできていて、きちんとインパクトも残せていたのは、ミルクボーイ、オズワルド、ぺこぱかなと思った。

からし蓮根は、ツッコミが活きているがボケの表現力がどうしても足りない。硬く見えてしまうが、そういった初々しさも悪くなかった。しかしかまいたちの自然さには勝てない。あとは敗者復活は実質人気投票なので、過去に決勝進出した人が露出が多いので有利に決まっている。ということは8割和牛といったところ。そうなるとあとはどの順番で和牛ないしそれに準じる人気者が出るかで展開が左右される。

 

実際に決勝のフタをあけてみれば、前半にかまいたちと和牛の直接対決が用意され、後半に注目のミルクボーイ、オズワルド、ぺこぱが固まった。

結果はご存じの通りであるが、オズワルドの点数が低かったのは解せない。彼らは決してシュールではなかったはずだ。だれもが理解できるスピードと展開で、単に「引き芸」だっただけだ。押しつけがましく笑いを取りにいくのではなく、ただ自然にゆったりと会話をする。苛立ちも隠さなかったし、声を張ったツッコミもした。予想の少し先を行く気の利いた言葉選びで、ツッコミでも笑わせてくれたし、声も良かった。どこがシュールなのだろう。

これは、「この人たちこれからなに言うんだろう」とお客さんを集中させる技術のひとつであり、前のめりなお客さんにはもっとも有効な芸風だ。しかし、大阪の審査員はともかく塙さんまでもが彼らに辛い点数をつけるのは、いくらなんでも大会に染まり過ぎだろう。あるいは、こういう「してやったり」的な芸風がそもそも好みではないのかもしれない。

しかし、M-1はトレンドを先取りする役目もある。多様性をいまから否定してしまうとこの先のお笑いの未来まで潰してしまいかねない。この手のスタイルの挑戦する人たちがいなくなる。コントや落語のほうがこういうネタをやりたい人たちがきちんと実現してしまっているのが悔しい!

私は決して好みで言っているのではない。すゑひろがりずを「古典の人たち」と一段上に置いて評価してみるのに、「引き芸」は下に見るというのは、固定観念で見過ぎではないだろうか。

私は今回、拍手が起こるほどの大きな笑い、会場がひとつになった笑いと、半分くらいの観客が笑った数を、計測した。

ミルクボーイが大16と中14で、特に序盤からピークがきてそのまま維持されたのは、まさに歴代最多得点も納得の出来だった。

しかしCMをはさんだ直後のオズワルドも、大11の中13と、少なくなかった(みなさんも、印象批評や好みで論じるのではなく、客観的な事象で論じてみてはいかがでしょうか)。むしろこの芸風での最終形態かもしれない。のきなみ90点台を出していたほかのコンビとおなじか、むしろ少し多いくらいである。

結成5年目というキャリアで評価するわけではないが、15年目と5年目を同列で扱ってこの仕打ちはどうだったんだろう。

そこまで尖っていない、だれでも楽しめる「引き芸」だったのだが、「引き芸」に対するアレルギーが国民的にすごいのだとしたら、「漫才とは普通こういうものだろう」という先入観でしか漫才を観ていないことになる。それはあまりにもったいない。

今年は「多様性」の年だった。

グルーヴを生み出し、バイブスは大事な要素だが、その発生のさせ方を狭めるのはもったいない。オズワルドはたしかに会話をしていた。掛け合っていた。「からし蓮根」よりキャリアが浅く、ミルクボーイの後に出てあれだけ堂々とやりきったのに、80点台をつけるのは少し厳しすぎではないだろうか。

そこが唯一の不満といえば不満。全体的には面白かったよね。ただ、長くておじさん疲れちゃった。

 

◆「審査員」に文句を言う人はM-1真面目に見過ぎ

 

この大会を真面目に観ている人のモノマネをプチ鹿島さんがしていて、これが面白くてしょうがないのだけれど、

今回それを思い知ったのが、審査員のコメントに「長い」とか「しつこい」とか「間延びする」とか言っている人たちが本当に多いということだ。

いや、松本さんが「ツッコミが笑うのはちょっと…」のあとの、「ツッコミが怖すぎた」は明らかなボケなのだが、それが伝わっていないってどういうことだろうか。

審査員たちも芸人さんなんだよね。しかもボケ側の人たちが多くて、ふられたら一言いいますよ。

でも観客もお茶の間もひいちゃったら、もうみんな真面目なコメントするしかなくなる。こういう観客はオンエアバトルでも見てればいいのでは。真面目に見ちゃうと、お笑いは萎縮するんだよ。大目に見ようよそこは。

でもそんな大会だれが見たいんだろう。NHKじゃあるまいし、そもそも点数化しているから公平っぽく見えているけど、公平ではないわけだし、お笑い番組なんだからおおらかに見てもいい。

ネタを見るのは集中力がいるぶん、疲れる。だから合間合間に息抜きの時間をとる。あとは尺調整もする。すべて司会の裁量で、ふられた審査員はマトモなことと、ボケ織り交ぜて、バラエティ番組であることをなんとか保とうとする。

でも、あそこでボケられる人は日本にはもうあまりいない。

松本さんや塙さんがボケても受身が取れないのでは、こわくてなにも言えないわけですよ。

そこに風穴を空けたのが、上沼恵美子さんです!!

