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劔樹人『あの頃。』『高校生のブルース』
先日、とあるキッカケで劔樹人(つるぎみきと)さんにお会いした際に、
「ネットで連載してたマンガ、めちゃくちゃ面白かったです!」とお伝えしたところ、
表情ひとつ変えずに「そういえば在庫あったかなァ」と言って、なんと書籍化したそれをくださった。
 
劔さんは、いろいろやっている人である。
バンド、マネージャー、プロデューサー、そしてこのようにマンガやコラムの執筆、
説明しだしたらきりがないのでご存じない方は各自調べてもらうこととして、
とにかくその横断的で説明しにくさがおもしろい人だ。
 
私はAR三兄弟の川田くんとか、いまは長崎で洋服作ってる山下陽光とか、
なんかそういう「なにやってんだか説明しにくい、でもおもしろい人」が好きである。
というか、そういう人はとにかく最初から「おもしろそう」という空気感をもっている。
だから、劔さんの職業は「おもしろい人」で私のなかでは統一されてる。
 
私が劔さんに会ったには二回である。
最初はTOKYO FM『妄想科学デパートAKIBANOISE』という自分が出ている番組にゲストに来ていただき、クリエイターというか、音楽作ったり知ってもらったりしている仕事をしている人として出てもらったとき。つまり仕事でご一緒したのだった。
そして今回である。
だから実は劔さんのことはなんにも知らない。

 
だけど、とにかくもう、目を見ただけで、この人いいわァってのを感じた。
いわゆる芸人のそれとおなじ目だ。
人を信用していないけど愛くるしい、実は人が大好きな目で、楽しませることが最上の心遣い。
 
褒めても照れもせず自著をくれたことは、決して自信家だとか宣伝のためではなく、私を仲間だと認めてくれたんだと感じた。
そういうのもなんか全部、言葉以上に身体全体でさりげなく表現できる人に思えた。
飛び飛びで読んでいたものだったが、改めて紙になったものをまとめて読んだ。
 
iPhoneImage.png
あの頃。
あの頃、一緒に過ごした仲間たち。
ノスタルジーでもなければ後ろ向きな自分語りでもない。
どうしようもないけど憎めない人たち。
共通する「好きなもの」を追い続けた日々。

戻れと言われたら戻りたくない、いま会ってどうするということもない、だけど、あの頃あの人たちとなぜだか一緒にいて心を通わせ、そしてそれが自分の世界と人格を形成しているってことはだれにでもあると思う。

そんなに当時は意識していなかったけど、いま思うと、あの部屋のあの匂いや、ドアを開けて右にある棚にどんなものが入っていて、だいたいいつもこのへんにあの人が座っていて、というどうしようもないことを覚えていることは、ないだろうか。
この本にはそんな「覚えていてもどうしようもないディテール」が猛烈に蓄積されて、そんな「記憶のチリ」を集めて固めて時間を置いたら、宝石になってたっていう文芸作品です。
 
ここで語られる「アイドルの追っかけ」という共通の「好きなもの」は、なんらかのジャンルにハマった経験がある人ならだれでもが共通して経験したことのある「脂汗感」がにじみ出ててハンパない。

私はアイドルの追っかけをしたことはないが、落語家の追っかけやオタク活動にいそしんでいるので、その周辺にいる人々の「業」のようなものに触れる機会がたくさんあった。
ひいてみたら滑稽で愛らしい、近くにいるとただただストレス、というような極端な人物たちがたくさんいるなかで、そんな荒々しい珍味な素材たちを「ユーモア」という料理方法でうまい料理に仕上げることができるからこの人は愛に溢れている。
 
優しい。愛がこぼれ落ちちゃっててすごい。
劔さんが大学を卒業してから、上京するまで、そしてしてからが綴られた私小説マンガである。

「大阪市阿倍野区で過ごしていた、
 あの頃。

 中学10年生の夏休みのような、
 そんな毎日が
 永遠に続くような気がしていた。
 今思い返しても、
 どうかしている出来事ばかり
 だったと思う。
 
 もう戻れない、愛しい記憶です。」

この本の冒頭にはこう記されている。
なんでだろう、東京に生まれてずっと東京で変わらない日々を過ごしてしまいメリハリのない生活をしている自分は、なにかいろんなキッカケを失っているようにも思う。
恵まれているとは自覚しつつも、とどまる場所をうつし、生業を変えて「生きていく」ということに自覚的な人とは、圧倒的な差を感じる。
ちなみにこの本、非常に珍しい左綴じのマンガなのだが、杉作さんが考案したマンコラム方式で、たぶん言われるまで気づかないんじゃないかっていうくらい自然に読める。
何度でも読める、愛しい書籍です。

