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<読売新聞 連載:サンキュータツオのただアニ!『弱虫ペダル GRANDE ROAD』>


本日発売の読売新聞夕刊、
月一連載の「サンキュータツオのただアニ!」(ただのアニメには興味ありません!)。

『弱虫ペダル GRANDE ROAD』を紹介しました。
テレビアニメでは難しいと思われていた自転車競技もの。
それを可能にしたCGと手描きの融合。
さらに、超ヒール役の御堂筋くん。

今シリーズはインターハイを描き、ほぼ全編レース中という内容ですが、
ものすごく楽しい!

今泉と坂道の間にもののけ化した御堂筋くんのカットをカラーで紹介できたのがなによりもうれしい!

ぜひ読んでいただければ思います。

 
posted by: サンキュータツオ | 書き物 | 12:26 | comments(0) | trackbacks(0) |-
TOKYO FM『妄想科学デパート AKIBANOISE』、ありがとうございました。
TOKYO FM『妄想科学デパート AKIBANOISE』、聴いてくださった皆様、誠にありがとうございました。
25日25時からの放送をもって、番組は最終回を迎え、2年間の放送が終了しました。
 
TOKYO FMが25時台を大変革するという話ではじまった、2013年4月からの30分番組。
私は、番組の顔合わせではじめて もふくちゃん に会い、番組がスタートすることになりました。



番組公式HP
番組は、次世代のクリエイターに聴いてもらいたい、ということで、商品開発の過程を含めてそれをすべて放送しちゃおうという趣旨のもの。
もふくちゃんは、当時は「でんぱ組inc.」などのプロデューサーにして、秋葉原ディアステージを経営するモエジャパンの経営者でもあった。面白い女性ですよね。時代を象徴してます。
私は、メインパーソナリティとも、アシスタントとも、最後まで説明されたことはなかったのですが、三次元のアイドルをプロデュースするもふくちゃんと、二次元専門の私、ということで秋葉原文化をカバーするぞ、みたいな雰囲気です。

音楽を作っている人、流通している人、コンテンツを作っている人、売っている人、歌っている人、システムを組む人、書く人、本当にいろんなクリエイターのみなさんと出会えて、すっごくおもしろかったです。毎回収録に向かうのが楽しみでした。
番組で作ったCDとかも売ったりして、いろんな妄想商品を具体化していく感じです。

いくつかの改編を耐え、2年間もあの時間帯で続いた番組になったのは、まさにもふくちゃんパワーでしょう。
ラジオ局側と、ラジオ局がほしがっているアイドルの会社との結節点になっていたのが彼女だったんだと思います。
2年目以降は、そんな事情からかアイドルさんの出演が増え、毎週のようにアイドルさんをメインにお話をきく内容がほとんどでした。

個人的には、もふくちゃんは興味深い人物であるし、彼女の生の声を拾える数少ない機会だったので、NHKのNEWS WEBでは聴けないような話もたくさん聴いてきたということもあって、そういったものをオンエアできるような番組にしていきたいなあと考えたり、それらをアーカイブ化していけば、まだ番組の存在を広め、そういった話に興味のある人たちにリーチできる自信があったのですが、2年かかってもそこにいたることはできませんでした。

アイドルさんたちはもふくちゃんだけに挨拶をし、局の社長もプロデューサーも、わざわざスタジオの外にもふくちゃんだけを呼び出して挨拶する雰囲気。会議や食事会などにも一度も呼ばれたことがなければ、最終的にイベントにも声をかけられず、番組終了が決定した最後のイベントも、「この日になりましたー」という報告を受けたとき、すでに私のスケジュールは埋まっていたという次第で、リスナーのみなさんにはまったくご挨拶できず終い。正確にはどの人がプロデューサーかも自己紹介されたことがないのでわからないですが、それらしき人に2年の間で挨拶しても無視しかされないという、よくわからない局でした。
早い話が、私は現場のスタッフが挙げた人選でキャスティングされたまでなので「よく素性のわからない芸人」ということだったのでしょう、扱いにくかったんだと思いますが、それはそうだろうなと思います。私は、説明しにくい芸人なので。
むしろそういったポジションを自覚するまでに時間がかかってしまった私の未熟さだったのですが、そういった事情で、だれでもよいというようなポジションにハマったわけですが、そこはそれ、はじまりはそうでも、「タツオでなければならない」というところまでがんばってもっていこうと思って毎回収録にのぞみました。そこは、張り合いのあるところでした。

