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◆私が観た第5回全日本アニソングランプリ 福岡予選大会編

◆私が観た第5回全日本アニソングランプリ
〜福岡予選大会編〜


福岡も暑かった。
札幌、名古屋、大阪と、すでに6人の決勝進出者が決まり、
そろそろどういう人が決勝に残るかという傾向が見えてきて、比較対象する存在が目に見えてくる段階での地方予選。

うまさというものは、ひっくり返すと「うまい」しかないという点にもなり得る。
うまい、だけでは通用しない。「個性」もしっかり乗っけなければいけない。
個性を乗っけるのは、無意識に出来ている人もいるし、考えに考えぬいて、自分のなかでの自分の「個性」を見つけられる人もいる。また、意識したとたんに「個性」を失う人もいる。迷いがでてくる人もいる。
大変難しいことだが、オリジナリティーとは、自然に出力できるものでなくてはならない上に、ほかにいない、という点でもある。作為的にせよ、無意識にせよ、それは自分にしかできないもので、「だれだれっぽい」と言われないものでなければならない。
うん、難しい。

そんななかで、優勝した15歳の女性、
田中瑞穂さんは、自分の魅力を知ってか知らずか、裸足でHIMEKAさんの「果てなき道」(『テガミバチ』)を熱唱、昨年は予選にすらたどり着けなかったというほどなので、
磨きに磨いた歌を披露したということか、
HIMEKAさんとはまた別の、個性というものを存分に発揮したステージだった。

今大会は、10代のレベルの高さに目と耳を疑う。
なかでも、個人的には、名古屋の大倉さんと、福岡の田中さんの戦いは決勝のひとつの見どころになり得ると思われる。世紀末に生まれた子たちが、もうあんなに大きな声で熱唱するとは。
おじさんは死にそうです。

福岡には、このアニソングランプリの常連、妹川和生さん、
そして昨年の福岡優勝、児塚明日香さんも登場した。

妹川さんは、パーマンのコスプレで登場し、「パーマンです」と自己紹介したあとに、プロゴルファー猿の「夢を勝ちとろう」を熱唱するというフリオチが見事に決まっていた。
正直、この人の歌は最高にお上手なのだが、ネタ的なアングルで観られてしまっている部分もある。それはそれでいいのだが、私は毎年この人のネタを楽しみにしている反面、どうしても決勝の舞台でこの人を見たい気持ちもある。
「今年は妹川なにやってくれるんだ」という期待感は、きっとプロになっても「今日はなにをしてくれるんだ」という期待感に繋がる。
そこまで期待にこたえる力は未知数なのだが、この人ならやってくれそうな空気感もある。
こういう人が、アニソンやPOPの境界がなくなったとき、現場では一番強い。熱狂的に支えられる人というのが、最終的には一番強い。
私は、そういう意味で、妹川さんはアニソングランプリの笑い飯だと思っているし、レディ・ガガでもあると思っている。そのうち訴えられる的な意味ではなく。
銅像とかできそうな勢い。

児塚さんは、この1年、アニソングランプリのことだけを毎日考えてきた、というだけあって、その成長の証を私は観た。angelaさんの歌だ。メイド喫茶で働いているだけあって、メイド服もバッチリだ。
今年の審査に残らなかったのは、私にはわからないけれども、もしかしたら審査する側の誠意や優しさなのかもしれない。そのメッセージをどう受け取るかも、その人にかかっているのだ。

プロだろうと、インディーだろうと、続ける人は続ける。
歌う人は歌う。
そして、精神的な意味での戦いは、ある意味で永遠に続く。
人は、本当にやりたいことを、ずっと続けてこそ、生を全うする。
そこに需要があるかどうか、支持者が多いかどうかは、商売としての話である。

準優勝は、上村洸太さん。
「爪痕」を歌い、しっかり爪痕を残した。中継ブースで、いきなりGod Knowsかなんかをフッたら、即座に歌ってくれた…方だったように記憶するか、定かではない。たしか、そうだった。男性でも音域の幅があって、女性ヴォーカルの曲をたくみに歌っていた印象。

WEB審査は、
柿本里那さん、副島栞さん、園田真珠さんの3人。
柿本さんは、『らき☆すた』の三十路岬をまった二十歳の女性。三十路じゃねえじゃん! 選曲の時点で、こやつ、できるな感たっぷり。明るい元気娘なので、決勝に残ると観客を味方にしそうだ。
副島さんは、林原さんのノーザンライツを歌いきった、ちっこい二十歳の女性。こっちも二十歳。気負いを感じさせない自然体の雰囲気が、大物感ある。
園田さんは、昨年決勝優勝者の河野さんの「モーニングアーチ」を歌った17歳の長身女子高生。これものすごい難曲なのだが、河野さんとはまた違った魅力で、自分の個性を出していた。

タツオ賞は、未発表にしておくが、
この福岡大会、妹川賞は、妹川和生さん(5年連続5回目)に決定。


福岡の中継レポートの相方は、くぼたみかさん。
前回は「初音ミクを意識して」、とツインテールだったが、今回はお団子二つヘアで登場。
さすがに、どのギャルゲーがモデルですかとは聞けなかった。
きっとギャルゲーってなんですかという答えがきそうで、説明するのが大変だろうと判断した。
って、ギャルゲーくらいしってるか!


