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◇◆水城せとな研究◆◇ インタビュー『オトナファミ』『anan』『MORE』2011.07.18 Monday
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水城せとなインタビュー
『オトナファミ』 『anan』 『MORE』
一度追いかけると決めたものはどこまで追いかける。
漫画家・水城せとな先生は、私にとってはそういう存在。数少ない人生の生き甲斐である。
まずは、
▼『オトナファミ』(エンターブレイン)2011年5月号。
「ときどき読みたい オトナの片思い漫画30選」特集。
p52。
30選のなかの一部なのだが、堂々1ページを割いてインタビュー掲載の破格の扱い。
こちらでは、『失恋ショコラティエ』と『脳内ポイズンベリー』に関する興味深い談話が掲載されている。
文責、不明(未掲載)。
『脳内ポイズンベリー』について。「構成としては縦軸が“アラサー女子の紆余曲折の恋愛”、横軸が“脳内会議の密室会話劇”ですが、物語の主題は“誤解はいかにして生まれるか”です。」
『失恋ショコラティエ』、えれなと爽太の関係について。「都合の良い、ある意味理想的な関係なんですが、それを読者さんが「微笑ましくていいな」と思えたり、同時に「これでいいの?」と疑問も残るような、微妙なラインを心がけています。それと、薫子と関谷の関係はサクサク距離が近づきすぎないように配慮しています。」
などなど。テクニカルな話が引き出されている意味で貴重な資料です。
『黒薔薇アリス』についても同様のインタビューを聴いてみたい。
▼『anan』(マガジンハウス)2011年06月29日号
「輝く!第2回 ananマンガ大賞」。
p53〜60までの特集のなかで、大賞が『失恋ショコラティエ』ということで、p54にインタビュー掲載。
文責・河野友紀さん。
『失恋ショコラティエ』の元ネタが、「失恋レストラン」だったことが述べられている。「「どんな話?」と聞かれたら、「こういう人がこういうことをするマンガだよ」って簡単に説明できるような、オーソドックスな作品にすることを意識しました。そういう間口の広さを持っているものが、いろんな人が読んでくれるマンガなのかも? と思って。でもやっぱりこの作品で初めて私のマンガを読んだという人からは、「何これ、ビックリ!」という反応をたくさん頂いたんですよね。私としては最大限オーソドックスな話を描いているつもりだったので、“まだどっかおかしい!?”と戸惑っています(笑)。」
これを、作家性と言うのだろう。
ここで重要なのは、水城せとなという作家史のなかで、この作品は「最大限オーソドックス」を目指して作られた作品である、ということだ。
このインタビューでは、相思相愛でも人間みな片思い、という水城哲学も健在。
ややこの先の展開に関する話も最後には出てくる。
▼『MORE』(集英社)2011年7月号
ENTERTAINMENT EXPRESSという、人や映画や音楽や本を紹介するページで、「BOOKS」に『脳内ポイズンベリー』がとりあげられている。
文責・山本圭子さん。
先生の写真が割と大きく掲載されている。上半身。
この作家は、もしかしたら、なのだが、恋愛をテーマにしたマンガを描いている以上、自らの容姿にも普通の女性以上に気をつけている部分があるかもしれない。女性誌等で取り上げられることを念頭に、その説得力を担保する意味でも、美貌は決してマイナスではない。
一時期著者近影には顔写真も載せず、イラストを載せていた時期があったが、イベント出演、Ustでのトークイベント、『王様のブランチ』出演など以降、顔写真に関しても、女性漫画家には珍しく紙面に掲載している。生年月日に関しても1971年を明記していることから類推するに、少女漫画家としての、なんらかの哲学をもって、表現の幅を広げているように見える。そういう覚悟が感じられる。「恋愛のパターンってほぼ決まっているのに漫画が面白いのは、心理が細かく描かれているからだと思うんです。」
という発言。
短い記事だが、心理描写に関してのこだわりが垣間見られる。
この作品は、そういう意味ではこの作家の心理描写の巧さがもっともシンプルな形で表現されている作品である。
単行本発売時期と、『失恋ショコラティエ』の注目があってか、この2作品に関するインタビューが主。
やはりどの雑誌も『黒薔薇アリス』に関してはつついていないが、私は聞きたい。
水城せとなのプロット力が存分に発揮されているのは、むしろこの作品だからである。
しかし、先生のインタビューに触れる機会が増えたのは嬉しい限りである。
セトナーはぜひ読まれたい。◇◆水城せとな研究◆◇過去記事一覧