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「赤井孝美イラスト展1999〜2008」レポ
『赤井孝美イラスト展』レポート

『赤井孝美イラスト展1999〜2008』に行ってきた。

赤井孝美さんは、GAINAXというアニメ制作会社の、一流のプロデューサーであり一流のイラストレーターであり、一流の脚本家であり、一流のカメラマンでもあり(?)、なんといっても、一流の「オタク」である。
そう、「オタク」という言葉が生まれる前からの「オタク」、オタク史の生き証人でもあるのだ。
赤井さんがいかにすごい人なのか、そしてまたしゃべりも一流の人なのかは、『ヲタめし!』第18回を聴いてくださればおわかりかと思います。
アニメ会のライブにもいつも来てくださり、打ち上げでもすっげー楽しい話ばっかり聞かせてくれんよ! マジすっげーおもしろい人なんよ!

そんな大尊敬の赤井さんが、「プリンセスメーカー」をはじめとしたイラスト(1999〜2008)を展示する個展。

業界大注目の個展です。
知り合いじゃなくても行きますわ。

ただ、場所がなんとも私に不具合な原宿のギャラリー★
「原宿」だけじゃなくて『ギャラリー』ときたもんだ。不安になった。
と思ったら、おなじく不安になったらしい比嘉モエル氏から連絡が。
ということで一緒にいくことになる。前々から行こうと言ってたからね、お互い。

いきなりの慣れない場所に浮き足だつ二人。

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原宿だからと行って、浮き足だちすぎて、クレープを食べる。
見てこの笑顔。




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そして写真を撮ったあとに、完全に気を抜いたのか、クレープをむさぼり食う比嘉氏。
おい、いつの間に帽子まで取ってんだよ、あぶねーよ!
GAINAXということで「天元突破グレンラガン」のTシャツを、原宿まで着てきてしまった比嘉氏、ハゲちらかした頭髪のことも忘れ、無我夢中でクレープにかぶりつく。目線が飛んでる。
この人が麻痺しているのは、なにも頭皮だけではないようだ。

竹下通りに、こんな怪物がいるんだもの。「グレンラガン」だったら「獣神」側のキャラだよ。





080929_1658~0001.jpg

で、私も食べた。アイスと生クリームとイチゴのハーモニー。
いい笑顔でしょ?





080929_1558~0001.jpg

浮き足立ちすぎた比嘉氏はエスカレートして、いわゆる原宿の「ショップ」の前で食い入るように洋服を物色。
モエル……人が洋服を選ぶんじゃないんだよ、洋服が人を選ぶんだよ……
きっと彼は、慣れない土地で気が動転していたのだろう。
マサイ族とかが東京来たときのリアクションとおなじでした。





080929_1643~0001-0001.jpg

さて、迷うこと20分。最終的に「ショップ」の店員さんに道を聞くという失態までして、ようやくギャラリーに到着!
なんかもう、雨のなかでこの空間は光っていた!

そして、写真右には、雨にもかかわらず傘もささずに絵の説明をしてくれるきさくな赤井さん本人!
「オレ水濡れOKだからさ」
と、若手芸人のような心意気をさらっと言えちゃう、この大御所の潔さ。
感動して私の目からは熱い雨が。

ギャラリーには赤井さんの温かい人柄と、なんかおもしろいことやったろうという開拓精神と、それでいて現実的に冷徹な観察眼が光る作品たちがズラリ!

来て良かった……。いいもの見た。




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あえて絵のなかの女の子の視界に入ろうと試みた。




080929_1634~0002.jpg
ありがたくも記念撮影。
ね? 明るくてきさくな「おじ様」でしょ? ……でも赤井さんに「おじ様」というとムッとするので言わないように。
この「ムッと」するところも私は大好きである。
おじさん呼ばわりされてムッとしなくなったとき、表現者である「男の子」たちは終わるような気がする。だから「ムッと」されるとなんだか、安心するのだ。


どうしても欲しい絵があった。
若手芸人にはいい値段だけど、本気で買っちゃおうと思う。
そうはいっても、赤井さんの描いた絵だ、相場にしちゃあはるかにお買い得だと思う。

そう考えながら、原宿ギャラリー珍道中はおわる。


posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 19:24 | comments(0) | - |-
漫才バカ一代 第26幕
漫才バカ一代、ご来場サンキュー★