WEBでの中継で、ツイートしておられる方々のやや口が悪くなっているように見えてきたので、一石を投じるツイートなどする。
とたんに袋叩きにあう。
まあいいさ、いろんな意見の人がいて。
無責任に気軽になんでも言えるだけ、大会の遠心力が高まった証拠だろう。
そして、私の役割は、一石を投じることにあるだけだし、大会の総意ではないわけだし、叩かれて当然だろう。
だが、軽い気持ちでいった一言が、
まだプロの卵である人たちを傷つけてしまう場合だってある。
傷つきやすい人もいる。
むろん、批判にさらされることに耐えるのもプロだろうという意見もわかる。
しかし、
プロの卵は、そういう批判でいとも簡単に潰れることもある。
いや、正確な意図での「批判」ならまだいい。
それが「誹謗中傷」のレベルになると、一生人前で歌うことも、本名を言うことも怖くてできなくなってしまう人が、いるかもしれない。
少なくとも、顔がどうだとか、そうじゃねえよとか、消えろとか、私にとっては日常茶飯事のことであっても、卵にとっては決定打になってしまうこともある。
プロとして必要なこと、言わなければならないことは、審査員が代弁してくれている。そしてまた、プロの審査員以上の目は、なかなかに獲得できない。
WEB中継をニコニコ動画ではなくユーストでやっている意味とかも考えると、ツイッターでの半匿名性はもはや消滅しているのではないかと思ってしまうほどだ。
これは私の勝手な意見であることは自覚しているが。

いまはまだ全然少ないのかもしれないけれど、文句をいうための文句としか受け取れないもの、あまりにも非難色が濃い表現、誹謗中傷レベルのものが、もし増えたとしたら、WEBでの中継そのものが形を変えてしまうかもしれないという懸念がある。
できれば、この大会のWEB中継は、中継する側もされる側も見ている側も、楽しむことができるものであって欲しい。私はそう願うだけだ。文句は私にくればよい。
確認のためにいうが、素直な反応は悪いことではない。すべての発言をポジティブにすべきた、とも私は思う。ネガティブなものもあっていい。だが、それが誹謗中傷のレベルの表現は、人を傷つけるためのものでしかない。
プロになるんだから誹謗中傷も仕方がないという意見もわかる。しかし、だからといって、それは誹謗中傷を「してもよい」と開き直るロジックを支持するものでもない。ただ、自由な意見が書き込むことができるということは、誹謗中傷も「黙認されている」のであって、決して奨励していることと同義ではない。
そもそも、いろんなロジックを作り上げようと、「だから誹謗中傷していいんだ!」などどという理屈は、どの領域でも許されるものではない。大型掲示板や自立採算している場所とちがい、この大会は民間企業がスポンサーをつけて公開している、「大人のマナー」を尊重している場所なのだ。そういう意味では、これを視聴しているお客さんのことをとてもとても信頼している、ということでもある。

こんなことを言うのも、すでに私の越権行為なのだが。スタッフさんたちがどう考えているかはわからない。
あくまで一中継レポーターの放言、自分の考えである。


福岡は前ノリしたため、夜、中洲の屋台に。

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熱い野外でラーメンを食べながら、
スタッフさんたちと激論。
あとでしゃべりすぎたかなと反省。


帰りにスーパー銭湯的なところにひとりで行き(どこまで孤高なのだ私は!)、
サッパリして翌日に備えた。


2011.08.07

posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 03:10 | comments(0) | - |-
本日、アニソングランプリ福岡予選
福岡に来ております。
素敵な街です!といいたいところですが、街は飛行機の上からしか観覧しておりません。
福岡空港やばいっすよ、着陸までに街の上を低空飛行するので、飛行機からの眺めがシムシティやってるみたいで、『日常』のエンディング見ているみたいな錯角に陥りますよ。
住民の方々には迷惑な話かもしれませんが。

本日は、ANIMAX第5回全日本アニソングランプリ
福岡予選大会です。

先々週の札幌に続き、先週の名古屋、大阪も激戦でしたが、
この福岡もまた激戦。

今日はどんなドラマが生まれるのか。

13時開始、ANIMAXのホームページで中継されます。
中継レポーターで登場しますので、
どうぞお楽しみに。



posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 02:07 | comments(0) | - |-
◇◆水城せとな研究◆◇ FRAU 2011年6月号インタビュー

講談社『FRAU』 2011年6月号 インタビュー

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2011年6月号。
特集「30歳からの恋の教科書」。

水城先生のインタビューが、p80〜p83まで、大ボリューム4ページ。
これは資料的価値の高いインタビューでした。
取材・文責は、門倉紫麻さん。

女子力が高い雑誌において、
『失恋ショコラティエ』に学ぶ大人の恋の実らせ方
という特集。

『失恋ショコラティエ』の
サエコと薫子の対比について。水城流「男と女」哲学に触れることができる貴重なご託宣記録。
おそらく、記者も『失恋ショコラティエ』のファンなのだろう、こういう記事にまとめるとメジャー誌で展開しても違和感がない、というつくりで、紙面デザインも美麗。
生まれてはじめて『FRAU』を購入。

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薫子に対して。

「もし爽太が同じくらいの年だったり、年上だったりしたらだいぶ違うと思うんですけど、7歳下の男の子を追いかける自分なんて痛すぎる、と思っている。男の人のほうから言われたら考えてもいい、とは思っているのです。でも現段階では言われてないのです。『そういう範囲の人じゃない』って思うことで、傷つかずに済むようにしている。心に城壁を築いて、よし守ったぞみたいな(笑)」



