この2023年の4月から 山形県にある東北芸術工科大学に勤めることになりました。
文芸学科です。ひとまず数年です。
これまで非常勤講師として都内の大学で教壇に立っていましたが
今回は常勤で、公募に出して採用してもらいました。
いわゆる客員(非常勤)や、特任(期限付き)ではないです。このへんのことは、大学関係者以外には違いがよくわからないと思いますが、知りたい人は検索すればすぐわかります。一般企業でいう社員みたいなものです。
授業期間のある火曜、水曜、木曜は山形で過ごします。
宿舎もあるので安心です。
ランドマークとなる三角形の入り口校舎と、池に浮かぶ剥き出しの能舞台
とにかく芸術大学おもしろそうだったんですよね。
これまでも東北芸術工科大学(略して芸工大)の「文芸ラジオ」など、文芸学科で出版している雑誌に都度インタビューしてもらうなど、 関わりはあったのですが、
通常の学部での研究とかとちがって、
「研究」と「実践」の両輪で「作品」という形にしていく学修スタイルがとても本来的だなと思いました。
入ってみないとわからないですが、
これまで模擬授業や面接、卒展などに赴き、 雰囲気良さそうな大学だなと思いました。
なにそれ環境激変じゃん、芸人活動続けられるの? と思うかもしれませんが、
これまで複数の大学で非常勤をやってていて、寄席にも出ていたので、 大きく環境は変わりません。むしろ延長線上です。
私のように作文の添削、日本語教育などをやっていた立場からすると、
授業前の準備にとても時間がかかり、荷物が多く移動も大変な非常勤の掛け持ちをするよりも、
常勤で宿舎もある場所で、研究室を持ち授業ができるのは、とても助かります。
移住とかではないです。宿舎あるのはありがたし。
マジで作文教育たいへんなんすよ。
大学行って決まった内容とか知ってることわかりやすく喋る、みたいなスタイルではないので。担当する人数によってはホントに一日仕事になっちゃうんです。添削鬱になる人もいるくらいで。
往復の移動も、新幹線座れるし、書評する本読んだりアニメ観れたりするので、思っていたよりも快適かもしれません。
あと意外と山形近い。行きやすい。東京から直通新幹線もあるし、仙台から大学まで高速バスあるし。
これまで都内の大学の公募に出したりしたこともあって、何度か模擬授業や面接もしてもらいましたが、
とにかく私のような「異分子」を採用するにはどこの大学としても勇気がいるようで、
面接にまでいっているのに面接側で積極派と消極派にわかれているのがよくわかりました。
たしかにこんな怪しい、
テレビでもあまり見たこともない芸人がきたら、
問題を起こされるかもしれないし、
授業放棄されたらどうしようと思うのも無理ないです。
こういうとき、知っている人は知っているけど知らない人はとことん知らないという私のような存在は弱いっす。
それも縁っちゃ縁でしょう。
あと勇気が持てる大学じゃないとこれからの日本の大学は生き残れないかもしれないです。
いろんな大学で非常勤やってきてなんとなくそう感じています。
東北芸術工科大学では、屋号を使っても良いということだったので、
面白そうなのでこのままサンキュータツオでいくことにしました。
芸術大学では、現役のデザイナーさんやクリエイターの先生方がたくさんいらっしゃるので、
このようなフレキシブルなスタイルが普通なのも楽しそうです。話がはやい。
おなじ文芸学科にはトミヤマユキコさんもいるので、
オールカタカナの名前の日本人の先生が複数いるというナゾ学科ですね。
したがってゼミの名前もそのまま「タツオゼミ」です。
初年度は7人のゼミ生を受け持つということです。
行ったらいきなり3人とかになっているかもしれませんが。
お笑い研究する人とかもいるかもしれません。
私の専門は、笑いの文体論なのです。
早稲田で中村先生のゼミに拾ってもらって以降、
数年でもどこかで自分も恩返しとしてだれかを育てないといけないなとは
育ててもらった立場としてうっすら思っていました。
心残りなのは、15年務めた一橋大学の非常勤です。
一橋は素晴らしい大学でした。
こんな私を使い続けてくれて、留学生たちもみんなやる気に満ち、
大変だったけど、この大学で講師経験を積めたことは本当に幸せでした。クビにもせず、機会を与え続けてくれました。
国立駅に行かなくなるのがマジでさびしい。思い出がありすぎます。
忘れられない学生ばかりです。
もし生活のリズムをつかめたらもう一度。
とにかくコロナ禍に入って、
寄席芸人と非常勤講師という生活では
週5でバイト入ったほうが生きていけるぞ
ということに気づき、
どうやったら寄席芸人を続けられるかなと考えたんですよね。
『東京ポッド許可局』と「渋谷らくご」も、どうやったら続けられるかなと考えました。
専任という選択肢を考えたのは、成城大学で日本人クラスの初年次教育の授業を担当させてもらい、
めきめきと成長する学生たちの姿を見て、
でも非常勤切りというバカげた法で、ただでさえ不安定な非常勤が5年で切られるので、いろいろ空しくなったときからなんですよね。
とにかく有名になりたいとか、むちゃくちゃテレビ出まくりたいとかはなく、
そりゃおもしろい芸人としてメディア出られればそれに越したことはないんですけど、
いまの文脈だと米粒写経という独自路線芸人をフィットさせるのは、
よほど素敵なプロデューサーさんとの出会いがなければ無理っぽいし、
コンテストの価値観にはフィットしてないし、
ってことで、
やはり板の上に立って、とにかく漫才に集中したいなと思ったわけです。
その環境を整えるためにも、寄席に立ち続ける道を模索した結果ということです。
いつまで続くかわかりませんが。
最初に伝えて、理解してくれた相方の居島さんには感謝しかありません。どこまでもカッコいい男なのです。漫才これからもがんばります。
というわけで、火水木を山形、金土日月を東京で過ごします。
もちろん夏休みとかはずっと東京なので、
機会を与えていただければ寄席にも出続けます。
(お席亭さんから出演の機会を与えられないと、ヒマでも出られないのです。これは芸人として当たり前のことなので、使ってもらえるよう今後も努力します)。
例大祭も続けます。
米粒写経の談話室もあります。
「渋谷らくご」は第二金曜から5日間です。火曜は戻れるときは戻ります。
TBSラジオ『東京ポッド許可局』も月曜収録だし、4月からはじまるNHKラジオ『国語辞典サーフィン』も東京で収録です。ライフワークである、畑亜貴さんとのYouTubeラジオ『感情言語化研究所』も収録です。
ポッドキャスト『渋谷らくご まくら』と『熱量と文字数』は日本どこでも収録可能て
なんなら山形でラジオやりたいくらいっす。
人生の残り時間を考えた時、
これまでの専門と教育、米粒写経の漫才のことをシンプルに考える環境を作れればと思ったのもあります。
とはいえ、単純にいってしまえば「おもしろいほう」に振ったって感じです。
むちゃくちゃ生き方変わるってわけではないのですが。
詳しいところは、
4月10日の「米粒写経 談話室」(米粒写経Youtube)で少しお話できればと思います。
今日はこれから博多百年蔵で林家きく麿師匠との会
後半は「米粒写経 芸人探訪」の公開収録です。
タツオ
]]>新潮社『yomyom』という雑誌で連載はじめました。
61号、2020年4月号。
期限つきの連載で、3ヶ月に一度の掲載。
分量は6000〜8000字ということで、
私にしてはけっこうな文字数です。
しんどいです。
でも、現在いろいろ考えていることを、
なんとなくでも言語化するいい機会だと思って
覚悟を決めて書きました。
円城塔さん、トミヤマユキコさんとの交互連載で
「世界のαに関するカルチャー時評」
というコーナーらしいです。
ですので、季刊連載ということになるのでしょうか。
初回は、
「失った感覚と手に入れた感覚、
私たちはいつだって諦めず漸近線上」
というコラムを書きました。
友人の山下陽光が、最近「20代の男の子で、エロ本でオナニーしたことがないって人が居た」という話をしていたのですが、まさにそんなことを考えていたので、ビタッときました。
そんなコラムです。
タツオ
]]>
2020/03/26に発売になりました、
花緑師匠の文庫、そのあとがきを!
なんとタツオが書きました。
畏れ多いよ!
ゲラ段階で拝読しましたが、
めちゃくちゃ面白い!
これは、話が面白いのもあるんだけど、
花緑師匠の面白さなんですよ。
タイトルだけで読みたいのでてくるでしょう。
花緑師匠は、「努力を努力とも思っていない努力の人」つまり、天才だと思っています。
弟子の緑太さんが、入門前に師匠をはじめてみたとき「師匠が光ってみえた」とおっしゃっていたのですが、
その理由がわかります。
この師匠は、眩しいです。
想いの丈を、書かせてもらいました。
納期一週間とかでビックリしましたけど、死ぬ気で書かせてもらいました。
普段はこういう納期では受けませんので、編集者の方々、私には頼まないように。
締切が怖いのです。
「渋谷らくご」の花緑師匠、すごくいいのだ!
これまでの落語の文脈を知らない人に、どれだけこの師匠がぶつかっていくのか。
そのドキュメントがほんとに見ごたえあるんです。
花緑師匠は進化し続けてます。そこが楽しい。幸せになります。
桃李もの言わざれど下自ら蹊を成す
といいますが、この師匠の場合は、
桃李もの言いまくり下自ら蹊を成す
ですね。
タツオ
]]>
アニメ担当として3ヶ月に一度、スカパー!で観られるアニメの見どころをご紹介しています。
こんな感じです。
編集者の方やまとめてくださっている方も、アニメ詳しくない方なので新鮮。
そういう方に聞き手になってもらえるというのは本当にありがたいですね。
読んだ人のなかで、一人でも印象に残ってくれている人がいたら、嬉しいな。
タツオ
]]>
にてインタビューを受けたものが掲載されております。
ありがたいことに巻頭です。
こちらの様子は、早稲田文学2020年春号 にも転載されています。
1995年に早稲田大学に入学し、
平岡篤頼先生にすすめられる形ではじめた早稲田文学の学生編集委員。
私は、年が明ける頃には学生編集郷で「笑い」の特集をしていました。
こないだまで高校生だったのに。
そこから四半世紀たつとインタビューされるっていうストーリーができちゃうんですね。不思議です。
学術的にも職業的にも専門でもあるので、光栄なことです。
えらそうだね。生意気な。平岡先生には見せられないですね。江中先生が見たら発狂するねたぶん。
当時は泣きながら大日本印刷に自転車で入稿しにいったり再校ゲラ届けに行ったりしていた。
向井豊昭さんが新人賞を受賞した頃です。
古今亭右朝師匠、当時二つ目の柳家喬太郎師匠、立川志らく師匠、ピン芸人の清水宏さん、落語王の渡辺敏正さんにインタビューをしにいったことは私の財産です。
当時は携帯電話もなく、待ち合わせ場所を間違えたり、連絡が取れなかったりして、清水宏さんを激おこさせました。これがキッカケでこんな恐ろしいことは人生で二度とないと思えるようになったのでした。いやあ、何度も会うたびに、清水さんにはいまだに頭が上がらないのです。
読んでください。普段どういうことを考えているかわかるものです。
タツオ
]]>いろいろとメモったのだけれど吐き出し口がないやと思っていたら、そういえば半年以上放置しているブログがあった。
米粒写経の例大祭の御礼と、地方公演の告知もかねようと思って、久しぶりに更新しようとしたら、すっかりログインの暗証番号みたいなものまで忘れてしまっていた。更新したらしたで原稿を待たせてしまっている人たちにも怒られる。これが私がブログをずっと後進していなかった理由です。
◆『M-1グランプリ2019』のコンセプトは「自然な掛け合い(会話)」であった
第一期のM-1グランプリが2004年に大きく動いた(南海キャンディーズ、POISON GIRL BAND、千鳥、タカアンドトシ、トータルテンボス、東京ダイナマイト)のと同様に、
第二期のM-1は今年動いたのは、3回戦から準々決勝に残ったメンバー、そして準決勝のメンバーを見れば明らかだった。
今年の中盤に発売されたナイツ塙宜之さんの『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』では、第二期M-1が決勝15年以内の規定になった結果、ウマイ人大会になってしまったことに触れていたが(この本は朝日新聞の書評欄で紹介しました)、
そのことの影響も少しはあったのじゃないかと思えるほどに、決勝に残したメンバーはこれまでの保守本流路線とは別で、
「次の日にもどんなネタやったかだいたい覚えていられる」人たちだった。
個人的に注目していた後輩のキュウ(タイタン所属になりました)が満を持して挑んだにも関わらず、かなりウケて3回戦止まりだったこともあって、「今年は、掛け合い重視なんだな」と予感した。いかにも自然な会話ななかで笑いを取りに行く「活きた会話」。
方言だろうが、肯定したツッコミであろうが、ちゃんとキャラクターにウソがなく地に足のついた会話。コント的ではなく、その人たちが「台本を読んでいる」感じのない、普段からしゃべっていそうな会話。そんななかでも、ツッコミが「なんでだよ」系ではない、ひねりのあるもの。そういうコンビが結成10年以内にもゴロゴロいた。
なにより和牛を決勝に残さなかったのは、大会のそういうコンセプトを反映していたかもしれない。
ミルクボーイも、かまいたちも、気付いたら自然とネタに入っていた。じゃれ合いから生まれる笑いが、次第に「形」として反復され、計算された会話であることに気付いたときには次の展開に入っている。そういう漫才を良しとした。
「自然主義」的な漫才だ。
変なことを言うやつに「なんでだよ!」とか吠える様式を「ロマン主義」(お笑いご都合主義)とするなら、「自然主義」なんだよね。
GYAO!で見た決勝進出メンバーの3回戦のネタを見るにつけ、この課題がクリアできていて、きちんとインパクトも残せていたのは、ミルクボーイ、オズワルド、ぺこぱかなと思った。
からし蓮根は、ツッコミが活きているがボケの表現力がどうしても足りない。硬く見えてしまうが、そういった初々しさも悪くなかった。しかしかまいたちの自然さには勝てない。あとは敗者復活は実質人気投票なので、過去に決勝進出した人が露出が多いので有利に決まっている。ということは8割和牛といったところ。そうなるとあとはどの順番で和牛ないしそれに準じる人気者が出るかで展開が左右される。
実際に決勝のフタをあけてみれば、前半にかまいたちと和牛の直接対決が用意され、後半に注目のミルクボーイ、オズワルド、ぺこぱが固まった。
結果はご存じの通りであるが、オズワルドの点数が低かったのは解せない。彼らは決してシュールではなかったはずだ。だれもが理解できるスピードと展開で、単に「引き芸」だっただけだ。押しつけがましく笑いを取りにいくのではなく、ただ自然にゆったりと会話をする。苛立ちも隠さなかったし、声を張ったツッコミもした。予想の少し先を行く気の利いた言葉選びで、ツッコミでも笑わせてくれたし、声も良かった。どこがシュールなのだろう。
これは、「この人たちこれからなに言うんだろう」とお客さんを集中させる技術のひとつであり、前のめりなお客さんにはもっとも有効な芸風だ。しかし、大阪の審査員はともかく塙さんまでもが彼らに辛い点数をつけるのは、いくらなんでも大会に染まり過ぎだろう。あるいは、こういう「してやったり」的な芸風がそもそも好みではないのかもしれない。
しかし、M-1はトレンドを先取りする役目もある。多様性をいまから否定してしまうとこの先のお笑いの未来まで潰してしまいかねない。この手のスタイルの挑戦する人たちがいなくなる。コントや落語のほうがこういうネタをやりたい人たちがきちんと実現してしまっているのが悔しい!
私は決して好みで言っているのではない。すゑひろがりずを「古典の人たち」と一段上に置いて評価してみるのに、「引き芸」は下に見るというのは、固定観念で見過ぎではないだろうか。
私は今回、拍手が起こるほどの大きな笑い、会場がひとつになった笑いと、半分くらいの観客が笑った数を、計測した。
ミルクボーイが大16と中14で、特に序盤からピークがきてそのまま維持されたのは、まさに歴代最多得点も納得の出来だった。
しかしCMをはさんだ直後のオズワルドも、大11の中13と、少なくなかった(みなさんも、印象批評や好みで論じるのではなく、客観的な事象で論じてみてはいかがでしょうか)。むしろこの芸風での最終形態かもしれない。のきなみ90点台を出していたほかのコンビとおなじか、むしろ少し多いくらいである。
結成5年目というキャリアで評価するわけではないが、15年目と5年目を同列で扱ってこの仕打ちはどうだったんだろう。
そこまで尖っていない、だれでも楽しめる「引き芸」だったのだが、「引き芸」に対するアレルギーが国民的にすごいのだとしたら、「漫才とは普通こういうものだろう」という先入観でしか漫才を観ていないことになる。それはあまりにもったいない。
今年は「多様性」の年だった。
グルーヴを生み出し、バイブスは大事な要素だが、その発生のさせ方を狭めるのはもったいない。オズワルドはたしかに会話をしていた。掛け合っていた。「からし蓮根」よりキャリアが浅く、ミルクボーイの後に出てあれだけ堂々とやりきったのに、80点台をつけるのは少し厳しすぎではないだろうか。
そこが唯一の不満といえば不満。全体的には面白かったよね。ただ、長くておじさん疲れちゃった。
◆「審査員」に文句を言う人はM-1真面目に見過ぎ
この大会を真面目に観ている人のモノマネをプチ鹿島さんがしていて、これが面白くてしょうがないのだけれど、
今回それを思い知ったのが、審査員のコメントに「長い」とか「しつこい」とか「間延びする」とか言っている人たちが本当に多いということだ。
いや、松本さんが「ツッコミが笑うのはちょっと…」のあとの、「ツッコミが怖すぎた」は明らかなボケなのだが、それが伝わっていないってどういうことだろうか。
審査員たちも芸人さんなんだよね。しかもボケ側の人たちが多くて、ふられたら一言いいますよ。
でも観客もお茶の間もひいちゃったら、もうみんな真面目なコメントするしかなくなる。こういう観客はオンエアバトルでも見てればいいのでは。真面目に見ちゃうと、お笑いは萎縮するんだよ。大目に見ようよそこは。
でもそんな大会だれが見たいんだろう。NHKじゃあるまいし、そもそも点数化しているから公平っぽく見えているけど、公平ではないわけだし、お笑い番組なんだからおおらかに見てもいい。
ネタを見るのは集中力がいるぶん、疲れる。だから合間合間に息抜きの時間をとる。あとは尺調整もする。すべて司会の裁量で、ふられた審査員はマトモなことと、ボケ織り交ぜて、バラエティ番組であることをなんとか保とうとする。
でも、あそこでボケられる人は日本にはもうあまりいない。
松本さんや塙さんがボケても受身が取れないのでは、こわくてなにも言えないわけですよ。
そこに風穴を空けたのが、上沼恵美子さんです!!