本日、『漫才バカ一代』第26幕、ご来場くださった皆様方、誠にサンキュー★
本日も大入り超満員札止め。
会場からこれ以上入れたら使わせないぞと言われるほどの入り。
もう、この日この場所にこれだけのお客さんたちが来てくださったことだけで、もうお金は入りません、という気持ち。
ありがたい。

本日は米粒写経で新ネタ、そして企画コーナーではセクシー川田(元無免許ライダー)という後輩オタク芸人(この場合のオタクは、のめりこみ具合のハンパなさをさす)とも漫才。
どちらも違った自分を出した気がする。
楽しかったです。
もちろん、どちらも初演だったので反省点もたーくさんありますが、非常に温かいお客様たちに支えられ、勇気付けられました。
「お客さんに育ててもらう」ということを実感できるライブであります。

ゲストのナイツさん、流れ星さん、ガブ&ぴーちさん、超面白かったです。
同業者としてリスペクト。

そしてエンディングではなぜか西麻布ヒルズの桜井市長の父、本物の美唄市市長、桜井道夫さんも登場、親子で漫才(?)的なことも。最後なんかグズグズでしたけど。
テンコ盛りライブでしたわー。

次回は12月。
袖から客としても見ていて楽しいライブ、また伝説を作る予定です。

さて、本日はそんな『漫才バカ一代』の舞台裏写真をいくつか。

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開場前。演者、スタッフ、手伝いに来てくれている芸人さんたち入り乱れての、昼からの大準備。
チラシの挟み込みも民族大移動級。


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楽屋でのペイパービュウ。
三平さんの頭を剃る相方、見た目が邦彦。
見てくださいこの三平さんの笑顔。
完全に「ヤクザの武勇伝を聞かされているカリスマ美容師」みたいな図。
ちなみに見た目が邦彦は、前日に三田村邦彦さんと面会したそうです。これマジで。
ウソからでたマコト。


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会場入りし、舞台回りをいそいそと動いていると、昼から入ってくれていたセクシー川田が壁に向かって一人稽古をしていた。
すまん、ネタあわせする時間も作れず……緊張もほぐすこともできず……なんだか後ろ姿に哀愁が漂いはじめていた24歳……声をかけようかと思ったけど、おもしろかったので隠し撮りしてそのまま緊張させたままにしておきました。

それにしてもこの完全に横に私がいることを想定した立ち方の「ななめ」具合、切ないなあ、抱きしめてあげたくなったよ!
抱きしめなかったけど。気持ち悪いから。

あと気づいたんですけど、この人も私の相方・居島一平とおなじ全身黒づくめ。
全身黒の服を着ている人は、しゃべりの情報量が多い傾向があるので、みなさん気をつけましょう。
posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 06:48 | comments(2) | - |-
サイトリニューアル
レイアウト変えてみました。
どうでしょう?
俄然見やすくなったような気がします。

今後ともどうぞよろしくおねがいします。
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 04:48 | comments(0) | - |-
♪フンドシ兄弟の夏
フンドシ兄弟の夏

中学一年のときのことだった。

私の学校にはプールがなく、毎年夏休みのはじめに、一学年ごとに海に行く。
しかも泳ぐ姿は白いフンドシで、民宿から海までフンドシで歩くものだから、その地域ではちょっとした夏の風物詩になっていたほどだ。
なにせ一学年全員が、複数の民宿に散らばっていて、ぞろぞろとひとつの場所に集まるのだから、そうとう異様な光景だったと思う。
私たちは、意味もよくわからないまま、「ハッコン」という言葉を覚えた。「白褌」をそう読むと知ったのは後のことだ。

私たちはいくつかのグループにわかれ、「のし」という泳法を教わる。
「のし」は古式泳法で、どんなに泳いでもあまり疲れない泳法だそうで、事実「のし」をひとたび覚えると、海でのクロールや平泳ぎは本当に不経済だと思えたから不思議だ。
「のし」を教えてくれるのは、先生ではなく、学校の卒業生らしき人たちで、いまから考えれば水泳部かOBかのどちらかだと思うのだが、当時はそんなことをたずねる余裕も発想もなかった。

おぞましい一週間の合宿が終わり、胸をなでおろしてようやく夏休みがくる。

夏休み中のある日、部活で学校の体育館に行くと、体育館で大量のフンドシを干していた人がいた。
見慣れた顔だと思って近づくと、その人は私のグループを指導してくれていた人で、声をかけると笑顔で話しかけてくれた。

