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サンキュータツオと居島一平のコンビ「米粒写経」。公式ウェブサイト
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サンキュータツオPresents 二次元を哲学するトークバラエティ音声マガジン
漫才バカ一代
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米粒写経が主催する漫才オンリーライブ。年4回、3,6,9,12月開催。 ですが、レギュラーメンバーのスケジュールが合わず、次回は未定。
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サンキュータツオの初声優作品!? 漫☆画太郎先生の傑作が春日森監督によってフラッシュアニメ化! 酒の肴にどうぞ。
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フライデーナイトライブ、ご来場ありがとうございました。

「フライデーナイトライブ」、ご来場ありがとうございました。

我が事務所、オフィス北野主催「フライデーナイトライブ」。
このライブは、大神クヒオ、マキタスポーツ、米粒写経の若手3組のプロデュースライブでもある。 
こういう時期ということもあり、開催の見送りも検討されたが、事務所スタッフとも何度も協議し、私たちは開催に踏み切りました。
自粛ムード、不謹慎禁止ムード、お笑いなんてもってのほかムードのなかですが、こういうときこそ、家にこもって暗い気持ちを抱えたままであるお客さんには、笑う心のゆとりと元気を持ってもらい、ということでした。

開催を後押ししてくれた事務所、そしてライブに足を運んでくださったお客様に、感謝です。
私たちは、どちらもがいてくれないと、生きていけません。

開催に踏み切りはしたもの、お客様は正直集まらないものだと思っていました。
が、蓋を開けてみたら、満員御礼、最初に舞台にあがったときには感極まりそうになりました。
ありがとうございます。

今回は、米粒写経としては、新たな試みっぽいネタにもチャレンジしてみたわけですが、舞台に立てることの幸せをかみしめつつ、この日、ああいったネタをできたことを、おそらく生涯忘れないことと思います。いや、でも私は記憶力がなく、とくに春の記憶は花粉症ゆえ皆無に等しいので、保証はできません。

以下、ツイッター上でも書いたことですが、今回のライブを順に思い返してみます。

【贅沢な前説】
ケチャップリン、セクシー川田。存在自体がゆるキャラのケチャップリンと、日本唯一の柴田恭兵漫談でおなじみのセクシー川田が、客席を肩慣らし。セクシー川田は「なにかを好きになるってこういうこと」という症例を見る意味でも、全国民必見。

【ご挨拶】
マキタスポーツと私サンキュータツオで、お客様へのご挨拶、ライブ全体のご説明と近況報告なのですが、このブロック、つねに打ち合わせなくマキタさんとフリートークみたいな感じ。なのに、なぜかネタをくったかのようにハネて楽しい。うん、これで今日のライブは大丈夫。お客様ももうネタを聞く雰囲気に。

【チャレンジコーナー】
<パープルタウン>鳥取出身のコンビ。ボケが真性のバカに見えて、ベタな落とし方でも軽々と笑いが取れる。算数の計算はできないが、馬連の組み合わせ計算はできる、などのシンプルな形がストレートに面白かった。受けてたね! まだまだノビシロのあるコンビ。

<銀座ポップ> ラッパーぼやき漫談。2番手で客席を爆笑の渦に。コンビでの出演を経て解散、前説などもやったり、チャレンジコーナーに出続けて、ようやく掴んだバランス感覚で見事優勝。わがことのように嬉しい。こんあ愚痴を言う人は身内にいてほしくないタイプ。

<サードシングル> 老人大好き漫才。毎回新しい課題を設けてチャレンジしてくる姿勢はこのコーナーの趣旨に沿っていて、好ましい。試行錯誤の末にどう化けるが非常に楽しみなコンビ。この手の芸人は絶対に化ける。素直だから。お年寄りのアイドルにもなれる。

<セクシーJ>金玉洗い。このコーナー唯一の半裸枠でいままで全回参加の、まんがから出てきたような男。挨拶していきなりネタを飛ばすミラクルぶりなど、本人の意図しないところで溢れ出てくる「愛嬌の洪水」。愛嬌のある人が、真面目にネタやってた。愛嬌って才能。