こういう30代の女性心理を冷静に把握しつつも、実際の薫子を魅力的に描けるのは、この先生の才能である。落としもしないし、ことさら美化もしない。
これはサエコに対しても同様である。

「『男って、なんでサエコみたいな見え見えな女にだまされるの?』ってどこか見下していますよね。でもサエコさんはそもそも、“男って”という言い方はしません。必ず、“男の人は”と言う。そこに意識が表れているんです。そういう女の子が、男の人にいいなと思われるのは当たり前ですよね。『男ってバカ』と思っていたら、知らず知らず態度に出ますから」



これを読み、私は仮に女だったとしても、モテない側に回っていると確信した。たぶん男をバカにすると思う。
この作家は、どちらにも感情移入しない方法をとる。あるいはそう心がけている。
物語がどういう結末を迎えるかで、解釈も変わってくるかもしれないが、現段階では、そういうフラットな表現姿勢を貫いている。

この作家のプロットが、「どう転がるのかわからない」と思わせる力を持っているのは、このバランス感覚であろう。
登場人物のだれにも感情移入できるように描いているのに、だれにも肩入れをしない描き方。
しかし、伏線は気づかないうちにサラリと描いてあったりする。非常に巧妙に。

このインタビューでは、サエコの家庭環境や、現在の20代30代の女性を取り巻く環境の変化など、社会的側面にも触れておられる。

水城節全開の人間観を垣間見るインタビューであった。
セトナーは読まれたい。


◇◆水城せとな研究◆◇過去記事一覧



2011.08.14

posted by: サンキュータツオ | ◇◆水城せとな研究◆◇ | 05:18 | comments(0) | - |-
◆私が観た第5回全日本アニソングランプリ 久保亜美さんのこと

私が観た 第5回全日本アニソングランプリ
〜久保亜美さんのこと〜


名古屋予選に、久保亜美さんという方がいた。
髪の毛が長く、左半分はピンク、右半分は黒。
縁のあるメガネを鼻の先でかけ、
衣装は、いわゆる「バニー」、ウサギ耳をつけていた。
バニーな格好ということは、露出割と多めである。

全身で「オタク」であると表現していた。
歌うまい。
歌は、たしか『魔動王グランソード』の「ホロレチュチュパレロ」だったと思う。

アピールポイントに「とにかくよくしゃべる」「声が大きい」とだけ書いてある。
とにかくよくしゃべっていたし、声が大きかった。

衣装から発言まで、オタクであることに誇りをもった存在だった。
この大会は、アニソンのイベントだから、歌がメインなのだが、
歌以外だって重要な要素である。

歌い終わって、審査員の質問しているのも、
喰い気味にこたえたりして、文字数が多い。

やや意地悪な言い方をしてしまえば、
オタク特有の、
「頼まれていないけど、なんかジャンルを背負ってます」感もあった。
私もよく背負いこんじゃうのだが。
そういう痛さまでも完璧にオタクだったのだ。

こういう人が、この大会では「色物」扱いされてしまう場合がある。
観ている人に。

だけれども、
この大会はあくまで「歌」がメインであって、
それに付随する要素は、オプションである。

たとえば、
極端な話、逆に、アニメ全般のことはよく知りません、な人が、この大会に出たっていいと私は思うし、
実際、そういう方もいる。
いままでアニメというジャンルに関わらなかった人が、この大会に出てくる。
そういう人が優勝して、アニメを好きになり、アニメの世界観を表現してくれたら、
アニメ業界全体にとっても、
「アニメをまだよく知らない人が、アニメを好きになった」の象徴となる可能性もある。
アニメを好きな人が一人でも多く増えるキッカケになるかもしれない。

私がマズいなと思うのは、
あくまで「自分が歌った曲のアニメはよく知らないけど、アニソン歌いました」という人がいてはいやだな、と思うだけで、
自分が歌う曲が、そのアニメの「顔」である限りは、その世界もきちんと表現する、知る、
というプロ意識があれば、全然問題ないと思う。

この大会は、「どれだけアニメを好きか」を決める大会ではなく、「アニメの主題歌を歌うのにふさわしいプロをさがす」大会である。
むしろ、アニメに詳しくなくても参加できる、敷居の低さというか、遠心力をもつ大会になればいいとすら思うのだ。

しかし、オタクのなかには、「どれだけ知っているか」に重きを置く人が少なくない。
たとえば、どれだけのアニメをたくさん見ているか、とか、どれだけの歌を空で歌えるか、など、
「知っているかどうか問題」を気にする人がけっこういる、ということだ。

しかし、私は、「知識量がある人がエライ」みたいな考え方には、あまり賛同しない。
それって、スポーツだと「うまい奴がエライ」とか、ビジネスだったら「金あるやつがエライ」みたいなジャイアニズムと一緒だからだ。オタク界にもそういうジャイアニズムは存在する。
知識量とか、いかに三次元の恋愛をしていないか、とか。
そもそも論でいえば、アニメのことに詳しすぎる、あるいはモテなさすぎる、というのは自嘲的発露であったものが、いまは胸を張って「だからエライ!」と言わんばかりのものになってきている節もある。
そこに照れがあるかないかは、私にとってはけっこう大きい。