 
こちらはそんな劔さんの高校生のときの私小説マンガ。
これがまたホントすごい!
むしろ、劔さんの持っている詩的センスなどはこちらに存分に発揮されている。
というか、これはもはや「俳句」だとすら思う。
俳句だよ俳句!情感だよ!行間たっぷりだよ!

 
1ページで1話というか、1エピソードの読み切りスタイルなのであるが、ページ平均で5〜6コマで、「シーン」と「心情」が綴られている。
とくにしびれた「10.からっぽの日々。」というエピソードでは、
 
iPhoneImage.png
 
「僕にはやりたいことがない
 
 行きたい大学もない
 
 ただ
 
 彼にもない
 
 彼にもない
 
 一日が終わってゆく」

と書かれているだけである。
ドラマチックなことは起きない。物語は語られない。あくまで物語の「要素」になりそうなことが淡々と描かれている。シーンの蓄積。

なにこのリアル!!

日記を書いたことがある人ならわかるかもしれないが、一日一日の出来事は繋がりがあるようでない。でもまったくないわけでもない。
たとえば歯が痛いから歯医者にいく。そのあと友だちと会う。帰ってテレビを見る。
これからの行動には関連性はなく、時間軸で整理したときのみ「一日の出来事」としてまとめられる。
しかし、一週間後の日記ではまた歯医者に行ってたりする。その友だちに勧められたテレビを見ていたりする。テレビで観た映画を友だちと観に行ってたりする。関連性は時間を超えれば出てくる。

「やりたいこと」なんてものはあるんだろうか、それとももってなければいけないものなんだろうか。
「行きたい大学」なんてものは高校生の自分にホントにわかるものなんだろうか、それともなきゃいけないものなんだろうか。
空気的にはあったほうがよさそうなんだけど、正直言って自分にも、彼にも、信用しているアイツにも、ない。
でもこの先考えるのは面倒だし、もしかしたらいつか自然にわかるものなのかもしれない。

同調圧力や大人が作りだした欺瞞、そういったものをなんとなく感じながらも、それらが怒りとして顕在化する前の「焦燥」。そして自堕落。
それを明文化してくれることの爽快感ったらない!
 
ドラマはあるかもしれないし、ないかもしれない。
だが、それを語っている「今」は、そんな日々を愛おしく思って「編集」しているのだ。
ご都合主義的なロマンから離れよう離れようとして自分から距離を置いてみようとするが、そうすると当時周りにいた人たちの想いや、「なんであんなこと言ったんだろう」という行間が、見えてくる。小さなドラマが起こる。
 
世の中のスターではない、ほとんどすべての人が経験したであろう、ドラマのない日々(ドラマとして自己編集している人もいるが)を「愛おしいものだ」と承認してくれる。だからこの作品は素晴らしい。

そしてやっぱり、彼の目はだれよりも冷たくて優しい。
冷たい、というのは、ユーモアを抽出できるという点で、客観視できている、つまり引いてみて昇華できている、という意味で。笑いには冷徹さも必要だ。
 
こんな感想みたいなことを書くと、万が一本人に読まれてしまったら次に会った時にはお互いどうしたらいいかわかんなくなりそうなんだけど、いいものはいいのでぜひ知らない人に読んでもらいたく、思わず書いてみた、そしたら長くなった、そして疲れた。

両方ともまだ出たばかりの書籍なので、ぜひ買って読んでみてください。
自分との向き合い方、仲間との向き合い方を教えてくれる本です。

ちなみにこの人の音楽も好きだ。
といっても「あらかじめ決められた恋人たちへ」のCDしか聞いてない。
これから知っていく楽しみがある。
 
 
聞けば最近ご結婚されたそうだ。
あんなに奥手そうな優しい人が、結婚したのだ。
お相手はきっと、たいそういい女に違いない。

2014.08.21
posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 04:06 | comments(0) | trackbacks(0) |-









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