番組の現場スタッフはそんななかでもがんばっていて、柴崎Dと構成作家のエドボルさんは最後まで士気をさげず仕事していました。
もふくちゃん、柴崎D、エドボルさん、そしてリスナーのみなさん、そういった方々に会えたことはとても幸せなことでした。
そして彼らとの付き合いは今後も続いていけたらいいなと思います。
彼らは携わった番組は成長しているし、仕事も増えています。もふくちゃんも新たなアイドルのプロデュースをはじめています。私も同時期にTBSラジオではじまった『東京ポッド許可局』は昨年日比谷公会堂を埋め、この春から三年目を迎え時間帯も変わります。
そう思うに、これだけ着実にものを成長させることができる人たちが集まっているのだから「もっとやりようはあったはず」という想いはあるのですが、志半ばで終わったという感じもあるし、いや、半年とか一年で終わるはずだったけどよく続いた、とも感じます。とにかく、現場にいない人たちの間でいろいろ決まっているものが多かったようで、これは構造破綻というべきか、システム上うまくいくわけがないので、そんななかでも楽しい番組ができたのは本当に救いでした。

私のことを知っている人はわかると思うのですが、私はこういう内情のことを書いちゃう芸人なのです。
番組のシステムの話と、内容の話、出演者の話はすべて切り離して考えるべき、なのでしょうが、私はこれらは関連付けて考えないと、いいものは作れないと思います。
有名な人だけを出して、いまだアンケートでの聴取率調査を唯一のデータとしてスポンサーを募る、といういまのラジオ業界の在り方では、右肩下がりになっていくことは必至です。内容はともかく「あの人出てたな」だけが重要になるからです。
志のある局や番組は早くからこのことに気付いて、従来の方法とはちがうアプローチの仕方で番組を誠実に作っています。スポンサーの在り方も、従来の方法ではなくなるかもしれません。少なくともいまのままのラジオの聴取率の調査方法が続くのであれば、そういうことになるだろうと思います。

番組自体はポテンシャルを秘めていつつも、「次に欲しい人」への橋渡しという役目が終わったから、この番組は終わるのです。
そういった意味では健全な役目を果たしたともいえます。
ただし、いろいろなことが宙ぶらりんになっていたように思うリスナーも多かったと思います。ですが、こういったこともあるということを、批判的にではなく受け止めてほしいと思います。

私はこの局ではまだ「素性のわからない芸人」であり、「交換可能なアシスタント」みたいな存在にしかすぎませんでした。
そしてそのポジションで居続けるには、私はあまりにも自我が強すぎると改めて自覚しました。
私には時間はありません。早くそうではない存在になるために、これからも精進したいと思います。


 
posted by: サンキュータツオ | ラジオ | 11:22 | comments(0) | trackbacks(0) |-
<『DVD&ブルーレイ VISION』連載:サンキュータツオのアニメ論考 『夜ノヤッターマン』>


毎月20日発売、『DVD&ブルーレイ VISION』、
連載「サンキュータツオのアニメ論考」。



今月は『夜ノヤッターマン』!
ポッドキャスト「熱量と文字数」などでもなかなか話す機会がなかったので、ここでたっぷりと。

読んでみてくださいませ。
posted by: サンキュータツオ | 書き物 | 00:43 | comments(0) | trackbacks(0) |-
TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』&『荻上チキ SESSION-22』 出演しました!
拙著『ヘンな論文』(角川学芸出版)3月26日の発売にあわせて、
世界で一番最初にこの本の内容についてお話する機会を与えてくださったのは、
TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』です。
3月15日に出演いたしました。

安住さんは、一昨年『国語辞典の遊び方』を出版した際にお声をかけてくださり、ありがたいことにこの放送を聴いてくださったメディア関係者からも多くの反響をいただきました。
そもそもはとある番組の前説で国語辞典を十数冊か持ち込んで話していたのを司会の安住さんが前室で聴いてくださっていたのを覚えていてくださり、番組に呼んでいただいたのですが、それから日本語に関してのことでまた出演の機会を与えてくださったりもし、大変ありがたいことです。
そして、3回目の出演となった今回は一年半ぶりにスタジオにお邪魔したのですが、本当にしゃべりやすい雰囲気で、朝の番組ということもあり個人的には多少落ち着いた声でゆっくりしゃべってみたのですが、どうだったでしょうか。
気になった人が、本を読んでくださると、いいな☆