「今日部活終わったあとなんかあんのか?」
「いえ」
「じゃあ遊びにいくか」
「え、あ……はい」

当時の私は、そうはいっても内気な性格だったようである。
いやむしろ、「兄」のような存在がいままでおらず、年上の男に対してどう対応していいのかわからなかったのかもしれない。
「遊ぶ」ということが具体的になんなのか、中学に入ったばかりでさっぱりわからかった私は、興味半分、不安半分でその人についていった。

たどりついたのは学校から歩いていける池袋のゲームセンターだった。
地元のゲームセンターになら通っていたが、いつも大塚駅を利用していた私には、池袋のゲームセンターは「不良」という二文字がちらつく少し規模の大きい場所だった。

あまり知らない場所で、あまり知らない人と、あまりやったことのないことをしている。
そのことが、私にとっては非日常的で、よくわからない感情になっていた。

なにより驚いたのは、そのお兄さんの金遣いの気持ちいいことだった。
100円入れては悩み、また100円を入れるかどうかを思案してゲームに挑んでいたその頃の私にとって、すぐに、しかも何度も100円を入れていたそのお兄さんは衝撃だった。
「そんなにお金使って大丈夫なのか?」と、心のなかで変な気遣いをしていた。
申し訳ない心持ちになった。

いまから考えれば、2000円ほどであろうか、大学生らしきそのお兄さんにとっては、中学一年生に少し楽しませてやろうという気持ちを満たすには、ほどほどの額だったのかもしれないが、私にとっては大金だった。

いろいろな気持ちが心の中でうごめいていた。

そして私の心をこれほどに動かしていたそのお兄さんに、「年上の男」の存在を感じていた。
大げさに言うと「大人」を感じていたのだ。
駅で別れたあと、なんとなく感じていたその興奮をかみしめて、私は帰路についた。

いつも部活の帰りに一緒だった仲間と、どこでどう別れたのか、
そしてなぜ2人で池袋に行ったのか、
いまではまるで覚えていない。

しかしあの時の「いろいろな気持ち」はいまでもしっかり覚えている。

その人とはその後会うことはなかった。
名前も覚えていない。
posted by: サンキュータツオ | 土曜♪随筆(開設〜2009年9月まで) | 04:09 | comments(0) | - |-
ジェイソン・ウィリアムズ
ホワイト・チョコレート

NBAのジェイソン・ウィリアムス引退。ショック。
まだ若い。
その昔、NBAにはファンタジーが溢れていた。
派手なダンクだけではなく、カメラさえ追いつかないような思いもよらぬパスを出せる選手がいた。
それはマジック・ジョンソンで頂点を迎えるが、久しくそういうファンタジーにめぐり合えていなかった頃、ジェイソン・ウィリアムス、通称「ホワイト・チョコーレート」に出会ったのだ。


【YouTube】
ジェイソン・ウィリアムス
ラストのエルボーパスは全世界を驚愕させた!

【ニコニコ動画】



サッカーでは想像力溢れるプレーは「ファンタジスタ」と呼ばれる。
バスケットにも同様のファンタジスタがたしかにいた。
しかし、得点を積み重ねていくバスケットでは、ミスが致命的。
一試合で数点しか入らず、攻撃でのミスはつきもののサッカーとは違って、バスケットでは攻撃でのミスが致命傷になるのだ。

ジェイソン・ウィリアムスは、まさにそんな時代にあって、失敗も少なからずあるものの、想像もつかぬファンタジーをみせてくれたホントに貴重な選手だった。

抜群のハンドリング、ラン&ガンの司令塔としての巧みなボールさばき。
小さいながらも相手に飲まれぬ度胸、大胆さ。
そして、相手をさんざん振り回した挙句の針の穴を通すような、トリッキーでファンタジーなパス。

あの頃のサクラメント・キングスは強かった。
強い以上に、見ていて最高に楽しかった。

ジェイソン・ウィリアムスを司令塔に、「相方」ともいえるクリス・ウェバー。
ウェバーは怪我や不調で移籍してきたチームで、このジェイソン・ウィリアムスを得、豪快なダンクやリバウンドセンスを発揮し、その才能を遺憾なく引き出された。
この二人のホットラインに加えて、3Pシューターのストヤコビッチ、そしてセンターには往年のレイカースにも名を連ねたディバッツがいた。
それぞれの道でのエキスパート、というか「変態的プレー」をする選手が集まり、ダントツの最下位にいたチームは、このメンバーで常勝軍団となった。