私が問題にしたいのは「愛の深さ」であって、量ではない。

もちろん、この大会は、アニソングランプリなのだから、自分が歌う曲のアニメを見る、そしてその世界観を理解し、自分なりに解釈し、自分でしか歌えないような歌い方をする、
というのは、プロになろうとするのなら、当然の「オーディションの攻略法」であると思う。
それができないならば、オーディションというものの意味を理解していないことと同義であろう。
「オレンジジュースの企業のCMの歌を歌うオーディション」で、そのオレンジジュースのことを良く知らなくては、話にならない。「えと、そのジュースは飲んだことなんですけど、CMは唄いたいです」というのは、筋が通らない話である。あってはならない。それとおなじである。

『蟲師』や『デトロイトメタルシティ』の長濱博史監督は、
たとえば、自分が居酒屋の店長で、納豆を作ってくれという要望があり、自分が納豆を嫌いだった場合、どうするのか、と聞いたとき、こう答えた。
「納豆を、好きになるんです。心から。好きになるまで納豆食べます。体を変えます。もし体質に合わなければ、仕事を降ります』
と言っていた。
要するに、あまり好きではないかもしれない萌え系の仕事があったり、
よく知らないBLの仕事があったりしても、
この人は、心から理解し、愛情がもて、日本で一番、その作品を好きだと胸を張って言えるまで、徹底的に好きになるのだ、と言ったのだ。
事実、この間長濱監督は、初音ミクのPVを作ったのだが、以前はあまり詳しくなかった長濱さんが、作り終えたときに「ミク最高だよ」と言うまでの変貌を見せてくれた姿を私は見た。

ここまではさすがに要求するのも酷な話だが、
この言葉は、プロとはなにか、ということにも繋がってくる。
アニメを知らなくても、歌手の仕事がしたいのなら、心から萌えを理解し、アニメを好きになる、までが仕事なんだという。
あるいは、そこまでできずとも、そういう覚悟をしてほしい。それができない人は、いとも簡単に見抜かれてしまう。結果、支持されない。

だから、アニメ詳しくない、そんなに量を観てない、って人でも、別にいい。
大会規定に「アニメに超詳しいこと」なんて書いてない。
なので、そういう人に対してことさら風あたりが強くなるのは、大会としてクローズしてしまうことと一緒であるし、むしろオタクの心の狭さをアピールしているようなものだと思う。
自分が歌った曲のアニメを知らない、という人は、この際、別にどうでもいい。風当たりが強くなるのは当然だ。どうせ愛されない。

肝心なのは、量じゃなくて「愛の深さ」なのだ。

で、話を久保さんに戻すと、
彼女の場合は、「アニメを詳しくはしらない」というパターンと、
まったく逆の、
「とても愛している」というだけのことだと私は思うのだ。
そして、その愛情表現の仕方が、衣装や言動に出ているだけ、という。

アニメを詳しく知らない人も、アニメを好きすぎる人も、平等である。
平等に、バカにされずに、色物扱いされずに、表現力をこそ評価する大会、それがアニソングランプリであってほしい。
両方を受け入れる懐の深さがあってこそ、だと思うのだ。

どちらか一方に風当たりが強くなってしまう状況では、あってほしくないな、と彼女の存在を見て、
私は、そう考えた。

それを踏まえた上で。


あとでスタッフさんに聞いた話だと、
彼女は朝会場入りしてから、本番歌を歌うまで、
あまりに露出多めな衣装ゆえに、
「その衣装はやめてください」「いや、どうしてもこの衣装で!」
という押し問答を繰り返していたそうである。
スタッフ大混乱である。

彼女はその問答により、ロクに発声練習もできなかっただろう。
集中もしたかっただろう。
しかし、たしかに衣装は制作側としては問題かもしれない。
だけれども、彼女は折れずにそのまま舞台にあがり、「ホロレチュチュパレロ」を歌いきった。すごくしゃべった。

私は思った。
「これこそが、ロックだ」
と。

反体制であり、それでもメッセージしたいことを、彼女は伝えた。
それでいい。
ことさら神とあがめる必要もないし、色物として白い目で見られる必要もない。
彼女は彼女としての存在を全うした。

しかし、私はオタクとしてリスペクトせずにはいられなかった。
なぜそこまでする必要がある!?
なぜそこまで背負う必要がある!?
人はそう思うかもしれない。
だが、私は、「カッコいい」「痛い」「愛らしい」、そう思わずにはいられなかったのだ。

これほどまでに精密化された、パッケージとしてきれいにラッピングしてくる出場者のなかにあって、異彩放ちまくりの、ある意味保守的な、古式ゆかしいオタク女性に、この言葉を出さずにはいられなかった。


「優勝です!!」


思わず口をついて出た。

彼女の存在は、いろいろなことを考えさせてくれました。
そういう人が、名古屋大会にはおりました。

ちなみに、
今後の出場者は、露出多めな衣装は、やめておきましょう(笑)。

こんな記事を書いたら、久保さん本人に叱られないか、とても心配である。


2011.08.07

P.S
この久保さんに対する、リポートブースでの喜屋武さんのコメントがまた最高だった。

「足キレイですね!」だって。
この人すごい、って思った。

posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 19:11 | comments(2) | - |-
◆週刊現代「サウタージ」1981年7月 オレたちひょうきん族

週刊現代「サウタージ」1981年7月 オレたちひょうきん族

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連載中の週刊現代「サウタージ あの日を旅する」、
今号はp130〜131。
1981年7月25日〜7月31日に起こった出来事、テレビ、ヒット曲、ベストセラー、映画を扱っております。