<馬鹿よ貴方は>このコンビはすでに形の完成しているコンビ。極力セリフを短くしたボケの経済効率と笑いの精度の高さは、何度も板にかけた末に選択されたものという洗練さを感じる。無駄がない。4票差の2位。まだまだどんなネタを持っているか、次も楽しみ。

<おーたに>ミスアルプス解散後、ピンで出場。もっと笑いをとれるネタももっているけど、ボケとかではなく、丁寧で繊細な笑いを作り上げるネタをもってきたチャレンジ精神には脱帽。「オンリー」なネタとして光っていた。ピン芸ってこういうことなんじゃないか。ちなみに、おーたにくんのネタは、「あるある」を言うのではなくて、演るってことも、難しい作業だけど貴重なことだと思う。「こういう人いますよね」「こういう人うざいっすよね」という、失礼ながら笑っちゃう人のことを、言うんじゃなくて、そのものになるという発想。

<ヒキコモリオ改めセクシー斉藤> 物コント劇場。今回は下世話な雑誌総選挙。この人のネタの構成力はもう充分なので、あとはニッチなものからポップなものまでネタを量産し、板にかけまくり洗練させるだけ。理論上、無数のバリエーションが存在するので、早く単独を。

<ルサンチマン>いままでの「確かに」漫才を封印し、今回は新しいスタイルでの挑戦。2連覇をしていながらこの姿勢は、本当に素晴らしい。ビジュアルのアングラさ加減がフリになっているだけに、簡単に笑いを取る。このスタイルもどこまで掘り下げてくるのか楽しみ。

【トークコーナー<北野笑科大学院>】
マキタスポーツ、大神クヒオ、米粒写経で。今回は、ああいうことがあったので、特例としてフリーでトーク力とセッション力を磨く鍛錬として、特に打ち合わせなく、文字通りフリートークで臨む。不謹慎ながら楽しいことだらけ。

【一本ネタコーナー】
<キャプテン渡辺> R-1出演後、凱旋出演。チャレンジコーナー3連覇後に一本ネタ昇格、そのままゲスト出演を重ねてすぐにR-1行った、文字通り「最強」。あえて贅沢にトップで。ガッチリ大爆笑。ホント最高。おもしろすぎる。「漫談をするよ」だけでウケるって(笑)

<ワルステルダム> ゲストその2。プロダクション人力舎から、次世代を担う超若手、女性コンビ。発想のひねりも掛け合いのひねりも関係性のひねりも、具合よく利いていて、「ああ、人力舎だなあ」と納得できる空気感。人力舎の女性芸人は、品もあって、強い。

<大神クヒオ> クヒオ大佐。身内ですけど、この人のネタって、普通に考えたらすごく勇気のいることを、いつも堂々とやってのけるすごさがあって、好きなんだなあ。スケールが大きいんだよなあ。あんなの、とても怖くてできない。ピン芸人って、変な生きものだ。

<米粒写経> いままで一度もやったことのないスタイルで、どちらかというと挑戦の意味の大きいネタにアタック。ただひたすら相手の発言に乗っかりまくる、ツッコミ一切なしの「相乗り漫才」、ネタおろし。まだまだ試したい部分もたくさんあり、気長に掘り下げてこう。

<ホロッコ> ゲストその4。夫婦コンビ。癒し系コントでお馴染み、レギュラーゲスト。今回は小津さんシリーズ、飛行機編。自慢じゃないけど、ホロッコマニアとしては、このライブはホロッコが一番光り輝くライブだという自負があります。このコンビ最高。オンリーです。

<マキタスポーツ>歌ネタ。締めは作詞作曲モノマネ、森山直太朗編。序盤のちょい懐かしいネタも、トリッキーでおもしろいんだよなあ。ネタのガラパゴス化もここまでくると売れるんだ、っていうことを証明してくれているような錯覚に。

