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「志ん朝」論 その心地よい呪縛 〜古今亭志ん朝全集 上〜
「志ん朝」論 その心地よい呪縛 
 〜古今亭志ん朝全集 上〜


今日、届く。
DVD『落語研究会 古今亭志ん朝全集 上』。

080430_0004~0001.jpg

TBSの「落語研究会」で放送された志ん朝師匠の高座を集めたもの。没後7年、ついに夢にまでみた「動く」志ん朝を見られる!
「夢にまでみた」は決して大袈裟ではないのだ。
ホントに夢に見た。
何度も何度も。
生前の志ん朝の高座が脳裏に焼きついている、そして恋焦がれている、だからこそ夢に出てくる。

私にとっては高い買い物だが、先日の競艇番組で当てた舟券を換金し、ようやく購入。
それでも安いと思う。
志ん朝にどれだけ「いい思い」をさせてもらったことか。
どれだけ感動をいただいたことか。
そんな数々のご恩に比べれば、このDVDなど破格の安さだ。

080430_0004~0002.jpg

志ん朝の名声を決定的なものにした『文七元結』(しかも1997年収録なので、最終形態のもの。吾妻橋での述壊まで削った、一番無駄のない高座!)をはじめ、「二番煎じ」「大工調べ」「宿屋の富」「愛宕山」「寝床」「子別れ・下」「井戸の茶碗」など、十八番がずらり。
下巻には、「化物使い」とか「明烏」入るのかなあ。
とにかく、このDVD全集のおかげで、あと100年は落語は生き続けるだろう。
というか、まずは「落語に興味がある」という人に、すぐにすすめられるメディアができた。それがなによりもうれしいのだ。

あまりにも早い死が、落語界にとっても痛かった。
『タイガー&ドラゴン』、『ちりとてちん』落語ブームがくるたびに、空虚な気持ちになった。
志ん朝師匠が生きていれば、それこそ「取りこぼし」はなかったはずだ。
私は、落語界とは「志ん朝」を中心に回っていると思っていたし、どこでだれの落語を聴こうが、どれだけひどい落語を聴こうが、「それでも志ん朝がいる」、とずっと思っていた。
志ん生や文楽や圓生に間に合わなかった、それでも、私は「志ん朝」に間に合った、おなじ時代を生きることができた、それだけが誇りだ。
夏目漱石が三代目小さんを作中で「小さんは天才だ。」「彼と時を同じうして生きている我々は大変な仕合せである」と『草枕』で評価しているが、まさにその気持ちである。
お年寄りに昭和の名人上手を実際見たことを自慢されても、だからこそまったくコンプレックスを感じずに済んだのだ。

つまり、志ん朝は私にとって、唯一絶対の「ネ申」だった。

あまりに好きすぎて論文まで書いた。
080430_0013~0001.jpg
「古今亭志ん朝の文体
  ―八代目桂文楽「明烏」との比較を通して―」
 (『国語学 研究と資料』第30号)

先日、TBSに仕事で行った際、局前でこんな展示があった。
080426_1626~0001.jpg

朝さまの凛々しい写真パネルがずらり。
このサイズの写真が拝めるだけで、もう平静ではいられない。涙が出てきてしまうのである。

志ん生のフラ、文楽の緻密と華、圓生の品格、柳好的リズム感と疾走感、晩年は馬生的落ち着き、滋味も加えた。
女もできる、侍もできる、子どももできれば、市井の人々もできる。
滑稽噺から人情噺まで、ネタ数も豊富。