19日には、TBSラジオ『荻上チキ SESSION-22』に呼んでいただきました。
荻上さんの番組には、バスケット関係の話と、論文の話で出演したことがあります。
24時台のミッドナイトセッションの時間に、今回は、NBAの話をたっぷりとしゃべる、そしておまけで『ヘンな論文』を紹介する、という形で出演いたしました。
楽しかったァ!
今年のゴールデンステート・ウォリアーズは、これまでのバスケットの在り方、NBAという世界最高峰のバスケットリーグの、ファイナルの戦い方を根底から覆す可能性を秘めたチームで、その超攻撃的スタイルが、守備力優位の歴史のなかでどこまで通用するか、本気で見物です。

荻上さんといえば、放送中にも話題になりましたが、少し前の『SPA!』で専門紙についての対談をしました。

iPhoneImage.png

おもしろかったなァ。チキさんいちおしは、『パンニュース』でした。
目の付け所も素晴らしいし、頭の回転も速いし、あったまいい人って、気持ちいいね!すごいや。
日々呑気に生活していると、こういう人にお会いしたとき、めちゃくちゃ楽しい時間になる。
あれ、だから、日々呑気に暮らしていきましょうって結論?

この時期に出演させてもらって、本当にありがたい限りです。
さすがTBSラジオです。

引き続き『荒川強啓デイキャッチ!』、『東京ポッド許可局』をよろしくお願いします。
許可局は、4月から土曜27時に時間移動しますので、おまちがいなく。

 
posted by: サンキュータツオ | 書き物 | 01:06 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク #rakugo)3/16日 20-22時「まくら王」 レビュー 笑福亭羽光/桂宮治/瀧川鯉斗/柳亭市楽/春風亭昇々/立川志ら乃
3月16日 月 20:00〜22:00
「まくら王」
ご挨拶:立川志ら乃
笑福亭羽光
桂宮治
瀧川鯉斗
柳亭市楽
春風亭昇々
立川志ら乃-文七元結

この回のレビューは、落語系女子(らくじょ)タレントの池田裕子さんにモニターをお願いして書いてもらいました!
池田裕子さんは、シブラク設立の2014年11月から落語に目覚め、以降毎月シブラクに通ってくださっている落語系女子!
好きな落語家さんは、入船亭扇辰師匠。独演会にも行かれたそうです。
そんな裕子氏に、「まくら王」はどう映ったのか?
 
▼タツオによるプレビュー

「まくら王」、そもそもの設立の意図は、 「おもしろい人が落語をやればおもしろくなるわけだから、まずは落語の練習ではなくて、おもしろい漫談をするところから見てもらったほうがいいのではにないか」というところにありました。
どうしたって落語は、異世界の話です。演芸に触れたことがない人は、異世界というだけで壁を感じてしまうかもしれません。映画を観ない人に、いきなりファンタジーを見せて、「これはなに?」と言われるのとおなじくらい、ナンセンスなことなのですが、壁を感じてしまうのはどうしようもありません。なにも身構えなくても、なにも勉強しなくても、落語は楽しめる。想像さえしてくれたらいいのです。
では、壁を感じないためにどうすればよいのか? しゃべる人は、自分と等身大の、現代人であることを実感してもらうしかありません。おなじ世界に生きてて、何を思うのか、どう切り取るのか、自分の身の回りの話で、どれだけ共感させたり、興味をもってもらうのか。そういうのがいまの言葉で語られれば、「あ、落語家さんも、おなじ世界に生きているんだ」と思ってくれるにちがいない。
今回は5人の二つ目さんにお願いしました。1015分の漫談です。小噺もあるかもしれません。
そんな5つの「まくら」のあとに、トリの志ら乃師匠に、どれかひとつを選んでもらい、その「まくら」のあとに演じる落語を、やってもらいます。お楽しみに!


▼レビュー



5人の噺家さんがまくらだけを話すという企画「まくら王」。今回からは少し変わって、5人のまくらを受けて真打の噺家さんが落語を一席話してくれます。いつもとは違った顔が見られて、なんだか親近感が湧いてくるのでこの企画が大好きです。
 


今回のトップバッターは笑福亭羽光さん。落語まくらあるあるをお話ししてくれました。落語初心者の私でも「こういうの聞いたことある!」と共感できたのが嬉しかったです。以前のまくら王で「セックスできるかランキング」をお話しされていた姿が印象的だったのですが、今回はゲス度の低い羽光さんが見られました。



お次はそんな羽光さんよりゲスだという桂宮治さん。羽光さんにまつわるゲスエピソードを次々暴露されていたのですが、これが本当にゲスかったです。もっと聞きたかった!