出来事担当の中森明夫さんはダイアナ妃ご成婚についてお書きになっております。
私はテレビ番組担当で、「オレたちひょうきん族」について書きました。

ひょうきん族を語るなど、畏れ多いですが、この年は我らがビートたけしが、元日から「オールナイトニッポン」を開始した年でもあり、
「ビートたけし」が時代を象徴するアイコンとなった年である、お笑い史としては非常に重要な年だと思います。

ラブ・ユー・貧乏とか、いまから考えると、エンタの神様向きなネタコーナーだったんだなと改めて思ったり。

もし良かったら、読んでみてください。

関連記事
週刊現代で連載はじめました!







posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 01:05 | comments(2) | - |-
◆私が観た第5回全日本アニソングランプリ 大阪予選大会

私が観た 第5回全日本アニソングランプリ
〜大阪予選大会 編〜


正直言って、
このような記事を書くことは、単なる一中継レポーターの仕事の範疇を超えてしまっているし、
書くべきでないようなことを書いているような気もするし、
時としては叱られるようなことかもしれず、
またこれを大会の公式の意見と受け止められてしまうかもしれないリスクも含め、
本来なら私にとってまるで利のないものでしかないので、書かないほうがいいかもしれないが、
それでも書かずにはいられない、熱みたいなものがあり、
私が観たもの、聴いたもの、考えたこと、をこうして記録している。

大阪は、喜多修平さんと昨年の河野マリナさんという、過去2人の優勝者を輩出している、伝統の地である。
大阪大会は、トップの川上さんが星矢のコスプレで、クロスを背負い登場するところからして、
大阪らしい、バラエティ豊かな人々が揃った。むろん、全員歌がうまい上での遊び心である。
2番手の裏久奈さんは、完璧な初音ミクのコスプレで、『ブラック★ロックシューター』を歌ってくださった。
この日はブラックロックシューターが2人いた。
このアニソングランプリで、初音ミクの楽曲が歌われた、はじめての歴史ともなったわけである。
ミク好きとしてはたまらない瞬間であった。

3番手には、この大会で準優勝に輝いた鈴木このみさんが登場、『とある科学の超電磁砲』の「only my railgun」を歌い、いままの大会にないほど、選曲の幅も広い。
とんでもない地方予選である。

この大会、優勝は、23番手で登場した松田利冴さん・颯水さんの双子姉妹デュオであった。

昨年に引き続き、地方予選優勝。
地方予選の連覇は、大会史上初であった
(追記:地方連覇は、第1回・第2回の鳴海さんがおりました。修正しました。8/8)


昨年度結果を残した人が、翌年も結果を出すことは大変に難しい。
その地域で、彼女らをしのぐ才能を発見できなかったと思われてしまう危険性もあるが、
それを押してもなお、彼女たちは一番の成長を示したのだ。
昨年優勝者は、中途半端な評価な仕方をすることは、審査をする上でも失礼になるだろうし、大会のメッセージするもの、つまる大会に合う人かどうかを、再度メッセージすることになる。
どんなに才能があっても、成長がなかったり、成長の仕方が変化していれば、WEBにも残さない、あるいは予選にも出さない、ということが充分ありうる。
今年初めて出る人と比べて、WEB審査に残ることが、もしかしたらリピーターにとっては、その人のことを知っている人が多いぶん、有利に働くことがあるかもしれないからである。
それでも、
彼女たちは優勝した。
これはすごいことだ。

昨年、彼女たちは、審査員から、とてもうまいが逆に型にはまりすぎている、もっといろいろな経験を、というコメントをもらっていたように記憶している。
私は彼女たちがどんな経験を重ねてきたかは知らない。
しかしその経験の深さ、経験からどのようなことを学びとったかは、歌を聴き、そしてしゃべっている姿を見て、理解した。
表現者はステージ上で、いろいろな情報を与えてくれる。
それは、うわべでは歌っているだけかもしれない。
しかしそこに込められている想いや表現の幅を観れば、なにを意図し、なにを考えているかは伝わってくる。
コミュニケーションとは、口で会話すること以上に、心でわかるものが多い。

それは、芸人が、ネタを見るだけでいまどんなことを考え、どんな問題意識をもってなにに挑戦しているのか、その姿勢までわかるように、
私のような音楽に明るくないものでも、
ステージで表現されるものの情報というものは伝わるものである。

そういう意味でも、
大阪大会は、ステージを広く使い、動きに溢れ、表現力のある人たちが多かった印象が残った。
仮にその動きがたどたどしくても、動こうとしたという意図は重要だ。
歌というのは、それほどに、身体性をもった表現行動であることを、改めて実感させられた。

松田姉妹のこの1年の想いは、決勝大会でこそ発揮されるべきであろう。
どのような順番で、なにを歌い、なにを表現するのか。
大変楽しみである。
POPSでもなかなか観られない双子の姉妹デュオというのが、アニメソングという領域でどのように展開されるか、これもひとつの方法論として興味深いところではある。
アニメを愛する気持ちは、二人からはよく伝わってくる。
この姉妹がどう戦うか、リベンジ枠としても興味深い決勝になる。
むろん、それは名古屋でWEBに残った梶さんが、仮に決勝にあがってきた場合にもおなじことが言えるのだが。