すべてが完璧、とまでは言わないが、これだけトータルに100点に近い落語家はほかにいない。
だれが見たって、いいものはいい。
志ん朝は酒で言えば純米大吟醸。下戸が飲んだってうまいとわかる。文句なく「おもしろい」のだ。
落語はテキストがおもしろい。しかしそれだけに演者が「落語」に飲み込まれてしまう可能性が高い。しかし志ん朝は落語と向き合う力を持っていた。落語と伍するだけの力があった。
落語がおもしろいのか、志ん朝がおもしろいのか、わからないほどである。
閉じているようで、開いていた。現代性を持ち合わせ、だれが聞いても理解できる分解具合。
説明過多との批判もあるが、それは志ん朝の批判というよりは、時代の必然だ。いまの時代に文楽的な無駄の削り落としは、「難解」になる。そういった意味でも、絶妙のバランス感覚を持っていたのが志ん朝だった。
おバカさんにはわからない、けれど、義務教育をしっかり受けてきた人ならばわかる、それくらいのさじ加減と言葉遣い。

私の知る限り、この古今亭志ん朝の魅力を、もっとも美しく、そしてエロチックに、正しく表現したのは、京須偕充(きょうす ともみつ)さんである。
かの『圓生百席』や志ん朝の伝説のライブ「志ん朝七夜」のプロデュースなども手がけた、音声のプロであり落語の評論家だ。

志ん朝の人物表現法は、圓生のような歌舞伎世話物風写実演技とは少しちがう。噺の構図の中で立体的に人物像を浮き彫りにする、いわばアニメーション風。むしろ、八代目文楽に近い。そして技巧的にすこぶる巧緻だが。たまに志ん生めいて技巧を離れ、写実や立体像を飛び越える刹那もある。

(京須偕充『らくごコスモス―落語、昨日今日明日』PP251〜PP252)

そしてこの京須さんにかかると、志ん朝が高座にあがり、第一声を発するまででも、ドラマチックに語られる。
これほど志ん朝に惚れ込み、そして志ん朝を理解している人物を私はほかに知らない。

 古今亭志ん朝が高座へ出る。まず、その姿がいい。着物が泣いて喜ぶやや小太りの体型。目鼻立ち確かな整った容貌。はなし家といえども綺麗事は人気の鍵である。
 ほどよく丸味を帯びた全体の印象も、角型や痩せ型よりずっと芸人らしさを感じさせる。
 姿を見せてから高座蒲団までの足どり、姿勢、視線、そして着座一礼ののちに初めてお客と対面するまでの流れ、運び、かたち。短い無言の時間に、場内には幸福な落語への予感がワクワクと満ちあふれる。
 格別に独特のことをしているわけではなく、媚びもせず不愛想でもない。巧まざるイキのよさ、自ずからなる華ぎ。
 着物の質と量、その着こなしと使い分けも当代一だろう。季節、噺の種別、主な登場人物などを勘案して選んでいるし、出演頻度の高い会には同じ着物を続けないよう心がけてもいるようだ。
 そして、いよいよ、志ん朝の声が聴こえてくる。下世話ではなく、ちょっととりすました感じはあるが、そこに、江戸へつながる旧東京ッ子の気風、気どりが匂う。
 明るい。五月の晴れた風景のように明るい。底抜けたおめでたいわけではなく、緑蔭の小暗い冷気もあるが、カラッとして透明度が高い。明るくて朗らかで、だが慎みを知る声。これも江戸の、旧東京の、何と言っても東の落語の、あらまほしき音声である。いやみなく幸せを恵むトーン。
 …
 (京須偕充『らくごコスモス―落語、昨日今日明日』P232)

まだまだ続くが、志ん朝がそこに存在するだけで、彼はページにして10ページくらいを描写してしまう。そしてそれがファンとしては即座に「激しく同意」することばかり。
大の大人をここまでミーハーにさせてしまう志ん朝とは、いかに巨大だったか。