からし蓮根を贔屓して、和牛をディスるって、これ生活笑百科とかでさんざん見た「若い男の子に甘い」上沼さんそのまんまなのに、なんかスベッたみたいになっている。司会もフォローしきれない。そうなると、上沼さんは寄り切るしかない。力技でねじ伏せてくれたわけである。会場は笑いに包まれた。こうしてM-1はなんとかバラエティ番組である体裁を守れたわけですけど、
あそこ上沼さん抜けたらどうするのだろう。
オール巨人師匠はもう来年出ないと宣言している。
冨澤さんはコメントも天才的な空気の読み具合で、パーフェクトな仕事ぶりだった。
上沼恵美子さんのコメントぶりは本当に見ごたえあった。だってガチなんだもん!生活笑百科みたいに台本めくったりしてなかったし!
あれこそ漫才師なんだよなあ。
各個人の点数にああだこうだ言うのはいいけど、仕事と役割を全うしているコメントに文句を言うのは筋違いだと思うわけです。
というわけで、ミルクボーイさんの、
「うちのおかんが好きなxがわからない」
→ヒント
→Aだろう
→おかんが言うにはZ
→ならAじゃないか Aはa1
→ヒント2
→Aだろう Aはa2みたいなところもある
→それがおかんが言うのはY
→ならAじゃないか Aはa3
というブロックの繰り返しが、雪だるま式にグルーヴを生み出したのは言うまでもない。
ちなみに、2本目の「モナカ」のネタは、
お菓子の家系図という概念も導入して、
配列に必然性を与えた(つまり縦の関係にも必然性を持たせた)ので、
2本目として最高の出来だったと思う。
それでも、毎年ちょっとずつ変えてきても完成度を保ったかまいたち、
あるいはもっとも自然な会話で笑いに繋げたかまいたちを評価したのが、松本さんだったのかもしれません。
ぺこぱも素晴らしかった。一番マネしやすくて流行るのは彼らかもしれない。
ツッコミをセンテンスで分解して、A(直感的なツッコミ)+B(思考したツッコミ)の形にした。
「さっきとおなじボケ」+「じゃない」がもっとも端的だった。
Bの部分には「という時代がすぐそこにきている」「のは俺かもしれない」「がいたっていい、だれも悪くない」みたいに変化させた。ちなみに、「言及の相手」で分類すると、Aは「相方」、Bは「観客」である。
彼らだけは「ロマン主義」でも「自然主義」でもない「新感覚派」だ。
いじられていたボケのキャラだけど、来年は毎月キャラを変えるとか、そういう遊びをしてもいい。
ネタ番組出るたびにキャラ変わってるとか。
それをしたらツッコミの汎用性がより証明される。
もし、松陰寺さんにツッコミをさせるならば、
「今年のM-1は審査員の上沼恵美子 が優勝でいい。そういう大会の形があっても僕はいいんだ。みんな、ありがとう」
というところだ。
手塚とおる局員、納得してくれたかなあ。
今日のNHKラジオ『すっぴん!』でも「漫才文体論」でミルクボーイをコピーしたネタをやりましたので、らじる★らじるで聴いてみてください。
そして今日24時からのTBSラジオ『東京ポッド許可局』で、みんなでワイワイモードです。
こういうことを書くと、「お前のネタはどうなんだ」と鬼の首とったようなこと言う人いるんですけど、そういう議論は10年くらい前に片付いているので、私のところにはコメントしないでください。
M-1メモ
・太鼓という小道具の使用はOKだったようだ。
・「腹違い」はOKだったのだろうか。
・最終決戦の笑い ぺこぱ 大9 中9、かまいたち 大10 中10、ミルクボーイ 大12 中17
※計測は手動なので、20人くらいでやって平均値をとるのが一番いい。
]]>
昨年一番ブチあがった仕事のひとつは、
竹宮惠子先生の『少年の名はジルベール』の文庫版あとがきを書いたことです。
『風と木の詩』の!
『地球へ…』の!
『ファラオの墓』の!
私の家には当たり前のようにあった名作の数々を残してくださった竹宮先生は、
『俺たちのBL論』(文庫では「ボクたちのBL論」)の私にとってはまさにいろいろな意味で
いろいろなことを教えてくださった先生です。
そんな先生の自伝、これは単行本が出版された時点で拝読して感激、
思わずラジオ『東京ポッド許可局』でも紹介したわけですけれど、
文庫化にあたってあとがきを書かせてもらう機会を得ました。
感無量です。
この本のことは、「あとがき」にすべて書いてありますので、
どうぞお買い求めください。損はしないです。
そして!
幸せのおすそ分けですが、
竹宮先生から直筆のメッセージとサイン、そしてジルベール…
死ぬかと思いました。
生きてて良かった。
2019年11月に発売された文庫ですが、3ヶ月くらいカバンにいれており、
だれかれ構わず(といっても、限られていますが)自慢しておりました。
三浦さんと雲田さんに自慢できた、私の数少ない仕事です!
少々踏み込んだ内容だったかもしれず。
掲載を許可してくださった竹宮先生、
本当にありがとうございます!
京都精華大学、就職したかったです。
タツオ
]]>
3rdシーズン開始しました。
作詞家の畑亜貴さんに呼び出されたのは本年開けてすぐ。
すぐに3rdシーズンをやろうということで話がつき、
音楽シーンで言葉や歌詞について語る人や、語る土壌がまだできていない、という問題意識をうかがって、畑さんなりの音楽に対する姿勢や考えを、多くの人に聞いてもらいたいなと思った次第です。
題して「感情言語化研究所」というコーナーが立ち上がったわけです。
アニメソングやキャラクターソングを手掛けることの多い畑さんですが、
たしかにアニソンなどを味わう人たちは、作品の世界観だったりキャラクターをより深く知るために、考察などをします。
ですが、作品と曲、という関係も楽しいのですが、曲単体のなかで歌詞の占める役割だったり、そもそも音とコトバのバディー関係に考える指標はあまりないようです。
もちろん、従来の「日々のくだらない疑問」もお送りします。
これはお金のためじゃない、畑さんの日々の考えをストレートに知ることができる、音楽ファン必聴の番組になるのではないでしょうか。
ひとまずYoutube、そして今後はnoteなどでの配信もあるようです。
初回のゲストは、「たっちレディオ」また、畑さんとプロデュースユニット「Q-MHz」としても活動している、
作曲家の田代智一さん、そして田淵智也さんをお迎えしてしゃべっています。
面白いよ。
ますます音声コンテンツ人間になっておりますが、
それが一番合ってるのかもね!
月一配信ですがこちらもよろしく。
整理すると、
月曜 NHK『すっぴん!』、TBS『東京ポッド許可局』
水曜『熱量と文字数』(Podcast)
金曜『渋谷らくご まくら』(Podcast)
NHKラジオ第1『すっぴん!』(平日朝8:30〜11:50)
月曜パーソナリティになりました。
ありがたいことですね。
以前、高橋源一郎さんの金曜日にゲストで出演したことはあるのですが、
その際に気にかけて下さり、今回のパーソナリティという流れになったものと思っております。
縁は大事にするものですね。
自分なりにできることを精一杯、楽しく、やろうと思っています。
ひたすら「自分が楽しい」を目指して、それを聞く人も楽しくなってもらえればと思います。
前任の宮沢章夫さん、
私も大ファンだっただけに複雑な想いですし、おなじように思ってらっしゃる方も多いと思いますけれど、
おなじようなことはできませんが、タツオもタツオでいいじゃないか、と思ってもらえるような放送を心掛けようと思っています。
ちなみに、近いところにいるのに、すれ違っている人ってけっこういて、
なかなか現場で一緒にならないとか、話すチャンスがない人っているんですよね。
私の場合は、いとうせいこうさん、武田砂鉄さん、宮沢章夫さんなど、入れ替わりになることが多くて、いつかちゃんとお話できるようなタイミングがあるといいなと思っています(武田さんは一度だけイベントでご一緒しました)。
きっと、時がきたら、ご一緒することもあるのだろうと、希望を持ちながら。
初回の放送は4/8(月)です。
朝の番組ですし、気楽な感じで楽しめる内容を目指したいと思います。
ですが、タツオならではの味も出したいと考えているので、一緒に番組を作ってください。ラジオはリスナーとパーソナリティが一緒に作るものですもんね!
よろしくね。
藤井彩子さんとご一緒できるのは夢のよう。あの藤井さんですよ!
2019.04
]]>2019年3月30日に発売されました。
第1部第3章「日本語のうち・そと 第二言語としての日本語教育から考える」
と、
第1部第4章の「初年次教育んおける論文の書き方指導を考える 日本語学の有効活用は可能か」
を担当しました。
後者は昨年の成城大学でのシンポジウムを文字化したもので、
ゼミの先輩でもある石黒圭さん(国立国語研究所)、飯間浩明さん(三省堂国語辞典編纂者)、そして本書の企画立案者でもある東谷先生と、四人で台風がきた日に行ったものです。強行したんですよね。
でも、全国から大勢の大学の教員の方々がきてくださり、本当に有意義な時間でしたので目を通してもらいたいです。
これまで、日本語教育に携わる先生方への指導書的な書籍には、文章表現の授業の組み立て方やカリキュラムの組み方という切り口で、何度か寄稿してきました。
ですが、大学の初年次教育(大学一年生のための、レポートや論文の書き方をはじめとした文章表現)について、間接的にでも関ったのははじめてです。
2017年から、成城大学にて初年次教育の授業を担当していますが、それより前では初年次教育は、半期ずつくらい別の大学で教えていた程度で、とても新鮮な気持ちでここ2年過ごしています。外国人に対する日本語教育とはちがった問題がよこには横たわっており、それは果たして「文章表現」といったコマで扱う問題なのか、あるいはそれ以上の根深い問題があるのか、といったことをずっと考えています。
とにかく日本の学生たちは、高校3年までに徹底的に「学校人格」での文章表現を叩きこまれ、大学や試験に「通る」ための大人が喜ぶ文章、そして人格を操ることに長けてしまっている分、むき出しの自分を学校という「場」で表現することに、慣れていないどころか、頑なに抵抗をする人までいます。気持ちはわかります。大人や教員を信用していないからです。それは、18歳までに度重なる「教育」によって身体で理解してしまったことなのです。
つまり、外国人留学生(韓国、中国といった受験が熾烈な国は状況が似ているので置いておく)のほうが、表現という「出力」に関しては、ストレートに抵抗なく「自分」を出したり「意見」を述べることができている。なんか、おなじ年齢の学生の文章を読んでみると、スタート地点が違う気がしてならないわけです。
こうした問題意識だったり、単純に文章を書く、という作業をほとんどしていなくても入れてしまう大学が多く存在していたり、そもそもの学習意欲の問題があったりと、けっこう問題は多層的かつ複雑です。
が、ひとまずは目下の現実的な課題である「初年次教育」をどうしたらいんだ、と悩みまくっている現場の先生たちが、シンポジウムにも集結したわけで、そういう方々にとっては有用な情報や考察がふんだんに盛り込まれているのではないかと思います。
谷美奈先生の章とかホントおすすめ。
要するに、専門書です。
ファンは手に取る必要はないやつです。
お仕事報告的に記録しておきました。
こういうのけっこうちまちまやってんです。この仕事は自分のなかでは比較的大きいですけど。
東谷先生、ありがとうございます。
成城の学生は楽しいです。
2019.03
]]>この一年は、所属事務所の変更などもあり、
また多くの締め切りを抱えている状態でもしブログなど更新しようものなら、「こいつこんな時間あるんじゃないかと思われるのではないのか病」にかかってしまい、まったく更新できませんでした、お許しください。
ちょろっとした情報などはツイッターなどでつぶやいてるんですけど、ツイッターもおじさんメディアになりつつあるので、こういう記録の残る感じで書いておいたほうがいいかなと思いまして更新しておきます。
というわけで、昨年所属事務所が変更しました。
【お仕事窓口】
ワタナベエンターテインメント 担当:藺牟田(いむた)
米粒写経:https://www.watanabepro.co.jp/mypage/4000093/
サンキュータツオ:https://www.watanabepro.co.jp/mypage/40000223/
【原稿等執筆窓口】
39tatsuo@herikutsu.co.jp まで
(※個人メッセージ窓口ではありません)
よろしくお願いします。
執筆仕事に関しては専用の窓口を設けております。
ワタナベエンターテイメントさん、まさかの大ポップ帝国ですけれど、実は北野にいたときから吉田会長さんはじめライブに足を運んでくださっていたのが縁で、お世話になることになりました。
同様に、マキタスポーツ、プチ鹿島もこちらの所属になりました(担当マネージャーはそれぞれ違います)。
とにかく私どものことを知ってくださっていて、なんとかしようと思ってくださった、そのことがとてもありがたいし嬉しいです。
所属になってからも、事務所のライブなどにも出させてもらいました。
生え抜きの芸人さんたちのご迷惑にならないように、ぬるっと活動しますけれど、いつか恩返しできるような存在にもなれたらいいなと思ってます。
活動に関しても、理解をしていただいていて、
昨年から今年にかけて、コンビでの活動、とりわけ地方公演などを積極的に行ってきました。
米粒写経としての活動の幅も広がり、あとはコンビで番組など持てるところまで行きたいなあと思っています。
2019年3月で終わる仕事が多いです。
また、文化に関わる、すぐに結果のでない仕事、あるいは数字の出にくい仕事はどこも削減傾向なのかも。
それで私が消えていくのであれば、それも時代の定めなのかもしれませんが、チェックメイトになるまで、まだまだしぶとくがんばろうと思います。
いつ、どんな仕事が来ても大丈夫なように、刀だけは磨いておきます。
よろしくお願いします。
タツオ
2019.03.30
]]>はじめての経験だったのでどれくらいの作業になるのかも想像がつかなかったのですが、終わってみればとても充実した二年間でした。
鞄のなかには常に本、「読みたい」から「読まなくてはいけない」になりそうでならないギリギリのラインで、それでもだれかにこの本読んで欲しいな、あるいは存在を知られていないだけでもっと多くの人に知ってもらいたい本だな、というものを書きました。
私の在任期間には、野矢茂樹先生や宮田珠己さん、山室恭子先生、小説家の佐伯一麦さん(大学一年のときに平岡先生から読みなさいと言われた小説家!)、美術評論家の椹木野衣さん、政治学者の齋藤純一先生(後輩のマザー・テラサワの指導教授だったそうです)など、個性的な顔ぶれでした。
新聞の書評においてはかなり挑戦的な書評、そして柔らかい書評をする面々が揃い、だれでもわかる言葉で本質的なことを言う人たちが多かったように思います。
私は、みなさんとご一緒して「しなやかな知性」とはなにか、と考え続けました。考えただけで、なんら身にはつきませんでしたが。
また、柄谷行人先生や横尾忠則さんともご一緒することもでき、18歳のときの自分に教えてやりたいことがまた増えました。
私が書評したのは全部で37本、昨年夏の「明治150年」の特集鼎談や「ひもとく」という特集ページでの書籍の紹介も含めると、だいたい1ヶ月に1.5本くらいの書評をやっている感覚でした。
私のだいたいの書評は、朝日新聞の「好書好日」というサイトで読むことができます。
この期間は読みたい本は後回しにして、ひとまず書評のことばかり考える毎日でした。
演芸では松之丞さんの本やたけしさんの本、上方らくごの書籍、広瀬さんの本や圓朝研究、
学術的な書籍では、重力派や坐の文明論、なぜペニスはそんな形なのか、悪態の科学、
文学ではヌーボーロマン、評論をはじめ、古典に関する書籍も紹介することができました。
日本語に関する書籍は、研究領域が近いぶん、なかなか機会に恵まれなかったのですが、それでもオノマトペの謎、ダーリの辞典など紹介できたのはうれしいです。
どれほど貢献できたかわかりませんが、日本で影響のある書評のひとつであることはたしかです。紹介すると本が売れます。重版がかかったなんて話も聞きました。
だからいい加減な気持ちでなく、心から惚れた書籍を紹介しました。
担当してくださった記者のみなさんにも感謝しています。
このような機会を与えてくださりありがとうございます。
いやー、それにしても芸人が書評委員をやる日がくるなんて。
最初の一年は最年少だったしリズムをつかむまでに時間かかった!
