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水城せとな先生のサイン会……

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整理券、間に合わず。
ショックすぎる。

こんな私は、セトナー失格である!

御大は、11/17に登場だそうです。サイン会。

整理券持っているセトナーたちよ、神のサインである!永久保存である!

11.16



posted by: サンキュータツオ | ◇◆水城せとな研究◆◇ | 02:09 | comments(0) | - |-
◇◆水城せとな研究◆◇ FRAU 2011年6月号インタビュー

講談社『FRAU』 2011年6月号 インタビュー

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2011年6月号。
特集「30歳からの恋の教科書」。

水城先生のインタビューが、p80〜p83まで、大ボリューム4ページ。
これは資料的価値の高いインタビューでした。
取材・文責は、門倉紫麻さん。

女子力が高い雑誌において、
『失恋ショコラティエ』に学ぶ大人の恋の実らせ方
という特集。

『失恋ショコラティエ』の
サエコと薫子の対比について。水城流「男と女」哲学に触れることができる貴重なご託宣記録。
おそらく、記者も『失恋ショコラティエ』のファンなのだろう、こういう記事にまとめるとメジャー誌で展開しても違和感がない、というつくりで、紙面デザインも美麗。
生まれてはじめて『FRAU』を購入。

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薫子に対して。

「もし爽太が同じくらいの年だったり、年上だったりしたらだいぶ違うと思うんですけど、7歳下の男の子を追いかける自分なんて痛すぎる、と思っている。男の人のほうから言われたら考えてもいい、とは思っているのです。でも現段階では言われてないのです。『そういう範囲の人じゃない』って思うことで、傷つかずに済むようにしている。心に城壁を築いて、よし守ったぞみたいな(笑)」



こういう30代の女性心理を冷静に把握しつつも、実際の薫子を魅力的に描けるのは、この先生の才能である。落としもしないし、ことさら美化もしない。
これはサエコに対しても同様である。

「『男って、なんでサエコみたいな見え見えな女にだまされるの?』ってどこか見下していますよね。でもサエコさんはそもそも、“男って”という言い方はしません。必ず、“男の人は”と言う。そこに意識が表れているんです。そういう女の子が、男の人にいいなと思われるのは当たり前ですよね。『男ってバカ』と思っていたら、知らず知らず態度に出ますから」



これを読み、私は仮に女だったとしても、モテない側に回っていると確信した。たぶん男をバカにすると思う。
この作家は、どちらにも感情移入しない方法をとる。あるいはそう心がけている。
物語がどういう結末を迎えるかで、解釈も変わってくるかもしれないが、現段階では、そういうフラットな表現姿勢を貫いている。

この作家のプロットが、「どう転がるのかわからない」と思わせる力を持っているのは、このバランス感覚であろう。
登場人物のだれにも感情移入できるように描いているのに、だれにも肩入れをしない描き方。
しかし、伏線は気づかないうちにサラリと描いてあったりする。非常に巧妙に。

このインタビューでは、サエコの家庭環境や、現在の20代30代の女性を取り巻く環境の変化など、社会的側面にも触れておられる。

水城節全開の人間観を垣間見るインタビューであった。
セトナーは読まれたい。


◇◆水城せとな研究◆◇過去記事一覧



2011.08.14

posted by: サンキュータツオ | ◇◆水城せとな研究◆◇ | 05:18 | comments(0) | - |-
◇◆水城せとな研究◆◇ インタビュー『オトナファミ』『anan』『MORE』

水城せとなインタビュー
『オトナファミ』 『anan』 『MORE』


一度追いかけると決めたものはどこまで追いかける。
漫画家・水城せとな先生は、私にとってはそういう存在。数少ない人生の生き甲斐である。

まずは、
▼『オトナファミ』(エンターブレイン)2011年5月号。

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「ときどき読みたい オトナの片思い漫画30選」特集。
p52。
30選のなかの一部なのだが、堂々1ページを割いてインタビュー掲載の破格の扱い。
こちらでは、『失恋ショコラティエ』と『脳内ポイズンベリー』に関する興味深い談話が掲載されている。
文責、不明(未掲載)。

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『脳内ポイズンベリー』について。

「構成としては縦軸が“アラサー女子の紆余曲折の恋愛”、横軸が“脳内会議の密室会話劇”ですが、物語の主題は“誤解はいかにして生まれるか”です。」



『失恋ショコラティエ』、えれなと爽太の関係について。

「都合の良い、ある意味理想的な関係なんですが、それを読者さんが「微笑ましくていいな」と思えたり、同時に「これでいいの?」と疑問も残るような、微妙なラインを心がけています。それと、薫子と関谷の関係はサクサク距離が近づきすぎないように配慮しています。」



などなど。テクニカルな話が引き出されている意味で貴重な資料です。
『黒薔薇アリス』についても同様のインタビューを聴いてみたい。


▼『anan』(マガジンハウス)2011年06月29日号

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「輝く!第2回 ananマンガ大賞」。
p53〜60までの特集のなかで、大賞が『失恋ショコラティエ』ということで、p54にインタビュー掲載。
文責・河野友紀さん。

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『失恋ショコラティエ』の元ネタが、「失恋レストラン」だったことが述べられている。

「「どんな話?」と聞かれたら、「こういう人がこういうことをするマンガだよ」って簡単に説明できるような、オーソドックスな作品にすることを意識しました。そういう間口の広さを持っているものが、いろんな人が読んでくれるマンガなのかも? と思って。でもやっぱりこの作品で初めて私のマンガを読んだという人からは、「何これ、ビックリ!」という反応をたくさん頂いたんですよね。私としては最大限オーソドックスな話を描いているつもりだったので、“まだどっかおかしい!?”と戸惑っています(笑)。」