からし蓮根を贔屓して、和牛をディスるって、これ生活笑百科とかでさんざん見た「若い男の子に甘い」上沼さんそのまんまなのに、なんかスベッたみたいになっている。司会もフォローしきれない。そうなると、上沼さんは寄り切るしかない。力技でねじ伏せてくれたわけである。会場は笑いに包まれた。こうしてM-1はなんとかバラエティ番組である体裁を守れたわけですけど、

あそこ上沼さん抜けたらどうするのだろう。

オール巨人師匠はもう来年出ないと宣言している。

冨澤さんはコメントも天才的な空気の読み具合で、パーフェクトな仕事ぶりだった。

上沼恵美子さんのコメントぶりは本当に見ごたえあった。だってガチなんだもん!生活笑百科みたいに台本めくったりしてなかったし!

あれこそ漫才師なんだよなあ。

各個人の点数にああだこうだ言うのはいいけど、仕事と役割を全うしているコメントに文句を言うのは筋違いだと思うわけです。

 

というわけで、ミルクボーイさんの、

 

「うちのおかんが好きなxがわからない」

→ヒント

→Aだろう

→おかんが言うにはZ

→ならAじゃないか Aはa1

 

→ヒント2

→Aだろう Aはa2みたいなところもある

→それがおかんが言うのはY

→ならAじゃないか Aはa3

 

というブロックの繰り返しが、雪だるま式にグルーヴを生み出したのは言うまでもない。

ちなみに、2本目の「モナカ」のネタは、

お菓子の家系図という概念も導入して、

配列に必然性を与えた(つまり縦の関係にも必然性を持たせた)ので、

2本目として最高の出来だったと思う。

 

それでも、毎年ちょっとずつ変えてきても完成度を保ったかまいたち、

あるいはもっとも自然な会話で笑いに繋げたかまいたちを評価したのが、松本さんだったのかもしれません。

 

ぺこぱも素晴らしかった。一番マネしやすくて流行るのは彼らかもしれない。

ツッコミをセンテンスで分解して、A(直感的なツッコミ)+B(思考したツッコミ)の形にした。

「さっきとおなじボケ」+「じゃない」がもっとも端的だった。

Bの部分には「という時代がすぐそこにきている」「のは俺かもしれない」「がいたっていい、だれも悪くない」みたいに変化させた。ちなみに、「言及の相手」で分類すると、Aは「相方」、Bは「観客」である。

彼らだけは「ロマン主義」でも「自然主義」でもない「新感覚派」だ。

 

いじられていたボケのキャラだけど、来年は毎月キャラを変えるとか、そういう遊びをしてもいい。

ネタ番組出るたびにキャラ変わってるとか。

それをしたらツッコミの汎用性がより証明される。

 

もし、松陰寺さんにツッコミをさせるならば、

「今年のM-1は審査員の上沼恵美子 が優勝でいい。そういう大会の形があっても僕はいいんだ。みんな、ありがとう」

というところだ。

 

手塚とおる局員、納得してくれたかなあ。

今日のNHKラジオ『すっぴん!』でも「漫才文体論」でミルクボーイをコピーしたネタをやりましたので、らじる★らじるで聴いてみてください。

そして今日24時からのTBSラジオ『東京ポッド許可局』で、みんなでワイワイモードです。

 

こういうことを書くと、「お前のネタはどうなんだ」と鬼の首とったようなこと言う人いるんですけど、そういう議論は10年くらい前に片付いているので、私のところにはコメントしないでください。

 

M-1メモ

・太鼓という小道具の使用はOKだったようだ。

・「腹違い」はOKだったのだろうか。

・最終決戦の笑い ぺこぱ 大9 中9、かまいたち 大10 中10、ミルクボーイ 大12 中17

  ※計測は手動なので、20人くらいでやって平均値をとるのが一番いい。

 

 

posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 00:10 | comments(0) | - |-
【竹宮惠子『少年の名はジルベール』小学館文庫 あとがき】

ブログ更新久しぶりなので、ちょろちょろ最近の仕事を紹介します。

 

昨年一番ブチあがった仕事のひとつは、

竹宮惠子先生の『少年の名はジルベール』の文庫版あとがきを書いたことです。

 

『風と木の詩』の!