WEB審査に残ったのは、
井上捺稀さん、斉藤淳さん、山田莉世さん。
井上さんは16歳、高校生とは思えない大人びた表現力で、難曲「ノーザンクロス」を歌いこなした。
斉藤さんは28歳男性、マクロスダイナマイト7の「DYNAMAITE EXPLOSION」を熱唱した、男性陣での奮闘。
山田さんは、『C』の「RPG」、たしかにあれはいい曲だった! 選曲の即時性もさすが。また独特の雰囲気もあって、今後も楽しみな19歳。


この大阪大会、中継レポーターの相方は、名古屋に引き続き喜屋武ちあきさん。
喜屋武さんのアニソン知識マジぱねえ!
この人将来、「二次元コンテンツ担当大臣」とかになればいいと思う。

大阪は印象に残る人が多かった。
17歳で自分で衣装作ったりして、ALI Projectとか歌った人とかも良かったなあ。
審査員にしてみれば、自分の身の丈にあった選曲ももちろん重要なのであろうが、私のような立場で観ると、その背伸び感というか、チャレンジャースピリットが胸に響く。
歌いたい曲と、歌える曲。でも、どうしてもその曲歌いたかったんだよね、っていう情熱は、最終的には決して悪いようには働かない。これは、大きな舞台にいけばいくほど、最後に「観客がいる」というときに、大きく働いてくる要素であると私は思う。


タツオ賞は、うーん、迷う!

2011.08.07


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ポスターにも関西弁の遊び心が!

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この梅田のアーケード街くると、大阪来たなーという感じ。
嬉しい。


大会終了後、昨年に引き続き、「ヲタめし!」リスナーのけんしょうくんが出待ちしてくれていた!
マジかよ。
たまたま大阪を満喫したいなと思い、電車で新大阪まで行きますと伝えて会場を出たら、地下歩道で待っていたという。
これ、いろんな帰りルートのなかでもすごく可能性の低い場所だったので、これはそういう風になっているのだなと思い、
神戸から来てくれていたけんしょうくんと話し込む。
十代になったころから、私たちのリスナーでいてくれ、いまだにこうして追いかけてくれている人がいる限り、私は決していままでやってきたことが無駄ではないことを実感する。
私は、大勢の人を感動させようとは思わない。
このような形で、実際に顔を見られる人に支えられていると実感できることに、表現者としての喜びを感じる。
どこかでファンに会うと、「この人を喜ばせればいい」と、いつもそう思う。
顔が観られる一人を喜ばすことができないのであれば、不特定多数などもっと無理である。

posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 02:21 | comments(0) | - |-
◆好きなファミレス論 東京ポッド許可局、第189回配信
サイゼリヤの「真イカのパプリカソース」がうまい。
東京ポッド許可局、第189回配信。
 
マキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオの3人による、どんなに流行っても絶対タイトルを噛むラジオ、『東京ポッド許可局』、第189回配信。PCさえあれば、機種・メーカー問わずだれでも聴けますよー★

下のリンクをクリックしたら、無料で聴けるページに飛べるよ!

第189回“好きなファミレス論



<解説>
好きなファミレスについて、おじさん3人が「ガールズトーク」する回。
改めて聴くと底知れぬくだらなさがある放送回なのだが、
思うに、こういう「好きなものを語る」ときの、マキタさんの興奮度合いがたまんない。
私は、一視聴者として、マキタさんがノリにノッてしゃべっているものは、すごく食べたくなってしまっている気がする。
結局は、これって、しゃべる本人がどれだけ興奮しているかということが、聴く人にとっては大きな情報なのだと思う。
マキタさんの「声芸」「興奮芸」ぶりたるや、ひどい。ひどいというか、すごい。
これを「村西とおるイズム」とこれから呼ぶことにしましょう。

いよいよ、
ジョナサンではブルーベリーソフトの季節がやってまいりました。
この時期のジョナサンは、
私のなかでは、
ブルーベリーソフトとわらび餅ソフトが、一緒のメニューのなかに存在しているという、「ジョナサンスイーツ、夢の2トップ」期である。

常にどちらにするか、迷うのである。

ジョナサンには、「中華風チキン」を復活させてほしい。
バーミヤンには、「花巻」を復活させてほしい。
ロイヤルホストには、ドリップのアメリカンコーヒーの復活させてほしい。

デニーズは、荻窪駅前に復活してほしい。
(超個人的なお願い)


本番はこちら。

大東京ポッド許可局“日比谷公会堂に2000人集めたい”論 
日時:2011年8月28日(日) 開場16:00 開演17:00
会場:東京・日比谷公会堂(東京都千代田区日比谷公園1‐3)
出演:マキタスポーツ / プチ鹿島 / サンキュータツオ / みち
料金:S指定席 2000円 完売御礼  A自由席1000円

チケットは、イープラス 又は「大東京ポッド許可局」特設サイトで販売中。

 

書籍もよろしくどうぞ。

2011.07.29
posted by: サンキュータツオ | お知らせ | 00:51 | comments(0) | - |-
近況

オフィス北野「フライデーナイトライブ」にご来場くださった皆様、
誠にありがとうございます!
おかげさまで、満席のなか、大変充実したライブにすることができました。
米粒写経としてはここのところネタおろしが続いておりますが、
だってネタおろし楽しいしいろいろやりたいし、いま考えていることがダイレクトに伝わるかなって。てへ☆