これを、作家性と言うのだろう。
ここで重要なのは、水城せとなという作家史のなかで、この作品は「最大限オーソドックス」を目指して作られた作品である、ということだ。
このインタビューでは、相思相愛でも人間みな片思い、という水城哲学も健在。
ややこの先の展開に関する話も最後には出てくる。


▼『MORE』(集英社)2011年7月号

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ENTERTAINMENT EXPRESSという、人や映画や音楽や本を紹介するページで、「BOOKS」に『脳内ポイズンベリー』がとりあげられている。
文責・山本圭子さん。

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先生の写真が割と大きく掲載されている。上半身。
この作家は、もしかしたら、なのだが、恋愛をテーマにしたマンガを描いている以上、自らの容姿にも普通の女性以上に気をつけている部分があるかもしれない。女性誌等で取り上げられることを念頭に、その説得力を担保する意味でも、美貌は決してマイナスではない。
一時期著者近影には顔写真も載せず、イラストを載せていた時期があったが、イベント出演、Ustでのトークイベント、『王様のブランチ』出演など以降、顔写真に関しても、女性漫画家には珍しく紙面に掲載している。生年月日に関しても1971年を明記していることから類推するに、少女漫画家としての、なんらかの哲学をもって、表現の幅を広げているように見える。そういう覚悟が感じられる。

「恋愛のパターンってほぼ決まっているのに漫画が面白いのは、心理が細かく描かれているからだと思うんです。」



という発言。
短い記事だが、心理描写に関してのこだわりが垣間見られる。
この作品は、そういう意味ではこの作家の心理描写の巧さがもっともシンプルな形で表現されている作品である。


単行本発売時期と、『失恋ショコラティエ』の注目があってか、この2作品に関するインタビューが主。
やはりどの雑誌も『黒薔薇アリス』に関してはつついていないが、私は聞きたい。
水城せとなのプロット力が存分に発揮されているのは、むしろこの作品だからである。

しかし、先生のインタビューに触れる機会が増えたのは嬉しい限りである。
セトナーはぜひ読まれたい。


◇◆水城せとな研究◆◇過去記事一覧






2011.08.14

posted by: サンキュータツオ | ◇◆水城せとな研究◆◇ | 05:47 | comments(0) | - |-
◇◆水城せとな研究◆◇ 注記:インタビュー各種

水城せとなインタビュー各種

以前読んで感動したもの(コミナタ漫研)も含め、セトナー必見の水城せとな先生言動録。

▼講談社デジキス なかはら★ももた マンガ家よゐよゐ
第11夜 水城せとなとよゐよゐ



やはりこの先生には、文学的自然主義が横溢している。
たとえば、「制服ファンタジー」というものについて。
もし、水城先生がお笑いをなさっていたら、楠木美津香さんっぽいものになるような気がする。
友近さん、柳原可奈子さんも同系統だが、ここは楠木美津香さんです。

▼「コミナタ漫研〜マンガ家に聞く、同業者の気になる仕事」
第2回 水城せとなと、相田裕「GUNSLINGER GIRL」を読む



この記事はすごい。ファン必読。
これは、漫画家さんが、同業者の作品を語るという趣向のもので、いままでなかなかない試み(かどうか正確にはわからないが)、WEB記事としても非常に読みやすく、かつ深い記事。

とくに、第1回森薫→第2回水城せとな→第3回相田裕→末次由紀、という流れがテンションあがりまくり。

水城せとな先生が、あの『GUNSLINGER GIRL』をどう読んでいるか、プロの目線てこういうのなのかと改めて目から鱗な発言の数々(ガンスリ万歳!!)。
私が、同業者のお笑いを語るのを聴く人たちって、こんな気持ちなのかしら。
いや、こんな高度なものではあるまい。

ちなみに、第1回森薫先生が、水城せとな先生の作品『失恋ショコラティエ』を語る回は、神です。
私は森先生の『エマ』も好きすぎて、というか8.9.10巻の「番外編」の短編集が神がかって文芸的で、いや、というよりもむしろ、もはやこれは文芸や映画や絵画の領域を超えた、漫画でしか味わえぬ作品だったので、もうボロボロになるまで読み返して、おなじ漫画を3冊ずつ買ったくらいである。

その森先生が語る、水城せとなの魅力。

▼「コミナタ漫研〜マンガ家に聞く、同業者の気になる仕事」
第1回 森薫と読む、水城せとな「失恋ショコラティエ」



時間の操作、コマ割、セリフの吹きだし分布など、「うわあ、プロの目には、世界はこうつるのか」という新世界獲得体験ばかり。非常にテクニカルなお話で、いままで読んできた漫画評論とか、いったいなんだったんだと思うくらいの興味深い内容。
編集者よりもやはり漫画家は漫画のことを深く見ている…のかも。
たまに、テレビで元・投手が、野球の投手の配球心理などを1球ずつ解説しているのがあるけど、それにちかい感じ。
はい、このたとえは、野球に興味ない方にはマイナスな例でしたけれど、一流は一流を知る、ということの証左と思って熟読していただきたい。

こちらは必読。マスト。こんな漫画素人の私なんぞの駄記事の5億倍おもしろい。
というか、セトナーでなくともこの記事は必読っしょ!


そして現在発売中の、『MORE』『FRaU』にインタビュー掲載。
以前のUstream放送や王様のブランチ出演などで、いよいよ追いきれなくなりつつある。
紙媒体だけは必死に集めよう。


◆◇水城せとな研究◇◆過去記事一覧

posted by: サンキュータツオ | ◇◆水城せとな研究◆◇ | 02:53 | comments(4) | - |-
水城せとな『脳内ポイズンベリー』

水城せとな『脳内ポイズンベリー』発売!