「古典落語」は志ん朝ひとりいれば充分だ。
最強の文体(方法論という意味での)を備えた、天才だったのだ。
そういえば「天災」もいい。

時代は音源も映像も残る。
今の落語家さんたちには残酷な時代かもしれないけれど、それだけに先人をどれだけ超えたか、しっかりはかるモノサシがある。
もちろん、だれにでも個性はあるので、その人にしかできない「落語」も存在する。
プロの人で志ん朝の呪縛から解き放たれない人はいないだろうが、それでも客である私はその呪縛に、いましばらく心地よく身を委ねたいのである。
posted by: サンキュータツオ | ★コラム | 00:48 | comments(6) | - |-
■アニメ会の『ヲタめし!』 第9回配信
祝!リスナー登録10000人突破!
ヲタのヲタ芸人によるヲタのためのポッドキャスト。
アニメ会の『ヲタめし!』 第9回配信

ブログ用タツオ
ゲストに漫画家の松山せいじ先生。
松山先生は巨乳、美乳、貧乳と、硬軟織り交ぜた「おっぱい」に対する飽くなきこだわりと探究心をお持ちの、いま日本でも相当忙しい部類に入る漫画家さんです。
そんな松山先生は、どんなに忙しくてもいつもアニメ会のライブに駆けつけてくださる頼もしいオタク。
今回はゲーム(主にアイマス)そして鉄道についてのヲタトーク全開!
そう、松山さんと去年のライブの打ち上げで話していたら、実は去年一番おもしろかったのは『鉄子の旅』だったのでは!?という話題で盛り上がりました。
いわゆる鉄道に実際に乗る「乗り鉄」の部類で、昔はそうとう鳴らしていたらしいのだが、『鉄子の旅』でその血が騒ぎ始めたのだとか。

ヲタは、自分の得意分野でなくても、ただほかの人のヲタトークを聴いているだけで楽しい。
なぜなら、「ハマっていく」心地よさと病的な感覚を知っているから、即座に理解できるのだ。
というわけで今回の『ヲタめし!』も楽しかったなあ。

あー、私も松山先生とお話したかった!
というのも、今回も私は欠席です。残念!
9回で登録者数10000人。
聴いてくださっている方々、また友達に「ヲススメ」してくださっている同士、サンキュー☆

こちらのポッドキャスト、サイト内に再生できる場所がないのが残念。
初見の人にも優しいラジオにしたいのだけれどなあ。
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 23:25 | comments(0) | - |-
「上から目線」論

「上から目線」論


「上から目線」という言葉をよく耳にする。
日本人が大好きな「テクニカルターム」である。
(↑この発言もどこか「上から目線」である)

先日、電車に乗っていて、上司の悪口を言っている酔っ払ったサラリーマンが、
「あいつの“上から目線”がまたむかつく」
とか言っていたが、
それは上司なんだから「上から目線」に決まっている。
上の人なんだもの。

ところで、「客観的な目線」であることと「上から目線」であることとは、似て非なることである。
しかし報道番組などは得てして混同しているように見えることがある。
正確に言えば、「客観的な目線」などありはしないのだけれど、
ニュースとニュースの間やナレーションの最後のほうに入りがちな、
「お寒い状況である」的なコメント、
「本当にこれでよいと考えているのでしょうか」的な投げかけ、
こういったものはすべからく「上から目線」なのである。

せっかく淡々とニュースを消化しているところに、こういったいきなりの「上から目線」は、ボディブローのように私をイライラさせる。
いや、正確にいえば、「上からではないことを装った、ちょい上から目線」なのだ。

中立的であろうとすればするほど、「上からではない装い」をせずにはいられないのだろうが、
それでもコメントはそもそも「主観的」である。
いっそのこと、
「私はこれは悪いと思う」「バカじゃねーの」「興味ない」
などと、立派に上に立っていただければ、なんの文句もいらない。
だから、本当に私が嫌悪するのは「ちょい上から目線」なのだ。「逆小津安二郎目線」。

NHKのニュースが清々しく思えるのは、こうした鬱陶しいコメントがないせいかもしれない。
昔は一番つまらない、なんの工夫もないと思っていたNHKのニュースに、いまこれほどまでに好感を持っているのは不思議だ。
歳を重ねるとはこういうことかもしれない。
人が歳を重ねると山水画や俳句の“わびさび”に興味が沸くのも無理はない。