瀧川鯉斗さんは、あまり事前に決めずにその場の空気でお話しをされていた印象。とっても勢いのある姿がが見ていて楽しかったです。



柳亭市楽さんは、ゲスなお話をする方々の中で正統派な爽やかさが際立っていました。爽やかですが物足りない感は全くなく、しっかり笑わせてくださいました。今回のまくら王唯一の良心。



最後はゲイ話で会場を盛り上げてくれた春風亭昇々さん。以前、昇々さんが落語の中で演じる女性を見て「あんまり女の人が好きじゃないか、身近に女の人がいないのかも?」と思っていたので、なんだか納得。最後は着物がくちゃくちゃに乱れるほどの熱を発しておられました。


 「二万でどう?」「知らないご当地アイドル」「ググる」「ゲイセンサー」などなど、5人の噺家さんの口から俗っぽい言葉がバンバン飛び出すことに驚きです。もっとお上品な言葉を使うものだと思っておりました。ましてや噺家さんが乱れた着物で座布団を抱きしめながら転げ回る姿なんて、一年前は想像もしていませんでした。落語って自由なんですね。落語界にタブーは無いのでしょうか!?
 
この自由すぎる5人の二つ目さん達のまくらを受けて登場した立川志ら乃師匠。



登場するやいなや、なんとまくらなしで一言目からいきなりの落語本編!漂う緊張感!一瞬で会場の空気が変わります。それまでの流れで「青菜」の話が出ていたので、「青菜」をやるのかな?なんて予想をしていましたが、もちろんそんな単純なものではありません。5人のまくらの中に出てきたキーワードがあちらこちらに散りばめられた「文七元結」です。




なんてサービス精神旺盛なんでしょう!こんな「文七元結」は聞いたことがありません。5人のまくらを聞いた後の短時間で仕上げられる反射神経というか、アドリブ力に感動です。噺家さんってものすごく頭の回転が早いんですね。
いつもの落語体験とは一味違った、「5人の噺家さんのまくらを聞いて笑った」という体験を、志ら乃さんと会場の皆で共有してるという楽しさがありました。これはクセになりそうな面白さです。
この先「文七元結」を聞く度に「マンゴープリン!!!」という叫び声を思い出すことでしょう。

(文・池田裕子、落語好きタレント)


タツオコメント:
この回は、「1つのマクラを選択して、それにあった落語」という見せ方なのですが、志ら乃師匠、全員のまくらを聴いて、すべてを一席のなかにブチ込むという離れ業をやってのけました。
この日だけ、この一回だけしか聴けない「文七元結」。
このご恩は一生忘れません。たぶん。

ものすごい熱気の回でした!
 
posted by: サンキュータツオ | 渋谷らくご | 15:31 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク #rakugo)3/16日 18-19時「ふたりらくご」 レビュー 柳家ろべえ/柳家喜多八
2015/3/16() 18:00-19:00 「ふたりらくご」
柳家ろべえ-お見立て
柳家喜多八-寝床


この回のモニターは、宮地昌幸さん(アニメ監督・演出)にお願いしました。
宮地監督は、「渋谷らくご」の喜多八師匠出演回は皆勤賞!
喜多八師匠だいすき男なので、お願いしました。

▼タツオによるプレビュー

喜多八師匠と、その弟子、ろべえさん。落語の世界では、こういう師弟の会を「親子会」なんて言ったりします。
ですが、一時間の「親子会」なんていうのは聞いたことがありません。「渋谷らくご」でも初の試みです。
弟子の高座を背後で聴く師匠。師匠の高座を、出番のあとに聴く弟子。お互い、なにを思うのでしょう?
ろべえさんは、前座の期間中に一度も師匠の自宅に入ったことがない、お正月も一門で集まる前にいろいろと打ち合わせが必要……なんて話を、前回してくださいましたが、あ、これは師匠に内緒に話だったかもしれません!
喜多八師匠は、先月、寒い夜に火の用心の見回りをする「二番煎じ」を演じてくださいました。二班にわかれ、先に見回りを終わったほうが、休憩中にお酒を飲んだり鍋を食べたり、という楽しい噺! 健気に生きてて、でもやなことがあって、そんななかでも楽しくする工夫や心をもっている、名前もわからない人々。茶目っ気があって、適度に不真面目で、愛らしい人々。この師匠は、そういう人たちを演じたら、右に出る人はいないのです。でも、それだけじゃありません、ホントに芸の幅の広い師匠です。生涯をかけて追いかけてくださいませ!