書評するタイミングがなかったけれども、ほかにも良書に巡り合うことができました。
これまで献本などもいただきましたが、一冊も読む時間がありませんでしたので、それじゃ意味がないと叱られそうですが、これからこっそり読もうと思います。
そして、これは委員を終わってから読もうと楽しみにしていた本も、これから読んでやろうと思います。
なんか隔週だったんだけど、この委員期間中にご一緒した方々との時間は、宝物でした。
タツオ
2019.03
]]>
TBSラジオ『荒川強啓デイキャッチ』
2019年3月で放送終了しました。
思い出がありすぎてなにも書けません。
この番組によって私は世に出たと思っておりますし、「メキキの聞き耳」での論文紹介、お笑い文体論を経て、書籍に繋がったりもしました。他局からもお声がかかるようにもなりました。
2014年からは「ニュースランキング」のニュースプレゼンターとして毎週木曜日に出演していました。
プチ鹿島、阿曽山大噴火という、昔から近いところで活動しているふたりと、出勤は半分とはいえばおなじ並びで仕事ができるのは悦びでした。
私が大学に入った1995年からはじまったこの番組、
思えば気付けば聴いている番組でした。
強啓さんの軽さ、それは毎日聴ける番組に必須のものと私は思っています。
どんなに真面目で重たいニュースでも受け止め、それでも真面目すぎず、ふざけすぎず。
対象との距離感があるからこそユーモアが出てくる。
芸人としても、人としても、これから生きるときに必要なことは、すべて、強啓さんに教わりました。
そして横浜ベイスターズについての想いを毎週木曜にぶちまけることも、もうなくなるかと思うと少々怖いです!
とはいえ、強啓さんが死ぬわけではないです。
強啓さんのことは最後の指導教授だと思っています。
こういう心の師ともいえる人が、私には気づいたらいてくれることが、なによりも幸せです。
これまで聴いてくださった皆さん、
関わってくれたスタッフさん、
杉浦舞さん、片桐千晶さん、
ありがとうございます。
強啓イズムを引き継げるよう、適度にがんばる。
タツオ
2019.03
]]>竹書房『談志独演会 一期一会(上)』
が2018年12月に発売になりました。
今回、私はこのシリーズの解説を担当しました。
CDでいうライナーノーツ的なものです。
正直言って畏れ多いです。
そして私なんぞが語ってはいけない巨大な存在です。
関係者の皆様には本当に申し訳なく思っております、
いろいろな方を差し置いて、と言われることも目に見えてますが、
お引き受けすることになったのです。
私よりふさわしい、資格のある方はたくさんいらっしゃいますし、
私には資格すらないと思っています。
とはいえ、これから立川談志を知る人にとっても、次世代との年齢が近い人が書いてみてもよいのではないかという制作者の意思を無碍にすることもできず、こうして世に出るまでになりました。
私は立川談志師匠を、なぜか「家元」と呼べません。「談志師匠」としか呼べません。
「家元」というと、どこか、仲間意識というか、連帯感のようなものがあるのかもしれませんが、
私にとって談志師匠は存命中も、そして亡くなってからも、
ずっとずっと遠い存在で、おいそれと「家元」なんぞという資格もない人間だと思っています。
でも、ひとつだけ自信をもっていえることがあります。
それは、談志師匠の落語が大好きで大好きで仕方ないということです。
こんなにピュアでロマンチストで粋で、面白い人はいないと思っています。
こういう最終形態を見せてくれたってことだけでも、もう感謝の気持ちしかないです。
というわけで、(上)に収録の8席に関して、
2018年の夏は何度も聴き、また過去の音源もあたり、聞き比べ、さらに記述のある書物を読むとか記録をひもとくとかして、談志漬けの日々でした。
それでもやっぱり飽きません。それどころか、まだ面白いです。
「線」で追う楽しさを最後まで提供してくれた人です。
そういえばこの年、「立川談志」は広辞苑に掲載されました。
まさか私がその広辞苑にちょっぴりとでも関わることになろうとは。
90年代、何度も「やかん」や「洒落小町」にぶつかっていた私に教えてやりたい。
ちなみに、私の担当ジャンルであった「田河水泡」の項目に、「落語作家としても有名。」の記述を入れたのは私です。
「猫と金魚」とかも入れたかったんだけど、それは叶いませんでした。
8席分の解説、買ってくれた人には、読んでもらいたいなあ。
渾身の力で、でもマニアックにならないように「文脈と味わい」を書いたつもりです。
(下)も出ます。そこでも全高座の解説を担当しました。
そうです、つまりずっと談志漬けです。
この噺のことを、談志師匠はどう思っていたのだろうか。そんなことを毎日考えています。
「ずっと考えさせてくれる」
そんな人なかなかいませんよ。
マニアからは袋叩きにされても構わないのです。
50年後くらいに、立川談志って人を聴いてみようと思った人が読めるものを心がけました。
2019.03
]]>
春日太一さんとの共著『ボクたちのBL論』が河出文庫から発売されました。
河出書房新社さんありがとうございます(担当の岩崎さんに感謝)。
こちらは、2016年の『俺たちのBL論』という単行本から大幅な加筆週世うを加えて改めね世に出した文庫です。
およそ2年半の間に、BLを取り巻く環境はまた激変し、
春日さんの腐メガネはクリンビューかけたんかというほどクリアになり、
最終的に、いま語っておかねばならぬことを一生分加筆するという、マジで大幅な加筆が行われました。
注なども2018年版として書き換えた箇所もあり、文字通り「版ちがい」といったくらい内容が変わりました。
出版記念イベントにも、私の聖地「ブックファースト新宿」(内田さんという超優秀な棚担当者のいる書店)に大勢の方がいらしてくださり、マジで感謝サンキュー★
せっかく来てくれたんだからと、当日限定のペーパーなんかも力入れて作ってきたりして、楽しい時間でした。
ペーパーの一部。
「信頼している腐女子」というテーマで何人かご紹介しました。
いやマジで環境変わりましたよ。
そしてもう引き返せません。
こうなると、この本が少しでも相互理解の手助けになると思います。
だいたいの壁やすれ違いは、想像力で補える、想像力がすべてを解決に導く、と私は思っています。
自分を否定されないかわりに、相手も否定しない。
そういう人間としての大事さも、BLから学べる!
というわけで、未読の方はぜひ買って読んでみてね。
タツオ
2019.04
]]>
昨年秋からKADOKAWAさんの月刊誌『ダ・ヴィンチ』にて、
ブックウォッチャーという形で連載の場をいただいています。
こちらも任期いっぱいまで精一杯やろうと思っています。
ぜひ、読んでみてくださいね!
こんな感じです。
いやー、それにしても『オフザロード』という本の感動がいまだ冷めやらず。
趣味全開のギンギンのやつです! 車好きは最高に楽しめる!
こういう本待ってたわァ。
そう思える本を毎月ご紹介しています。
なにかのキッカケになれば!
チェックしてね。
2019.04
立川談志『談志 最後の落語論』ちくま文庫(税抜き740円)
解説を執筆しました。
こちらもなんでお前がいけしゃあしゃあと書いてやがんだ案件なのですが、
もううだうだ断っていても仕方がない、
あの人もこの人も断ったのでこれも順番なので
と言われたら、もうやるしかないじゃないですか。
と、いろいろ業界のことをご存じの方は、察していただけるかもしれませんが、
それはそれとして、
40代前半の私がお引き受けするからには、存命中のファンのみならず、これから「立川談志」を知る人に読んでほしい、という想いを込めて、この本が全体のなかでどういう位置づけのものなのか、そしてこれを書き残したのはなぜなのか、どこに重点を置いているか、などをはじめて手に取る方にご理解いただけるよう書いたつもりです。
すでに、談志師匠を追いかけてやまず、家元のことならなんでも聞いてよという方にはあまり新鮮ではないかもしれませんが、それでもこうして談志師匠が亡くなって数年が経ち、落語界を取り巻く環境がこれだけ変わってきたなかで、いま談志師匠を読む意味聴く意味というものも、大きく変わってきていると思います。
「談志最後の落語論」で検索すると、2009年に私がこのブログで書いたものがわりと上位に出てきたので、ああそういうことかぁと納得もしたのですが、とにかくこの頃はテンション高めで天真爛漫に感想を書いていたものです。
「江戸の風」というワードが独り歩きした印象のある本書ですが、個人的には談志師匠のなかに(師匠は直接は言わないけれど、小さんのエッセンスと)志ん生のエッセンス、ひいては志ん生の引用元というかインスピレーション元である金語楼、三語楼、あるいは先代権太楼までたどって紹介している点は歴史的にみても非常に意義深いと思います。
志ん生師匠好きは多いけれど、出典元やインスピレーション元、はたまた共通するエッセンスをもつ先人をしっかり明記したことの重要性です。談志師匠自身もっとも影響を受けたかもしれない人について、そこで思考停止せずに、なぜ志ん生は志ん生となったのかを独自分析しているのが面白いです。
編集者とは一度も会ったことがないし会いにも来なかった、
その上再校チェックなどをさせてもらえなかったので『家元談志のオトコ対決十一番』がなぜか『オトコ対決八番』などと信じられないミスもそのまま印刷されたりしていますが、書名のミスは許されないものと思います。
この場を借りて修正(といっても修正にならないと思いますが)しておきます。
このまま再販も出ないとなると、何十年後かに本書を手に取る人に、タツオが署名間違ってると罵られること必至なのですが、それでもそれで済むならば良しとしましょう。談志師匠にさえ傷がつかなければ!
やー、そういうわけで、2018年の夏は、DVD見たりCD聴きまくったり全集読み返したりで、ホントにホントに談志漬けだったのでした。談志師匠、死んだんだろうか。そこがもうわからなくなってきている。
2019.03
]]>
2018年10月7日発売でした。
表紙にもあるように、ニッポン放送の吉田尚記さんと対談、12ページに渡り巻頭で展開されていますが、それでも足りなかったくらい。
非常に充実した紙面です。
これは必読、資料的価値も高く、オタクにとってこの30年はまちがいなく受難の時代を経て、多様性の時代、
異文化共生をいちはやく実現したということを確認されたい。
年表だけでもマジですごい。
目次見ただけでも「あ”−」ってなるので。
新紀元社さんといえば、『腐女子あるある』なども出版しているところですが、オタク文化がどういう変遷をたどったか、力のこもった原稿がたくさん。
これはマジで入手しておいてほしいところ。
よろしくお願いします。楽しかったな、たしか、暑い日に秋葉原で、吉田さんと対談しました。
2019.04
]]>
そういえば
に寄稿しました。
発売日は2018年8月20日となっております。
「14歳の世渡り術」シリーズで、14歳くらいの人たちにオススメしたいアニメをひとり一本という趣向。
私は『マリア様がみてる』をプッシュ!ガチで。
だって素晴らしい。だれが観たって素晴らしい。
どう思われようとも私はこの一本。
アニメ評論家の藤津亮太さんも寄稿しているし、
いまや作家となった原田まりるちゃん、
「マリみて」の由乃ちゃんでもあった池澤春菜さん(には私が書いたことはバレていなければよい)、
百人一首の書籍も素晴らしい最果タヒさん、
実は許可局員!?の羽田圭介さん、
さやわかさんが『とらドラ!』選んでくれているのも嬉しい!
マリみては、昨年同人イベントなどもあったりして、いまだ忘れられぬ人々の多い作品。
嫁にするなら祥子さま、お付き合いするなら由乃ちゃん。聖さまと蓉子さまは眺めたい先輩。
同人ではトリックスターの黄薔薇ファミリー。
妄想だけで生きていける。実写映画も、がんばってたんだよ!
波瑠さんってこれで覚えたんだから。波留とはいえば横浜の2番ですけど。
ちなみに実写映画の祐巳ちゃん役をやっていた未来穂香さん(現 矢作穂香さん)が、『鈴木先生』に出ていてナイスキャラだったときはビックリしたなァもう!ときめいたぜ。
2019.04
]]>
という低温度ネタ限定ライブを新宿プーク人形劇場で開催します。
ここでの更新はものすごく久しぶりですが、
それだけにこのライブにかける意気込みというか、歴史的位置づけがハッキリしているものもほかにないので、
ご都合がつく方は来てほしいです。
お笑い面で、もっとも自分の濃い部分がドロッと出るライブです。
「ていおん!」なるライブがどんなものかは、こちらの記事をクリックしてください。
今回も、POSION GIL BAND吉田さんによる漫才ネタ(トリオ)、
そしてゲストに太田プロ クロヤギ、わがオフィス北野からは先日所属したばかりのキュウに出てもらいます。
大声でツッコまない、スピードで圧倒しない、尺がやや長い、どこで笑ってもいい
というコンセプトです。
これは逆にいうと、スピードでまくしたてて大声でツッコんでる短いネタで、みんな笑うところが一緒っていうお笑いへのアンチテーゼです。否定はしません。でもこういうのもあっていいでしょう、という提案です。
こういうのは、細々ながらでも、なきゃいけないんです。
どのジャンルでも、そうなんです。お笑いには、なかなかいないです。芸人も経済動物なので。
14時からと18時からの2回公演です。
90分くらいのイベントになると思います。
前売り1500円、ローソンチケットで買えます(クリックしたら飛べるよ)
当日券も、もちろん用意しております。
出演:
サンキュータツオ(米粒写経)、インコさん、ナツノカモ、おさむ・やす(昨日のカレーを温めて)、小林すっとこどっこい(がじゅまる)、広田・服部(シルキーライン)、しまだだーよ/岡本・能崎(クロヤギ)、清水・ぴろ(キュウ)
音楽:森野誠一(risette)
作:
OPコント「2億円」 (全員)
漫画研究部(おさむ)
タクシー(ナツノカモ)
じゃんけん漫才(POSION GIRL BAND吉田)
図書室にて(やす)
キュウ 漫才 ※昼夜別 キュウの漫才
ベンチにて(しまだだーよ)
どんぐり漫才(ナツノカモ)
クロヤギ コント ※昼夜別 クロヤギのコント
苔太郎(タツオ)
キャッチボール(ナツノカモ)
※多少の変更はあるかもしれません。
今回も素晴らしいネタが揃いました。才能が揃っています。
どんなオーダーにも対応できる作家集団。それでいて出演も表現もできる。
前回、上演には至らなかった、しまだだーよ のネタがあがりました。
また、昨日のカレーを温めて の やす の作ったネタが初お披露目です。
いろんなタイプのネタを集めました。
順番も、私が考えました。ライブのコンセプトと、運営、それが私の役割です。
もちろん、作ったネタもありますし、出るネタもあります。
どれもほかのライブではお目にかかれないものです。
そして徐々に脳みそがとろける体験へと誘い、最後はほかのライブでは感じない身体にしてさしあげます。
なぜこうしたライブを立ち上げたか、もう少し詳しい情報はこちらの記事を読んでください。
21日(日)、
14時からと18時から。
どちらもお席に余裕があります。
すっかり落語会のほうの宣伝ばかりしている人みたいになってますけど、
お笑いへの情熱は冷めていません。というか、これはリアルな戦いなのです。
新宿プーク人形劇場という素敵な場所でお待ちしております。
]]>
「東京ポッド許可局」
そのジャパンツアーを、
今年は4月愛媛松山、5月は金沢、6月は札幌、7月は福岡、8月は名古屋、
そして9/16に東京有楽町よみうりホールで行いました。
ご来場くださった全国の許可局員、ありがとうございます。
いままで夏は2000人規模でやってきましたし、いつも満員のお客様だったので、
今年はやや小さめのホール、すぐ売り切れてしまって、
来られず悲しい想いをした方々もいらっしゃると思います。
いま、東京には小屋がありません。
2000人規模は特に争奪戦が激しく、地方の方も来られる土日がないんですよね。
まずは、来てくださったお客様にありがとう、
来られなかったお客様にすみません、
そんな気持ちのツアーでしたが、
その代わり今年は「会いにいけるおじさん」から「会いに行くおじさん」に。
2017年は地方を巡ろうということで、
地方公演をやったわけです。
各公演での様子は販売したパンフレットに詳しく書かれていますので、
割愛します。
2008年3月、ネットの片隅でひっそりとはじまった番組が、
3年後の2011年には最初の日比谷公会堂、
その後2013年からTBSラジオという最強の地上波ネット局で放送されることになり、
その後も28時から27時台、現在の24時台と時間を変えて続いており、
来年で10周年を迎えます。
トリオでもない私たちが、
どこまでいきなにをみせるのか、
これはひとつの時代を象徴するなにかだという使命でやってます。
おじさんが3人ではじめて、3年で日比谷公会堂って、
ちょっとお笑い界では異常事態なのです。
時代に選ばれているものなんだと思います。
普通のペースではない売れ方なので。
ただ、私たちは常にこの「東京ポッド許可局」でなにができるのか、
つねにおもしろいほう、売れそうなほう、
こういった手法を試してみたい、こういったことをやってみたい、という、
「攻めの姿勢」を貫ける体制は維持しています。
もしこれがネタで天下取ろうみたいな、
従来のメディアの売れ方に依存した形をとっていたら、
きっともっと守りに入ってしまいます。
こういうこというのやめようとか、
ウケたほうでいこうよとか。
でも、私たちはトライアンドエラーを続けてここまできました。
おもしろい選択肢で勝負してきました。
2017年はそういう意味では、全国6か所のツアー、
そしてゲストを入れないストロングスタイル、
さらには各公演でのパンフレット販売、などです。
これまでの知見を活かしつつ、さらになにかを積み上げられないかを考えています。
TBSのスタッフは、放送でもイベントでも、いつももっとも私たちにストレスのかからない環境を用意してくれ、
また「自由」を与えてくれています。
これはやめろ、あれを話すべき、こう進行しろ、はなにも言いません。
また、今年から放送のスポンサーについてくださったレナウンさんも「金は出すけど口は出さない」をモットーにしてくれていますし、
hontoさんも、特定の出版社の書籍だけを扱ってくれなどとは一切言わず、また選書もすべて自由にやらせてくれます。
こうしたスポンサー様にも恵まれています。
「自由」をこの番組のコンセプトといってもいいかもしれない。
「自由」をブランドとしたとき、集まってくる人たちが、仕事仲間なのかもしれない。
必ずリスナー、制作スタッフ、スポンサー、そして私たちが満足できるものを、
これからも追求します。
こうした「なにか」にチャレンジできるのは、
実際に毎週番組を聴いてくださっているみなさん、
そしてつぶやいたり、物販を買ってくださり、「目に見える結果」を出してくれる人がいればこそ。
そうすれば、愛のない人も動かすことができます。
全国の会場に来てくださった許可局員の姿を見れば、
この番組が上向きか下向きか、この目にはるかはらないかは一目瞭然です。
だから、頼もしい。
番組のことはお客さんを見ればわかります。
いろんな関係者は口を揃えてこういいます。
「こんないいお客さんは、どのライブシーンにもなかなかいない」と。
ありがたいことです。
許可局でできることはまだまだありますし、
まだまだ知られていない場所がたくさんあります。
「都市型政党」とはよく言ったもので、
温泉で中国人観光客に間違われたマキタさん、
松山では半分の客入り、
私なんかは街を歩いていても私のことを知っている人はほとんどいません(だから楽でいいんですけど)。
ですけど、だれにでも知られる必要はないにしても、
まだ私たちのことを知って喜んでくれる「潜在的許可局員」はたくさんいるはずです。
出会うべくして出会う。
そのキッカケをもっともっともてるといいなと思っています。
極端な話、許可局というユニットと番組は、
どんな遊びでも受け入れる土壌と覚悟がありますので、
これからもまだまだ攻め続けます。
いつ終わってもいい、というのは覚悟の気持ちの裏返しです。
だからなんでもできるんです。
こわいものなんかないんです。
だから、長く続けることも大事ですけど、
それを目的としているわけではなく、
もっとおもしろい状況にすべく活動してます。
だから、あなたの時間とお金を私たちに割いてくださっているその労力を、
けっして無駄にはしません。
これからも追いかけ続けるように。
いつもありがとうございます。
ごきげんよう。
2017.09.17
]]>今年も二日間やります。
10/31(火)、11/1(水)です。
チケットはこちら!