こうなると、俄然「下から目線」の発言を聞きたくなってくる。
たとえば、政治のニュースなどの後に、司会者が
「私にはとうていできない難しい問題に挑んでらっしゃる政治家の皆さん、いつもお疲れ様です。専門家が言っていることなので、正しいのでしょう。お任せします!」
とか、
打てない四番打者をスポーツ紙が、
「○○選手、いまはたまたま調子が悪いだけです。実力はすばらしいものがあるんですから!」
とか、
電車で騒いでいる子どもたちを注意するのに、大の大人が
「すいません、恐縮ですがもう少しお静かにしていただけませんでしょうか」
とか、
お笑いのボケに対してツッコミが、
「あなたがそうお考えになるのも無理はないです、私の言い方がダメだったら謝罪しますけれども、できればそこは●●というのが通例だと存じます」
とか。

じゃあ「ちょい下から目線」てなんだろう?
「下からでないことを装った、ちょい下から目線」。
つまり「小津安二郎目線」である。
政治家の問題発言を取り上げて、
「非常に問題がある発言、といえなくもないです」
とかかなあ。

ちなみに、オタクがよく使う
「わかってらっしゃる!」
も「ちょい上から目線」のように思う。
「是非の判断の主導権は私です」といわれているかのよう。
「よくできた作品です」とかも同様である。
しかしこれらは聴きたいほうの「ちょい上から目線」かしれない。
posted by: サンキュータツオ | ★コラム | 23:30 | comments(0) | - |-
■東京ポッド許可局 第13回配信
“ミュージシャン芸人”マキタスポーツ、
“インチキ好奇心芸人”プチ鹿島、
“胡散臭い学者芸人”サンキュータツオ
の3人による、どんなに流行っても絶対タイトルを噛むラジオ、
『東京ポッド許可局』第13回配信。
PCさえあれば、機種・メーカー問わずだれでも聴けますよー★
■【第13回“真っ赤なスポーツカー”論

ブログ用タツオ
≪解説≫
突如マキタ局員が提唱した「真っ赤なスポーツカー理論」。
あなたは街で真っ赤なスポーツカーを見たことがあるか。
「真っ赤なスポーツカー」は、
もはや人のイデアのなかの「カッコいい金持ち」の代名詞ではあるまいか。
そして時には比喩となり得るほどの、みんなが知ってる「真っ赤なスポーツカー」。

言われてみれば、
ベタとシュールの狭間を、夢と現の狭間を行き来している「真っ赤なスポーツカー」。
これは世紀の大発見である!

「新陳代謝」や「無意識」や「肩凝り」が漱石の造語であるならば、
「真っ赤なスポーツカー理論」はマキタスポーツによるものだと歴史は言い続けることになるだろう。

「真っ赤なスポーツカー」って、現実ではなかなか見ないし聞かない言葉だと思っていたら、
いま見ているアニメのなかでいきなり出てきた。
「真っ赤なスポーツカーだったら、大学まで5分だぜ」
売れっ子作家が恋人を引き止めるために言うセリフである。
まさに、「カッコいい金持ち」の権化との相性を物語っていることが証明された瞬間だった。

「真っ赤なスポーツカー理論」で、冷蔵庫マンから芥川龍之介までを語るラジオはほかにない!
是非とも聴いていただきたい回である。
みなさんも歴史の生き証人になっていただきたい。

■マキタスポーツのブログ
 「真っ赤なスポーツカー


posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 16:08 | comments(0) | - |-
■アニメ会ブログ更新
楽天『アニメ会の日替わり定食』
■サンキュータツオの『ちょこシス』8クール目感想
 第87話 「ちょこッと香水」
サンキュータツオのそういえばですけど 08.04.23号

角川書店『日刊ザ★アニメ会A』
■サンキュータツオのぷにぷにコラム 
 【『純情ロマンチカ』〜理屈じゃねー!〜】

ブログ用タツオ
≪解説≫
最近、「ちょこシス」感想楽しみにしています!という、メッセージをよくいただきます。
そう、私はお客さんにまで気を遣わす人間なのでございます。
この手のメッセージはどんどん受け付けますのでご遠慮なく。
「遅い」ということはございません、いつでも受け付けます!