コービー・ブライアントとシャキール・オニールの世界最強タッグの、さらにその絶頂期
だったレイカースを、ホントにあと一歩まで追い詰めたのだ。

ウィリアムスのパスによって敵を翻弄するスピード感溢れるバスケットは、勝つときは常に100点ゲーム。
ホントにおもしろかった。

つらいとき、なにも考えたくないとき、バスケットを見ていたら、そこにホワイト・チョコレートはいた。
デビュー戦で3ポイントシュートを、ラインのはるか後方から連続して3本も決めた。
一回の試合でファンのハートをわしづかみにした彼は、その後はパスで魅了してくれた。
スポーツのプレーをみて、つらいことを忘れたり、楽しくなれるというのは、偉大なことだ。
そこには漫画やアニメや御伽話の世界にしかない、ファンタジーがあるからだ。

その後、あの全盛期のキングスから、「堅実なプレー」を要求された彼はチームを離れ、
メンフィス・グリズリーズ→マイアミ・ヒートと渡り歩き、先日クリッパーズに移籍したばかりだった。
ヒートでは優勝もした。しかし、その時のジェイソンはもはや堅実なガードになっていた。ホワイト・チョコレートが、普通のチョコレートになった気がした。

もう一度ファンタジーを見たい。引退するのは早すぎる。
もっともっとスーパープレイを追及して欲しい、やってる本人が最高に「楽しい」バスケットをもう一度見たい。

彼のプレーを見たら、きっとそう思う。

どの世界にも、ファンタジスタはいなければならない。




posted by: サンキュータツオ | - | 23:48 | comments(2) | - |-
サンドウィッチマンがM-1でしたこと
サンドウィッチマンがM-1でしたこと

 5分以内のネタでたたかうM-1というシステム、予選から言えば2分、3分で競うM-1の漫才というのは、間違いなく漫才自体の進化を早めたと思う。
 M-1は「手数と独創性」を重視しているコンテストであることは一目瞭然である。

 一昔前、「手数」を競うということでは、漫才コントが主流だった。漫才コントは、「設定」さえきちんと聞き手に認識されれば、「その設定での通常の行動パターン」が活性化されるので、フリがいらなくなる。したがって時間内に手数を盛り込むのに有効だったわけだ(やや専門的に言うと、スキーマの活性化を利用したネタ、といえる)。

 しかし、漫才コントの時代は、アンタッチャブルで終止符を打とうよ、というメッセージがM-1にはあった。少なくとも漫才コントをやるのであれば、アンタッチャブル以上の手数と完成度、そして独創性が欲しい、と。

 こうしてM-1は、漫才の独創性を、その原点である「しゃべくり」に求めはじめた。
 それは決勝に残っているメンバーを見れば明らかなことなのだが、それに加えて現場での受け、人気、年間通しての活躍、そういった視聴率を見込めるコンビが選ばれるわけだから、決勝に選ばれるのは簡単なことではない。しかも、出すぎていてはそれはそれで「M-1発」という実績にならないので、変に実績を残すと難しい。

 そう、いま漫才をすることは、「漫才コント」をやるか、「しゃべくり」でいくか、その二択しかない。

 そこで現れたのが、「ブラックマヨネーズ」であり「チュートリアル」だった。彼らの漫才は終始「しゃべくり」で展開され、「じゃあお前○○やって」みたいな設定がほとんどない。「しゃべくり」の型で手数が多いものが好まれ、こういった形がいわゆる「フリ、ボケ、ツッコミ」それ以上でも以下でもなかった漫才を、歴史的にすこーしずつ進化させた。
 手数は少ないがPOISON GIRL BANDなども「しゃべくり試行期」で評価されたコンビに違いない。

 「キャラ」とまでベッタリと作ってはいないが、しゃべる人間には二人にたしかな個性があり、口から出る言葉までもその個性を裏切らない。
 歴代優勝者の変遷を見ても、アンタッチャブル以降はしゃべくり型が重宝され、そして説得力のある勝ち方をしてきた。どのネタを演じても、「らしさ」が出るネタ、それでいてしゃべくり、二人のいる「意味」が必ず保障されているものが選ばれた。
 しかし、サンドウィッチマンはそこへきて、「漫才コント」を「もっと掘り下げる」という方法論をもって、「しゃべくり」移行期に一石を投じた。