『米粒写経 例大祭』
初日にけっこう売れたらしく残席が限られてきました。
8/26『米粒写経のガラパゴスイッチ』でも用意していた先行チケットは完売。
ありがたいことです。
◆米粒写経が今年も「例大祭」開催、落語協会入りも決まって新たな意気込み
お笑いナタリーさんが記事にしてくれました。
ありがたい!
そうそう、この8月1日から落語協会に入りました。
今後は、都内の寄席などでもお会いできる機会があるかと思います。
なるべくネタを少しずつ変えて自分たちも楽しめるようにしていきます。
『米粒写経のガラパゴスイッチ』に出てくれた春日太一さんと。
寄席、そして『例大祭』で待ってるぞ!
2017.08.30
]]>
朝日新聞の毎週日曜日の書評欄に、書評を書いています。
「書評を書く」って言葉が重なっていそうで重なってないやつですね。
隔週で委員会に出席し、まず読む本をゲットします。
書評委員全員で集まって、読みたい本に入札していき、入手できるかどうかがカギになります。
また、この委員会で、読んだ本の感じを全員の前で述べます。
人の本の感想というのはとても面白い。また、この委員会ではなぜ読んだ本を書評しない道を選んだのかということも述べ合うので、大学院のゼミのときのような雰囲気もあって大変勉強になります。
現行のメンバーになってからは、私が一番年下なので、勉強になることばかり。
そろそろ委員のみなさんの顔と名前も一致してきて(お名前は以前から存じていたが、顔を知らない、といったパターンが非常に多いんですよね。みなさんタレントではなくて専門家なので)、毎回行くのが楽しみです。
タイミングが合えば書評を書かせていただく機会を与えられ、
400字、800字、1100字と求められる分量を書いていき、掲載となるわけです。
紹介したいけど、タイミングが合わなかったり、
読んで楽しかったけど書評には向いていなかったり、
似たようなジャンルが重なって書評できなかったり、
ほかの人に取られてしまい書評できなかったりすることもあります。
だから、読んで楽しかった本の書評が無事掲載となったときは、なにかその本と運命めいたものを感じます。
本を読むことが仕事になるなんてこんな幸せなことないじゃないかと、10年前の自分なら言ってかもしれないですけど、
この仕事は責任重大です。
責任の二文字が嫌いでこの職業に就いているところがあるので、なかなか複雑ですが、どうにか折り合いをつけて楽しんでいる。
先日は『ゲームの支配者 ヨハン・クライフ』という大書を書評しました。
これまで書評する機会に恵まれた本(運命の本たち)は下記のような本です。
ジェシー・ぺリング著 鈴木光太郎訳
『なぜペニスはそんな形なのか ヒトについての不謹慎で真面目な科学』(化学同人)
長谷川昌一著
『オレたちのプロ野球ニュース 野球報道に革命を起こした者たち』(東京ニュース通信社)
樫尾幸雄著 佐々木達也(聞き手)
『電卓四兄弟 カシオ「創造」の60年』(中央公論新社)
出口逸平著
『研辰の系譜 道化と悪党のあいだ』(作品社)
内藤正人著
『うき世と浮世絵』(東京大学出版会)
山本淳子著
『枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い』(朝日選書)
窪園晴夫編
『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』(岩波科学ライブラリー)
武田康夫著
『地球は本当に丸いのか? 身近にみつかる9つの証拠』(草思社)
ディートリッヒ・シュルツェ=マルメリンク著 円賀貴子訳
『ゲームの支配者 ヨハン・クライフ』(洋泉社)
これまでは以上の9冊。400字のものもあったけど、当然のことながら上記のプロセスを経ているので、私にとってはどれもおもしろい本でした。
もちろん、書評にいたらなかった本も幾冊もありますが、そこは縁なのでしょう。
自分なりに考えを整理することと、知らない人に興味を持ってもらうような場所で書評するということ。正解のわからない難しい作業ですが、だからこそやりがいのある仕事だともいえますね。
芸人が書評書くなんて、と思われる方が読者のなかにも、著者のなかにもいらっしゃるかもしれませんが、
私はあまりそういうのは気にしない質です。ようは「なにを書くか」で勝負するものだと思っています。
肩書で勝負しているわけではないです。
これまでうれしかったのは、書評欄に、オードリーの若林さんがインタビュー掲載されてて、ピース又吉さんの小説が書評されてて、私が書評を書いていたっていう日でしたね。三人も芸人が書評欄に登場した記念日でした。
『研辰の系譜』の出口先生はわざわざお礼状まで書いて送ってくださり感謝です。
本は、書いた人が一番えらいです。感謝をいうのはこちらです。
書評は、たくさん書いて文字数削っていくのも大変、そのぶん命も削ってます。
けれど、楽しいです。
あと1年半がんばる!
ということで、なにを言いたいのかというと、私はこのほかにBLなども読むので忙しいので、献本などされても読むひまがないので献本とかはしないでください、読みたい本は買います、という話。
って、かわいくないね☆
2017.08.30
]]>5月の下旬に『もっとヘンな論文』という本を
KADOKAWAさんから出版しました。
あまりに忙しすぎてツイッターの告知しかできない期間が長すぎました。
大学が夏休みに入りかけていて落ち着いていまブログ更新中。
毎日ギリギリの時間で働いてるわけですよ、
こちとらNBAとツールとアニメと横浜ベイスターズを追いかけている忙しい身なので。
というわけで、
お願いです買って読んでください。
つまるところ、
こういう本が出せて、そして売れるってことに、
いまの自分の存在意義があるわけです。
売れなくなったら表に顔出して活動している意味半減ですからね。
本が売れなくなったら即引退!
というわけで、出版記念イベントは、
紀伊國屋書店さんのイベントホールで、
「「坊っちゃん」と瀬戸内航路」の山田廸生先生をお迎えして、
ニギニギしくお送りしたわけです。
たまんないなあ!子どものころから知ってるあの紀伊國屋書店でイベントできるなんて。
この本は研究の楽しさの詰まった一冊になったと自負しております。
いろいろネットや雑誌やラジオで、インタビューなど掲載されています。
よかったら読んでみてね。
●「おっぱいの揺れとブラのずれ」…サンキュータツオのヘンすぎる研究に爆笑、感動! 学問の奥深さにふれられる名著
こんなわかりやすい釣り見出しあるかよ!しかも前著のだよ!と、日本で一番早くツッコミましたが、大目に見るように。
●世の中には「おっぱいの揺れ」を研究している人がいた…おもしろすぎる「ヘンな論文」たち
結局「おっぱい」ばかり取り上げるのね…。少しおっぱいばかり見られる女性の気持ちがわかる気がします。
ま、いろいろ大目に見てくれ。
2017.07.26
]]>東谷護先生にお声かけいただき、文章表現の授業をやることになりました。
しかも初年次教育といって、
大学入り立ての10代の子たちに、
書く、読む、議論する、
みたいなの教えてねっていうザックリ授業で。
さらに、
授業を受ける学生は、
自動振り分けでただそのクラスになるわけで、
つまり取りたくて取っている授業ではないという、
行きずりの関係なわけですよ。
ぶっちゃけ日本の大学生のやる気のなさって
日々留学生に触れているとうんざりしちゃうし、
しかもこちらのことにもまったく興味なし、
ただの消化試合という状態に、
どうしようかと授業をはじめる前には思いました。
大学は小田急線の成城学園前、
木曜の午後は13時入りでTBSラジオの「デイキャッチ!」の仕事が毎週あるのだけれど、
小田急から直通でいけちゃうので2限に授業ができてしまうこともあり、
こうなりゃ怖いもの見たさでやってみるか!
と、日本人相手にやりたい放題やっちまおうと意気込んだわけです。
しかしこの大学の学生たちは、
おおかたやる気があり、
大学に入り立てっていうのもあるのか、
まだうぶでちゃんと話を聞いてくれました。
(もちろん最初から寝てるバカは一定数います。
お金払って朝から寝に来てるわけですが、
自分の大学生だった頃は授業すら来ていなかった系だったので、
まったく否定できません。後になって後悔してくれたらそれでよい)
文章も面白いのから真面目なのから、
いろんなことを書いてくれて、
毎週手書きでちょっとした文章を書いてもらったりして、
それを授業でシェアしたりもしたんだけれど、
最終的には文字を見ればだれのかわかるくらいのとこまでいけました。
できれば、1年生の彼らが、4年の最後の半年を迎えるとき、
もう一度おなじメンバーで授業したいなと思ったんだけど、
もう彼らにも会うことはないです。
3ケ月の授業。どんな大人になるものやら。
3ケ月、はじめての大学での、はじめての授業というのは、
教える側も教わる側も特別です。
彼らの人生のなかで、
一瞬でも私の言ったことが活きるシーンがあれば最高。
2017.07.26
]]>
この大学で教えるようになったのは2008年。
というわけで、10年目なんですよねかれこれ。
私の場合、芸人として雇われたわけではなく、
日本語学の博士課程を終えてから、
日本語教育の人間として雇ってもらえた最初の大学。
その大学が、4学期制を導入するにあたり、
この4月から1コマ105分、それを2コマ、
さらに学生が最初は爆発的に増え、
このままだと過労死ってところまでいきましたよ。
なんで105分になるのかっていうのは、説明すると面倒くさいんで省きますけど、
人間の集中力って105分持たないです。
教えてるほうだって、芸人の単独2回廻ししてるのとおなじですから。
正気の沙汰ではありません。
しかも学生は一日何コマもあるわけです。
なんだかんだGWを過ぎると、
人数の絞り込みに成功し、通常運転より少し多いくらいの人数におさまりました。
一橋では日本人学生ではなく、留学生に教えています。
半年でのお別れ。
この3ケ月で、一生会わない人もいます。
国に帰って働く人も、こちらに残って研究する人も、
また別の国に留学する人も。
人間交差点なわけです。
今期はバチクソ優秀な韓国人留学生がおり、
感動しました。
外国語であの領域までいけるって、
どんな気持ちなのだろう。
毎週水曜日、この大学に来て、
日常のいろいろをリセットします。
それくらい、国立の街自体が好きです。
生まれ変わったら、一橋大学に入学して、
ちゃんと恋愛をして、留学したいですけど
大学受験できっとくじけることでしょう。
2017.07
]]>
拙著『もっとヘンな論文』の著者インタビューを掲載してもらいました。
見開き2P。
とても丁寧に取材してくださった方で、
ライターさんの魂のこもった記事です。
『もっとヘンな論文』読んでね。
2017.07.26
マキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオの番組
『東京ポッド許可局』が、
なんとあの「TVブロス」に5Pインタビュー掲載。
いやもうこれ表紙でいいんじゃないですかね?
ラジオ番組のおじさん3人がテレビ語り雑誌の表紙とか、
こんなにロックなことないと思うんですけどね。
それにしてもうれしい!
ブロスはマキタさんのホームグラウンドみたいなとこあるので、
なかなか入り込めない雑誌ですけど、
これだけ活字読むのが好きな人が買う雑誌もないという、
まさにこの読者に知ってほしいが詰まっている。
鹿島、タツオによるマキタ論、
マキタ、タツオによる鹿島論、
マキタ、鹿島によるタツオ論、
プラス、昨今のメディアに「本物」がどれだけ求められているかという話など。
読み応えMAX。
これだけ許可局のことを理解しているライターさんと雑誌はほかにないでしょう。
ライター、おぐらりゅうじさんに感謝。
こちらでのお知らせ遅くなってすみません。
2017.07.26
]]>
現在発売中の
いろいろお知らせなどあったのですが、
取り急ぎ、4月23日に下北沢シアターミネルヴァという劇場で、
私プレゼンツによる 低温ネタ限定オリジナルライブ
「ていおん!」
というのをやります。
お笑いナタリー:サンキュータツオが低温ネタ限定ライブ開催、声を張らない、スピードで圧倒しない
概要は、この記事の通りです。
14時からと18時からの2回公演です。
90分くらいのイベントになると思います。
前売り1500円、ローソンチケットで買えます(クリックしたら飛べるよ)
https://goo.gl/gKicGU
出演:
出演:サンキュータツオ(米粒写経)、インコさん、中村シュフ、ナツノカモ、昨日のカレーを温めて、小林すっとこどっこい(がじゅまる)、シルキーライン、荒ぶる神々、嶋田
作:
「病院の診察室」山下修(昨日のカレーを温めて)
「飯テロ」吉田大吾(POISON GIRL BAND)
「歩きスマホ」「どんぐり漫才」「海で待つ」ナツノカモ(構成作家)
「娘さんをください」サンキュータツオ(米粒写経)
「スーパーの張り紙」「心の闇」中村シュフ(専業主夫芸人)
「山ちゃん」リタ・ジェイ(小説家、イラストレーター/コントライブ「実弾生活」主催)
※多少の変更はあるかもしれません。
大勢で何度もネタを書き、書き直し、検討し、どのネタをライブにかけるか検討してきました。
メディアで観ることのできるお笑いは、「声が大きいツッコミ」で怒っているように見えて、ものすごいスピードでまくし立てて集中しないとなにを言ってるか聞き取れないくらいで、時間が1分〜3分、あるいは一発ギャグのような、見てすぐわかる宴会芸。
そして「小学生でもわかる」ことを前提にされてしまうので、
どうしても似たり寄ったりのなかでの戦いになってしまいます。
笑いにはいろんな種類があって、もちろんブラックユーモアとか、社会風刺とかもあるし、そういったものもメディアに乗りにくいです。時事ネタもそうです。笑いにはタブーが多いです。
私がやりたいのは「テレビで観れないネタ」というわけではありません。
ですが、結果的にテレビではなかなか観ることができないネタです。
それは、そんなに声は張ってないがたしかに会話として聞こえる声で、ちゃんとした会話っぽいスピードで、ちゃんとした会話っぽい長さの、なんだかよくわかんないけどおもしろいフレーズとか展開とか、それはもちろんわかる人もいて、
というネタです。
漫才とコントです。
私は毎月お笑いの勉強会で顔を合わせている、いろんな立場と職種の人たちと、半年くらいかけて、このライブを企画しました。
みんなネタが書ける人たちです。
なんでこういうことをやろうと思ったかというと、自分のコンビではできないことだからです。
米粒写経には米粒写経の個性があり、居島さんの個性が輝くネタがあるからです。
そして、個人的なお笑い観でいえば、私は自分たち以外だと、POISON GIRL BANDやスリムクラブやラバーガールといった人たちに相変わらず興味があるし、そういった人たちを面白いと思っている人たちをもっともっと掘り起こしたいなと思っています。
私は「渋谷らくご」という落語会を毎月主催していますが、落語には低温ネタが比較的多いです。笑わせるポイントが「ズレ」とかだけではなく、人間の駆け引きだったり、真意と行動の落差だったりするからです(人によってはこれも「ズレ」で説明しようとする人がいますが、私はそういう立場ではない)。
私が好きだった浜口浜村というコンビが解散しました。
2017年現在、彼らに限らず、名前のあるコンビや芸人さんが、お笑いだけでは、ネタだけでは食べていけずに解散しています。
全国ネットのコンテスト番組に出てもアルバイトをしないと生きていけない、それくらい上が詰まってるし、もはやジャンルが人を支えられなくなっているのが現状です。
でも、私は浜口浜村の漫才を、もっともっと多くの、一年に一回しかお笑いを見ないような人にも、見てほしかった。
でも、競技性の高いコンテストでは、スピードがあって笑い処がたくさんあって、わかりやすくて声張って「なんでだよ!」ってツッコミをする人たちがもっともよくウケます。それは、この20年変わっていないことだと思います。
お笑いだけではなくて、映画や、アニメや、小説にしても、わかりやすくて、めちゃくちゃ筋がおもしろくて、だれもが知ってるようなものがウケます。
「周辺」のものはサブカルとして片づけられます。
エンタメではとくに、「みんながわかる」ことが求められ、「一部の人がわかる」ものが排除されていきます。
そんなの受けない、客が入らない、金が儲からない、と言われてしまいます。
でも、私はエンターテイメントは、「一部の人」が支え、そして「中心」を形成していくものだと思います。
小学生でもわかるように作られているメディアが「中心」を形成していく風潮にどうにもなじめません。
誤解しないでもらいたいのは、私はもちろん「中心」的なプロトタイプなエンタメも好きで言ってます。
ハリウッド映画も好きだけどフランス映画も好き。「LA LA LAND」も好きだけど、「ムーンライト」も好きだぞと。
「わかる・わからない」「知っている・知らない」「感情移入できる・できない」「あらすじや構成がいい・悪い」
以外の見方があっていいと思うし、そういう視点の柔軟性をもってほしい。
私は、フランスのヌーボーロマンと呼ばれる小説家たちの小説が好きです。ロブ=グリエ、デュラス、シモン、サロート、そういう小説の存在を、日本の人はあまり知りません。なぜなら「あらすじ」がないから。
多くの人の「おもしろい」は、相変わらず「物語がおもしろい」「あらすじがおもしろい」「展開がおもしろい」なのです。
それは否定しません。
しかし、あらすじがなくても、美しい文章やきれるフレーズにはっとし、なにが起こらなくてもシーンがよい、というものは世界のどこかで、だれかが、確実に作っています。
立川談志師匠は落語の名人ですが、キャリア終盤に挑んだ「イリュージョン」は、既存の落語ファンには受け入れられなかった人もいたようです。ですが、師匠は「すでにわかりきったこと」をやるよりも、「自分も客も観たことがないもの」に挑んだのです。
ほかの「おもしろい」があるんだよっていうことを、どこかでだれかが、声を張らずとも、諦めずに主張し続けなければいけない。
生意気ですが、そういう想いでこのライブをやります。
そういう想いでやってる芸人に、あまり会ったことがないので。
およそ10本ほどのネタですが、どれもこれも味があります。
これをよしとする人たちが集まった。
敬愛するPOISON GIRL BANDの吉田さんにも一本のネタを書いていただくことができました。
正直、伝わるのか不安なネタもあります。ですが、最後のほうにいくにしたがって、ロジックとか展開とかどうでもいいものにしていけたら最高だなって思います。
爆笑するのもいいですが、横隔膜がけいれんするほどヒクヒク笑えるやつが多いです。私はそういうのが好きです。
怖いのだって、高いところから突き落としたり、ワッと後ろから押して、こんにゃく顔につけてってほうが直接的で怖いけど、
話を聞いて想像して、ジワジワ怖いほうのが好きな人だっているでしょう?