そんなわけで、フライデーナイトライブに関しては、また詳細をブログにアップしたいと思います。

いま、大阪にきております。

今年も行われている、
「ANIMAX 第5回アニソングランプリ」地方予選です。

先週は札幌大会、
今週は、フライデーナイトライブの打ち上げから帰宅しそのまま土曜日は名古屋、
そしていま名古屋から大阪に移動し、日曜日の大阪に備えているというわけです。

ゴリゴリの審査の様子を、ネットで生中継している、という非常に熱いイベントです。
私は中継レポーターとして来ております。
昨年に引き続き2回目です。

応募総数1万以上というなかから、
全国5つの地方予選には、各30組程度が予備予選を通過しエントリーしています。
私は、その30組のなかから、決勝大会に進む優勝者と準優勝者を決める予選で、
出場者全員と、歌い終わったあとにお話します。

惜しくも優勝、準優勝はならずとも、敗者復活枠としてWEB投票という、視聴者投票で進出が決まる方々がおりますので、ANIMAXのHPから中継を見ることをオススメするです。

もう、それはいろいろな方がおり、
想いが溢れてしまって、なかなか言葉になりません。

札幌、名古屋の様子も、詳細をブログにアップしたいと思います。
ひとまず明日の大阪、楽しんできます。てへ☆


あ、詳細をブログにアップするのはあくまで予定であり、予定は変更される可能性があります。


あ、『GetNavi』発売中です。「サンキュータツオの芸人の因数分解」、今回はチュートリアルさんについて書きました。
なかなか語りつくせぬコンビですが、書いてみましたのでぜひ読んでみてください。

これに関しても、詳細をブログにアップする「予定」です。

posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 02:57 | comments(0) | - |-
◆私が観た第5回全日本アニソングランプリ 名古屋予選大会編

私が観た第5回全日本アニソングランプリ 
〜名古屋予選大会 編〜


前日の事務所ライブの打ち上げから早朝帰還し、
この日はそのまま寝ずに名古屋入り。

朝9時前に会場となるASUNAL HALLへ。

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昨年とおなじ会場である。
天気は快晴、立っているだけで汗が噴出すほどの茹だる暑さだが、
アニソングランプリのスタッフも、出場者も、それ以上に熱い。

今回のアニソングランプリのテーマは、
「アニソンで日本を元気に!」
である。

昨年は、仙台でも地方予選が行われた。
しかし、今年はああいうことがあり、開催はされない。

この大会が、単なるアニソン大会ではなく、
なにかの統一のメッセージ性をもたせることで、
社会貢献できないか、ということで考え出されたのが、
このテーマである。

というのが、私の憶測である。事実はわからない。
しかし、そこにこそ、作り手の想いはこもっているのだ。

私は、この大会、
出場者とも、共演者とも、審査員の方々とも、スタッフの方とも、
仲良くならない主義の「勝手に孤高」を貫いている。
といえば、かっこいいのであるが、たぶん仲良くなろうとしても、どうせ仲良くなっていただけない性格であることは、自覚している。安心していただきたい。

ベタベタしたトモダチのような関係になってしまっては、
こちらが意図してもしなくても、そういう気持ち悪いさが画面越しに出てしまうと思っているからだ。
本番は、真剣に、緊張感をもって望みたい。
ま、私の場合は、真剣に、緊張感をもって「ふざける」わけなのだが。

ここが、私の職業、ドラクエでいえば、「遊び人」の、なかなか理解されぬところである。
もちろん、私はリハーサルのときから、出場者が歌う神聖な舞台で、寝転んだりふざけたりしている。
ハートはいたって真剣である。真剣に「いい加減」である。

こういう前置きをするのも、
この大会には「リピーター」がいるからである。
札幌優勝の佐藤さんにしろ、この大会は、何度も受けている人がいるのだ。
そういう人たちを、舞台袖から見つめていたい。
その生き様を、「結果」だけを見て、メッセージを受け取りたい。
個人的に仲良くなってしまっては、どうしても感情移入してしまうのである。
昨年、一昨年も出ているのであれば、そうではなくても感情移入してしまう。

この名古屋には、
昨年、決勝大会のファイナルの3人にまで残った、梶礼美菜さんが登場する。
この人が、この1年、なにを考え、なにを吸収し、今年、どういう意図でどのような格好でどんなパフォーマンスをするのか、
私は知らないという「幸せ」がある。

表現者の結果は、「舞台」にしかない。
いろいろ悩むこと、賭けること、想いはたくさんあるだろう。
それを知らずに、「舞台」だけから知ることができること、
これが、昨年も中継レポーターをつとめた私に許される、個人的な愉しみである。

むろん、リピーターは戦い方も知っているし、
それだけこの1年でなにかを上乗せしてこないことには、
最初に受ける人たちと決定的に違いや成長を見せないことには、
選ばれない。
ノビシロの「ノビ」の部分を見られるからである。

昨年の梶さんは圧倒的だった。
ナチュラルな出で立ちに、気負いがない感じも、むしろアニメ愛を表現する人たちと違った雰囲気を持っていて、「自然」だったのだ。
そういう人の、成長の証を見届けられることは、このアニソングランプリをここ数年観ている人たちにとってもささやかな幸せだろう。
むろん、これまでの経緯は知らない人にも、はじめて見る、という幸せがある。
フラットな目線で、人を観られることは、なににも代え難い幸せなのである。