▼レビュー

あいにくの雨。平日月曜夕方。
なのに、古くからの落語ファンや若いお客さんまで、客席はぼちぼち埋まっている。
柳家ろべえさんの噺から。



小三治大師匠に同伴したスキー旅行のマクラで滑り出し、「全く関係ないですが郭話に続きます」と『お見立て』に入る。
ろべえさんの噺は初見の私。
贅肉のないスマートさ、トメハネの美しさで心地よい。まだ若い噺家さんなのに、高座に流れる時間を堂々と牽引してくれる。
シブヤとラクゴ。
ギャップあるこの二つの関係が、江戸のファンタジー空間を作り出す。
雨さえもはや情緒だ。
で。
柳家喜多八師匠の『寝床』。



今まで私が観た喜多八落語の中で、トップクラスの出来映え。
いつものようにやる気無くアゴを撫でながら始まるマクラ。噺が進むにつれ、グイッグイッと惹き付けられ、いつの間にか釣り上げられてしまう。ギャグや小ネタの目先の笑いに誘惑されない語り方。
人物を的確に描き分け、繊細な感情を捉える事で絶妙な滑稽さを積み重ねる。
虚構の人物間に流れる空気感さえ、こちらに匂ってくるほど。
人間の色気、喜多八落語の醍醐味。



義太夫を語りたがる旦那のテンションに合わせ、会場を包む笑いが一体となっていく。
あっという間に30分。
「面白かったぁ〜」と学生の呟きが残った。

(文・宮地昌幸、アニメ監督・演出)

喜多八師匠、シブラクでは積極的に大ネタかけてくださっているような気がします。
ホントにありがたことです。ひとりでも多くの方が、この師匠の魅力を全面的に受け入れてくださる日がくるその日まで!
たくさんの落語を聴かなければ気づけない部分も初心者にはあるのだろうけれど、可能であれば出ていただこうと思ってます。
純米大吟醸は下戸でも飲めます。
 
posted by: サンキュータツオ | 渋谷らくご | 15:18 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク #rakugo)3/15日 17-19時「渋谷らくご」 レビュー 春風亭昇々/玉川奈々福/立川こしら/春風亭一之輔
3/15 日 17:00-19:00
「渋谷らくご」
春風亭昇々ー湯屋番
玉川奈々福/沢村豊子ー金魚夢幻
立川こしらー夢の酒
春風亭一之輔ー花見の仇討ち

タツオによるプレビュー

 こしらVS一之輔。お二人の師匠の成長を見続けている人ならば、このカードに奮い立たない人はいないだろう。
 落語評論でもおなじみ広瀬和生さん主催の、二人会。恥も外聞もなく、ここではパクらせていただきました。とはいえ、その激突は後半に。広瀬さんすみません。
冒頭は、代演で急きょ出てもらうことになりました、昇々さん! 今月は、「まくら王」でまくらをしゃべるだけかな、と思っていたら、急に声をかけられて、ビックリさせてしまったにちがいない。ですが、この会のコンセプトは、「三番手まですべて色物」。めちゃくちゃ客席を楽しませてくれるエンターテイナーにお願いしました。昇々さんのパワフルな高座は、計算のうえになりたっている繊細なものでもあり、それでいて芸人的「いい加減さ」も持ち合わせているので、得難い才能だと思います。「こいつなにかやるぞ!」という目つき、みなさん注目してください。
 奈々福さんの浪曲、映画を見ているようです。浪曲というのは、30分でも濃密な物語世界、そして濃密な人間関係を見せてくれます。想像する芸能という意味では落語とおなじですが、人情に重心があるのは浪曲ならではです。だから、素敵な人でないと。その点、奈々福さんは素敵な人なのです。
 一之輔師匠、1月は、「ひとりらくご」で4席立て続けに演じて、お客さんのなかには悦びで泣いちゃう人が続出しました。不思議な感情にさせてくれる落語家さんです。落語の未来を聴いているようです。


この回のレビューは、つぐはらさとむ(25歳、会社員)さんにお願いしました。

▼レビュー


 
昇々さん
柳亭小痴楽さんの代演とのことで、登場。
最初からテンションが高くて、本当に怒っていると勘違いするくらいエネルギーにあふれていました。
ハイテンションのマクラから、ご両親のエピソードを怒涛のように連発し続け、それに合わせて客席がどんどん一体化していくのがわかりました。昇々さんのエネルギーが客席に伝播していき、ある種の興奮状態に入ったところで、湯屋番へ。
 