テレビ的なのはもちろん前者ですけど、怖い話の存在はみんな知ってるのに、
笑いに関しては多様性をなかなか認めてもらえない。
味覚でいえば「苦い」「酸っぱい」とかを認めてもらえないのとおなじです。
あんまり告知できなかったのでチケットはまだまだあります。満席でぎゅうぎゅうで見せたいようなものでもないので、それでもいいかなと思っていたのですが、そういうわけにもいかないので、もう少し入ってくれるとうれしいなという。ちょうどよいくらいの、8割くらいの入りを目指します。
お笑いに興味ない人でも、怖いもの見たさで来てくれたら、テレビやほかのお笑いライブでは絶対に観れないものが観れるはずです。
そうはいっても、わかりにくく作ろうとはしていないので、日本語を理解できればわかりやすいと思います。
4月23日、下北沢シアターミネルヴァで待ってます。
若手ライブをよくやってる場所だそうです。恥ずかしいです。
50人ほどのキャパだそうです。
待ってます。
追記:
あ、タイトルはもちろん「けいおん!」のパクリです。
ゆくゆくは、低温ネタをやってる芸人さんたちを集めたライブにしていければなと漠然と考えてます。
だれか主催代わりにやってくれませんか。
4月29日18時〜 池袋演芸場 落語協会 大喜利王選手権
4月30日14時30分〜 しもきた空間リバティ 渦39
良かったらこちらにも来てね。
]]>
全公演、
二つ目のトリ公演。1年半前に夢想はしてみたが、到底無理ではないかと思っていた5日間10公演の興行であった。
渋谷らくごは動員を主目的としているわけではなく、
初心者の掘り起しと取り込みを主目的としているので、
動員のことはあまり気にしていないのだが、それにしても赤字はまずい。そんな心配もあったものの、ふたをあけてみれば、安定したお客さん入り具合で、赤字になるものではなく、
この2年で育った二つ目さんたちの奮闘、動員力には目を見張るものがあった。
ひとえに、演者さんたちのおかげである。
また若手を盛り立てる真打、ベテランの出演陣も嫌な顔ひとつせず引き受けてくださって、本当に感謝してもしきれない。
太福さん、松之丞さんはいまはジャンルを象徴するアイコンになりつつあるし、
吉笑さん、鯉八さん、小痴楽さん、昇々さん、わさびさんは二つ目の勢いと、時代を象徴する存在になった。
また、各団体からこのような才能が伸びてきたことは喜ばしいことだ。
ろべえさん、志ん八さんは、私の世代にとっても特別な存在だ。今年は真打に昇進するこの二人は、渋谷らくごを支え続けている縁の下の力持ち。古典落語の演じ手として、今後数十年は業界を牽引していってほしい存在であるので、渋谷らくごのような、ある意味で「がちゃついた」場所にもどうしても居てほしい存在だった。
普段は新作に重きを置いて活動している志ん八さんであるが、そもそも落語を演じるスキルが非常に高いこともあり、ここでは古典縛りで踏ん張ってもらっている。
あまり人の言うことを聞かないのがピン芸人、なかでも落語家はその言ったことの逆をやりたがるウルトラ面倒な人種だと、漫才師としては感じていたので、非常に勇気のいる提案だったが、志ん八さんは二つ返事でOKしてくれた。
この「求められるもの」にストレートな姿勢こそ、この落語家さんの偉大なところだ。
フィラーや言いよどみがほとんどない統制された語り口、
べったりやりすぎない美学、
しかし想像に必要な情報はきわえてコンパクトに的確に伝えてくる。
人柄(の演出)も、だれも敵にしない優しいもので、ニッコリ笑うだけで場がなごむ。
この方の落語は他に代えがたい。
よってこの月の公演の千秋楽のトリをお願いすることになった。
直前には、馬派の大先輩、馬石師匠という大プレッシャーをかけたつもりが、それすらさらりといなすような「子別れ」は、だいぶ前から決意したと見えて当日は黒紋付きで登場した。
この人はもうすべての面で真打に値する。
そう感じさせてくれるに充分な高座だった。
鯉八さん、太福さんは、2015年の渋谷らくご大賞と、渋谷らくご創作大賞の揃い踏み。初回の公演からアクセル全開で、フラッと当日券で見に来てくれたAR三兄弟の川田くんも喜んでいてくれた。私が大好きな、渋谷らくごを象徴する存在の二人の競演。
左談次師匠のうしろでトリを取るはずだった吉笑さん。直前にはPOISON GIRL BANDという漫才をあて、吉笑さんの世界に誘うのに自然な世界観、そして脳みそに負担をかけないスピードとネタで、この会も素晴らしかった。
文菊師匠のあとにあがったろべえさん。
扇辰師匠のあとにあがった鯉八さん。
いずれもプレッシャーがあったかと思うが、それでも負けじと自分の世界をしっかりと演じきってくださった。
意外とこうした実力派真打のうしろでも、語るスピードや相性次第で自然に流れができあがっていくものである。
春蝶師匠のあとの松之丞さんはまさに「激突」といった感じで見応えがあったし、この前々日、講談版の「明烏」(歴史は講談のほうが古い)を渋谷らくごで明るく語った松之丞さんとのコントラストもすごかった。二回の出番でしっかり両面出してくるところは、常に新規のお客さんのことを意識してくれているように見える。それもうれしい。
今月もっともストレスをかけたのは、一之輔師匠のあとの小痴楽さん。いつもこういう日は出番前までやる演目に悩んでいる。
特別な場所でなにをやるのか。それをギリギリまで悩みぬいてくれているだけで私はうれしい。おさん師匠「松曳き」圓太郎師匠「藪入り」一之輔師匠「浮世床」小痴楽「佐々木政談」。素晴らしい番組だ。チャレンジ全開ではないか。
創作鬼軍曹の彦いちと二人で、2016年渋谷らくご創作大賞に輝いた粋歌さんははやくもモキュメンタリーとしての評価の高い「落語の仮面」をかけてくれた。
昇々さん、遊雀師匠、百栄師匠とお客さんが大満足の状態でのトリも、わさびさんにとっては難しいかなと思ったが、「明烏」が炸裂して最高だった。私はこの落語家さんの「紺屋高尾」「死神」「明烏」、どれも好きだ。現役ではもっとも好きな演目かもしれない。それくらいの存在だ。そろそろ真打が見えてきている二つ目としてはもっとも堅実な成長を遂げている人だろう。
最終日の昇々さんの1時間は、2016年渋谷らくご大賞の名に恥じぬ名演。
この人は時間を伝えて、あとは自由にやってくれ、が一番いいかもしれない。本人なりに納得のいかないところもあったようだが、課題が見つかるのはすごいことだ。まだそれだけ成長するという隙があるということを意味しているし、それを自覚できるという状態がもっともよい。人から指摘されて気づくようでは、表現者失格なのだ。
満足の10公演。
現状、これ以上はないのではないかというほどの見応え充分の公演だった。
しかし、これが「渋谷らくご」の最終回ではない。
次のステージに飛ぶ。
2月は一転、磐石の真打陣がトリをとり、これまでにない安定を求めた。
あくまでこの場所は、一度も落語会に来たことがない人を対象しているからだ。
渋谷らくごファンが増えているという話を聞く。それはうれしい。
ただ、ファンで群れてしまってはこれまでの落語会となんら変わらないし、落語家さんとの距離感がここはベストだと思っているのだが、外の会にいって近くなってしまうのも考え物だ。
ひとまず、ここを経過したら寄席に足を運んでもらいたい。
そういう導線をいかに構築していくか。
またそれにふさわしいメンバーとはどんなものなのか。
引き続き考え続ける日々に戻る。
2月も全公演自信がある。最高だ。
なんでこの「場所」をドキュメンタリーのカメラが追わないのか、本当に謎だ。
]]>
あのCREAがである。
ここへきて大胆に、そして大規模に、徹底したアニメ特集。
中途半端なことはしない、という姿勢がにじみ出たすごい特集です。
ものすごい分量のアニメ特集で、
いま「アニメに興味をもっている人」全般に対してやさしい特集になっています。
むしろこうしたスタンスのものは専門誌ではやりにくくなっているのと、
いま現在のアニメ好き著名人の一覧的な要素を兼ね備えており、
非常に資料的価値の高い一冊となっています。
さまざまなニーズに合わせた作品紹介や、
この機会に乗じた声優さんインタビュー、監督さんインタビューなど、
「おいおいそこは思い切り趣味に走っただろ」とツッコミいれたくなるようなコアなものまで。
いいですよね、こういうアウトプット先での紹介は。
社会的意義が全然ちがいます。
私は、アニメ評論家の藤津亮太さんと、フジテレビ「ノイタミナ」の変遷を語ったり。
ショック軽減のため、二人の顔写真は極力小さく紹介されていたりして、
やさしい紙面づくり。
けっこうたっぷり語りました。
ちなみに、この櫻井孝宏ページだけでも買う価値あり!
いいなあ、CREAで演芸特集とか、落語特集やってくれないかなあ。
ともあれ、この一冊はすごすぎ。
]]>
第三特集に「男のためのBL」という特集があり、
指南役としてインタビューにお答えしたり、名著とよばれるBL作品群の紹介などをしました。
春日太一さんとの共著『俺たちのBL論』後は、
あまり大手メディアでBLを語ってきませんでした。
それは本意ではないからです。
ですが、今回は男性編集者によって『俺たちのBL論』熟読の上、
どうしても特集したいという熱意があり、
「届く必要のない人に届かなければよい」と思ってテレビなどの取材はすべてお断りしていたのですが、
「ダ・ヴィンチ」であれば、男性読者も冷静に読んでいただけるであろうし、
通常の読者もそんなに大騒ぎするほど怒りはしないだろうと思い、
お引き受けしました。
堂々たる特集です。
かなりたっぷり。そして2017年現在入手可能な初心者向けBL、
男にこそ読んでほしいBL作品など、作家別、テーマ別なんかで扱っていて、
非常に読み応えがありました。
雲田はるこ先生をはじめ、はらだ先生、宝井理人先生などの紹介やインタビューもあり、
資料的価値も高いです。
このような形で、最初に「手ほどき」として心構えなどをお話しました。
「頭から入って身体にしみこんでいく」というようなことも、
この世界にはあるのです。
その昔、自分が感じていたむずむずした感じがいったい何なのか、
少しだけ先に経験した身として感じた「個人の経験談」です。
決して一般化してはいないので、腐女子のお姉さん方、怒らないでください。
「男のための」だから。
対象じゃない方は大目に見てね★
]]>ひかりTV『落談 〜落語の噺で面白談義〜』
客観的に見ても、すんげ〜面白い番組ですから、ぜひ観てください!
#1 水道橋博士さん
#2 ナイツ塙さん
#3 磯山さやかさん
#4 なぎら健壱さん
#5 大槻ケンヂさん
#6 松尾貴史さん
関西圏では有名な、近畿大学のキャッチコピーを言語的な観点から考察したものでした。
そのときの様子をレポートしたものが公開されました。
講義に呼んでくださった藤巻先生は、
私が博士課程在籍時に、教員免許取得のため受講していた日本文学の先生でした。
当時は先生もまだ非常勤で、早稲田大学で研究の道を歩んでいらっしゃいました。
寺社縁起や霊験譚といった、文学史のなかでは「周辺」と位置付けられている資料をメインに、研究価値のあるものとして訴えていこうという志のある方で、学者として尊敬しています。
イケメンです。
ですが、内面は非常に残念なお兄さんです。
早稲田はどうしようもなく研究者への理解のない大学ですので、
藤巻先生はその後近畿大学に就職なさり、
以前にも国語辞典の話などをしに近畿大学に呼んでくれました。
とにかくこの藤巻先生に会いたいがために、近畿大学に行きました。
とても楽しい。
ナイスな大阪の一日でした。
翌日一橋で講義だったので日帰りだったのが残念です。
以上
]]>これも相談内容を受けてから、どの本を紹介するかずーっとずーっと考えて、締め切りぎりぎりまで迷って、それで原稿を書くわけです。
もう魂けずってます。
ネットでも現在まだ閲覧できる記事ですので、良かったらどうぞ。
朝日新聞デジタル「(悩んで読むか、読んで悩むか)努力は裏切らない、楽しんで続けて サンキュータツオさん」
■相談 大好きな音楽、人前で発表したい
私は音楽が大好きです。小さい頃からの憧れもあり、30歳を過ぎてから20年ほど、電子オルガンを習っていました。夢は、披露宴の2次会や送別会、激励会など、なんでもいいからみんなの前で発表すること。知人や親戚に「発表の場があれば声をかけてね」とお願いしているのでログイン前の続きすが、夢はなかなか遠いです。モチベーションを高めるいい本はありませんか?
(福岡市、若杉みか・48歳)
今回の相談はこういうもの。
私は相談にはわりとバッサリいくほうです。
今回紹介した『青空エール』(頼む!この作品は映像ではなく、原作のマンガを読んでくれ!)
と
『モーゼスおばあさんの四季 絵と自伝でたどるモーゼスおばあさんの世界』
は、どんな人でも勇気をもらえる一冊です。
とくに、画家であるモーゼスおばあさんについては日本ではご存じない人が多いかもしれませんが、
その一生と作品に触れると、なにかを表現するというのはどういうことなのか、人生と表現とはなにか、
優しく、考えさせてくれます。
そんな大それたことではない、それでいて手をぬくわけではない、ちゃんとやる。
後日、この書籍の翻訳をなさった方から丁寧なお手紙をいただきました。
この書籍、再版が決定したそうです。
うれしいことです。
相談者にも、届くといいな。
以上
]]>
こちらの本の巻末コラムを担当しました。
新潮文庫の巻末に文章を書けるなんて! 光栄です。
小学館文庫で水城せとな先生の『ダイアモンド・ヘッド』の巻末コラムを書いて以来の光栄です。
「三省堂国語辞典の行間」という文章です。
いまは上記サイトでなんと読めちゃいます!
早稲田大学の先輩でもあり、
番組やイベントで何度かご一緒したこともあり、
辞書コレクターで芸人の私に書けることはなにか。
それを考えて、がんばって何日も何日も原稿を書きました。
三浦しをん先生の『舟を編む』のヒット、そして映画化、アニメ化と、
おそらく人生でこの機会以外絶対にない脚光の浴び方をしている業界ですが、
一朝一夕でブームに乗ることはできません、
ずっとこの世界を支えている人たちの、黙々とした働きぶりがあってこそです。
飯間先生はいまでは珍しい、街に出て用例採集する泥臭い方です。
だからこそすごいのです。
各項目から、先生の人柄、あるいはほかの編者のみなさんの考えを読み取る「行間」が読めてこそ、国語辞典は楽しい!