この名古屋大会、
さすがに個性的な人から実力派までが揃い、激戦となったが、
優勝したのは
14歳の大倉明日香さん。

予選では最後に『残酷な天使のテーゼ』を唄ったのだが、唄いはじめ15秒で、この人が優勝だな、と思えるくらいの怪物ぶりであった。
正直、『残酷な天使なテーゼ』とかマクロスFの曲、非常に難しい。唄いたいけど、これはみんなが歌うし、かっこうのモノサシになってしまう難曲という意味では、ノルかソルかのばくち的な意味を含む曲である。

しかし、彼女はそんなことをものともしない自分の「声」で「ものにした」感たっぷりであった。
「こいつは、ヤバイ!!」。
14歳といえば、エヴァでいえばチルドレンとおなじ年だが、存在的には使徒っぽいヤバさであった。

この大倉明日香さんが、名古屋で出たことの意味。
これは、その後の予選での、「歌のうまさ」をはかる上で、けっこう大きな基準になったのではないかと個人的には思う。

どんなにうまい人が出ても、大倉明日香の残像がよぎる。
「この人は、あの大倉明日香を超えるか、否か」と。
それくらいのファーストインパクトを残したのだ。

どの地方予選でも、全員に優勝してほしい。
むろん、そこで優勝した人には、決勝でも勝ってもらいたい。
スタッフは、どの会場でもその想いである。
私もそうである。
その後の地方予選、大倉明日香さんの存在は、「うまさ」という評価軸に限っていえば、私のなかで残像が残り続けた。
うまさ以上の人をひきつける歌声というものが、この人にはあったと思う。
決勝では、セカンドインパクト、そしてサードインパクトが起こせるか!?
選曲が大事になってくるが、14歳という年齢でのアニメの知識でどこまでのばしてくるのか、非常に楽しみである。

準優勝は、田中逸士さん。
185センチの長身で、しかもカッコいい。正確も爽やか、アニメも好き。そして、歌がうまい。
私は、いまでもこの人がKOEIの乙女ゲーから出てきた人だと信じている。
「イケメンアニソンシンガー」という意味では、この人もその後残像を残すことになる。

名古屋は、そういった意味では、地方予選の順番の綾、みたいなものを感じさせてくれる大会であった。

WEB審査では、小川夏実さん、永田桃菜さん、そして、梶礼美菜さんが残った。
梶さんは、今年はアニメ愛を存分に表現するという方法をとっていた。
1年で、こういう選択に至ったというのは、味わい深いものがあった。
WEB予選にも残らないと思っていた彼女は、泣いていた。

残っても、残らなくても、泣いてしまう。
それだけ、この大会に賭けるものがある。
この大会は、そういうものである。


名古屋は、中継レポーターの相方は喜屋武ちあきさん。
正直、私はいままでいろんな女性タレントと仕事をしてきたが、彼女ほど聡明な人はいない。
また、彼女以上にアニメに詳しく、また愛情を持っている女性タレントを私は知らない。
したがって、喜屋武さんがレポーターのときは、私は全面的に甘え、そして戦う。
心のキャッチボールを楽しむために、本番以外は極力会話をしない。
中継レポーターも、いろいろな個性があって味わい深い。
喜屋武さんと私の中継レポーターは、相撲でいえば、「ガップリ四つ」の状態です。
現場判断、タレント判断、オタク判断、それぞれの判断が錯綜し、頭を使ってる快感を味わう。
相手が変われば、試合が変わる。会場が変われば、試合が変わる。
中継レポートも、プロレスなのだ(戦い、という意味での)。



いつかは私もこの中継からはずれてしまうこともあるかもしれない。
それはそれとして、
私は一回一回を真剣に「ふざける」ことを、いま楽しむ。
「いま楽しい」を伝えることが、「遊び人」のつとめなのである。


名古屋予選が終わり、そのまま翌日の大阪大会の会場へ向かった。
名古屋はまったく満喫できない。
しかし、一日に二度も新幹線に乗れるのは、最高!
新幹線って、すごいじゃん。私のようなゾウ虫芸人にはなかなか味わえない電車、それが「新幹線」!


2011.08.07

posted by: サンキュータツオ | フィールドワーク | 22:02 | comments(0) | - |-
世界一初恋2期決定記念! 「世界一初恋愛」まとめ
世界一初恋2期決定記念! 「世界一初恋愛」まとめ



少しまえまで放映していた『世界一初恋』が、もう2期目の制作決定。

ちくしょー、シナリオ会議出たいぜ。


ということで、以前は3本ご紹介しておりましたが、

その後もちょくちょく毎週更新していた、「アニメ会の日替わりアニメ定食」でのほうの記事をまとめましたので、記念にどうぞ(なんの記念だ)。


皆様のおかげで2期目決定しました、ありがとうございます!

スタッフ一同、精一杯がんばりますので応援おねがいします!

(勝手に作り手側目線でお礼を言っている作戦)



まだ知らない世界があるのだということを知りたい、好奇心旺盛な方はぜひ。



短期連載『世界一初恋愛』
11.06.15 嫉妬は堂々と!羽鳥かわいいよ羽鳥 & やっぱ骨だよね優、骨
11.06.22 横沢いいやつじゃねえか会議 政宗の雄弁な沈黙と横沢の存在意義
11.06.29 BLにおける「なにやってんだ、オレ」作戦
◆11.07.06 世界一初恋の脇役たちへ、噛ませ犬バンザイ!!
posted by: サンキュータツオ | †二次元ぷにぷにコラム(2009年10月〜) | 01:11 | comments(1) | - |-