遂にキターーーーー!!

水城せとな先生の、現在の連載、
そのなかでも一番新しい連載、
月刊『コーラス』で連載している、『脳内ポイズンベリー』、

遂に単行本第一巻発売!!

待ちに待ちました!

「ああ どうしよう 頭の中が大騒ぎだ」
帯にはそう書いてある。

女の子はいつも忙しい。
メニューひとつ決めるのにも、
迷いに迷ってなかなか決まらない。
選択肢をもっているがゆえに、
なにを選んでいいかわからない。
ひとつひとつの可能性を、けっこう頭で考えている。
優柔不断な女の子は、頭が悪いわけではない。
頭がやわらかいのだ。

これは、30歳になったばかりの女性が主人公の物語。
女性の頭のなかでは、
大勢の人間が、いまなにを言うか、どれを選択するか、
いつも会議が行われている。

多数決の従う男(メガネ)、
乙女、
ネガティブな女性、
記録係のおじいさん(執事風)、
イケイケなノリの男の子。
突如として現れる新しいキャラクター。

女性は「そうそう!」と共感し、
男性は「そうだったのか!」と得心する。

女性の頭のなかで、
なにが起こっているのか。

水城せとな先生の、
コメディタッチへの挑戦が見事に花ひらき、
『ダイアモンド・ヘッド』で行われた「裁判」のような葛藤がここへ繋がり、
「人間」を描く作家、せとな先生はついに、
このシンプルかつ最高のフックを具現化し、
従来のプロット名手としての力をいかんなく発揮しておられる。

セトナーならずとも、
一般の方でも楽しめる漫画である。

しかし、
わかりやすい作品でありながら、
どんな人間にもあり得る、
それでいて目を背けたくなるような「業」が、
これから展開されるにちがいない。

「脳内会議」のメンバーに、
突如としていままで全く存在しなかった「新しい自分」が現れるように、
突如としていなくなるメンバーもいるはず。
人間の頭のなかが、
必ずしも「正義」や「多数決」に支配されているわけではなく、
「そのときどの自分が強いか」に支配されているという人間観。

ワールド全開。
これこそ、水城せとな初のアニメ作品になるにちがいない。
ノイタミナに推薦。

こんなにおもしろい作品が、
まだはじまったばかりで、
これからみんなで楽しめるだなんて、
これ以上楽しみなことはない!

まだまだ進化を続けている作家、水城せとな先生!

とにもかくにも、

 買 え
 読 め


話はそれからだ。

水城せとな研究 第0回-年表- 

2011.05.29


posted by: サンキュータツオ | ◇◆水城せとな研究◆◇ | 22:33 | comments(2) | - |-
◇◆水城せとな研究◆◇ 第1回 『オートマチック★エンジェル』

水城せとな研究 
 第1回 『オートマチック★エンジェル』


この才能に、リアルタイムで出会えた自分の人生。

私は、一昨年あたりから、尋常ではなくハマっている漫画家さんがいます。
水城せとな(みずしろせとな)先生です。

全作品を読みました。
一人でも多くの「セトナー」(水城せとなファン)を増やすべく、ちょこちょこ作品の感想などを書いてみようと思っております。

第0回 年表 〜全作品リスト〜




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▼作品番号025「
オートマチック★エンジェル」。
この作品から話をはじめたい。
単行本では全2巻完結。

単行本第2巻には、作品番号001「冬が、終わろうとしていた。」が掲載されている。
この作品は、水城せとな先生のデビュー作である。93年作品。

「オートマチック★エンジェル」は、98年から00年まで小学館『デラックス別冊少女コミック』で連載された。
全6話である。

若き天才科学者、漆原博士。
彼は、助手の麻美の父の多大なる資金援助を受け、積年の夢であった「究極のアンドロイド」を完成させる。
その名を「せりか」という。超美少女。

この作品は、水城せとなが少女漫画史上でアンドロイドものを手がけたものであり、なかでもせりかにぞっこんな漆原博士、そしてそんな博士を恋慕する麻美さん、なにも知らないがゆえにあぶなっかしいせりか、
そんな三人を主軸に置いた、コミカルな作品である。

90年代の初期作品では、比較的シリアスな作品群が多いが、小学館では読みきりや、短期連載の作品番号022「ふたりのために世界はあるの。」あたりで、コメディも手がけ始める。
これにより作品の幅がグッと広がり、またポップさも獲得していくのであるが、メジャー誌で活躍していくために、ものすごい挑戦だったかもしれない。

「少女漫画っぽいもの」と「自分らしいもの」の接点を求め始めている時期ととらえることもできる。
現在から読むと、この異端の才能は、むしろこうした一見ポップな形式のなかにこそ光るし、そのバランスも心地よい。
異端は定型でこそ光る。
非常に読みやすい作品となっている。

せりかは、漆原博士によれば「究極のアンドロイド」であるが、どこが究極かというと、「失敗することで自分で学んでいく」点が究極であり、
またこの核があるからこそ、最初は無表情だったせりかは笑顔を獲得していき、また感情ももちはじめ、アンドロイドである葛藤なども抱えていく。

第三話「LEVEL3」では、麻美のプログラミングした、すべての女性を幸せにする超美少年な第2号アンドロイド「すばる」が登場するが、すばるはこうした葛藤は抱えていない。「失敗することで学んでいく」ことに重点を置いた描かれ方はしていないかというとそうではないのだが、葛藤がなく、失敗をするとすぐに自覚して自分で修正していく、せりかとは対照的なアンドロイドとして描かれている。
このすばるの「ちょっとずれた王子様ぶり」もおもしろい。