イラストも飯間先生が下絵を書いたりしているんですよ!
そういうことが伝わるといいな☆
以上
]]>
現在こちらの作品の、ウェブ配信番組
にて、
案内人として私サンキュータツオが出演しております。
主役の与太郎(助六)役を演じる関智一さんと、評論家のアマケン役を演じる山口勝平さんのお二人と、
落語にゆかりのある場所や人を訪ねていくという番組。
おじさん三人で適当なこと言ってぶらつく、楽しくゆるい番組です。
途中から、食べたいものの話ばっかりという。これが最高。
第一話では、早稲田大学の演劇博物館「落語とメディア」展にうかがったり。
(このときご出演いただいた、企画・監修の宮信明助教が「2016年度春学期早稲田大学ティーチングアワード」受賞! 科目名は「三遊亭円朝の世界(入門)」、おめでとうございます!これは快挙です!)
はなし塚、芝浜探訪、浅草散策(柳家わさびさんに案内してもらいました)など、
作品から落語全体に興味が広がるようなコンテンツで、キングレコードさんには大感謝!
この1月31日には都内の寄席各所で同時に「落語心中寄席」というコラボ企画もあったり、
本当にこの作品が業界にもたらして貢献ははかりしれません。
作品が骨太に落語を扱ってくださっているおかげで、新しい世代のお客さんがすんなり客席に入ることができています。
ここに、2000年代からずっと受け入れの努力をしてきた業界が見事に応えた形で、
最初はマンガやアニメのことをよくわからなかった業界の人たちもいたかもしれませんが、
業界も作品を知り、今後10年、20年と落語に触れてくださるお客さんがひとりでも増やしてもらえたらうれしいです。
これマジで。
こんなチャンスは二度とないレベルだと言っていいと思います。
「渋谷らくご」も、こういう機会に居合わすことができたことは、ありがたいことです。そういう使命だったのでしょう。
微力ながら、受け皿のひとつになれたらと思っています。
1月21日、銀座三越とのコラボ企画「昭和元禄落語心中展」でのトークショー。
原作者の雲田はるこ先生、声優の林原めぐみさん、そして私の三人で、作品について語る会。
もう黒山のひとだかり!
何百人というひとたちが訪れ、実在すら信じられていないレベルのお二人を肉眼と肉耳で確認しにきたんでしょう、盛り上がりました。
みんな浴衣で登壇したんですが、これも落語心中コラボ浴衣。
生地も物販スペースで販売していて、さすが百貨店、元呉服屋だけある!
素晴らしい時間でした。
また、1月のとある日には、「智一&勝平の落語放浪記」のロケ。
楽しかった収録もいよいよ終盤です。
都内のビルから東京の街を見渡す関さんと勝平さん。
「ねえねえ、あの建物なに? ロボットみたい」
「……たぶんロボットだよ」
というなんとものんきな会話も、聞けなくなっちゃうなあ。
1月28日(土)、ニッポン放送の吉田尚記アナと私の共催であるイベントである「声優落語天狗連」。
吉田さんとは、落語とアニメという、ひと昔前だとだれからも気持ち悪がられていた趣味を、唯一話し合える。
そんな私たちには、このチャンスしかない!ということで、
声優さんに落語にチャレンジしてもらうコーナーと、落語家さんに「昭和元禄落語心中」の作中に出てくる噺をしてもらおうというイベント。そんなイベントももう八回目。
今回の声優落語チャレンジは、高塚智人さん。
「たらちね」を。素晴らしかったです。
毎回思うのは、声優さんたちの個性のちがいと、それぞれ別のポテンシャルの高さを持っているということです。
声優さんが落語をやってくれるのは、吉田さんのおっしゃるように、文化として根付かせていきたいものです。
写真は、高塚さんの高座姿を見守る、稽古番の立川志ら乃師匠。自分のこと以上に、責任感じるから大変な役回りですが、いつも引き受けてくださり感謝です。
何度も言いますが、志ら乃師匠の落語も絶品ですからね!
本職の落語家さんによる実演のコーナーは、「渋谷らくご」でもおなじみ柳家わさびさん。
このコーナーは、基本的には真打の師匠方にお願いしているのですが、
今回は「死神」という演目をかけていただくにあたって、個人的に現役世代ではもっとも感銘をうけた「死神」の演じ手である、わさびさんにお願いしました。
この人はすごいです。この人は、「明烏」も「紺屋高尾」も「死神」も、すでに真打のレベルにあります。それどころか、解釈や表現力という面でも、このアプローチの落語においては到達点にいるかもしれません。それほどにゾクゾクする瞬間がこの人の落語にはあります。新作もすごい演目がたくさんあり、今後が非常に楽しみです。
「びーわさ」こと、柳家わさびさんと。
『昭和元禄落語心中』は3月まで続きます。
先日はアフレコ現場もお邪魔して、現場の声優さんや監督さん、スタッフさんの士気の高さ、プロの現場というものの雰囲気を体感してきました。
歴史的な作品を、少しでも多くの人に知ってもらいたいです。
今期は『霊剣山』や『幼女戦記』と並んで、全国民必見です。ウソです。『昭和元禄落語心中』だけ見てください。
アニメ好きは上記二つも観るように。
以上
]]>という書籍に寄稿しました。
どんな言葉を選んだか、
それはとっておきなので、ぜひ本書で確認してみてください。
錚々たる顔ぶれですが、永江朗さんや橋爪大三郎さんとおなじページに名前が刻印されているのはうれしい!
これは「14歳の世渡り術」シリーズで、
私は「マンガがあるじゃないか わたしをつくったこの一冊」以来の寄稿です。
以上
]]>にて、ターザン山本さんとの大規模な対談が掲載されました。
これは、ターザン山本著『パピプペポ川柳』に関する対談です。
ターザン山本さんは、元「週刊プロレス」の編集長として知られている方ですが、
その昔、私が芸人活動をはじめたばかりの頃、
浅草キッドさん主催の「浅草お兄さん会」というライブで何度もご一緒し、
またその後も番組などでご一緒しましたが、
15年以上ぶりくらいの対面となりました。
ターザン山本さんは、私のことなんか覚えていないだろう(じゃないほう芸人あるある)と思っていましたが、
うれしいことに覚えていてくださり、
感慨深い対面となりました。
『パピプペポ川柳』は、
5・7・5の最後の5を「パピプペポ」で統一した川柳で、
これまでの川柳よりもはるかに簡単に、出力することが許された「ゆるい」川柳です。
ターザン山本さんは革命家です。
私はこの川柳が、本格的に句の世界を変えてくれるのではないかと期待しています。
そのあたり、日本文化の歴史と関係がある、というようなことを紙面で語りましたので、
気になった方はなんらかの方法で読んでみてください。
以上
]]>
1/27(金)、今回はテレビアニメ『鬼平』をご紹介しました。
言わずと知れた池波正太郎原作の『鬼平犯科帳』をベースに作られたテレビアニメですが、
アニメの文脈と時代劇の文脈が、見事に融合した作品だと思いました。
放送前はいろいろ言われた本作ですが、
作品はみんなを納得させる、という好例だと思います。
この記事の前段として、
「WOWOWぷらすと」で、時代劇研究家の春日太一さんをゲストに迎えた回(リンクはアーカイブです、必見!!)で、池波正太郎作品がなぜ映像化されるのかを語っていただきました。
でのスタッフインタビューからなどからもそのことがうかがい知れるほか、多くの知見を春日さんから得ましたので、
この記事でも前半、書籍からの引用をいたしました。
許可してくださった春日さん、ありがとうございます。
鬼平、おもしろい!そして、カッコいい!
時代劇の将来は、むしろアニメにあるのではないか。
以上
]]>
にて、年3回程度ではありますが、
書評のコーナーを交互で担当することになりました。
今回ご紹介したのは、
中西敦士『10分後にうんこが出ます 排泄余地デバイス開発物語』 新潮社
です。
活字を読んでこんなに笑ったのは久しぶりです。
中西さんのキャラクターと発想力、行動力にはどんな人でもなにか考えさせられるものがあると思います。
最高に楽しい「研究本」でもあります。
私は『ヘンな論文』の文脈で読んでいましたが、ビジネス本としても示唆のある本だと思います。
ぜひ書評を読んでみて、気に入ったら買って読んでくださいね。
以上
]]>
36面の「探求 若者ことば」の特集にて、
コメントが掲載されました。
「文化の扉」というページです。
規範も大事ですが、言葉は生き物であることを忘れていません。
どっちが正しいとかいう議論よりも、
「どういう心の在り方が心地よいか」ということを考えるキッカケになればと思い、お引き受けした仕事です。
こういうことはずっと言っていきます。
以上
が昨年12月から1月に開催されており、
期間中のトークイベント「戦争と物語」において、
後藤靖香さん×米粒写経 という三人で座談形式でお話してきました。
1月10日のことです。
後藤さんの作品については、上記のリンクをご覧ください。
戦争という出来事は、私たちは祖父母などの世代から間接的に聞くか、メディアなどを通じて知るといった、二次的な体験でしかありません。
ですが、戦争期間中もきっと楽しいことはあったし、起こっていた出来事が大きすぎて、むしろ生活のこまごましたディテールが語り漏らされている可能性もあります。
映画『この世界の片隅に』は、そんな人たちの生活を描いた作品でしたが、
後藤さんも広島のご出身で、原爆前にも広島には生活していた人たちがおり、どうしても原爆だけをピックアップしてドラマチックに語られがちなのですが、それ以前の人々の生活も想像しようという試みで、志がおなじようなものを、実際に展示を拝見して感じました。
また、男同士の友情や戦友だけがわかる共通体験を通して、いろんなドラマ(あるいは疑似恋愛的な?)もあったと思います。
後藤さんは「米粒写経のガラパゴスイッチ」をYOUTUBEで見てくださっていて、居島、タツオ双方のことをよくご存じの方でした。
というわけで、出張版ガラパゴスイッチのように、あとからあとから三人が思いつく話を、相手の話に反応しながらすることができ、楽しかった!
こういう出張版、やりたいですねえ!
日本全国、うかがいます。
京都は久しぶりでした。
京都精華大学。
立派な大学でした。
少し早めに京都に到着したので、国際会館駅で下車し、借景の庭園で有名な圓通寺に。
ここがもう最高すぎて、一時間以上庭を見ていました。
圓通寺からは歩いて数分の京都精華大学に到着、職員の方に「圓通寺いいですねえ!」と興奮気味に伝えると、「どこですかそれ?」と聞かれたので、おいおいここなんの大学だよ、という微笑ましい一コマも。
一枚一枚が巨大な作品です。
後藤さんの作品はおしなべて大きいです。
それだけに存在感がすごいです。
お風呂帰りのふたり。いい感じじゃないですか。
うん、いろいろ妄想をかきたてられますな。
実在した人たちのさまざまなエピソードや、資料などから関係性を読み解き、当時の人々の生活の息遣いや心のやりとりまでが伝わってくるような、楽しい展示でした。
後藤さんは資料を読み込むのが大好きらしく、おなじことを別の人が語っているのを読んだりして、ここで彼が言っているのは、もしかしてこういうことなんじゃないか、などという「行間」の読みの名手でもあり、
歴史の居島、萌え(行間読み)のタツオ、双方が楽しめるトークショーでした。
ご来場のお客様にも大変喜んでいただけました。
楽しい時間を過ごせました。
翌日、一橋大学の通常の授業があったため帰らなきゃいけなかったんですが、
できればいつかゆっくり飲みかわしたいものです。
後藤さん、また京都精華大学の方々、どうもありがとうございます。
またやりたいです。
以上
]]>
食にまつわる言葉を、国語辞典で読み比べしたものの連載を書かせてもらっております。
今月は「グルメ」。
食通、グルメ、美食家。いろいろな言葉がありますが、淘汰のすえにもまだ残っているということは、それぞれニュアンスがちがい、存在意義があるということ。
毎月、魂削って書いています。
ひとりに届けばいい。そのひとりをごまかさないように書いていれば、多くの人に届くはず。
書き物に関しては、そういうスタンスです。
以上
]]>サンキュータツオ Presents 新春企画「Session新世代寄席」
1月6日(金)夜10時からの番組のなかで、およそ1時間を頂戴し、
現在の落語界と、「渋谷らくご」についてお話する機会を得ました。
二つ目代表として、渋谷らくご大賞の 春風亭昇々さん
また、落語にもっとも近い場所にいる男として、講談師 神田松之丞さん、
このお二人をゲストに、ネタに語りにやっていただきました。
音声が、上記URLから聴けるようになっています。
1ヶ月限定です。
彼らは落語芸術協会の若手二つ目ユニット「成金」のメンバーでもあり、
若い世代の演芸ファンを牽引する存在でもあります。
これで興味持ってもらえたなら、都内の各寄席(新宿、上野、池袋、浅草)か、渋谷らくごにいらしてくださいね!
渋谷らくごのポッドキャスト や ツイッター もフォローよろしく!