今期、『純情ロマンチカ』は久々に、いい意味での「頭の悪さ」全開の、全話チェックアニメでございますよ。
男性の方は、「BL入門アニメ」としてご覧になるのがよろしい。
そして女性の方は、「腹筋の訓練」として、笑いながら見てください。
そんな『純情ロマンチカ』の件は『日刊ザ★アニメ会A』のほうで語っております。
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 13:29 | comments(2) | - |-
本村洋さん
『本村洋さん』


私ごときがこのことについて語ること自体、お叱りを受けることは重々承知なのですが書きます。

芸人が、
社会のことに関心もってもいいじゃないか。

どうしても、本村洋さんのことを語りたいのである。

私は法の専門家でもないし、判決どうのは語るべき問題ではないので触れない。
私は、あの本村さんを見るだけで、「身が引き締まる想い」になる。
胸が張り裂けそうになるのである。

私は本村さんとおなじ年に生まれた。
自分より、ほんの数ヶ月前に生まれた人が、
この9年間、痛ましい事件の被害者となり、そしてその事件に翻弄された。
9年間である。

9年前、私はまだ大学の学部生だった。
本村さんはもう働いていた。
私はその後、大学院に入学し、芸人をやるようになった。
私がホントにくだらないことを考えているときも、
楽しく好き勝手やっているときも、
友達とくっちゃべっているときも、
アニメを見ているときも、
お客さんの笑顔を見ているときも、
研究に没頭しているときも、
二度寝しちゃってるときも、
彼は闘っていた。

私が好き放題を追求しているとき、
彼はずっと闘っていたのだ。

9年間である。
彼は言っていた。
「20代という大切な時間を、この事件にかけてきました」
しかも、最愛の妻と子を失った上にである。
一日に。これからという時に。
もう、
頭が上がらない。
なんとも言いようのない、
どうしようもない気持ちになってしまう。
日本的に言えば、「身が引き締まる想い」になるのだ。
これは本村さんの名誉のためにも言うが、同情ではない。
ただただ、
頭が上がらないのだ。

例の事件が区切りごとに報道されるたび、
「申し訳ありません」
という気持ちが溢れてきてしまう。
きっと私は犯人より反省していたかもしれない。

この9年間、私は本村さんの成長を見せつけられてきた。
最初はいかにもな若者の服を着、
うろたえ、
ストレートに感情を発言していた。
またそれがマスコミに叩かれたりもした。
20代前半に、
なぜこの人はこうも辛い思いをしなければならないんだろう、
そう思った。
それが、背広が似合う20代後半になってからは、
会見では言葉は厳しいにもかかわらず冷静にしゃべり、
いろいろな方面に気配り、計算をして話すようになった。
「運命を受け入れた男」になっていた。

もちろん犯人の言動にも翻弄され、
はらわたが煮えくりかえるような思いをどれだけさせられたかは、
みなさんもご存知の通りである。
しかしそれでもなお、本村さんは被告のことを憎しみを超えた感情をもって見つめるに至った。

彼は、
主張すべきことを主張し、
やれることはすべてやり、
働き、
落ち着きを身につけ、
生きつづけた。
闘う、というよりも、歩んだと言ったほうがいいのかもしれない。

今回の広島地裁の判決がでる前日、
本村さんはこう行っていた。
「判決が死刑であっても、無期懲役であっても、受け止める」
と。
やれることをすべてやった人の発言であった。

