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♪ツインの老人
♪ツインの老人

私が昔、アルバイトをしていたホテルは、そんなに大きくない街の、そんなに大きくないビジネスホテルだった、とはいえ値段もそんなに安くなく、おなじ値段なら、もう少し大きな街の、もう少しいいホテルに泊まれるくらいのものだった。
内装もいたって質素で、サービスもそれほど良くはない。
狭い部屋にベッドとテレビ、机、あとはユニットバスくらいのもので、ルームサービスもなにもない。
綺麗な建物というわけでもなく、ひたすら古いつくり、ただ、駅から近い、ということだけが取り得で、それでも家に帰れないほど遅い時間まで働いているサラリーマンたちには、使い勝手がいいのか何人も常連たちがおり、なんとかそのホテルは命脈を保っていた。

ところで、常連、というか、住人がいた。
私がアルバイトをはじめた頃には、すでに2階のツインの部屋に住んでいる老人がいた。
一人なのに、なぜかツインに住んでいた。
毎日宿泊している、という言い方は妙なのだが、完全に住んでいる状態のその老人は、そんなに足腰がしっかりしているわけでもなく、だれかが面倒を見なくてはいけない、というほどでもなく、食事はなぜか吉野屋がお気に入りで、よく杖をついて外に出かける姿を見た。
三日に一度、部屋の掃除を定期的にし、部屋の宿泊料は毎月決まった日にしっかりと振り込むのである。

そんなに安くない宿泊料の一ヶ月分である。サラリーマンの月収以上の額である。それを何年も、もうその老人は払い続けていた。
年金ではとても払える額ではない。いったい何の職業をしている人なのか、それもまるでわからない。

その老人は、なにか用事があると、フロントに電話をしてき、短い言葉でボソボソと注文する。
それも朝だったり昼間だったり深夜だったり、時間はバラバラで、いつ寝て、いつ起きているのかもわからない。
一回、電話でのやりとりで、気が短い人らしい、ということがわかって、それからはあの人はきっと昔、暴力に自信のある人たちの団体に属していたのだろう、という憶測までひそかにささやかれていた。それもあくまで憶測で証拠はどこにもない。確かに怖い顔をしていたが、それにしても部下らしき人は一度も来なかったし、私にはすべてが謎だった。

ただ一人、「娘」と名乗る人が、一週間に一度、着替えをもって彼の部屋を訪れていた。娘、にしてはちょっと若い感じのする人で、顔もあまり似ていない。
娘、はちゃんと、週に一度、まるで仕事でもこなすかのように着替えを持ってきては、数時間いてどこかへ帰る。泊まりはしない。
しかし一緒に住むような関係ではないらしい。
充分どこか都内の部屋を借り入れるには、充分すぎるほどのお金を持っていながら、それでも彼は一人でビジネスホテルに住んでいたのだ。
住民票さえそのホテルに移そうとしていて、社員とひと悶着あったほどである。
彼の部屋は、1ヵ月に一度、別のツインの部屋に移動する。部屋にその人の匂いがつくのを防ぐためである。
彼の部屋が移動するごとに、ああ、月が変わったのだと、皆が思うのも無理はないことだった。


私がアルバイトをはじめて2年くらいたったときであろうか。
深夜に電話がなった。とると「ツインの老人」である。
私はそのときはじめて、その老人としゃべった。

「タクシーを呼んでくれ」
「はい。どちらかにお出かけですか?」
「鹿児島に帰る」
「はい? この時間ですと電車も飛行機も出ておりませんよ?」
「そうなの? ……じゃあ、タクシー呼んでくれ」
「はい、構いませんが、どちらまで行かれますか?」
「東京駅」
「はい。この時間ですと、東京駅に行っても電車は出ておりませんが……」
「うー」
プツっと電話は途切れた。

また5分くらいして電話が鳴る。取ると件の老人である。
「鹿児島に帰る」
「はい。ただいま深夜ですが……」
「タクシーを呼んでくれ」
「はい、構いませんが、どちらまで行かれます?」
「東京駅」
「はい。この時間ですと、電車も出ておりませんが、大丈夫でしょうか?」
「ううーー」
また電話が切れる。

また5分くらいすると電話が鳴り、またおなじことの繰り返しである。
5回くらいこのやりとりをしたことと思う。
しかし最後のやりとりは、
「タクシーを呼んでくれ」
「はい、僭越ですが、できましたら明日の朝か昼間にご用意いたしますよ、いますぐには行けない場所です」
「うー、もう一度……」
プツっと電話が切れた。それでこのやりとりはなんとか落着した。 

どうやら老人の故郷は鹿児島で、このホテルにはいたくないらしいということが直感できた。
そして、いよいよだな、ということがなんとなく感じられた。

朝の引継ぎでことの次第を社員に告げ、私はホテルを後にした。
しかしその後、ツインの老人からはそんな電話はなかったようである。

それから3ヵ月ほどして、老人は病院に運ばれ、その翌日亡くなった。
戦争を経験したであろう、そして高度経済成長を支えたであろうその老人は、最後にだれに見取られるでもなく、ありったけの貯金を場末のビジネスホテルに投下して亡くなった。

老人が住んでいたツインはその後、業者に清掃と消臭を任せて、数ヶ月後にはまた稼動した。
月の頭にツインの部屋を移動する慣例もなくなった。

私はあの老人が、最後に「もう一度」、なにをしたかったのか、いまだに気になっている。
posted by: サンキュータツオ | 土曜♪随筆(開設〜2009年9月まで) | 19:01 | comments(0) | - |-