『地球へ…』の!

『ファラオの墓』の!

 

私の家には当たり前のようにあった名作の数々を残してくださった竹宮先生は、

『俺たちのBL論』(文庫では「ボクたちのBL論」)の私にとってはまさにいろいろな意味で

いろいろなことを教えてくださった先生です。

 

 

そんな先生の自伝、これは単行本が出版された時点で拝読して感激、

思わずラジオ『東京ポッド許可局』でも紹介したわけですけれど、

文庫化にあたってあとがきを書かせてもらう機会を得ました。

感無量です。

 

この本のことは、「あとがき」にすべて書いてありますので、

どうぞお買い求めください。損はしないです。

 

そして!

 

 

幸せのおすそ分けですが、

竹宮先生から直筆のメッセージとサイン、そしてジルベール…

死ぬかと思いました。

 

生きてて良かった。

 

2019年11月に発売された文庫ですが、3ヶ月くらいカバンにいれており、

だれかれ構わず(といっても、限られていますが)自慢しておりました。

三浦さんと雲田さんに自慢できた、私の数少ない仕事です!

 

少々踏み込んだ内容だったかもしれず。

掲載を許可してくださった竹宮先生、

本当にありがとうございます!

 

京都精華大学、就職したかったです。

 

タツオ

 

 

posted by: サンキュータツオ | 書き物 | 00:24 | comments(1) | - |-
【『畑亜貴の弱り目に祟られろレディオ 3rdシーズン』開始しました】#たたラジ

『畑亜貴の弱り目に祟られろレディオ』

 

3rdシーズン開始しました。

 

 

作詞家の畑亜貴さんに呼び出されたのは本年開けてすぐ。

すぐに3rdシーズンをやろうということで話がつき、

音楽シーンで言葉や歌詞について語る人や、語る土壌がまだできていない、という問題意識をうかがって、畑さんなりの音楽に対する姿勢や考えを、多くの人に聞いてもらいたいなと思った次第です。

題して「感情言語化研究所」というコーナーが立ち上がったわけです。

 

アニメソングやキャラクターソングを手掛けることの多い畑さんですが、

たしかにアニソンなどを味わう人たちは、作品の世界観だったりキャラクターをより深く知るために、考察などをします。

ですが、作品と曲、という関係も楽しいのですが、曲単体のなかで歌詞の占める役割だったり、そもそも音とコトバのバディー関係に考える指標はあまりないようです。

 

もちろん、従来の「日々のくだらない疑問」もお送りします。

これはお金のためじゃない、畑さんの日々の考えをストレートに知ることができる、音楽ファン必聴の番組になるのではないでしょうか。

ひとまずYoutube、そして今後はnoteなどでの配信もあるようです。

 

初回のゲストは、「たっちレディオ」また、畑さんとプロデュースユニット「Q-MHz」としても活動している、

作曲家の田代智一さん、そして田淵智也さんをお迎えしてしゃべっています。

面白いよ。

 

ますます音声コンテンツ人間になっておりますが、

それが一番合ってるのかもね!

月一配信ですがこちらもよろしく。

 

整理すると、

月曜 NHK『すっぴん!』、TBS『東京ポッド許可局』

水曜『熱量と文字数』(Podcast)

金曜『渋谷らくご まくら』(Podcast)

月一『弱り目に祟られろレディオ』(Youtube)
といった具合です。
個人的には、毎日なにがしかの音声をお届けしたいくらいの感じですが、
オススメのポッドキャストなどもあり、
個人的には毎日なにか聴くものがあって移動が楽しいです。
2019.04
posted by: サンキュータツオ | ラジオ | 23:48 | comments(0) | trackbacks(0) |-
【NHKラジオ第1『すっぴん!』月曜担当になりました】

『すっぴん!』のホームページにも掲載されたので、お知らせです。

NHKラジオ第1『すっぴん!』(平日朝8:30〜11:50)

月曜パーソナリティになりました。

 

ありがたいことですね。

以前、高橋源一郎さんの金曜日にゲストで出演したことはあるのですが、

その際に気にかけて下さり、今回のパーソナリティという流れになったものと思っております。

縁は大事にするものですね。

 

自分なりにできることを精一杯、楽しく、やろうと思っています。

ひたすら「自分が楽しい」を目指して、それを聞く人も楽しくなってもらえればと思います。

 