<MC:木村裕子> チャレンジコーナーと各コーナーのマエフリで私と一緒にMC登場する、オフィス北野が誇る鉄道アイドル、木村裕子ちゃん。今日もマニアックな鉄道知識を織り交ぜながら、真面目にMCしてくれた。地方の鉄道の話とか、いくらでどこまでいけるとか、面白い。

ちなみに、ライブ中かかっていた全ての曲は、マキタスポーツ作詞作曲による、演奏:マキタ学級の、CD収録曲です。今回のオープニングは、特例として、大反響の「学童賛歌 3.11バージョン」。こちらで聴けます→http://bit.ly/evAgwl 是非布教お願いします。


以上です。
来られなかった方にとっては「?」な文字列だと思いますが、
むしろ見ていない状況で、この文字列を読んだシュールな感じ、
もしかしたら全部ウソかもしれないというドキドキ感も込みで想像してお楽しみください。

次回のフライデーナイトライブは5月です。
どうぞお楽しみに★

3.27

posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 21:14 | comments(3) | - |-
お知らせ
3月19日(土)に開催予定となっておりました『フフフのフー ヒルフフ vol.9』と『フフフのフー ヨルフフ vol.9』は、東日本大震災のため延期となりました。ご了承くださいませ。

代わりに、以下のチャリティーライブを開催いたします。

『フフフのフー 番外編』
【日時】2011年3月19日(土) 開場16:30/開演17:00
【会場】ミニホール新宿Fu-
【料金】700円(売上はすべて東日本大震災義援金として寄付させていただきます)
【出演】米粒写経、東京ポッド許可局、ホロッコ、ブラジルマン大渡、THE MAN、エレファントジョン、ニッケルバック、ブルーセレブ
【若手コーナー】ティラノサウルス、ゴッホ向井ブルー、ワルステルダム、ロケットパンチ


なお、本日18日の24:30〜のアニメ会のライブ「ヲタのみぞ知るセカイ」@新宿ロフトプラスワンは、予定通り開催です。

来週25日のオフィス北野「フライデーナイトライブ」も開催の予定です。


posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 19:28 | comments(4) | - |-
いま、許可局にできること。 緊急配信 東京ポッド許可局、2011年3月12日
いま、許可局にできること。東京ポッド許可局、緊急配信。
 
3月12日、
本来であれば、盟友マキタスポーツの単独ライブが銀座博品館劇場で行われ、マキタ氏の積年の苦労と、芸人としてピークを迎えつつある彼の芸が最高の形でお客さんの前で示され、それは歴史の1ページになる予定であった。

しかし歴史は、最悪にして不可避な「大地震」というページを書き加えた。

我々は、協議した。
不謹慎だと謗りを受けようと、
いま、しゃべり手である我々が、
どこかで心細い思いをなさっている人、
あるいは、「いつも通り」を感じて安心したい人、
心のよりどころを探している人、
そんな人たちが、大勢いるのではないか、と。

そして、局員は、都内某所に集結した。
我が愛すべき相方、居島一平派遣局員も駆けつけた。
居島は、この前に、渋谷FMで毎週の生放送を、通常通り敢行してきた後の合流であった。
家族を守るマキタスポーツは、skypeでの参戦となった。


いま、許可局にできること。それがこれです。


余震のなか、集結した局員たちは、しゃべり続ける。
サーバーがパンクした際のため、ミラー、そしてファイルのダウンロードも用意しました。
前回の「プロレス論」もアップしましたので、
手持ち無沙汰の方は、聴いてください。

我々の声なんぞで、安心していただけるのであれば、
こんな幸せなことはありません。


マキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオの3人による、どんなに流行っても絶対タイトルを
噛むラジオ、『東京ポッド許可局』、緊急配信。