第二話「LEVEL2」で、早くも水城せとならしさが炸裂する。

高校に通うせりかのクラスメイトの男の子が、せりかに恋をする。
この男の子は、メガネをしていて、ちょっとダサい感じだが、せりかが漆原博士に監禁されているかのように誤解して、せりかを救おうとするのだ。むろん、この男の子は、せりかがアンドロイドであることは知らない。

「せりかさんっ もっと自分を大切にしなきゃだめだ!
 今からでも間に合う! 人生を変えましょう!!」


せりかを説得している最中にもみあいになり、せりかは倒れる。
そしてせりかは記憶データの一切を飛ばす。

自分のことがわからなくなったせりかに、
男の子は「待てよ。これはチャンスなんじゃないか?」と思い、
こういうのだ。

「僕たちは恋人同士。この部屋で同棲しているんだよ。」

彼が思いついた、せりかを救う方法は、これだった。
せりかはそれを鵜呑みにして、男の子と同棲をはじめる。
漆原博士は、せりかを救おうと試みるが、変質者扱いされ、逆にせりかに撃退されたり。

そして、せりかを自分のものにした男の子は、幸せになる、
かと思いきや、
あまりに従順すぎるせりかを見、
まだ自分が彼女の「心」をつかみきれていないのではないかと思ったりするのだ。
キスしようとしても「はい」としか言わないせりかを見て、キスするのをやめる。
そういう純粋な男なのだ。

心をつかめないのは当然だ。せりかには心がないのだ。

男の子は、せりかを守るにふさわしい男になるために、
メガネをかけるのをやめコンタクトにし、美容室にいき、「かっこいい髪型にしてください」と言う(笑)。
実にオタクらしい男である!
そしてメガネをはずしたら美形というお約束炸裂! こういうのやるんだ!? ザ・オーソドックス! 象徴的な「お約束」を成し遂げた先生に涙した私!(どうでもいいよそこは)

ここまで来て、完全にこの男の子に感情移入するようにできている。
それはもう、純粋で、ひたむきで、いじらしい努力なのである。
しかも、漆原博士側は、せりか奪還に失敗する側として、あくまでコメディ処理であり、感情移入させないのだ。

男の子は、せりかを想うがゆえに、さなぎが蝶になるかのような成長を遂げる。
男としての魅力を持ち始め、クラスメイトから名前も認識されていなかったのにもかかわらず、
せりかによって自信を得たのか、クラスの女子から電話もかかってきたり。モテ期到来である。
しかし、彼は、外見の変化を遂げても、最後までせりか一筋で、他の女の子には見向きもしない。
実にオタクらしい男である!
ここがポイント。

この男子は、いかにモテようと、他に目移りせず、せりか一筋である点において、変わっていないのである!

「自分が変わると他人もこんなに変わるもんなんだな
 …せりかがいなかったら、 こんなこと気づかずじまいだったかもしれない」

この謙虚さ。いや、君が変わったのは外見だ!覚悟だ!
その優しすぎて、思い込みの強いハートは変わっていないのだ!

そして、この男の子とせりかは、最高にラブラブ。

ここまできて、漆原博士がせりか捕獲に成功し、研究室に運び込むことに成功。
記憶が消える前の状態にメンテナンスしようと試みるが、

「助けてー! ダーリン!!」

と絶叫!!

もはや完全に博士が悪者になっているのである!

博士は叫び返す!

「今の君は 本当の君じゃないんだ!!」

ストーリー的にはそうである。
しかし。
「本当のせりか」が、いったいどんなものであるかというこの問題は、「本当の自分とはなにか」という問いを、そのまま読者に投げかける。
博士のいう「本当の君」は、博士が自分好みにプログラムしたせりかでしかない。
それが、記憶を失い、男の子好みになったにすぎない。
そういう意味では、漆原博士も男の子もまったく同類なのである。

人から押し付けられる「本当の君」の気持ち悪さを、この一コマが雄弁に語る。

「かわいそうに… いますぐ直してあげるから」

という博士は、せりかの首をかちゃっと取って胴体と分離させるのだが、
当のせりかは、自分がアンドロイドであることも忘れている!

「うそ 何これ… 人間じゃない………!! いやあああああああああああああああ!!」

博士「まずい 自我が崩壊する!」

こだまするせりかの絶叫。
そうなのである。

せりかは「アンドロイドである自分」という記憶すらなくなっているので、
「アンドロイドである自分」は、周りから「君はアンドロイドだ」と言われなければ、自覚していない自分なのである。
つまり、アンドロイドであることも、せりかにとっては、他者から押し付けられた「本当の君」でしかない。

「あの男との記録をすべて消去するんだ!」
「はい!」
博士と麻美は、最後まで抵抗したせりかの記憶を「DELETE」する。

次のページではせりかはもう博士に抱きついているのである!
そして、その様子を窓の外から見てしまう男の子!
しかも、もはや黙って見てしまうだけの男の子!


そして、彼はそのままもともと予定していた、転校をしてしまう。
「そういえばあの人転校しちゃったんだー なんて人だっけ?せりか」
「え? 知らないよー」

きれいさっぱり忘れている!
なにか小道具を使って、彼のことを記憶の片隅に覚えているとかいういい話展開一切なし!

なにこのブラックさ!
最高なんですけど!
1ページ目と最終ページにまったくおなじ絵をつかっているテンドンも見事に決まってるし、最後のコマの机のカットが、男の子の存在に感情移入した私には、非常にセンチメンタルにうつる!
なにより、最後までこの「男の子」には、名前がないのである!!