前任の宮沢章夫さん、

私も大ファンだっただけに複雑な想いですし、おなじように思ってらっしゃる方も多いと思いますけれど、

おなじようなことはできませんが、タツオもタツオでいいじゃないか、と思ってもらえるような放送を心掛けようと思っています。

 

ちなみに、近いところにいるのに、すれ違っている人ってけっこういて、

なかなか現場で一緒にならないとか、話すチャンスがない人っているんですよね。

私の場合は、いとうせいこうさん、武田砂鉄さん、宮沢章夫さんなど、入れ替わりになることが多くて、いつかちゃんとお話できるようなタイミングがあるといいなと思っています(武田さんは一度だけイベントでご一緒しました)。

きっと、時がきたら、ご一緒することもあるのだろうと、希望を持ちながら。

 

初回の放送は4/8(月)です。

朝の番組ですし、気楽な感じで楽しめる内容を目指したいと思います。

ですが、タツオならではの味も出したいと考えているので、一緒に番組を作ってください。ラジオはリスナーとパーソナリティが一緒に作るものですもんね!

よろしくね。

 

藤井彩子さんとご一緒できるのは夢のよう。あの藤井さんですよ!

楽しみ!

 

2019.04

posted by: サンキュータツオ | ラジオ | 00:29 | comments(1) | trackbacks(0) |-
【東谷護 編著『表現と教養』ナカニシヤ出版:寄稿しました】

東谷護 編著『表現と教養 スキル重視ではない初年次教育の探求』ナカニシヤ出版

2019年3月30日に発売されました。

 

第1部第3章「日本語のうち・そと 第二言語としての日本語教育から考える」

と、

第1部第4章の「初年次教育んおける論文の書き方指導を考える 日本語学の有効活用は可能か」

を担当しました。

 

後者は昨年の成城大学でのシンポジウムを文字化したもので、

ゼミの先輩でもある石黒圭さん(国立国語研究所)、飯間浩明さん(三省堂国語辞典編纂者)、そして本書の企画立案者でもある東谷先生と、四人で台風がきた日に行ったものです。強行したんですよね。

でも、全国から大勢の大学の教員の方々がきてくださり、本当に有意義な時間でしたので目を通してもらいたいです。

 

これまで、日本語教育に携わる先生方への指導書的な書籍には、文章表現の授業の組み立て方やカリキュラムの組み方という切り口で、何度か寄稿してきました。

ですが、大学の初年次教育(大学一年生のための、レポートや論文の書き方をはじめとした文章表現)について、間接的にでも関ったのははじめてです。

2017年から、成城大学にて初年次教育の授業を担当していますが、それより前では初年次教育は、半期ずつくらい別の大学で教えていた程度で、とても新鮮な気持ちでここ2年過ごしています。外国人に対する日本語教育とはちがった問題がよこには横たわっており、それは果たして「文章表現」といったコマで扱う問題なのか、あるいはそれ以上の根深い問題があるのか、といったことをずっと考えています。

 

とにかく日本の学生たちは、高校3年までに徹底的に「学校人格」での文章表現を叩きこまれ、大学や試験に「通る」ための大人が喜ぶ文章、そして人格を操ることに長けてしまっている分、むき出しの自分を学校という「場」で表現することに、慣れていないどころか、頑なに抵抗をする人までいます。気持ちはわかります。大人や教員を信用していないからです。それは、18歳までに度重なる「教育」によって身体で理解してしまったことなのです。

 

つまり、外国人留学生(韓国、中国といった受験が熾烈な国は状況が似ているので置いておく)のほうが、表現という「出力」に関しては、ストレートに抵抗なく「自分」を出したり「意見」を述べることができている。なんか、おなじ年齢の学生の文章を読んでみると、スタート地点が違う気がしてならないわけです。

 

 

 

こうした問題意識だったり、単純に文章を書く、という作業をほとんどしていなくても入れてしまう大学が多く存在していたり、そもそもの学習意欲の問題があったりと、けっこう問題は多層的かつ複雑です。

が、ひとまずは目下の現実的な課題である「初年次教育」をどうしたらいんだ、と悩みまくっている現場の先生たちが、シンポジウムにも集結したわけで、そういう方々にとっては有用な情報や考察がふんだんに盛り込まれているのではないかと思います。

谷美奈先生の章とかホントおすすめ。

 

要するに、専門書です。

ファンは手に取る必要はないやつです。

お仕事報告的に記録しておきました。

こういうのけっこうちまちまやってんです。この仕事は自分のなかでは比較的大きいですけど。

 

東谷先生、ありがとうございます。

成城の学生は楽しいです。

 

2019.03 

posted by: サンキュータツオ | - | 01:30 | comments(0) | trackbacks(0) |-