下のリンクをクリックしたら、無料で聴けるページに飛べるよ!
緊急配信 2011年3月12日
別サーバー リンク

緊急配信2011年3月12日 ファァイルダウンロード URL

第170回 このプロレスがすごい!ベスト3論 ファイルダウンロード URL
この天災は、孫子の代まで語り継がれるかもしれません。
しかし、世界の片隅で、この2011年3月12日、3.11の翌日に、こういう配信をした人間たちもおり、そしてそれを聴いてくださる人がいたことを、私は忘れません。


posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 00:48 | comments(2) | - |-
「メキキの聞き耳」出演情報
本日、
AM954、TBSラジオ『荒川強啓デイキャッチ』、
17:15〜24までの「メキキの聞き耳」のコーナーに出演します! 

今日もホットなおもしろ論文をご紹介しますので、お楽しみに!
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 14:19 | comments(0) | - |-
フライデーナイトライブ チケット情報 ゲスト情報

オフィス北野『フライデーナイトライブ』
次回3月25日(金) 予約開始&ゲスト決定!


目下、一番力を入れております、
日本一お得なライブとの呼び声も高い、
我が事務所オフィス北野のライブ『フライデーナイトライブ』、
次回は3月25日(金)です。

チケット販売開始しております。


フライデーナイト公式HP
▼ローソンチケット:Lコード 36981 (電話:0570-000-777)
  または、
  <
チケット申し込みフォーム>にてお名前と枚数を送信!


次回のゲスト、決定いたしました!
井上マー
キャプテン渡辺
ワルステルダム
ホロッコ

です。

R-1決勝進出者が2人、そしてプロダクション人力舎からは、若き異才、女性コンビ、「ワルステルダム」が登場、
そしてホロッコさんが今回もゲストとして登場です! ホロッコさん猛プッシュ! いままですべてのフライデーナイトライブに出ているレギュラー。

ご予約はお早めに。

なお、チャレンジコーナーのネタみせは、
3月16日(木)、14:00〜17:00に赤坂区民センターにて行われます。
参加希望の方は、
オフィス北野03-3588-8135 赤井田(あかいだ)までご連絡ください。

会場で会いましょう!

オフィス北野 若手present's
【フライデーナイトライブ】
2011年3月25日(金)19:00開場/19:30開演
新宿・関交協
ハーモニックホール
 (関交協ビル、地下1階 新宿駅西口から徒歩7分、地下鉄西新宿駅から徒歩2分)
チケット前売り1500円、当日2000円
<出演>マキタスポーツ、大神クヒオ、米粒写経、木村裕子 ほか
<ゲスト>井上マー、キャプテン渡辺、ワルステルダム、ホロッコ ほか
フライデーナイト公式HP

▼チケットは、
ローソンチケット:Lコード 36981 (電話:0570-000-777)
または、
チケット申し込みフォーム>にてお名前と枚数を送信!




お忙しい時期ですよね、でも損はさせませんので!

posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 13:54 | comments(0) | - |-
◇◆水城せとな研究◆◇ 第1回 『オートマチック★エンジェル』

水城せとな研究 
 第1回 『オートマチック★エンジェル』


この才能に、リアルタイムで出会えた自分の人生。

私は、一昨年あたりから、尋常ではなくハマっている漫画家さんがいます。
水城せとな(みずしろせとな)先生です。

全作品を読みました。
一人でも多くの「セトナー」(水城せとなファン)を増やすべく、ちょこちょこ作品の感想などを書いてみようと思っております。

第0回 年表 〜全作品リスト〜




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▼作品番号025「
オートマチック★エンジェル」。
この作品から話をはじめたい。
単行本では全2巻完結。

単行本第2巻には、作品番号001「冬が、終わろうとしていた。」が掲載されている。
この作品は、水城せとな先生のデビュー作である。93年作品。

「オートマチック★エンジェル」は、98年から00年まで小学館『デラックス別冊少女コミック』で連載された。
全6話である。

若き天才科学者、漆原博士。
彼は、助手の麻美の父の多大なる資金援助を受け、積年の夢であった「究極のアンドロイド」を完成させる。
その名を「せりか」という。超美少女。