 漫才コントの利点は、実際のコントと違って、ツッコミ役の修正が可能で、設定前の「通常時二人」に戻れるところである。
たとえば、おぎやはぎの「結婚詐欺師」のネタを例にすると、

矢作 結婚詐欺師ってのはね、
   だいたいあの、パーティー会場とかに現れるんだってよ
小木 あー、はいはいはい
矢作 独身の女性がいるんだって、けっこう
小木 うんうん
矢作 だからそういうとこでちょっとまず、
   オレ、をひっかけるとところからやってみようか
小木 なるほど、わかったわかった
矢作 オレ女やってやっから
小木 オッケオッケ
    [女役の矢作がワインを飲んでいる。
    詐欺師の小木は、ワイングラスを揺らしながら矢作に近づく]
   「あのう、貯金額のほう教えてもらいたいんですけども」
矢作 まずいよね、まずいよね それまずいよね
小木 まずいって言われてもさ、
   こっちはさ、お金のない人騙してもしょうがないわけじゃん
矢作 ん、そりゃそうだけどぉ、
   いきなり貯金額はって言われてもそれ答えないと思うよ
小木 あ、そう
矢作 もうちょっと考えたほうがいいんじゃない?
小木 ああ、わかったわかった
矢作 うん
小木 「あれ? いくらぐらい貯金ありましたっけ?」
矢作 [首をひねる]聞き方の問題じゃねんだよ
   「あれ?」って言われたらオレ「え、500万ですけど」って
   つられて言うと思ったか
小木 んー、言わない
矢作 言わないだろ? 
   言わないことは言わないで いい?


この下線部のように、一度「男と女」という設定をしたにもかかわらず、「待て、それはまずい」「普通はこうでしょ」という修正を入れることができる。漫才は、普段の二人の役柄に、さらに話題のなかでの設定を加えることもできるので、二重構造性を備えているのだ(正確には「ボケ役」「ツッコミ役」も役柄なので、素の語り手を入れると三重構造をなすともいる)。

 しかし、サンドウィッチマンにいたって、このルールは無視された。それはたまたまかもしれない。もともとコントをやっていた二人だから成しえた方法かもしれない。サンドウィッチマンは、一度設定に入ると、二度と「修正と提案」をすべく設定を解除する方法をとらず、最後まで「設定のなかの役柄としての会話」が続く。

伊達 いろいろ興奮することあるけど、一番興奮するのは
    急いでる時される街頭アンケートだね これ間違いないね
富澤 「あのー、ダイエット中すいません」
伊達 「してねーよ、別に ただ歩いてるだけだよ なんだよお前」
富澤 「アンケートにご協力お願いできませんか」
伊達 「いま忙しいんだよ ほかあたってくれ」
富澤 「渋谷で10代の女性を中心に聞いてるんです」
伊達 「一個もあてはまってねーな! 
    六本木で俺30代だからさ 渋谷へ行けよ渋谷」
富澤 「別にだれでもいいんです」
伊達 「だれでもいいんかよ」
富澤 「もし問題でもあれば音声も変えますし、目のところにザイモクも」
伊達 「モザイクだよ なんでお前、目のところに材木はめて
    アンケートに答えてるんだよ、カメラもねーしよ」


「ダイエット中すいません」で「そんな呼び止め方ねーだろ」と素に戻ってつっこむこともなければ、「失礼だろ、普通はすいません、でいいだろ」とか言わない。
 このネタのメッセージは、「修正すら無駄な言葉」というメッセージである。
 設定をフリにしているのであれば、あとはテンポよく、フリのいらない、そのまま続けられるボケしか選択しない、ということである。「それアンケートじゃねえだろ」のような、設定を覆すボケをしない。この修正の削除を条件に、ボケの選択肢をせばめることの代価に「手数」の担保を得たわけである。
 一見、新しいことをなにもしてないように見えながらも、もうあれ以上ないと思われた漫才コントの局地、つきつめた方法論でサンドウィッチマンは、「新しさ」をも手に入れた。コロンブスの卵だ。これに比べるとキングコングのネタは古かった。古いは古いでいいのだけれど(むしろ私もこっち派だ)、M-1向きではなかったかもしれない。「またこのパターンか」の予定調和としてのお笑いは、あの場では要求されていなかった。

