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夏目漱石『草枕』 
夏目漱石『草枕』

『タツオ☆レビュー』、水曜日どころか土曜日ですけど、アップだ!
本、マンガ、雑誌、映画、DVD、論文など、私がグッときた作品を、今昔問わず語らせてください。
おもしろかったもの、影響を受けたもの、考えさせらたもの、など。
はい、ただ紹介したくて、語りたいという欲求を満たすだけの水曜日です。

今週は、夏目漱石の『草枕』。

草枕

夏目漱石という作家は、芸人でいうならビートたけしさんや松本人志さんくらい決定的な仕事をした人だと思っている。
とにかく38歳でデビューして49歳でなくなるまでのたった12年間で、いまの日本の小説のいしづえとなる「ほとんどすべてのこと」をやった人なの。
私にとってはそういう解釈。

漱石の代表作といえば、一般的には『我輩は猫である』とか『坊っちゃん』とか『こころ』が挙がると思う。
しかし私は『草枕』が漱石の小説のなかでは一番だ。

山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
 智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい。


もうこのリズムがすごい。エンタ向き。キャチーで覚えやすい。
続きはこう。

 住みにくさが高(こう)じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟(さと)った時、詩が生れて、画(え)が出来る。
 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣(りょうどな)りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
 越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束(つか)の間(ま)の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降(くだ)る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故(ゆえ)に尊(たっ)とい。


一番最初にいきなり「芸術論」から入っていて、この軽くて重厚な文体が最後まで続くのだ。
新しすぎる。
漱石さんは自分の作品についてこう語っている。

 私の『草枕』は、この世間普通にいう小説とは全く反対の意味で書いたのである。唯だ一種の感じ--美くしい感じが読者の頭に残りさえすればよい。それ以外に何も特別な目的があるのではない。さればこそ、プロットも無ければ、事件の発展もない。(中略)
 普通に云う小説、即ち人生の真相を味はせるものも結構ではあるが、同時にまた、人生の苦を忘れて、慰藉するという意味の小説も存在していいと思う。私の『草枕』は、無論後者に属すべきものである。(談話「余が『草枕』)


なんと「プロットがない」(=物語がない)と名言していて、「わざとやってる感」を出しているのだ!
これって逆に言うと当時の人々にはなかなか理解できない「シュールですかしたもの」になっていたということである。

そりゃそうである。
「小説とは物語である」と考えていた当時の人々にとってみれば、「物語が読みたきゃあらすじ読めや!」というツッコミはなんの効力もなかったのだ。
「いい文章でウットリさせる」という、お笑いでいえば「顔芸だけで笑わしたる」的なメッセージは、実は文芸の世界では理解されないものだったのだ。
別な解釈だと「ボケ」て「ツッコむ」という手法ではなくて、なんかもっとこう、そういうのじゃねえおもしろい方法とかあるんじゃね?みたいな、バカふたりがしゃべってんのもおもしろくね?みたいな、「自然なもの」への志向ともとれますね。

漱石の弟子はたくさんいるけれども、この『草枕』の路線を継承したのが芥川龍之介だと私は思っている。
この芥川は、後に谷崎潤一郎と「プロット論争」という、日本文学史上に残る大喧嘩をしている。
「小説は物語だ!」「いや、文章だっつーの! 物語なんかいい文章、すごい表現を生むための出汁にしか過ぎないの!」
と、いい年をした大人同士が喧嘩をした。

前世紀のフランスで興ったヌーボーロマン(新しい小説)という思想が、世界的な流れとなるまでに、芥川は生きてはいなかった。
というか、おなじことを考えている人たちが、もうちょっと後に現れるなんて予想しなかったにちがいない。

そんな芥川に先駆けて漱石が『草枕』を書いたのはホントに奇跡!
お笑い界の「象さんのポッド」的存在の作品。

だってさ、作中
「いい小説ってなあに?」
「うん、どのページから読んでもいい小説」
みたいなこと言ってるからね。

「西洋の本ですか、むずかしい事が書いてあるでしょうね」
「なあに」
「じゃ何が書いてあるんです」
「そうですね。実はわたしにも、よく分らないんです」
「ホホホホ。それで御勉強なの」
「勉強じゃありません。ただ机の上へ、こう開(あ)けて、開いた所をいい加減に読んでるんです」
「それで面白いんですか」
「それが面白いんです」
「なぜ?」
「なぜって、小説なんか、そうして読む方が面白いです」


漱石、パねえよ!
是非読んでみてください。

暇なら下記も読んでみるといいと思う。
■松岡正剛の千夜千冊『草枕』夏目漱石
posted by: サンキュータツオ | ■タツオ☆レビュー■(2008年11月〜) | 20:24 | comments(4) | - |-
いい小説とはどこから読んでもいい小説って納得です。夏目漱石は『こころ』を宿題の読書感想文の為に読んだだけで、読まされた感が強く、まともに読んでもいなかったはず。全然覚えてもいないし(苦)その後も拒絶反応が残ってたけど、『草枕』読んでみまーす。
| koko | 2008/11/25 3:58 AM |
ふと思ったのですが……。

>「勉強じゃありません。ただ机の上へ、こう開(あ)けて、開いた所をいい加減に読んでるんです」
>「それで面白いんですか」
>「それが面白いんです」

あれ?これってひだまりスケッチとかの話じゃないですか?
| らいひ | 2008/11/25 11:51 AM |
とほほ。お母さん、またやられちゃいましたか?全部読み終えたところでわかる?
| koko | 2008/11/25 12:52 PM |
>kokoさん、

『草枕』、読んでいただけたでしょうか?
中学高校で、『草枕』がわかってたまりますか!


>らいひさん、
『ひだまりスケッチ』よりは『草枕』のほうが早いと思います。
うめ先生、もしかしたら、ご存知の上でそうされたのかもしれませんね。


>kokoさん、
またやりました。
古来より息子は母にきついものです。

| タツオ | 2009/01/03 5:52 AM |