今回の判決も、勝ちとか負けとかではない。
単なる「区切り」ではない。
裁判が終わっても、
彼のなかではなにも終わらないのだ。
「ひと段落」ついただけなのだ。

大きい人だな、と思った。
また身が引き締まる想いがした。

私は彼とおなじ年に生まれたということに、誇りを感じるのである。
ホントに、誇りを感じる。

本村さんは、お笑いは見るのだろうか?
私は、彼のような深い悲しみを味わった人でも、
ほんの一瞬でもいいから、
笑えるようなものを提供できるような人間でありたいと思う。

こんなことを言ったら、
それこそ「お笑い草」になってしまうけれど、
それでもお笑いの力を私は信じている。

友人の母親がいま、病床に臥せっている。
痛く苦しいなかでも、お笑い番組を見て笑うそうである。
周りの家族も、
過酷な現実を前にして、
お笑いに救われるのだそうだ。
友人はいま、おもしろいものを堪能したとき、「ありがとう」と思うそうである。

この世の中には、
お笑いに救われている人がいる。
私はそう信じてやまないのである。
posted by: サンキュータツオ | ★コラム | 00:07 | comments(4) | - |-
■アニメ会の『ヲタめし!』 第8回配信
もうすぐリスナー登録10000人!
オタク芸人トークユニット『アニメ会』のポッドキャスト。

アニメ会の『ヲタめし!』 第8回配信

ブログ用タツオ
≪解説≫
今回は通常収録に参加!
最初から出ております。
純情ロマンチカ』という、女性向け作品が今期突き抜けておもしろいです。
女性のオタクが、いわゆる「同人誌」などで展開している「BL」の魅力が凝縮された作品。
「BLのお約束」の総結集のような作品です。
そういう意味では、男性向けかもしれません。
すでに「どっぷり」な女性にとっては、「う、ベタすぎてわかりやすくて、行間介入する余地がなさすぎるっ」となるかもしれませんが、男性にとっては非常に新鮮。
「ああ、女性の頭のなかはこうなっているのか」ということを知ることができる貴重な作品と言っていいでしょう。

帝都大学法学部を主席で卒業し、「直森賞」という文学賞まで受賞した売れっ子作家(ホモ)に家庭教師をしてもらう、男子高校生。
もうこの時点で突き抜けている。
『ちょこッとSISTER』に通じる「ふっきれかた」をした作品であることは間違いない。

今期のアニメ、
放送では触れられなかったけど個人的に楽しみにしているのは、『イタズラなKiss』(少女漫画原作。でも主役の水樹奈々さんの声が最高!)とか『ネオアンジェリーク』(女性向けゲーム原作。カッコいい男めじろ押し!)。
いわゆる「王道ラブコメ」ってやつである。ヒットの法則をすべからく踏襲した、「古式ゆかしい」作品たち。
『東京ポッド許可局』でもお話しましたが、「真っ赤なスポーツカー」が作品に出てきちゃうんだもの。これは間違いないですよ。
『イタズラなKISS』は、GAINAX制作・かの庵野秀明監督の『彼氏彼女の事情』に近い感じのラブコメなのだが、一話にして憧れの彼の家に同居することになるあたりの「ロマン主義」がすがすがしい。ロマン主義万歳!