やばすぎですよこの作品。
読みやすいようでいて、自我とはなにか、生命とはなにか、愛とはなにかという、深遠な問題を投げかけているのである。しかも、それはわからない人にはわからないように、うまく少女向きにアレンジしているのだ!

せりかは、笑顔で、死んだ猫を拾ってきて、博士に生き返らせてとか言うし!
すばるは、すべての女性の理想になるために、告白された女の子全員と付き合っちゃうし!

知ってるアンドロイドではなく、学ぶアンドロイドとして成長したせりかは、博士もそのうち寿命で死ぬことを知ると、
それから知恵熱出して数日寝込んじゃって、
最終的に「博士が死んだらせりかも死ぬ!」とか言うし。

極めつけは最終話「FAINAL LEVEL」である。
漆原博士は、スポンサーでもある、麻美の父の強い勧めもあって、麻美と結婚することになるのだが、
最後の最後、式の最中に、
「ごめん!」とか言って、アンドロイドのせりかをお姫様抱っこして、逃げ出してしまうという結末!
そしてそれを麻美さんも認めてしまうという結末!

生身の人間よりもアンドロイドを取るというこのオタクらしい結末だが、
むしろこのエピソードによって、せりかが本当に生身の人間と同等の価値を得たという解釈もできる。
せりかは人間となったのである。

恋愛などにおいて、おなじ過ちばかり繰り返す「学ばない人間」よりも、ピュアでひたむきな「学ぶアンドロイド」のほうが、私はいいと思う! という気持ちをスカっとさせてくれる結末で大好きだ。
むろん、麻美さんはバカ女ではなく、最高にいい女なのであるが。

これはぜひ読んでもらいたい作品だ。初期作品にも「らしさ」がにじみ出ている作品である。
ちなみにこの作品、水城せとな史のなかでは、読みきりと短期連載以外で、あしかけ2年くらいの連載をした、BL以外でのはじめての連載として位置づけられるので、そういった意味でもこの作品がその後の活動を広げる契機となった作品であるかと思う。



▼第2巻収録の作品番号001「冬が、終わろうとしていた。」は、
シリアス作品。
女子高生が学校の先生に恋をする話である。
先生は、妻帯者である。
ある日、そんな先生が、たまたま落とした結婚指輪を拾うところから話ははじまる。
そして主人公の女の子は、そのまま指輪を返さない。

雪の降る夜、校門で先生を待ち伏せしていると、奥さんが車で迎えにくる場面に出くわす。
それを隠れて黙ってみている女子高生。
でも、先生は実はそんなこともちゃんと知っていたりもする。
大人すぎる作品!

「…思うんだけど結婚ていうのは
 相手を互いに不幸にしないという契約をすることだ
 でももう一生恋をしないなんて誓ったつもりない
 そんなこと
 契約なんかで縛れないよ」

妻帯者の先生が、女子高生にこんなセリフを言うわけですよ!
先生も、実はこの子に淡い心をもっている風。
この恋愛観。情の交わしあいは、1か0かなんて割り切れるものではないという水城先生の根底に流れる諦念がすでに炸裂している。

なにより、この作品が野心的であるのは、
作中一言も、好きとかいう言葉が一切出てこないところである!
これはもう確信犯。好きという言葉を使わずに、具体的な好きさ加減を表現するという文学性まで漂っている。

表現もひねった言い回しが多い。
「カレンダーがまた脱皮する」
とか。

特に最後の締めの心理表現は余情もあって素敵だ。

「籠め続けていた言葉をやっと吐き出せたころには
 桜のつぼみが膨らみかけていた

 冬が終わろうとしていた」

タイトルにもなっている一文が、印象的に作品を締めている。

借りていたコートを返し、そのポケットのなかに隠し続けていた結婚指輪も入れて、
「もう会いません」と告げたあと、
少女がうっすら口をあけているカットがある。

きっとこのコマで、言ったのだろう、「好き」と。

そして、そのまま「さよなら 先生」と言った。

成長物語としても読めるし、切ない恋物語としても読める。
が、「人間のどうしようもなさ」みたいなものが、この作品の時点ですでにある。
よくプチコミックに掲載されたなあという。
伝説のデビュー作と言ってもいいだろう。


すべてはここからはじまった。

posted by: サンキュータツオ | ◇◆水城せとな研究◆◇ | 02:46 | comments(5) | - |-
◇◆水城せとな研究◆◇ -第0回 年表-

水城せとな研究 -第0回 年表-
 研究は 『ぱふ』2010年3月号から


この才能に、リアルタイムで出会えた自分の人生。

私は、一昨年あたりから、尋常ではなくハマっている漫画家さんがいます。
水城せとな(みずしろせとな)先生です。

少女漫画をフィールドに活動なさっている作家さんですが、
BL(ボーイズラブ)もお描きになっております。
ですが、ジャンル区分など飛び越えるスケールです。

「人間」を描いておられます。
「哀しさ」を描いておられます。
しかし、「人間愛」に満ちてもおられます。
性悪説の皮をまとった、人間賛歌にも読めます。
「人間の業の肯定」、落語にも通じる諦観。

セリフ回しは現代のシェークスピア。
プロットは平成の紫式部。
表現姿勢は文学で言えば、自然主義。
目で見て一発で判別できる画風(あるいは文体)。
男性でも女性でも、だれが読んでおもしろい!

現在連載しているのは、
『失恋ショコラティエ』
『黒薔薇アリス』
『脳内ポイズンベリー』
どれを読んでもおもしろいことを保証します!