この作品は、水城せとなが少女漫画史上でアンドロイドものを手がけたものであり、なかでもせりかにぞっこんな漆原博士、そしてそんな博士を恋慕する麻美さん、なにも知らないがゆえにあぶなっかしいせりか、
そんな三人を主軸に置いた、コミカルな作品である。

90年代の初期作品では、比較的シリアスな作品群が多いが、小学館では読みきりや、短期連載の作品番号022「ふたりのために世界はあるの。」あたりで、コメディも手がけ始める。
これにより作品の幅がグッと広がり、またポップさも獲得していくのであるが、メジャー誌で活躍していくために、ものすごい挑戦だったかもしれない。

「少女漫画っぽいもの」と「自分らしいもの」の接点を求め始めている時期ととらえることもできる。
現在から読むと、この異端の才能は、むしろこうした一見ポップな形式のなかにこそ光るし、そのバランスも心地よい。
異端は定型でこそ光る。
非常に読みやすい作品となっている。

せりかは、漆原博士によれば「究極のアンドロイド」であるが、どこが究極かというと、「失敗することで自分で学んでいく」点が究極であり、
またこの核があるからこそ、最初は無表情だったせりかは笑顔を獲得していき、また感情ももちはじめ、アンドロイドである葛藤なども抱えていく。

第三話「LEVEL3」では、麻美のプログラミングした、すべての女性を幸せにする超美少年な第2号アンドロイド「すばる」が登場するが、すばるはこうした葛藤は抱えていない。「失敗することで学んでいく」ことに重点を置いた描かれ方はしていないかというとそうではないのだが、葛藤がなく、失敗をするとすぐに自覚して自分で修正していく、せりかとは対照的なアンドロイドとして描かれている。
このすばるの「ちょっとずれた王子様ぶり」もおもしろい。

第二話「LEVEL2」で、早くも水城せとならしさが炸裂する。

高校に通うせりかのクラスメイトの男の子が、せりかに恋をする。
この男の子は、メガネをしていて、ちょっとダサい感じだが、せりかが漆原博士に監禁されているかのように誤解して、せりかを救おうとするのだ。むろん、この男の子は、せりかがアンドロイドであることは知らない。

「せりかさんっ もっと自分を大切にしなきゃだめだ!
 今からでも間に合う! 人生を変えましょう!!」


せりかを説得している最中にもみあいになり、せりかは倒れる。
そしてせりかは記憶データの一切を飛ばす。

自分のことがわからなくなったせりかに、
男の子は「待てよ。これはチャンスなんじゃないか?」と思い、
こういうのだ。

「僕たちは恋人同士。この部屋で同棲しているんだよ。」

彼が思いついた、せりかを救う方法は、これだった。
せりかはそれを鵜呑みにして、男の子と同棲をはじめる。
漆原博士は、せりかを救おうと試みるが、変質者扱いされ、逆にせりかに撃退されたり。

そして、せりかを自分のものにした男の子は、幸せになる、
かと思いきや、
あまりに従順すぎるせりかを見、
まだ自分が彼女の「心」をつかみきれていないのではないかと思ったりするのだ。
キスしようとしても「はい」としか言わないせりかを見て、キスするのをやめる。
そういう純粋な男なのだ。

心をつかめないのは当然だ。せりかには心がないのだ。

男の子は、せりかを守るにふさわしい男になるために、
メガネをかけるのをやめコンタクトにし、美容室にいき、「かっこいい髪型にしてください」と言う(笑)。
実にオタクらしい男である!
そしてメガネをはずしたら美形というお約束炸裂! こういうのやるんだ!? ザ・オーソドックス! 象徴的な「お約束」を成し遂げた先生に涙した私!(どうでもいいよそこは)

ここまで来て、完全にこの男の子に感情移入するようにできている。
それはもう、純粋で、ひたむきで、いじらしい努力なのである。
しかも、漆原博士側は、せりか奪還に失敗する側として、あくまでコメディ処理であり、感情移入させないのだ。