ああ、どんどん自分の趣味が「女性」になっていくのが怖い……。
私はもう、「萌え」を通過してしまったのだろうか。
カッコいい男性に「萌え」てしまう瞬間のほうが、多いような気がする…。
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 02:01 | comments(0) | - |-
■速報 大村競艇『競艇祭』的中!
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『よし、できたっ!』

競艇ファンならお馴染みのこのセリフをまさかスタジオで絶叫することになるとはっ。

だいたい1週目の最初のコーナー(競艇では「1マーク」という)を回ったところで勝負が決まる競艇。
エンジン音が大きいので、競艇ファンは選手にではなく、自分に向けて的中した喜びを叫ぶのだ。1マークを回って微妙なときは、周りの人に向かって「できた? ねえ、これできた?」と聞くのである。
最初はこの競馬や競輪では聞けないセリフの魅力に新鮮味を感じたものだ。

本日、長崎文化放送での『大村競艇 競艇祭』に出演!
あまりにうれしすぎて、こうして自作Tシャツまで作ってしまったというわけです。

生放送でレース実況入りきりませんでしたが、大村競艇12レース、『発祥地ドリーム』三連単的中!!

2号艇・今垣光太郎選手、バンザイ!!!
4号艇・田村選手、そして三番手に食い込んだ1号艇・山崎智也の巧みな操縦に乾杯!!
ガチ予想で舟券も買っていたのでテンション急上昇!

競艇は男の子にとってのガンダムなのです。
メカとかエンジンとか好きな人は一度あの競艇場に足を踏み入れたらその魅力に気づくはず。
ご存知のない方は、是非一度最寄の競艇場に見物に行ってみてください。
おもしろいですよー★

競艇祭
写真は、MCの青島健太さんと永田磨里奈さん。
青島健太さんは、青春時代から私にNBAの魅力をテレビ越しに教えてくださった憧れの方であります!
いやあ、感激。生きてるといいこともあるものですね。

そして永田さんは「競艇に詳しい美人アナウンサー」!
世の中にはこんなに奇特な方もいらっしゃるのですね。競艇場にこういう人がいてくれるだけで、夢があるってもんです。
彼女のブログでは熱く「競艇愛」を語っているのも微笑ましい。
永田磨梨奈blog

いやあ、今日は舟券も当てて、青島さんに会えて、競艇女神にも会えて、最高の一日だYO!

ちなみに、公営ギャンブルのなかでも「競艇」は非常にオタク向きでもあります。
はまり込むと見どころたくさんでデータ好き、メカ好きにはたまらんです。
posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 17:40 | comments(0) | - |-
■『東京ポッド許可局』 第12回配信
マキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオによるインテリジェンス超楽屋話ラジヲ、
『東京ポッド許可局』第12回配信。
PCさえあれば、機種・メーカー問わずだれでも聴けますよー★

■【第12回“街”論


ブログ用タツオ
≪解説≫
祝!登録者数2000人突破!
それにしてもこれだけリスナー登録があり投稿がこないというのもすごい番組である。

今回、街について局員たちがおしゃべりしたわけであるが、後半は「空き地」についてしゃべった。
都会には「空き地」がよくある。
「空き地」は、主に都会の一軒家を潰したあとである。
私の住んでいる街は、歴史的には割りと古い住宅地で、瓦屋根や木造の古い建物が大変多かった。
しかし、生まれて30年、それでも建てかえが頻繁に行われていて、よく「空き地」ができる。
「空き地」が「空き地」として人に認識されるのは、「けっこう長い間、なにも建っていない状態」が続いているからだ。
この「けっこう長い間、なにも建っていない状態」というのは、要するに「なにか揉めている状態」にほかならない。
というのは、

もとは一軒家だったのが、
→老夫婦が亡くなる(家主が亡くなる)。
→都会なために相続税が莫大にかかる。
→しかしすでに独立して実家を離れている子どもはなかな相続できない。というか、いまの生活維持で手いっぱい。建てかえはおろか、相続もできない。
 しかもいまは子どもが3人いたとしたら、3人が土地の相続権を持っていたりするので、合意に達するケースが少ない。
→じゃあ「土地売ろう」か「マンション建てよう」になる。

だいたいこのパターンである。
それで一軒家がマンションになる例はままある。「空き地」も1、2年で片付く。
しかし、これが「土地売ろう」になったときがやっかいなのだ。