物語の設定としては、SFともいえるしリアルともいえるものも描いています。
シリアスも、ギャグっぽいのも描いています。

今年でデビュー19年。

大好きな漫画家さんたちはいっぱいいますが、
(とは言っても、私はアニメを見るとき、原作との比較をあまりしたくないので、アニメを先入観なく楽しむように、あまり漫画を読まないことにしていますが。減点法の見方をしたくないため)

これほど多作で、なおかつ、少女漫画史のどこにもマッピングしにくい、
独特の作品を残している漫画家さんは、なかなかいません。

私がこの漫画家さんのことを知ったのはごく最近で、一昨年。
BL漫画『窮鼠はチーズの夢を見る』、『俎上の鯉は二度跳ねる』
でしたが(かなり新しいファンなのです)、
その異彩に見入られ、

これはいっそ、全作品読んでみるのがおもしろいかもしれない

と思い立ちました。

ひとりの作家を、デビューから今にいたるまで読む。
また、それをするに値する、変遷を辿ることにおもしろみのある試行の過程と、それだけ作品群がある。

ということで、「水城せとな」という一人の漫画家を追いかけてみることにした。
水城せとな研究の開始です。

はい、完全なる自己満足、かつ論文ではない雑文の数々。

ですが、ひとりでも多く「セトナー」(水城せとなファンのことをこう呼ぶことにした!)を増やすことを目標に、時間があるときに書き溜めていこうかなと思いました。

おそらく100年後くらいには、
文学研究とおなじくらいの熱量で、漫画研究が行われることだと思います。
というか、私はすでに活字のみ、という定義での文学というものはすでにメディアとして死んでしまっているとすら持っていて、
いま「文学」という要素を一番色濃く継承しているのが、漫画というメディアだと確信しています。

そして、100年後くらいには、個別の作家の全集なども、いまよりバンバン出ていることと思います。
水城せとな全集は間違いなく出ます!
そのときの、編集者が、へー、こんなファンがいたのか、くらいの記録になればと思います。
というか、参考にもならないのですけども。

大学3年か4年くらいのときにデビューなさっているので、推定40くらいのお姉様でしょうか。
それで、いままででも、この大量の作品群です。
ヤバ過ぎます。
いったいなにを見て生きてきたのか、非常に気になるお方です。
ただただ、私の熱量だけで、やっていこうと思います。
水城せとな研究!

セトナー集合です!


というわけで、第0回です。
今回は、どんな作品群があるか、いままでの作品に「作品番号」をつけて、
今後論じる基本資料とすることにしました。

そこで!
全セトナー必携の資料がございます。

『ぱふ』2010年3月号です。

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表4(裏表紙)に、「極上眼鏡男子」の宣伝がガッツリ載っている、
古式ゆかしい乙女のバイブルでございます。
現在入手困難。

中村明日美子先生のカラーイラストなどもあり、グッとくる記事満載なのですが、

この資料が決定的な仕事をしてくださっています。

「巻頭特集 水城せとな」!!

キター!!

18000字インタビューと、「全作品リスト」!

大仕事です。
18000字って。QJでも10000字ですよ普通。
もうこの資料はマスト。大枚はたいてでも購入すべし。インタビューでは水城節炸裂でございます。

その筋からは叱られることを覚悟ですが、
この特集の「全作品リスト」をもとに、作品番号を付与、
初出の年月日が早いもの順に少しだけ整理したものがこれです。


無印:短編
☆印:短期連載(2〜3回に渡る)
○印:長期連載

1993
001「冬が、終わろうとしていた。」(小学館『プチコミック』4月号)
002「ブレックファスト」(青磁ビブロス『マガジンBE×BOY』NO.1)
003「指輪物語」(青磁ビブロス『マガジンBE×BOY』NO.3)
004「スリィピングビューティー」(青磁ビブロス『マガジンBE×BOY』8月15日号)
☆005「彼岸過迄」(青磁ビブロス『マガジンBE×BOY』12月号)

1994
☆006「彼岸過迄」(青磁ビブロス『マガジンBE×BOY』2月号)
○007「ヴァイオリニスト」(青磁ビブロス『マガジンBE×BOY』4月号から12月号まで連載)
008「LUNA・SEE」(青磁ビブロス『ZERO』ハル号)
009「シンデレラ階段を登れ」(小学館『デラックス別冊少女コミック』9月30日号)

1995
☆010「ミスターマーメイド」(青磁ビブロス『ZERO』ハル号からVol.7号まで連載)
011「バレンタイン・シネマ」(小学館『別冊少女コミック』2月号)
○01121999年七の月 〜上海」芳文社『花音』3月号連載開始 98年2月まで)
☆013「ソナチネ」(青磁ビブロス『マガジンBE×BOY』3・4月号)
014「エイプリル・フィッシュ」(小学館『デラックス別冊少女コミック』5月30日号)
015「EYE・S(合図)」(小学館『別冊少女コミック』7月号)
○016「同棲愛」(青磁ビブロス『マガジンBE×BOY』8月号連載開始 01年4月号まで)

1996
017「女王様のお気に入り」(小学館『別冊少女コミック』3月号)
☆018「666」(青磁ビブロス『マガジンBE×BOY』3・4月号)
☆019「100万ドルの女」(小学館『別冊少女コミック』11月号連載開始 97年1月号まで)
  ※「1999年七の月 〜上海」、「同棲愛」連載

1997
020「flower」(ビブロス『マガジンBE×BOY』5月号)
021「四条河原町恋物語」(小学館『別冊少女コミック』5月号)
☆022「ふたりのために世界はあるの。」(小学館『別冊少女コミック』8〜10月号)
023「星はなんでも知っている」(小学館『別冊少女コミック』12月号)
  ※「1999年七の月 〜上海」、「同棲愛」連載