男の子は、せりかを想うがゆえに、さなぎが蝶になるかのような成長を遂げる。
男としての魅力を持ち始め、クラスメイトから名前も認識されていなかったのにもかかわらず、
せりかによって自信を得たのか、クラスの女子から電話もかかってきたり。モテ期到来である。
しかし、彼は、外見の変化を遂げても、最後までせりか一筋で、他の女の子には見向きもしない。
実にオタクらしい男である!
ここがポイント。

この男子は、いかにモテようと、他に目移りせず、せりか一筋である点において、変わっていないのである!

「自分が変わると他人もこんなに変わるもんなんだな
 …せりかがいなかったら、 こんなこと気づかずじまいだったかもしれない」

この謙虚さ。いや、君が変わったのは外見だ!覚悟だ!
その優しすぎて、思い込みの強いハートは変わっていないのだ!

そして、この男の子とせりかは、最高にラブラブ。

ここまできて、漆原博士がせりか捕獲に成功し、研究室に運び込むことに成功。
記憶が消える前の状態にメンテナンスしようと試みるが、

「助けてー! ダーリン!!」

と絶叫!!

もはや完全に博士が悪者になっているのである!

博士は叫び返す!

「今の君は 本当の君じゃないんだ!!」

ストーリー的にはそうである。
しかし。
「本当のせりか」が、いったいどんなものであるかというこの問題は、「本当の自分とはなにか」という問いを、そのまま読者に投げかける。
博士のいう「本当の君」は、博士が自分好みにプログラムしたせりかでしかない。
それが、記憶を失い、男の子好みになったにすぎない。
そういう意味では、漆原博士も男の子もまったく同類なのである。

人から押し付けられる「本当の君」の気持ち悪さを、この一コマが雄弁に語る。

「かわいそうに… いますぐ直してあげるから」

という博士は、せりかの首をかちゃっと取って胴体と分離させるのだが、
当のせりかは、自分がアンドロイドであることも忘れている!

「うそ 何これ… 人間じゃない………!! いやあああああああああああああああ!!」

博士「まずい 自我が崩壊する!」

こだまするせりかの絶叫。
そうなのである。

せりかは「アンドロイドである自分」という記憶すらなくなっているので、
「アンドロイドである自分」は、周りから「君はアンドロイドだ」と言われなければ、自覚していない自分なのである。
つまり、アンドロイドであることも、せりかにとっては、他者から押し付けられた「本当の君」でしかない。

「あの男との記録をすべて消去するんだ!」
「はい!」
博士と麻美は、最後まで抵抗したせりかの記憶を「DELETE」する。

次のページではせりかはもう博士に抱きついているのである!
そして、その様子を窓の外から見てしまう男の子!
しかも、もはや黙って見てしまうだけの男の子!


そして、彼はそのままもともと予定していた、転校をしてしまう。
「そういえばあの人転校しちゃったんだー なんて人だっけ?せりか」
「え? 知らないよー」

きれいさっぱり忘れている!
なにか小道具を使って、彼のことを記憶の片隅に覚えているとかいういい話展開一切なし!

なにこのブラックさ!
最高なんですけど!
1ページ目と最終ページにまったくおなじ絵をつかっているテンドンも見事に決まってるし、最後のコマの机のカットが、男の子の存在に感情移入した私には、非常にセンチメンタルにうつる!
なにより、最後までこの「男の子」には、名前がないのである!!

やばすぎですよこの作品。
読みやすいようでいて、自我とはなにか、生命とはなにか、愛とはなにかという、深遠な問題を投げかけているのである。しかも、それはわからない人にはわからないように、うまく少女向きにアレンジしているのだ!

せりかは、笑顔で、死んだ猫を拾ってきて、博士に生き返らせてとか言うし!
すばるは、すべての女性の理想になるために、告白された女の子全員と付き合っちゃうし!