]]>
2016年の渋谷らくご 創作大賞は、三遊亭粋歌さん。
お笑いナタリー:春風亭昇々が「渋谷らくご大賞」、三遊亭粋歌が「渋谷らくご 創作大賞」受賞
ようやくこの会の賞がナタリーさんに記事にしてもらえるようになった。
予算がなくても落語会はここまで盛り上げることができるというのを示していきたい。
昇々さんは一年間、ホントにすごいパフォーマンスの連続だった。
私はいろいろやっているから、そのなかのひとつだろうくらいにしか思っていない人もいるかもしれないが、
「渋谷らくご」は私がホントに命を削ってやっていると誇れる会だし、
この2年、私の生活は渋谷らくご中心、それに米粒写経の活動、これでまわっているといっても過言ではない。
だれかドキュメントとして撮影し続けてほしいくらいである。
それくらいいろいろなことが起こっている。
昇々さんはNHK新人落語大賞に2年連続で出場していながら、優勝できなかった若手の落語家。
受賞された演者さんももちろん素晴らしい。
だが、ハッキリ言ってこの賞の存在って、落語ファン以外にだれが知っているんだろうか。
落語家さんは落語界でよく話題にしているし、それしか大きな賞がないから感覚がマヒしちゃっているんだろうけど、
私の感覚からいうと、お笑いの世界のコンテストであるM-1、KOC、R-1などと比べると、注目度から言っても、世間の人が知っている賞とはとてもいえない、コンテストのためのコンテストのようなものだ。
正直言って、大賞をとっても、とらなくても、そんなに世間的に差のないものだと思う(もちろん、賞の存在価値は充分にあることが前提です。絶対あったほうがいい賞です。)。
だから結果はむしろ関係ない、怪我しても大丈夫な自由な場所、
と端から見てれば思うのだが、実際に出る側から考えると、そうはいっても負けたら悔しい大会なのだろう。
演者はどんなに小さい戦いでも、勝敗がつくことに過剰に敏感だ。私だってっそうだ。
それは、スポーツのように数値化できないものであるから余計に。
勝敗がナンセンスだからこそ余計に。
数値以外のところを評価されるような、内申書と面接で落とされるような、そんな無駄な敗北感を味わってしまうもの。
とはいえ、「落語らしい落語」と「自分らしい落語」の選択で、前者を選択している賞に未来はない。
昨年の鯉八さんにしても、昇々さんにしても、自分らしさの追求こそが落語の進化でることを、だれよりも雄弁に語っているではないか。
「落語らしい落語」という失点のないゲームのようなものからは、幻想としての「落語はこうあるべきである」という固定観念しか見えてこない。幻想を追った時点で落語は死ぬ。落語は時代に合わせて変化(あえて進化とは言わないが)してきた芸能だからである。というか、そもそもコンテストにあるべき「理念」がまったく見えてこない会がほとんどだ。
そしてこれは、落語会としての「理念」がないからにほかならない。
昇々さんがコンテストで一番になれなかったことをどう思っているかわからないし、この賞の結果を受けて大賞を決めたわけでもないのだが(というか気にもとめていなかったのだが意外に演者さんは気にするものなのだ)、今年の昇々さんはだれが見たってキレッキレだった。
だから、アンチテーゼとかあてつけとかでなく、2016年の「渋谷らくご」はこの人だった。明らかに昨年よりも成長していた。志が高かった。
「置きに行く」ということをまずしない、二つ目らしいチャレンジ精神にもあふれていた。
「渋谷らくご」的には、会のコンセプトを体現する二つ目として今年もっともふさわしい人だと思った。
受賞理由は表彰状にしたためました。以下、全文抜粋。
渋谷らくご大賞2016
おもしろいう二つ目賞
春風亭昇々 殿
受賞演目:8月14日「千両みかん」、7月11日「初天神」、4月12日「誰にでも青春2」、8月13日「寝坊もの」
貴殿は、2016年の一年間、この「渋谷らくご」においてもっとも活躍目覚ましく、またおもしろい二つ目でありました。
落語を身体に入れてしゃべるだけでなく、高座では全力で落語と戯れるという狂った姿をお客様に合わせて披露するという、
常人や並の真打でさえ怖くてできないことを、二つ目にしてすでに体得していることに大きな衝撃を受けました。
また、狂気の遊び心で、落語ファンのみならず、初心者や若い人にまで届けるパフォーマンスは、この渋谷らくごのコンセプトを体現している存在です。
古典落語の斬新な演出だけでなく、創作においても連作を披露したり、常に準備を怠らないストイックな姿勢は、
一席だけとっても、また一年通しても、もっとも評価されるべき稀有な存在だと思います。
まくらから本編まで、だれでもわかる言葉で、マンガ的なキャラクタライズでコミカルに演じ、
古典や創作といった境目なく「昇々落語」を確立して多くの観客を魅了しました。
平成のポンチ絵派とも呼ぶべき落語に、大きな可能性を感じ徹底してふざけきりました。
よってここに、この一年おもしろい二つ目であったことを称え、貴殿を渋谷らくご大賞といたします。2016年12月13日
渋谷らくごキュレーター サンキュータツオ
マジですごい領域にいる。もちろん、二つ目らしいムラはあるのだが、それでも大一番で、大注目の高座で、「ふざける」というのはもっとも難しい。そこに挑んでいるのはこの人くらいじゃないだろうか。普通は、すべれない高座であればあるほど、どうしてもテキストを固めたがる。そして再現できる一席を追求する。だが、それができたうえで、想像してくれるお客さんと一緒に作り上げていくのが落語の魅力でもある。となれば、お客さんに合わせてふざける力は、早晩必要となってくる能力だろう。彼ははやくもそこに挑んでいる。
前日に代演が決まった「創作らくご」のネタおろし、ひとりで一時間自由に戯れた「ひとりらくご」、古典に負けない「昇々」という個性で昇華させた「千両みかん」、創作での連作化に踏み切った「誰にでも青春2」。どれも印象深い。
渋谷らくごでプッシュしてしまったがゆえに、見えざる敵を作ってしまったら、彼に申し訳ない。なんとかしていろんな人に届けたい。
・スター性がある。
・落語がおもしろい。
・「自分の落語」を追求している。
この3点を評価軸にしたとき、すべてを兼ね備えた存在だった。
表現者として、どれかひとつ欠けてもいけないと思っているが(スター性のない、ふつうの人が落語家になっているパターンは山ほどある)、昇々さんは3つとも満たした存在だ。
三遊亭粋歌さん「プロフェッショナル」。
彼女の創作には、聴く人に喜怒哀楽といういろんな感情をもたらす「感動」があった、というのが審査員全員の意見だった。
このような才能がしっかりと評価されるべき場所、というのを創り上げることにこそ意味がある。会の理念にもぴたりとハマった存在だ。
桂三四郎さんの創作も完璧だった。おそらく、渋谷らくご以外、どこのコンテストでも優勝できるあまりにも見事な創作らくごだった。
もう少し審査は難航するかと思われたが、他ジャンルと並列化させる落語、という意味でも、去年の会話劇から物語性まで乗っけてきた粋歌さんにだれも文句はなかった。最高の一席でした。
残念ながらスケジュールの都合で出られなかった瀧川鯉八さん「長崎」、三遊亭彩大師匠「艦内の若い衆」、このエントリーが実現しいれば、またちがった結果になっていたかもしれない。
賞は難しい。傷つく人を生んでしまうから。だから出すほうも傷つきながら出さなければいけない。この人にあげたかった、この人も評価したい、そういう気持ちがどんどんあふれてしまって、どこかでケリをつけないといけない。
でも、出すことで少しでも彼ら、彼女ら、そして落語(なかでも渋谷らくご)が注目されるのであれば、それがいい、という判断で創設したものである。思ってもいなかったのだけれど、2回目ができた。いまはそういう想いだ。
「渋谷らくご、俺は出られへんの?」
笑福亭鶴瓶師匠は、私の目の前でたしかにそうおっしゃった。
2016年9月、春日太一さんが鶴瓶師匠にインタビューしたのがキッカケで、私は春日さんに連れられて、鶴瓶師匠のスジナシの公録にお邪魔していた。
鶴瓶師匠の青山円形劇場での「鶴瓶噺」に毎年通っていた。それが2000年代初頭の「六人の会」(東西落語研鑽会)で落語に挑みはじめ、最高のパフォーマンスを披露し続けた。この師匠は、単なるお笑いタレントではなく、やはり落語家だったのだ。畏敬の念しかなかった。
「青木先生」初演から数年、「わせだ寄席」にも出演していただいたこともあり、また、渋谷らくごの楽屋にも、遊びにきてくださったことがあった。メディア出演も一番多く、お笑いタレントとしても第一線、それでいて落語も最強、というまさに理想の落語家像が鶴瓶師匠であった。「鴻池の犬」や「死神」といった演目も、この師匠にかかるとこれまで見たこともない超展開が待っていて、遊び心と心の余裕があり、だれにも負けない自負のようなものまで感じられて、プロレスファンが格闘技のなかで「プロレス最強説」を唱えるように、私はお笑いファンのなかでも「落語最強説」を絶叫し続けた。その精神的支柱の中心に鶴瓶師匠がいたのだ。私が考える、日本一の理想の落語家である。
そんな師匠から、このような形で逆オファーをいただくなんて、こんなことあるだろうか。
「出してよ」じゃないのだ。「出してもらえないの?」のニュアンスなのだ。この一点だけとっても、この師匠が売れている理由がよくわかる。どう伝えれば相手が喜ぶのか、どう伝えたらかわいげがあるのか、どう伝えたら気持ちが伝わるのか。知り尽くした者にしかでない一言だ。
師匠はこのような縁を大事にしてくださる方だった。そしてだれよりも敏感に、いま出て楽しそうな場所、と「渋谷らくご」をとらえてくださったのだった。
それにこたえるべく、こちらも「お楽しみ」として名前を伏せて、渋谷らくごの主役たちを観に来た初心者に、鶴瓶師匠をぶつけるべきだと考えた。師匠を聴いてもらいたいのは、渋谷らくごのお客さんなのだ。
11月には骨折の報が入り、無理はしないでいただきたいなと思いながらも、それでも骨折後最初の高座に「渋谷らくご」を選んでくださった師匠にはホントに頭があがらない。
マネージャーさんからしてみたら、こんな不採算事業はないと思われるのだが、それでも最後まで快く応対してくださった。
スタッフ全員を打ち上げまでお声かけくださり、さらにご馳走してくださった。
爆笑王の夜。
渋谷らくごの舞台に鶴瓶師匠があがった際の、お客さんの歓声、そして多幸感あふれる空気、最高の高座、忘れることができない。
師匠、マネージャーさん、まことにありがとうございます。
立川談笑師匠、年に一度この「渋谷らくご」に出ていただいている最高の師匠だ。
パワフルで、創意に満ちていて、古典への愛と非情さ(つまり優しさ)もあって、常に高座と空間を特別なものにしてくれる。
この2年はひとりで一時間の高座をお任せしていたのだけれど、今年は三代目文蔵師匠との「ふたりらくご」。こんな贅沢な番組はない。
まるで歌うような「片棒・改」、改作にしてもあそこまでリズムカルに言葉を整理してスピーディに、そして爆笑巨編に仕上げるのだから、数百年の古典の錬磨を、ご自身で成し遂げたことになる。それくらい感動的な「片棒」なのだ。
こういう師匠のことを、落語に興味をもった人は追いかけてほしいなあ。弟子に吉笑さん、笑二さん。
追いかけるのに最高の一門じゃないか!
談笑師匠、ありがとうございます。
そして、安定した動員になった12月、その功労者はもちろんレギュラー出演してくださっている落語家さんたち。
彼らの奮闘があってこそ、特別ゲストが「特別」になる。
古今亭志ん八さんの「甲府い」が良かった。この人の軽妙洒脱な語り口、それでいて決して人をバカにしない品の良さ、温かい目線。技術的にも、想像するのにちょうどよいスピード感とコトバの量で、圧巻の一席だった。
1月、この志ん八さんをメインにした公演を千秋楽に仕掛ける。馬石師匠という達人の後に、この志ん八さんがどうやりきるのか、いまから楽しみで仕方がない。
志ん八さんにトリをお任せするのが今回がはじめてだ。しかしもう堂々たる高座の連続で、そんなものには頓着ないほどの方なので安心している。あとはどの演目を選んでくれるのかが楽しみだ。
2017年1月公演は、ひとまず、これまでの「渋谷らくご」の集大成。
この2年、ひとりひとりスポットをあててきた二つ目さんたちが、揃ってトリをとる。
この構想を固めたのは、2015年9月であった。ついにそれが実現する。
プレビューには、それぞれの演者さんのキャッチだと自分で思っている二字熟語を冠した。
「最高」玉川太福
「才能」立川吉笑
「抜群」柳家ろべえ
「天才」瀧川鯉八
「震撼」神田松之丞
「奔放」柳亭小痴楽
「創造」三遊亭粋歌(渋谷らくご創作大賞)
「名手」柳家わさび
「無双」春風亭昇々(渋谷らくご大賞)
「軽妙」古今亭志ん八
演者はすべてを欲しがってしまうが、ひとつの武器を研ぎ澄ますだけでも相当な時間がかかる。
今月トリをとる演者はみな、特化した武器がある。
どれも、素晴らしい味わいの武器だ。
昨年の1月は、柳家ろべえさんのトリ公演があった。
喜多八師匠、一之輔師匠、松之丞さん、ろべえさん、といういまから考えてもあり得ない番組なのだが、
一年後のろべえさんも聴きに来てほしい。
そして、大賞受賞者、さらには千秋楽、古今亭志ん八さんをどうぞよろしく。大注目です!
どうか、どうか一日でも、13日からはじまる「渋谷らくご」、足を運んでくださいませ。
心よりご来場おまち申し上げます。
]]>
『成金本』
に寄稿しました。
「成金」とは、落語芸術協会という団体の若手のユニットで、
現在二つ目の人たち11人のメンバーで構成されています。
で、毎週金曜日に定期公演をしていたり、
人気が出てくると「成金」を売り興行にしたりと、
「グループで動けることのメリット」
を最大限に活かしているグループで、
現在の若手の勢いと、若いお客さんの増殖にまちがいなく一役かっている、
業界では知らぬものはいない存在です。
二つ目のユニットが、書籍を出すこと自体異例なことなのですが、
それを、落語会唯一の専門情報誌「東京かわら版」が出したことは歴史的な意味があります。
今回、このお話を受けたときに、担当になったのが、東京かわら版の田村さんでした。
田村さんは、実は『笑芸人』という雑誌の編集をずっとなさっていて、
私は22歳くらいのときからお世話になっていた方でした。
笑芸人は、米粒写経で漫才をしはじめたときに、東京の漫才師ベスト50に入れてくださった記念すべき雑誌でもあり、
また高田文夫先生の責任編集ということもあり、演芸係数の高い雑誌でした。
ライターとしてもちょくちょく参加させていただいていたり、いまだに背筋が伸びるものです。
今回、8ページを頂戴して「成金」の社会的存在意義と、
メンバーそれぞれに個人的に思っていることなどを生意気にもしゃべらせてもらったわけですが、
このインタビューをうけて文字化してくれたのが田村さんだったのです。
田村さん、相変わらずの演芸バカみたいな感じで、情熱があって、私は尊敬をあらたにしたのでした。
出来上がった本を読み、「ああ、田村さんが作った本だなあ……」とじんわり実感できるほどの、
文字の密度の濃さ、行間の狭さ、フォントの圧、
なんかものすごく感動しました。
しかもこの本に載っているのは、渋谷らくごを盛り上げてくださっている気鋭の二つ目たち!
自分がこの時代に生きた役目を果たせたなと思える一冊でした。
成金の皆さん、田村さん、本当にありがとうございます。
]]>
現在の落語をとりあげるメディアの状況も含めて、4ページにわたって寄稿しております。
落語ブームっていうけど、もう何年も前から落語会はたくさんあるしお客さんもたくさんいた。
「ブーム」ってことにすればみんな損しないからそういうことにしている風潮あるけど、
業界を支え続けてきた人たちがたくさんいるし、演者さんもずっとがんばっているわけで、
その人たちに還元する形でなければいけないと思うの。
想いのたけをぶちこみました。
神田松之丞さん、瀧川鯉八さん、立川吉笑さんなどを紹介しました。
落語を扱った雑誌が今年後半から立て続けに出ていますが、
雑誌が落語を料理しはじめたということは、
ブームが沈静化することのはじまりだと思います。
雑誌で特集が組まれるというのは、もっとも遅い時代の流れに乗った、ということなので。
落語はまた次のステージにあがるのかもしれません。
この記事と、早稲田大学演劇博物館の「落語とメディア」展の図録を買っていただければ、
現在の落語に対する、渋谷らくごキュレーターとしての立場はたっぷり表明しているので、
ご理解いただけるかと思います。
新潮45の記者さん、私なんかに4Pもくださってありがとうございます。
]]>
にて、
声優の中村繪里子さんと対談した様子が掲載されています。
もちろん声優としての実力はいわずもがな、なんですが、この中村繪里子さんという方は、
個人的に、「文化」の匂いがする人なんですよね。
以前、ニコニコ生放送の仕事でご一緒したときに、自分の言葉を持っている人だなという印象だったんですが、
彼女もそのことを覚えていてくださり、
その後「声優落語天狗連」などのイベントを観に来たりしていて、
ニッポン放送の吉田アナとかにもばっちりハマっているわけです。
よくよく聞いたらものすごいラジオリスナーで、デイキャッチとかまで聴いている!
おなじ人種じゃないか。
これを言うと多くの人に反感をかうことを覚悟でいいますが、
声優さんに対する私の不満は、「文化」を知らないことです。
そして自分の「言葉」を持たないことです。
たしかに、めちゃくちゃ忙しい職業であることは重々承知しているのですが、
せめて移動中ラジオを聴いたり、週刊文春を読んだり、文庫本の一冊でも読んでほしいのです。
というのは、社会的影響力がめちゃくちゃある人たちだからです。
この人たちが、本気で「文化」に興味をもち、発信してくれたら、こんなに素敵なことはないんです。
マンガやアニメ以外のことにも、ちゃんとアンテナを張ってほしいし、好奇心をもってもらえたら最高だなって。
またそれを伝える言葉を、台本なしでちゃんと紡げるかということ。
こんなことを、若手の芸人とかには言わないし、アイドルには言いません。
声優さんだから言うんです。すごい職業だから。声優というのは、おそらく日本で最高のエンタメ人だと思うので。
ある種、ジャニーズなどに匹敵する影響力をもったジャンルなのです。
こういう想いのなか、中村さんに出会えたことは非常に有意義なことでした。
彼女は、上記の条件をすべてあわせもった声優さんでした。
ものすごくたくさんしゃべりました。
写真入りで11ページも掲載してくださった編集部には感謝です。
この記事のなかに、私がラジオについて考えていることのすべてが詰まっています。
普段はなかなかしゃべる機会がないのでしゃべれないけれど、ずっと思っていたことをかなりぶちまけています。
ラジオリスナー全員に読んでほしい。
中村繪里子さん、ありがとうございます。
ちなみに、中村さんはとっても頼もしい奥さんになると思います。
いいねこういう人を嫁にもてる人は。
「俺の嫁だ!」って自己申告している人はたくさんいるんだろうけども。なみの覚悟じゃこういう人に対峙できませんよ。
]]>
今年も選者で参加しました。
とにかくBLに関しては、年々アブノーマルな扉を開き続けているような気がします。
私の年間トップ5は、ぜひ本書で確認してみてください。
全体の順位にほぼ文句なし!
それにしても毎年、ほんとにっすごい才能が開花するジャンルだ。
おげれつたなか先生、はらだ先生、
個人的にはこのお二人なくして2016年語れぬくらい幸せにしてもらいました。
]]>
「落語とメディア」展
が開催されています。
2017年の1月中旬までやっています。
素晴らしい展示なのでぜひ見に行っていただきたいです。
こちらはその展示の図録です。
この1年で読んだどの落語特集の雑誌よりも内容が充実し、
また「いま」を切り取ろうとした努力がにじむ、最高の一冊です。
喬太郎師匠のインタビューや、SPレコード収集でおなじみの岡田則夫さんの寄稿なども歴史的な価値もあれば、
落語会主催者でもある加藤さんのインタビューなども掲載されていて、通時的に落語を考える非常に有意義な読み物です。
今後の落語に関する書籍は、かならずこの図録を参考図書にあげるべきです。
画像がさかさになっちゃってるんですけど、面倒くさいからこのまま。
私は「渋谷らくご」のこの2年の動きを、リアルタイムで報告するドキュメントにしました。
なにを狙って、どういう手法で落語会を継続しているのか、
手の内をすべて明かした8000字。
予定の文字数の4倍になってしまったのですが、
嫌な顔ひとつせず掲載に踏み切ってくださった、
宮信明先生に、敬意を表します。
宮先生、ありがとうございます。
演博に務めるのが夢でしたが、このような形で関われたことをうれしく思います。
]]>
このたびめでたく文庫化されました!
角川文庫に自分の書いたものが入るなんて!
しかも、三浦しをんさんの「あとがき」付きですよ!
うれしい!
思えば、『舟を編む』がヒットしてくれていなければ、出版されていなかったであろうこの本。
TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」でしゃべらせてもらったことがキッカケで、それを角川学芸出版の方が聴いていてくださり、書籍化したわけです。
この秋、『舟を編む』がアニメ化されると、ノイタミナのナインナップ発表会で知り、
「春よりも、アニメ化のタイミングで文庫化したい」とお願いしたら、それをかなえてくれました。
いまはなき、角川学芸出版というレーベルですが、KAODKAWAの白井奈津子さん、麻田江里子さん、本当にありがとうございます。
というか、三浦しをん先生には足向けて寝られねえっす!