1998
024「そこは眠りの森」(小学館『別冊少女コミック』4月号)
○025「オートマチック★エンジェル」
  (小学館『デラックス別冊少女コミック』6月5日号連載開始 00年2月5日号まで)
026「TWINS」(小学館『別冊少女コミック』8月号)
027「エンジェル・ナイト」(小学館『別冊少女コミック』12月号)
  ※2月、「1999年七の月 〜上海」連載終了 
  ※「同棲愛」連載

1999
☆028「少女人形」(小学館『別冊少女コミック』3〜5月号)
029「アクアリウム」(小学館『別冊少女コミック』7月号)
○030「アレグロ・アジタート」(小学館『別冊少女コミック』9月号連載開始 00年4月号まで)
  ※「同棲愛」、「オートマチック★エンジェル」連載

2000
031「ストレイシープ」(小学館『デラックス別冊少女コミック』6月5日号)
032「私達ヲ止メナイデ」(小学館『別冊少女コミック』7月号)
○033「ダイアモンド・ヘッド」
  (小学館『デラックス別冊少女コミック』8月05日号連載開始 
   「〜〜外伝 バルサミックムーン」含め『別P!』経由しつつ
   『デラックスBetsucomi』03年12月5日号まで)
034「シュラバ・ラバーズ」(小学館『別冊少女コミック』10月号)
  ※2月、「オートマチック・エンジェル」連載終了、4月「アレグロ・アジタート」連載終了
  ※「同棲愛」連載

2001
○035「メゾン・ド・ビューティーズ」(小学館『別冊少女コミック』1月号連載開始 02年3月号まで)
036「生きものバンザイ!」(小学館『別冊少女コミック』9月号)
037「最後の晩餐」(秋田書店『プリンセス』12月号)
  ※4月、「同棲愛」連載終了
  ※「ダイアモンド・ヘッド」連載

2002
○038「彼女たちのエクス・デイ」(秋田書店『プリンセス』4月号連載開始 同年12月号まで)
  ※3月、「メゾン・ド・ビューティーズ」連載終了
  ※「ダイアモンド・ヘッド」連載

2003
○039「S<エス>」(秋田書店『プリンセス』2月号連載開始 04年4月号まで)
  ※12月、「ダイアモンド・ヘッド」連載終了

2004
040「少女漫画家さんちの猫」(小学館『少女漫画家さんちの猫』に8p寄稿)
○041「放課後保健室」(秋田書店『プリンセス』7月号連載開始 07年12月号まで)
○042「キッシング・グラーミー」
  (小学館『NIGHTY Judy』6月号増刊 
   ※恭一&今ヶ瀬シリーズ[『窮鼠はチーズの夢を見る』シリーズとも]:作品番号042で統一)
   「楽園の蛇」(小学館『NIGHTY Judy』9月号増刊 ※恭一&今ヶ瀬シリーズ)

2005
   「黒猫の冷えた指先」(小学館『NIGHTY Judy』1月号増刊 ※恭一&今ヶ瀬シリーズ)
   「窮鼠はチーズの夢を見る」(小学館『NIGHTY Judy』10月号増刊 ※恭一&今ヶ瀬シリーズ)   
  ※「放課後保健室」連載

2006
043「魔法使いが逢いに来ました」(秋田書店『プリンセス』5月号)
   「憂鬱バタフライ」(小学館『Judy』10月号付録 ※恭一&今ヶ瀬シリーズ)    
  ※「放課後保健室」連載

2007
☆  「梟」(小学館『モバフラ』12月5日号連載開始 08年2月5日号まで
       ※恭一&今ヶ瀬シリーズ) 
  ※12月、「放課後保健室」連載終了

2008
○044「失恋ショコラティエ」(小学館月刊flowers増刊『凛花』3号連載開始〜現在)
○045「黒薔薇アリス」(秋田書店『プリンセス』4月号連載開始〜現在)
☆  「俎上の鯉は二度跳ねる」
  (小学館『モバフラ』12月20日号連載開始 09年4月20日号まで ※恭一&今ヶ瀬シリーズ)

2009
  ※「失恋ショコラティエ」、「黒薔薇アリス」連載

2010
○046「脳内ポイズンベリー」(集英社『コーラス』2月号連載開始〜現在)
  ※「失恋ショコラティエ」、「黒薔薇アリス」連載

2011
  ※「失恋ショコラティエ」、「黒薔薇アリス」、「脳内ポイズンベリー」連載 

▼現在(2011年2月)、「失恋ショコラティエ」「黒薔薇アリス」「脳内ポイズンベリー」連載中
▼☆短期連載:10本 長期連載:14本(ただし、恭一&今ヶ瀬シリーズを1長期連載とカウントすると、☆は8、長期は15本)
▼同人活動での「ブレックファスト」初出92年、「指輪物語」の初出93年、「Honey B」(92年)、「フジノヤマイ」(93年)、「トリカブト」(94年)は、大都社『植物図鑑』所収(2004年)。


マイカウント方法で、作品番号046まで。

いやあ、『ぱふ』さん、本当に大仕事なさいました!

インタビューでは、新人時代に、小学館の担当さんに
<「あなたと話していると自分の心の鏡が曇ります」とか言ってましたから。最悪の新人です(笑)>
というエピソードがあって最高。


現在、連載中の『失恋ショコラティエ』に関しては、

<確かに、言われてみると私が目指しているオーソドックスは、少女まんがのオーソドックスではないかもしれません(笑)。>
<現実的にはありそうなオーソドックスな話なのだと思いますが、それを少女まんが的なスケールで考えると、オーソドックスにはならないのかもしれないですね。>



とか、やはり少女漫画をフィールドにしながらも、若干の「居場所のなさ」を抱えつつ、
でも寄せないぞ!みたいな宣言にも取れるような、魂の発言。
かなりぶっちゃけたところまで、お話してくださっています。
生い立ちから現在までを赤裸々に!
文責は、山本文子さん。すごい、山本さん!