本編に入ってもマクラと変わらないテンションで登場人物を演じる昇々さん、
というより、若旦那としての昇々さんがそこにいました。


 
途中で、左右に首を振って登場人物演じ分けるのをやめたり、座布団から離れて半身で動き始めたりと、
昇々さんと若旦那が一体化して落語の世界から飛び出し、舞台上でただただ面白いことしているように錯覚しました。
観客の熱気と昇々さん+若旦那のエネルギーがぶつかり合い、笑いという火花になってばちばちはじけとぶ、そんな光景を真横で見ているようでした。
演者、観客、落語、3つのぶつかり合いの結果、ユーロスペースに爆笑の渦が巻き起こったのを目撃できて幸せです。
 
 

奈々福さん/沢村豊子師匠
まさに興奮冷めやらぬ中、静かに沢村豊子師匠登場。
恥ずかしながら浪曲を初めて聞くため、これからどんなことが始まるのか、ドキドキして待っていました。
そんな中、三味線の生の演奏に合わせて奈々福さん登場。
奈々福さんの
 「講談・浪曲と落語の大きな違いは「語り」があるかどうかです。ただ、それはさておき聞いてください」
というまずはジャンルに捉われずに感じてくださいね、という優しい言葉で、気が楽になりました。
 
まず、スターウォーズのオープニングさながらの荘厳な雰囲気を醸し出す語りから始まりました。
その後は、奈々福さんの語りと豊子さんの三味線とが響き合っていました。
和の響きに包まれながら、物語の世界にすーっと吸い込まれて行きました。
シンデレラやライオンキングなどのディズニーアニメーションのように、悪役までもが魅力的で愛らしかったです。
また、要所要所に散りばめられた奈々福さんのユーモアが、とても素敵でした。
 
冒頭の人間同士の会話の後、場面が人間界から金魚の世界へと移ります。
そのとき、単純に場面がパッと変わるのではなく、
カメラが水の中に潜っていくように、人間界と金魚の世界とのつながりを想像できてしまいました。
語りと三味線の響きだけで、細部まで想像させる芸の凄みを感じました。
 
ふわっと優しく包み込んで、ファンタジーの世界へ連れて行ってくれる。
そして、知らない間にそっと現実に送り返してくれる、そんな素晴らしい浪曲の時間でした。
 
昇々さんが高めた興奮と、奈々福さんが包み込んで出来上がった一体感を味わいながら、インターバルを過ごしました。
このあと、どんなことが舞台上で巻き起こるのかが待ちきれず、2分がとても長く感じました。
 


こしら師匠
インターバル後もなお残る奈々福さんの余韻を切り裂くように、軽妙なマクラで会場の空気を一気に変えたこしら師匠。
ぐっと力の入った観客をなだめるように、こしら師匠らしい軽妙なエピソードを自然体で喋り始めました。
 
こしら師匠が終始観客に喋りかけながらマクラが進んでいき、気づけば古典落語、夢の酒へ。
落語の世界を壊さず、マクラと同じように軽く自由に演ずる。
現実の世界と夢の世界の描き方も、落語のタブーを犯しているようで、そうではないように思えました。
実はちゃんと現実の世界では、現実でギリギリ起こりうることを、
夢の世界では、夢でギリギリ起こりうることを、描き分けられていました。
世界観が壊れるギリギリをせめながら話を進めていく、
サーカスの曲芸のように落語の世界を自由に飛び回るこしら師匠の
ハラハラする落語を存分に楽しませていただきました。
 
 

そして最後は一之輔師匠です。
こしら師匠が作り出した世界でいっぱいいっぱいになった頭の中を、まずはすっきりさせるところからマクラがはじまりました。
最近出会ったおかしな人たちの2つのエピソードをじっくりゆっくり丁寧にお話しされました。
おかしな人たちと一之輔師匠とのふれあいが、舞台上で今まさに行われているかのように聞こえ、笑うしかありませんでした。日常の出来事が、こうやって落語になっていくのかなぁと、落語の萌芽を見ているようでした。
 