 しかし、このサンドウィッチマンの漫才コントは、もはや漫才とコントの境界線すら曖昧にさせたことで、いよいよ「漫才コント」の改良の余地を狭めたともいえる。
 だから今後は「王道的漫才コント」にゆり戻しは少ないと思う。むしろしゃべくりのほうがまだ余地がありそうだ。
 そうして出てきたのが、ナイツである。
 一人が、お客さんに語りかける。しかし5秒に一回は「言いまつがい」をする。ツッコミは巧みに拾う。短い言葉でもう一度笑いをとりにいく。テンドンも盛り込む。ひとつのボケで二回の笑いを回収できる経済性をつきつめていくと、ナイツのスタイルにいきつくのは時間の問題だったのかもしれない。
今年、ナイツがM-1の決勝の舞台にいないのであれば、私は同業者として(毎年二回戦落ちだが)疑問を抱くだろう。
時代を象徴する漫才、そこまでナイツはきていると思う。


そんなナイツが出演する『漫才バカ一代』が、明後日28日、文京シビックホール小ホールで行われるよ!


○28日『漫才バカ一代』第26幕 おしゃべり秋桜
場所:文京シビックホール小ホール
時間:19:00開場、19:30開演
料金:前売り1500円、当日2000円
メール予約:mbaka@futabamusic.jp
 (お名前と枚数をメールしていただければ、確認のメールが届きます)
出演:米粒写経、U字工事、東京ペールワン、ペイパービュウ、西麻布ヒルズ、
   ナイツ、流れ星、ガブ&ぴーち
企画コーナー:「先輩後輩漫才」



まだまだメール予約間に合いますよ!
ちなみに企画コーナー、私サンキュータツオが「元無免許ライダー」というコンビのセクシー川田くんという人と漫才をやります。
お楽しみに!


…という、「宣伝コラム」でした。
明日は「@モエルカフェ」と「雷ライブ」出演です。
posted by: サンキュータツオ | ★コラム | 23:43 | comments(0) | - |-
■アニメ会関連、更新情報
『ちょこッとSister』TV版、
108話で堂々完結!(報告)


秋の夜長の9月第4週目、絶好の深夜アニメ日和。

◇楽天ブログ「アニメ会の日替わりアニメ定食」
■サンキュータツオの「ちょこッとSister」9クール目感想
 第108話(最終話) ちょこッとサンタ
■サンキュータツオのそういえばですけど
 サンキュータツオのそういえばですけど 08.09.24号

◇角川書店WEBザ・テレビジョン「日刊ザ★アニメ会A」
■サンキュータツオのぷにぷにコラム
 【相談:吉野屋先生を信じていいのでしょうか】 

◇アニメ会の『ヲタめし!』
第30回配信 『マクロスF』展開論争編


ブログ用タツオ
≪解説≫
○『ちょこッとSister』、ついに最終回、108話を迎えました。
 ちょこちゃんは、サンタさんになりました。
 しかし、ことの顛末はブログでのご報告通り、
 『劇場版ちょこッとSister』で描かれることになりました。
 100話までは以下の場所で閲覧できますので、お時間のある人は是非。
 ▼『ちょこッとSister』100話までの道のり 前編
 ▼『ちょこッとSister』100話までの道のり 後編

 
 ※『ちょこッとSister』は24話で終了した作品ですが、
   25話以降は、
   私が「見た」と言い張って感想をアップしたものです。
   あの作品が終わったことを、
   悲しすぎて受け入れないでいたのです。
   意味のわからない方は、
   私の妄想の記録として受け取ってください。
   いままで感想を楽しみにしてくださっていた方々、
   サンキュー☆
 次週以降は、『劇場版ちょこッとSister』に向け、
 応援キャンペーンを実施します。
 また、この感想記を取り上げてくださったサイトの皆様、
 ありがとうございます!

○この秋にも、たくさんの番組が終わり、たくさんの番組がはじまります。
 この秋終了した作品でのナンバー1は、『一騎当千GG』でした。
 不覚にも。
 『スケアクロウマン』、『夏目友人帳』は今後にも期待!