知ってるアンドロイドではなく、学ぶアンドロイドとして成長したせりかは、博士もそのうち寿命で死ぬことを知ると、
それから知恵熱出して数日寝込んじゃって、
最終的に「博士が死んだらせりかも死ぬ!」とか言うし。

極めつけは最終話「FAINAL LEVEL」である。
漆原博士は、スポンサーでもある、麻美の父の強い勧めもあって、麻美と結婚することになるのだが、
最後の最後、式の最中に、
「ごめん!」とか言って、アンドロイドのせりかをお姫様抱っこして、逃げ出してしまうという結末!
そしてそれを麻美さんも認めてしまうという結末!

生身の人間よりもアンドロイドを取るというこのオタクらしい結末だが、
むしろこのエピソードによって、せりかが本当に生身の人間と同等の価値を得たという解釈もできる。
せりかは人間となったのである。

恋愛などにおいて、おなじ過ちばかり繰り返す「学ばない人間」よりも、ピュアでひたむきな「学ぶアンドロイド」のほうが、私はいいと思う! という気持ちをスカっとさせてくれる結末で大好きだ。
むろん、麻美さんはバカ女ではなく、最高にいい女なのであるが。

これはぜひ読んでもらいたい作品だ。初期作品にも「らしさ」がにじみ出ている作品である。
ちなみにこの作品、水城せとな史のなかでは、読みきりと短期連載以外で、あしかけ2年くらいの連載をした、BL以外でのはじめての連載として位置づけられるので、そういった意味でもこの作品がその後の活動を広げる契機となった作品であるかと思う。



▼第2巻収録の作品番号001「冬が、終わろうとしていた。」は、
シリアス作品。
女子高生が学校の先生に恋をする話である。
先生は、妻帯者である。
ある日、そんな先生が、たまたま落とした結婚指輪を拾うところから話ははじまる。
そして主人公の女の子は、そのまま指輪を返さない。

雪の降る夜、校門で先生を待ち伏せしていると、奥さんが車で迎えにくる場面に出くわす。
それを隠れて黙ってみている女子高生。
でも、先生は実はそんなこともちゃんと知っていたりもする。
大人すぎる作品!

「…思うんだけど結婚ていうのは
 相手を互いに不幸にしないという契約をすることだ
 でももう一生恋をしないなんて誓ったつもりない
 そんなこと
 契約なんかで縛れないよ」

妻帯者の先生が、女子高生にこんなセリフを言うわけですよ!
先生も、実はこの子に淡い心をもっている風。
この恋愛観。情の交わしあいは、1か0かなんて割り切れるものではないという水城先生の根底に流れる諦念がすでに炸裂している。

なにより、この作品が野心的であるのは、
作中一言も、好きとかいう言葉が一切出てこないところである!
これはもう確信犯。好きという言葉を使わずに、具体的な好きさ加減を表現するという文学性まで漂っている。

表現もひねった言い回しが多い。
「カレンダーがまた脱皮する」
とか。

特に最後の締めの心理表現は余情もあって素敵だ。

「籠め続けていた言葉をやっと吐き出せたころには
 桜のつぼみが膨らみかけていた

 冬が終わろうとしていた」

タイトルにもなっている一文が、印象的に作品を締めている。

借りていたコートを返し、そのポケットのなかに隠し続けていた結婚指輪も入れて、
「もう会いません」と告げたあと、
少女がうっすら口をあけているカットがある。

きっとこのコマで、言ったのだろう、「好き」と。

そして、そのまま「さよなら 先生」と言った。

成長物語としても読めるし、切ない恋物語としても読める。
が、「人間のどうしようもなさ」みたいなものが、この作品の時点ですでにある。
よくプチコミックに掲載されたなあという。
伝説のデビュー作と言ってもいいだろう。


すべてはここからはじまった。

posted by: サンキュータツオ | ◇◆水城せとな研究◆◇ | 02:46 | comments(5) | - |-
3月の出演情報
3月の出演情報

わかっている範囲で。個別に改めてアップすることもあります。

▼3日(木)ラジオ
荒川強啓のデイキャッチ』@AM954 TBSラジオ 「メキキの聞き耳」のコーナー
タツオ 17:15〜24の出演

▼5日(土)イベント司会 14:00開演
海月姫』コミックス、DVD&BD発売記念トークイベント@フジテレビ1Fマルチシアター
タツオ
参加応募締め切り 原作者:東村アキコ先生、監督:大森貴弘さんと!びびる!