3月なので春の話、ということで花見の仇討ちへ。
その前に、「花」という言葉が示す「花」が国によって違う、というオシャレな小話のあと、本編へ。
 


一之輔師匠の落語は、全ての人物を一之輔師匠が完璧に演じきっているように見えました。
一つのお芝居・人形劇を見ているときに感じるような、登場人物一人一人の立体感・重厚感がありました。
そして、登場人物が次から次へと困り始める姿がコミカルで、可愛らしかったです。
そんな愛らしくて面白い人々が、舞台上に現れては消え、消えては現れていく、そんなシーンの連続でした。
頭の中で想像しているのではなく、目の前に確かに登場人物が現れる、目が離せない面白さがありました。
  
終演後、舞台上に映し出された本日の演者・演目リストをスマホで撮る方がたくさんいらっしゃいました。
この日、この時、この場所に起こった感動を誰かに伝えたい、
そしてなによりこんな幸せな時間を宝物として大切に残したい、というお客様の気持ちの表れのようで、
こんな場に立ち会えて、とても嬉しくなりました。
 
落語も様々で、また落語というジャンルに縛られない、
自由でエネルギー溢れる渋谷らくごの可能性を感じた、一夜となりました。
集まったお客様、演者の皆様、そしてタツオさん・ユーロスペースのスタッフのみなさんをはじめとして、
渋谷らくごに関わった皆様に感謝の気持ちでいっぱいになり、会場を後にしました。

(文:つぐはらさとむ、25歳、会社員)

タツオコメント
この日の一之輔師匠の「花見の仇討」は、大人がふざけている感じがとっても良くって、この話は、その「ふざけている感じ」を、アクションという「激しい動き」とともに描かなければならない大変難しい噺だと気付かされたのですが、この師匠の手によると、いとも簡単に噺を「御している」感じがして、とても気持ち良かったです。
もう、このレベルにまできているのか、と驚愕しました。

 
posted by: サンキュータツオ | 渋谷らくご | 15:07 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク #rakugo)3/15日 14-16時「渋谷らくご」 レビュー 古今亭菊志ん/昔昔亭A太郎/立川吉笑/橘家圓太郎
3/15 日 14:00-16:00
「渋谷らくご」
古今亭菊志んー野ざらし
昔昔亭A太郎ー面会
立川吉笑ー道灌
橘家圓太郎ー棒鱈


タツオによるプレビュー

 この回も、菊志ん(真打)→A太郎(二つ目)→吉笑(二つ目)→圓太郎(真打)。
 菊志ん師匠には失礼なお願いかもしれませんが、「渋谷らくご」は最初が一番大切なのです。初めて来るお客さんも安心できて、落語通も前のめりになって、後ろに出てくる人たちにプレッシャーを与えられるのは、たしかな力をもった人だけ! そういう意味では菊志ん師匠の、メリハリのハッキリした落語は私はとてもすきです。落語に対して誠実です。小手先で笑わそうとはしません。「落語」を信頼して最初からぶつかってきてくれるのです。そこが気持ちいいです。
 A太郎さん、吉笑さんは、二つ目ながら、いろんな可能性と才能に恵まれた落語家さんです。先月は「しゃべっちゃいなよ」という創作落語ネタおろしの会に出ていただき、相当なエネルギーを「渋谷らくご」に投下してもらっちゃいましたが、今月もがんばってもらいます。どちらも、聴いたことのないような芸風で攻めてくるので、とっても楽しみです。A太郎さんの師匠の、桃太郎師匠という方は、日本一くだらないことを言ってくれる落語家さんです。なんなら躊躇せず想像を下回ってくるダジャレなどもいいます。その底抜けのくださらなさの遺伝子を、A太郎さんは引き継いでいます。あと、ちょっと病的なところも。
 最後は圓太郎師匠。先月の「化物使い」の余韻が、いまださめません。全面的な信頼をもって、トリをお任せしています。お楽しみに。



この回のモニターは、つぐはらさとむさん(25歳、会社員)にお願いしました。

▼レビュー

 
菊志ん師匠
 
会場の様子を伺いながらの登場。
まず、真打でありながら1番手を務めることの特別さを、
可愛く冗談っぽくお客さんに伝え、すぐにお客さんの心を掴みました。
さすが、だなぁと思いました。
そして、4人の演者が出てくる落語会の楽しみ方を、野球に例えながら丁寧に説明されていました。
開始してほんの5分ほどの間に、渋谷らくごの楽しみ方をお客さんに伝える手際の良さが、見事でした。
そして、ご自身が高座にかけるネタをどのように選ぶのか、についての興味深い裏話の流れから、自然に野ざらしへ。
登場人物も菊志ん師匠も楽しそうで、それを見て楽しくなってしまう、そんなとっても楽しい落語でした。
菊志ん師匠はずっと座布団の上に座っているのに、楽しくてぴょんぴょん飛び跳ねているような、登場人物が楽しく躍動する落語でした。
 