○角川のブログでは、『ひだまりスケッチ365』の吉野屋先生へのねじれた愛をアップしました。

○今週配信の『ヲタめし!』では、
 投稿コーナー「まだ見ぬ嫁への関白宣言」がスタート。
 今後の盛り上がりが期待される名コーナーの予感。
 本編では『マクロスF』のアルト機大爆発のエンディングに私と比嘉くんが猛議論。
 一切ボケなし。
 先週、急遽のブログ移設につき、ポッドキャスト再登録、
 重ねてお願い申し上げます。
 ま、でも登録しないでも、「再生」ボタンおすだけで聴けます。
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 23:35 | comments(2) | - |-
今週の「良いニュース」 08.09.24号
10円から1000万までの「良いニュース」

とかくこの世は、悪いニュースばかりがニュースになっているような印象を受けますが、「良いニュース」だってもっとまとめて報道すればいいと思う。「良いニュース」という番組を、だれも作らないので、自分で作ってみました。良いことばかりがニュースになってしまう、悪い世の中になりませんように。

さて、「良いニュース」の時間です。


爆笑問題、大阪府に「ふるさと納税」1000万円
「1000万円」、M-1やミリオネアの賞金と同額をガツンと納税とは太っ腹です。
是非この1000万で「ワッハ上方」の保存に役立てていただきたく思います。
もしくは橋下知事がタイタン所属時代に稼いだギャラの後払いだったりして。


■青森発祥の味噌カレー牛乳ラーメン 全国ブランドに
味噌もカレーも牛乳も、青森らしいものがひとつもないですが、この三つが合わさると青森のものになるのですね。
「味噌カレー牛乳」ってなんだって話ですが、きっと「ちゃん・リン・シャン」みたいな画期的な組み合わせなのでしょう。
口のなかで喧嘩しないことを願うばかりです。


■地場産品×駄じゃれ=交通安全標語 賛否それぞれ
駄洒落の意味って実はおもしろさにあるのではなく、覚えやすさにあるのだと思います。
この記事に載っているものも、土地と標語を組み合わせた駄洒落ですが、なかなか忘れれなれないものが多いですね。
駄洒落を聞いて怒る人というのは、駄洒落におもしろさを求めている人なのであって、そうはいってもその駄洒落を覚えているはず。
そう考えると、すでに駄洒落の術中なのです。


■アキバの「アートメードカフェ シャッツキステ」、来年3月閉店へ
キター!!
ついに私が応援している「シャッツキステ」がヤフーニュースに!!
これはおめでたいニュース、ということに個人的にしてしまいました。
閉店のお知らせが1ヶ月以上遅れてこの時期にニュースになっているのはなぜなんだろう?と思いますが、
そこはそれ。第二章のスタートに関しても触れていますので、明るいニュースでしょう。


■トキ放鳥:あすに迫る 準備着々、期待高まる 6羽にGPS取り付け
「矢鴨」が問題になったりしておりましたが、おなじ人災でも、トキにGPSをつけるのはよいみたいです。
親からもらった体に傷をつけて……などどだれも言い出さないこの平和な祈り。


■10円ジュース自販機:日本で1台、ピンチ乗り越え“続投”
10円でジュースが飲める自動販売機がどうやら日本海側にあるらしい。
もう日本で残り一台となっているようですが、続投決定したとのこと。
一回変わるだけで何億もかかる内閣とは真逆のがんばりに、市民は「見習ってもらいたい」とこぼしたとかこぼさないとか。


■公衆電話の撤去延期…森高さんのヒット曲に登場
森高千里の「渡良瀬橋」に出てくる電話ボックスが、どうやら市民の訴えで延命が決まった模様。
写真撮影に来る人などがたくさんくるようなので、この際「この電話ボックスから好きな人へ電話すると恋が叶う」みたいな風評を流せばいいのに、と思います。


■藻え(萌え)キャラ「海野みこと」が須佐男命イカPR
なんと、イカのキャラクターは、女子高生が考えた「海野みこと」に決定!
というか、この女子高生、絶対にわかってやっています。
絵がうますぎる点から考えても、どうやらパソコンで描いたっぽい絵。
…オタクなのでしょうか。
しかし画像をごらんいただければおわかりかと思いますが、「みこと」ちゃんが、イカにまたがっているイラストはなんとも卑猥です。


今週も、日本は平和でございます。
posted by: サンキュータツオ | 水曜◎良いニュース(2008年10月まで) | 21:39 | comments(3) | - |-
ライブのお知らせ
日曜日はいよいよ『漫才バカ一代』