▼6日(日) ライブ 19:00開演
人力舎『バカ爆走!』@新宿Fu
〜僕たちは「君に届け」芸人です!〜
タツオ 漫画『君に届け』だけを語りつくす『キミトーーーーク!!』第2弾

▼18日(金)ライブ 24:30〜29:00
アニメ会『アニメ会の「ヲタのみぞ知るセカイ」』@新宿・LOFT/PLUS ONE
タツオ 年に一度のロフトプラスワン出演。オールナイトで萌え話。

▼19日(土)ライブ 16:00〜
フラットファイヴ『フフフのフー ヒルフフ』@新宿Fu
東京ポッド許可局 ネタのようなものをやる予定。

▼19日(土)ライブ 19:00〜
フラットファイヴ『フフフのフー ヨルフフ』@新宿Fu
米粒写経 気合の入ったネタやります。

▼24日(木)ライブ 19:30〜 
神田きらり『神田きらり二人会シリーズ VOL,2“春きらり”』@LiveHouse PAPPY'S
米粒写経 居島さんの「新興俳句」トークもあり。まさか芸協のHPに私たちの名前載ってるとは。

▼25日(金)ライブ
オフィス北野フライデーナイトライブ@西新宿・ハーモニックホール
米粒写経 マスト。絶対来て。一番力入れてます。後悔させません。


▼27日(土)ライブ司会
なんらかのライブの司会 情報待て。
タツオ

▼30日(水)
大川興業『すっとこどっこい』@新宿Fu
米粒写経 ある意味、一番そのままの米粒写経が見られるレギュラーライブ。


その他、
毎週日曜更新のポッドキャスト『東京ポッド許可局』。
毎週月曜日深夜更新のアニメ会の『ヲタめし!』には不定期出演。
有料ネットTV『アニメ会のアキバBBチャンネル』。

連載中の
雑誌『ゲームラボ』は16日発売。
雑誌『GetNavi』は24日発売。
雑誌『チャンピオンREDいちご』発売中。

みなさん、どこかでお会いしましょう。

3月は、花粉症と向き合うため、篭ります。
表に出ない仕事もあれこれやってますので、どこかで発表できればいいね☆

これからもお楽しみに!


【自慢】
3/5(土)8:30〜 NHK-BS2『週刊ブックレビュー』にて、
書籍『東京ポッド許可局』が紹介されます!
あの宮崎吐夢さんが紹介してくださいます!

再放送もたくさんあります。


児玉清さんも「その通ーり!」と頷いた?
NHK-BS『週刊ブックレビュー』にて、宮崎吐夢さんが紹介します! 
■書籍 大好評発売中 2010年売れたサブカル本ノミネート 各種書評絶賛
『東京ポッド許可局 ~文系芸人が行間を、裏を、未来を読む〜』

 著者:マキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオ、みち、
     みずしな孝之 (イラスト)
 価格:¥ 1,890 出版社:
新書館 
 ※Amazonは
こちら

 『
東京ポッド許可局』 こちらが公式サイトです。
  ↑音声配信はこちら。
 <店頭取り扱い店>
 新宿、高円寺、馬場、町田、各
ヴィレッジバンガード店頭、
 
タワーレコード渋谷店ブックファースト新宿店
 などにお立ち寄りくださいますようお願い申し上げます。

 



自腹運営ポッドキャストが、NHKで語られる記念日。

posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 03:53 | comments(3) | - |-