→「いますぐ売ろう」と「いや、もう少し待てばもっと高く売れる」
  の間で、兄弟(とその夫婦)が揉める。

このパターンである。
これが続くと、兄弟仲は険悪になり、最後まで親の面倒を見た人の発言が強くなってたり、いや兄弟みんな権利は同等と主張する人がいたり、
地方に行った人と都内で住んでる兄弟でさらに面倒なことになり……
結局何年も「空き地」の状態になるのだ。
借地の場合は「地代だけ払って現状維持」という選択肢ももちろんある。

なので「空き地」を見ると、私はいつも切なくなってしまうのだ。
近所でそういう一家を数多く見てきた。
昔は無邪気に「空き地最高!」と思って、なぜか隅っこに隠してあるのか捨ててあるのかわからないエロ本なんかを友達と探したりしたけど、
大人になると「空き地」の後ろにある「ドロドロした面倒くささ」を感じてしまうからつらい。

プチ鹿島局員のブログでの「第12回」紹介記事
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 01:45 | comments(0) | - |-
サンキュー☆
ブログ用タツオ
4月18日、TX系『たけしの誰でもピカソ』、
ご覧になっていただいた方々、
まことにありがとうございます!
サンキュー☆
反響もたくさんあり大変うれしいです。
これをキッカケに、こういう人たちもいるんだな、と知ってくださる方が一人でも増えてくれれば嬉しいです。

今回は、『誰ピカ』スタッフさんのリクエストもあり、あのネタを演ることができました。
たぶん後にも先にもあのネタのオンエアは最後でしょうw
というかまさかできるとは思いませんでした。
スタッフさんに感謝です。
そして、たけしさん、今田さん、久本さん。
感謝なんという言葉ではもう片付けられません。

そしてなによりコメントを寄せてくださった浅草キッドさん。
我々米粒写経は、キッドさんなくしては存在し得ないコンビです。
まだ学生時代(といってもまだ学生ですが。学部の4年頃)、
素人の「落研さん」だった我々2人を、
はじめて「おもしろい」と評価してくれたのが浅草キッドさんだったのです。
当時『浅草お兄さん会』というキッドさんの主催するライブに、
素人が立ったわけです。
まだ右も左も、というか、
「芸人になる」なんてつゆほども思わず、
覚悟も曖昧だったあの頃から、
「浅草キッド」は自分たちにとってスターでした。

はじめてお客さんの前でネタを演ったあの日、
舞台を降りた直後に、
ポンと私の尻をたたいて、
「おもしろかったよ! あんちゃんたちまた来なよ」
と声をかけてくれた玉さん。

初めてライブの舞台に立った次の月には、
たけしさんの前でネタを披露する機会まで与えてくださいました。
『ビートニクスラジオ』というFMラジオ番組の、ブースのなかで!
たけしさん、キッドさんのお三方に挟まれ、我々はネタを演った!
もうそれだけで夢のような出来事だったなあ。
そして次の日は大学院の受験でした。
なんという日々だったのだろう。
あの「緊張の2日」は緊張しすぎていたので記憶が薄いです。
でも『誰ピカ』でお話をさせていただいた時、たけしさんはあの日のことを覚えてくださっておりました。
うおおおおお!
泣きそうだった。

そんなキッドさんに推薦のコメントをいただけたこと、
そしてたけしさんの番組に出させていただいたこと、
決して無駄にはできません。
玉さんは、収録後にもブログで応援のコメントを書いてくださったり、
ホントに「男気」溢れる人生の先輩。
博士さんは、動じず、騒がず、常に的確なアドバイスをくださる、
「先生」!

たけしさんとキッドさん、
おなじ事務所とはいえ、なかなかお会いできない雲の上の存在の方々に支えられ、
今回のオンエアは成りました。
感謝。
いや、サンキュー!(軽いよ!)

今後の米粒写経の活躍にご期待ください。
posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 03:04 | comments(2) | - |-