今年は『昭和元禄落語心中』と『舟を編む』がアニメ化されるという、落語と国語辞典とアニメを愛するサンキュータツオのための年みたいなところがありまして、雲田はるこ先生と三浦しをん先生に、食わしてもらった的なところのある私ですが、このお二人の情熱に報いるためにも、業界のためのコツコツと仕事をしていきたいと思います。
国語辞典、マジで楽しい本です。
一冊だけではなく、二冊は持ちましょう、ということで日本全国いろんなところでお話してきましたが、
日本人の国語教育という面からも、外国人の日本語教育という面からも、学校指定で一種類を全員が持つ、というのはあまりにもったいないです。
どこかでお話する機会をいただければ、日本全国うかがいます。
オフィス北野 伊従(いより)までご連絡いただければスケジュール調整いたします。
そういえば、この2017年の2月1日から3月1日まで、毎週水曜日の夜に
早稲田大学エクステンションセンターで「国語辞典を読む」という講座を開きます。
(上記クリックしていただければ、シラバスが読めます)
12月16日には、早稲田大学の全額共通科目「日本の言葉と文学(応用)」という授業でゲスト講師として国語辞典のお話をします。
12/16(金) 16:30〜18:00@早稲田大学14号館102教室
早稲田大学「日本の言葉と文学(応用)」水藤新子先生
水藤先生は中村ゼミの大先輩です。
私のお姉ちゃんのような方ですね。
一般の方でも聴講できますし、出席もとらない全学共通科目なので、お時間作って来てみてくださいね。
]]>
攻めてるよねKADOKAWA。
表紙、花澤香菜さん。
裏表紙、南條愛乃さん。
ちょっと待って、どっちも好きだぞ。
で、こんなたっとい生き物しか特集しない雑誌になぜ?と思われるかもしれないリスクを追って謎インタビューに応える。
自分の前のページが、ニッポン放送の吉田さんだったので、あ、なるほど、という感じ。
いいなあ、これ毎年恒例にしてほしいなあ。それだったら語ること考えるわー。
なんか偉そうにいっちょ前に語ってる感じですけど、なんかこの日髪の毛がきもくなってました。
全体的にきもい感じで良かったです。
読み終わって気付いたんですが、上坂すみれさんのことを語るのを忘れていた!
私は、上坂すみれさんが好きです。彼女のことはなにがあっても応援し続けたいと思ってます。
読み応えもあって、グラビアなども充実している雑誌なのでぜひオタのみんなは買ってね!最優先事項よ?(このネタふるい)
]]>特集「落語と演劇」
に九龍ジョーさんとの対談が7Pちかく掲載されています。
九龍ジョーさんは、立川吉笑さんの『現在落語論』などの編集者でもあり、
日本の古典や演劇文化に非常に精通していらっしゃる方です。
「古典はZIPファイル」という発想を私にタイ料理屋で教えてくれた人です。
この雑誌で落語の特集が組まれるのははじめてのことだそうです。
いまはどこの雑誌もこぞって落語特集ですが、
演劇との接点をさぐるあたりはこの雑誌のオリジナリティですね。
豪華な執筆陣です。
喬太郎師匠の落語の文字資料がこれだけ大量に出るというのも歴史的価値の高い一冊です。
編集顧問の矢野誠一さんは、『三遊亭圓朝の明治』で、永井啓夫さんの圓朝観や、藤浦敦さんの圓朝像よりも、かなり現実に肉迫した圓朝観・圓朝像を示した方です。
というか、落語界隈では知らない人がいない、というほどの大家ですので恐れ多いのですけれども。
楽しい対談でした。
]]>
「サンキュータツオの そのコトバ、国語辞典に聞いてみよっ」
今月は1月号、年末年始に読んでくださる方が多いと思うので、「鯛」!
各国語辞典で「鯛」をどう解説しているか、読み比べしました。
ハナダイさんのイラストがかわいい。
12月9日発売です。
よろしくどうぞ。
主婦の方が読んでいてくれたりしたら、うれしいなあ。
]]>
というのも、10月に呼び出されて「来月からやってください」と言われたので、さすがに無理だから12月とか、キリのいいとこ2015年からはじめましょうよ、と提案してみたものの、それでもどうしても、ということだったので、いそいで会のコンセプトを決め、公演の時間帯や空間の演出を決め、出ていただける演者さんにお声がけし、自分のスケジュールもやりくりして、なんとかやってみたわけです。なかば強制的に。
会の立ち上げは入念にしないと痛い目にあう、というのは長年の経験からわかっていたので、これはいきなりつまづく羽目になると覚悟をしていたのですが、つまづくどころではない大けがで、ひたすらに演者さんに申し訳ないですと謝り続けた2年前。
11月はプレ公演ということにして、12月からが本番だと思ったんだけど、それでもうまく回るはずもなく、これはまずいことになるぞと胃を痛めまくって現在に至ります。
そんな「渋谷らくご」も気づけば2年。11月は特別な月と位置付けて、いつもより一日多い、6日間12公演。
メインは二つ目の瀧川鯉八さん。
6日間すべて出演していただくという、「鯉八まつり」にしてみました。
お客さんが入りすぎないようにコントロールしつつ、でも入らなかったら最悪なので、小屋や私を信用してくれるような人をどれだけ増やすかって話なのだが、注目度が高まっているのなら、強いメッセージを発信したいなと思って、こういう興行にしてみたのです。
とにかく渋谷らくごに行ってみよう、と、どこかで情報を入手して興味を持ってくれた人に、とにかく鯉八さんを見せる、
という非常にシンプルな導線をひいてみたのです。
これに関しては、なんで鯉八ばっかりなんだと、もちろん演者さんのなかにも、お客さんのなかにも思う人はいるかもしれないのですが、昨年末、おもしろい二つ目賞(渋谷らくご大賞)に選んだからには、多くの人に届けるまでを劇場の仕事にしないと、変な色をつけてしまいかねないので、責任が取れないなと思ったわけです。
とはいえ鯉八さんも、この一年で少しずつではありますが仕事が増えてきたようで(渋谷らくごなんかでプッシュされているから、うちはいいや、と言う人がいるものなのです)、そこまで強烈な色をつけないで済んだかなと、安心しています。
ですが、鯉八さんの才能は、落語会に足を運んでいる人はもちろんですが、落語を聴いたことない、普段映画やお笑いやお芝居を見ている人にこそ知ってほしいので、それくらい惚れ込んだ才能に対する責任としても、こういう興行がベストだなと思い至ったわけです。
6日間、鯉八さんは走り切りました。
いままでないくらいのストレスを与えてしまったようでしたが、鯉八さんなりに自分の課題と成果を見つめてくれたみたいでした。
足りない部分とできている部分を確認できる、おなじ若手の芸人として、そういう場があれば決して損ではないはずなので、なにかを持ち帰ってくれたと思っています。
ネタはすべての高座において、安定したパフォーマンスでした。最高でした。どのネタも大好きなものでした。
で、鯉八さん、あるいは「渋谷らくご」を聴きにきて、お気に入りの二つ目さんができた、という人に、
まだ生で聴いたことがなかった師匠たちを聴いてほしいなと思ったのでした。
定期的に寄席に出ている、あるいは、なんらかの形でハブとしての活躍をなさっている師匠方。
お名前を出してしまうと、目当てのお客さんで埋まるかもしれないけれど、渋谷らくごは動員がすべてではないのです。
メッセージを発信する落語会であり、「いまオレたちの世代にとってはこういう人が面白いんだ」という新しい価値観を提案する会であるべきなのです。
個人的にはそういうメッセージが強い会には足を運びたくないなという「保守の自分」がいるのですが、「リベラルな自分」を興行では優先することにしています。
なので、あくまでお目当ては若手、主役は若手で、彼らを聴きに来たお客さんに、お楽しみゲストを聴いてもらって、彼らにとってはまた新しい価値観を知ってもらいたいなと思ったのです。
これはリスクもあって、すごい師匠に出ていただきながら、客席がまったく埋まっていない、というケースが想定されるわけです。
また、自分目当てではないお客さんの前でトリをとる、という、師匠方にとってもストレスのかかる環境でした。
あくまでメインは若手なので、お楽しみがだれかなんてあおることも一切しませんでした。それでは本末転倒なのです。
これは恐怖でした。普通に告知していればお客さんもくるし、演者さんも安心だし、だからこそほかの会はこういうことをしないのです。しないにはしない理由があります。
ですが、「渋谷らくご」を信じて、若手の活躍を楽しみにしてくださっているお客さんがいることを信じて、6日間走り切りました。
おかげさまで、なんとか形になりました。ありがたい限りです。
お楽しみゲストはだれなのかと予想したり、出囃子であの人だ!とわかってしまうような落語通の方もいらしたようですが、そういう楽しみ方もあっていいと思いました。そこまで注目していただけるのは光栄です。ただ、そこに向けたアイデアではありません。
そもそも名前を知らない、出囃子を聴いてもわからない、という人をメインに設計したものだったので、「こういう真打がいるんだ、すごい!」と思ってくれた人が一人いれば、それでいいと私は思っています。
いまやるべきことは、こういう「はじめての一人」のほうをちゃんと向く、ってことだからです。
通ならば、その意味も理解してくださっていると勝手に思っています。
初日の古今亭菊之丞師匠は、私が落語を聴き始めたころは二つ目になりたてだったと記憶しています。
あのとき若手と言われていた人が、いまは第一線の超絶技巧真打になっている。
こんな胸が熱くなるような思いを、いま、そしてこれから落語を知る人たちに体験してもらいたい。
寄席で聴く円菊師匠の高座はスピード感があって圧倒的でした。メリハリがあってわかりやすくて。
そんな遺伝子をたしかに継承しながら、菊之丞師匠にしかできない落語を構築しているので最高。
二日目は入船亭扇遊師匠。
言わずと知れた大看板。どうしても、出ていただきたかった師匠です。
この5月、渋谷らくごスタート以来ずっと出演してくださっていた、柳家喜多八師匠の盟友。
高座でも、「今年は親友を亡くしました」とサラっと言ってくださっていたけど、あの一言に、その日はじめてきて事情を知らない人に対する師匠の配慮も感じ、それでいて事情を知っている人をキュンとさせるような男気を感じもしました。
長年磨き上げた話芸が炸裂した一席でした。
三日目は立川志らく師匠。
以前、雑誌の対談でご一緒したことがあったのですが、私の学生時代はこの志らく師匠が、二つ目から真打へと挑戦しているときでした。あんなにドキドキする経験が、落語会で味わえるとは思っていなかったし、歴史の一ページに立ち会っているんだなとそのっ瞬間に思えたことにも感激しました。
寄席に出られない、世間も自分に興味がない、そんなとき自分でどう動けば状況が変わるのか、そしてそこからどう展開させていくのか、まさに興行の基本を見る想いでした。
で、この師匠は進化を止めない、これでよい、ということをあまりしない、というのも見ていて楽しい。去年ああいっていたのに、今年全然ちがうこと言っているぞ、と、考えをアップデートしていくのです。
またその師匠のアップデート具合に振り回されていく弟子たち、という構図も面白かったのです。こういう師弟関係も、こしら師匠とかしめさんに継承されていくんだろうか。
四日目は柳家喬太郎師匠。
この師匠にも思い出がたくさんありますし、また、どうしても出ていただきたかった師匠です。
喜多八師匠が愛した仲間でもありますし、個人的にも落語受難の時代に、どんな環境の落語会でも飛び込んでいって連戦連勝するというめちゃくちゃカッコいい方でした。
場の空気を一瞬でつかんで、その場のベストチョイスを常に選択できるという、まさに芸人の鏡のような存在です。
古典も新作も隔てなく、おもしろいこととマジなこと、硬軟織り交ぜて落語そのものの魅力をいろんな角度から伝えてくれる師匠です。
渋谷らくごに登場した瞬間、キャー!という歓声が聞こえたのも喬太郎師匠だからこそ。老若男女人気がありすぎる師匠です。
出てもらえて、ほんとにうれしかったなあ。
この師匠との縁は、今年の5月31日、末広亭の余一会、喬太郎師匠と文蔵師匠の会に米粒写経で出させてもらったところからです。
引き合わせてくれたのは、だから、喜多八師匠だったんです。
五日目は、一之輔師匠と、三三師匠。
渋谷らくごの心臓ともいうべき存在の一之輔師匠、目下、破天荒な落語の無双状態が数年続いていると思いますが、鯉八さんと一騎打ちするところをどうしても見たかった! ありがとう、一之輔師匠!
協会もちがうし、縁もゆかりもない若手のために、ひとつも得にならない番組にも喜んで出てくださる。こんなありがたい存在はいません。
「どがちゃか」(どがちゃが)という渋谷らくご公式読み物の名前の由来ともなっている「味噌蔵」。実は渋谷らくごで演じられたことがなかった演目なので、かかったときはうれしかったなあ。大好きあの噺。
三三師匠は、渋谷らくごがスタートした11月、その初日のトリで出ていただいた師匠です。どうしても、どうしても2周年、出ていただきたかった師匠です。
出演してくださると決まった時から、師匠のおかげで、2年続きました、とお伝えしようと思っていました。
そして伝えることができました。こんなにうれしいことはありません。
「元犬」を演じてくれましたが、あの噺があれほどの爆笑巨編になるという、落語の神髄に触れてとてもうれしいです。
はじめて落語を聴きに来た人が、ああいう落語に触れてくれたらいいなと思っていたことが、かなえられた瞬間でした。
最終日は、瀧川鯉昇師匠。
鯉八まつりの最終日、出るのはこの師匠しかいません。
というか、鯉昇師匠のスケジュールが確定したときから、このプロジェクトは動き出したのです。
鯉昇師匠のあとに、弟子の鯉八さんがあがる。6日間のラストは、これしかないです。
「時そば」を演じてくださいましたが、桃太郎師匠が亜空間殺法で空間を歪ませたあと、古典で空気を整えるのかと思いきや、トリで創作をかけるであろう鯉八をつぶさないネタのチョイスでありながら、アヴァンギャルドな味付けのくすぐり多数。まさに鯉八さんが自然に落語に入れる空気づくり。職人技でした。これしかない!というネタのチョイスに感動しました。
特別に出ていただいた師匠方、ありがとうございます。
師匠たちの想いあって、若手の二つ目・真打の奮闘あって、渋谷らくごは成り立っています。
だれが出てくるのかわからないドキドキを、それがあたりだろうがはずれだろうが、感じることのできる機会って、ほんとに減りました。
ですが、こういう場を作っていくことが大事なのだと思います。
昔、「談志・圓楽二人会」とか、志の輔師匠のはじめてのパルコ公演とか、昇太師匠が本多劇場でやったときとか、桃太郎師匠が古典やるぞ、落語ジャンクションで今日はなにをやるんだろう、といったときに、落語会に足を運ぶ時間のドキドキしたあの感じを、どうやったら共有できるか、考えに考えました。
演者ではなく劇場を信用して足を運ぶような人が出てくると、これは演芸場につくファンのように、次第に寄席ファンになってくれるのではないかとも考えました。
来月からはまた通常運転です。
とはいえ、12月は「渋谷らくご大賞」と、「創作大賞」を発表する最終日もあります。
初日の20時回は完売しました(すみません)。
ほかの日程はまだまだお席の余裕がありますので、みなさまどうぞ詰めかけてください。
当日券を多数用意してお待ちしています。
]]>
好評につき、
「寿限無論」再演決定です!
15時開演、16時半終演予定です。
90分で2組、「寿限無論」は45分圧縮バージョンでよりコンパクトにお届けします。
おそらくこの「東京グローブ座」という劇場は、漫才をやるうえでは国内一の環境とも言っていいと思います。
最高の環境で漫才ができることをうれしく思います。
グッズの再販もいたします。
ぜひいらしてください。
相方は、いま飛ぶ鳥を落とす勢いの神田松之丞さん。
講談というジャンルのことは知らなくても、神田松之丞さんは知ってほしいという存在です。
8月と12月は講談師の稼ぎ時、もっともいいネタがたくさんある季節です。
才能の跳躍を見届けてください。
今年最後のビッグマッチです!待ってます。
※12月24日の東京ポッド許可局「オレたちと聖夜と東京ポッド許可局」は発売日に完売しました。サンキュー★
連日、クリスマスをサンキュータツオと過ごしたい、という方はぜひこちらにもいらしてください。
※12月30日の「米粒写経のガラパゴスイッチ」は完売しております。
]]>
ということで、マンガを描きはじめて、ニコニコ動画などでまんが道を公開して、物語を作り上げてきた、「ぽてとはる」さんという方が、ついにデビュー。そのムックに、『俺たちのBL論』のサンキュータツオ&春日太一のコンビが登場しました。
ツイッターなどを拝見しても、書店用のポップを自ら提案したりいろいろとアイデアマンなところを見せているぽてとはるさん。
なんと私がやっているオタク向けポッドキャスト『熱量と文字数』を聴いてくださったり、BLに関する発言たイベントの様子を見て、BLまんがを描きはじめたそうなんです。
こんなことってあるのかよ!
「でもフェラチオ描写なら男にも女にもなれる。」
↑
春日さんなに言ってるの
こんな感じで掲載されています。
作品もものすごく丁寧な描写で、人間を描いているので、BLとか知らなくてもおもしろいものだと思います。
むしろ男性陣に読んでほしい。
この先生は、1月の『俺たちのBL論』のイベントにもお客さんとして来てくださっていて、
春日さんと私のイラストを描いて渡してくださった方です。
↑
これ。
家にこもって、いろいろ考えてくれたんだろうなあ。
自分の言葉がこれほど人に人生を動かしたのかと思うと、うれしいようなこわいような。
でも、ひとりに届けばいいと思っているので、BLについて語って、本にして、良かったと思います。
]]>