セトナー必読、必携、この一冊を持っていなければセトナーじゃないくらいの勢い。


さて、年表から言えることは、
いま現在、小学館、秋田書店、集英社と、
テレビでいえば在京キー局3局で、ほぼ冠に近いくらいのレギュラー番組をもつに至った、売れっ子ってことです。

92年ごろまで同人、
93年に小学館でデビューし、その後小学館との関係はいままで続いております。
現在は『失恋ショコラティエ』。言わずと知れた作品です。むちゃくちゃおもしろい。

初期BL傑作群は、ビブロスから。BLの老舗です。
2001年に、秋田書店にも進出。その後すぐに『放課後保健室』の連載開始で、いまは『黒薔薇アリス』というファンタジーものを手がけております。この作品もヤバイ。プロットとか1巻まるごと使ったフリとかハンパない。

インタビューでも語っておられますが、
いわゆる「恭一&今ヶ瀬シリーズ」という、『窮鼠』シリーズを、『同棲愛』以降に久々がっぷりよつのBLをお描きになり、これが『このBLがヤバイ!』で1位獲得。この作品以降、その名がとどろき、ご本人的にもすこし仕事が楽になったとおっしゃっています。
知名度を確たるものにしたという。
私もこの作品からです。そういうセトナーも少なくないと思われます。

この作品に関しては、どっぷり今後語る機会を設けたいと思いますが、先生の才能が如何なく発揮された、この時点での先生の最高傑作であったと思います。
この方は、常に最新作が最高傑作。

で、この産物としてかどうかわかりませんが、
2010年からは集英社でも連載を開始。『脳内ポイズンベリー』。これまだ単行本になっていないですが、売れます。相当おもしろいです。
通史で見ると、けっこう久々にコメディタッチな要素の色彩を出してきつつ、それでも「人間をみつめる」という水城節が光る作品。

小学館、秋田書店、集英社で、同時に連載を出来るなんて、正直人間業とは思えません。
たぶん化け物なんじゃないかと思います。魔女です。


いや、タイトルの本数ではない、
週刊誌や月刊誌で、ひとつの作品を長く続けることも偉大なことだと思いますし、
そういう漫画家さんもたくさんおられます。プルーストタイプといいましょうか。

しかし、一方で、別タイトル作品を世に残されたこの業績もすごいです。


すべての作品にいえるのは、
徹底して「人間」を見つめているということ。
少女漫画では普通描かないような人間の醜さ、哀しさ、愚かさ。
かと思えば、素晴らしさ。
落語的業の肯定。普遍性があり、男女問わず楽しめる作品が多いと思います。
BLにしても実はそうなんですが、BLという皮をかぶった、人間描写。


いま、一昔前、文学がやっていたことというのは、今、漫画で行われていると考えます。
文学は、文字通り死んだものと思います。なぜなら売れないから。売れないのもまた文学なのですが。
文学的要素というのは、これだけ裾野が広がった漫画に、連綿と受け継がれており、
水城せとな作品の文学性に私はぞっこんです。
いろんなテーマを、いろんな方法で描いてみている試行の歴史にも見えることもあり、

おそらく、100年後くらいに、「水城せとな全集」が出ていることと思いますので、
その編集者が、へー、こんなファンがいたんだーくらいに思ってくれたら嬉しいなと思い、

10000パーセント完全自己満足記事なのですが、
こつこつやっていこうかと思います。
というか、やりたくてしかたがないのです!

ひとりでもセトナーが増えてくれたらいいのです!
セトナー同士で語りたいのです!

というわけで、
私がこういう長い記事を書いていると、どこかで怒る人もいるでしょうけれども、
それはさて置きです。
作品番号順に語っていてはおもしろくないかもしれないので、
興に任せてやっていきます!ランダムに!

いまの画風に固まったのって、2000年代入ってからだよな。
2004年くらいかな?
みたいなこと考えるだけで、もう私は楽しい!

ちなみに、定量分析は今回はやめて、
ただただミーハーに水城せとな先生作品を「最高!」と印象だけを語っていくつもりです。

全国のセトナーよ、声あげていこうぜ!


ちなみに、水城せとな先生のサイト、素敵ですよー。

―関連記事―
水城せとな公式サイト「synaps」

研究って、ちと大げさですが。
論文ではないので。

ここまで読んじゃった方は、
またなんか狂ったことはじめやがった、くらいに受け止めておいてください。


<インタビュー等>
『とらだよ。』85(とらのあな)2008年3月配布
『このBLがヤバイ!2010年腐女子版』(宙出版)2009年12月9日
『ぱふ』(雑草社)2010年3月号
読売新聞、2011年1月31日号 
『オトナファミ』2011年5月号
『FRAU』(講談社)2011年6月号
『anan』(マガジンハウス)2011年6月29日号
『MORE』(集英社)2011年7月号

▼「コミナタ漫研〜マンガ家に聞く、同業者の気になる仕事」
第2回 水城せとなと、相田裕「GUNSLINGER GIRL」を読む 2010年12月10日

▼講談社デジキス なかはら★ももた マンガ家よゐよゐ
第11夜 水城せとなとよゐよゐ 2011年05月25日 (※のち単行本化)







※2011/08/14 一部年表修正。<インタビュー等>加筆。


posted by: サンキュータツオ | ◇◆水城せとな研究◆◇ | 23:23 | comments(17) | - |-