今週の週末は力を入れているライブがあります!
宜しかったらきてくださるとお互い幸せだと思います。


○27日「比嘉モエルアワー2 @モエルカフェ」
場所:なかの芸能小劇場
時間:16:30開場、17:00開演
料金:1000円
出演:比嘉モエル、サンキュータツオ、マナティ、セクシー川田、マスクマン、茶柱立之助 ほか

今回のモエルアワーは、「○○オタク」みたいな芸人さんに、その知られざる魅力を存分に語ってもらうライブの模様。
そして、どうやらモエル氏が作ったネタのコーナーもあるようです!
私は、開演直後の30分ほど出演し、その後「雷ライブ」に向かう予定です。
今回は私とモエル氏がぞっこんの、あのメイドさんのいるお部屋に関して語ることになると思います。

○28日『漫才バカ一代』第26幕 おしゃべり秋桜
場所:文京シビックホール小ホール
時間:19:00開場、19:30開演
料金:前売り1500円、当日2000円
メール予約:mbaka@futabamusic.jp
 (お名前と枚数をメールしていただければ、確認のメールが届きます)
出演:米粒写経、U字工事、東京ペールワン、ペイパービュウ、西麻布ヒルズ、
   ナイツ、流れ星、ガブ&ぴーち


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いよいよ漫才バカ一代の季節!
どうでしょう、この豪華ゲスト。
漫才バカならではですよ!
ナイツさんは前回に引き続きの出演、流れ星さんは3月以来、そして日本一歯切れの悪いツッコミで有名な吉本興業のガブ&ぴーちさんが初来演です!
もちろん、レギュラーメンバーは全組ネタおろし。
今回は企画コーナーでも私が漫才をしますので、是非いらしてください。


posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 22:32 | comments(0) | - |-
■東京ポッド許可局 第34回配信
「アキレスと亀」

マキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオ
の3人による、どんなに流行っても絶対タイトルを噛むラジオ、『東京ポッド許可局』第
34回配信。
PCさえあれば、機種・メーカー問わずだれでも聴けますよー★
■【第34回 “ビートたけし=ベンチャー”論

ブログ用タツオ
≪解説≫
人には肩書きがある。属性、といってもいいかもしれない。記号、ともいえよう。
本当はそんなものはなくても人は生けていける。
しかし、「肩書き」があるからこそ、
人は人に認識され、
社会の一部分に参加できる。

しかし、そういう肩書きは最初からあったわけではない。
原始人に肩書きはあっただろうか。
少なくとも「父親」「母親」「最初の子」「二番目の子」「彼氏」「彼女」「愛人」くらいの肩書きしかなかったかもしれない。
職業でいうなら、「狩人」くらいなものである。

人類が進化し、職業というものが多岐に渡り、肩書きも細分化されていく。
人類は分業化している。

「芸人」という職業も、定義の差こそあれ、成立している肩書きだ。
しかし肩書きを持った人が、どのようなことをするか、
そういうことは別に決まっていない。

「芸人」とは、人を笑わせる仕事、それとも幸せにする仕事、あるいは夢を売る仕事、もしかしたら不愉快にさせる仕事。
ネタのあり方だって、舞台だけではなく、紙や映像などもある。

「芸人だから」こういうことをしなくてはならない、もしくはこういうものだ、というものは別にない。

そう思わせてくれた「はじめての芸人」が、我々「団塊の子」にとってはビートたけしだったのだ。

なにごとも、第一人者というのは、「それをやった」ということの遺産がなによりも巨大だ。
これは歴史が長くなればなるほどそうである。
「後追い」で形式を追うものは、いつまでだっても、どんなスピードで走っても、第一人者には追いつかない。
そう、「アキレスと亀」のように。


環境や時代が変わって、形式しか追えない時代もあるかもしれない。
昔の「芸人」のやっていたことに憧れる人があったのなら、いま、それを成す選択肢は、
もしかしたら「芸人」という肩書きではないのかもしれない。

「ミュージシャン」かもしれないし、「ディレクター」かもしれないし、「コラムニスト」かもしれないし、「オカマ」かもしれない。

いま、おもしろいことをやろうとして「芸人」という肩書きを選んでしまうこと、
もしかしたらそれ自体が「寒い」のかもしれない。
「アキレスと亀」どころか、芸人になった時点で、ますます「芸人」からは遠ざかっている可能性もあるのだ。


プチ鹿島局員の紹介記事




posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 05:45 | comments(0) | - |-