マクラで、落語会ってこうやって楽しんでくださいね、と伝え、
本編で、落語って見ていて楽しいでしょう、と伝え、きっかり30分。
1番手として登場し、次に出てくる演者がやりやすいように最初に客席を温めるという大事な仕事、
そして、普段の寄席では前座さんでしか見ることができない仕事を、
菊志ん師匠がやったらこんな風になるんだ、という、渋谷らくごでしか味わえない体験でした。
 

 
A太郎さん
舞台に現れてから消えるまで片時も目を離せない、離させない方でした。
登場から座布団の上に座るまで、この数秒で何個も笑いをとる抜け目のない方。
それでいて、何事もなかったように真面目な顔をして、真面目なトーンで喋り始める。
観客から見ると面白いことでも、本人にとってはいたって普通のことで、
それをみんなで面白がっているという雰囲気でした。
 
真面目な顔に真面目なトーンで喋られるので、説得力がありました。
その分、話す言葉一つ一つに重みがあり、
おかしな言葉をまともに受け取って考えてしまうので、頭の中におかしな世界が重みを持ってできあがりました。
何が本当で何が嘘か、なんてことを感じさせない誠実な喋り方で、
言葉一つ一つの面白みを噛みしめさせてくれる、A太郎さんの催眠術にかかっていました。
 
また、落語の楽しみの一つである師弟関係の話も面白く、
この人の師匠である、桃太郎師匠を見てみたい、と多くのお客さんが思ったはずです。
面白い人を見つけたら、その師匠も見たくなってしまう、落語界ならではの奥行きを感じました。
 
そして、本編の「面会」へ。
緊張感のあるシュチエーションで、
正常な人と、どこかおかしな人との会話が繰り広げられていました。
おかしな会話が積み重なってできた世界は面白い世界でした。
知らない間に、頭の中がA太郎さんに支配されてしまいました。
また、メガネの使い方や手の仕草が斬新で、想像するだけでなく目の前で見て面白い落語でした。
 
インターバル挟んで、客席の熱は上がったまま、吉笑さんが登場。
 

吉笑さん
いつもの渋谷らくごと違って、今回はマクラを短めにさっと話に入られました。
吉笑さんは新作のイメージがありましたが、今回は古典落語「道灌」
新作を作れる人が古典をやったらこんなに新しくなるんだ、というような落語でした。
そもそも、新作・古典というのは、テキストに限定した話であって、
吉笑さんがやるとすべてが新しくなるんだなぁと思いました。
 
それは、現代の人が道灌に登場して、現代の言葉で考えて生きているので、
登場人物が話す言葉が古典のままの言葉でも、現代の言葉として発せられているので、
一つ一つのセリフが新しく感じ、とても面白かったです。
 
話のポイントとなる「屏風の絵の意味」についての問答も面白かったです。
吉笑さんならでは面白がり方が道灌にぴったりで、古典の世界でもひたすら創作活動を続け、伝承と創造の両立に取り組まれているんだなぁと思いました。
また、新作より古典の方が吉笑さんの思考や創作の軌跡がはっきり見られるので、古典もたくさん見たいと思いました。
新作も古典も関係なく、落語の面白さを活性化させる吉笑さん、さすがでした。



 
そして最後は圓太郎師匠です。
パソコンの液晶が壊れてイライラしたというマクラを話し、
イライラしている顔のまま、酔っ払ってくだをまく登場人物にパッと切り替える編集の妙。かっこよかったです。
あのマクラで機嫌が悪かったのは、この話に入るためなのか、それとも菊志ん師匠がおっしゃっていた、自分の気分に合わせてその日やるネタを決めたということなのか、見終わった後にいろいろ考えさせられてしまう、そんなマクラでした。
 
本編の棒鱈の登場人物は本来かっこ悪いはずなのに、どこか品を感じる落語でした。
兄貴の叱りや女中さんのいなし方、田舎侍の覇気、江戸っ子のハッタリ、
それら全て直接的に語るのではなく、背中で語るように演じる圓太郎師匠の話芸が成せる品なのかもしれません。
また、酔っ払いの友を叱る兄貴に、圓太郎師匠が持つ優しさや厳しさを感じました。
粋でいなせな人はこの人ですって、学校で教わったわけではありませんが、そんな人を感じた落語でした。
 
今回の「渋谷らくご」では、
落語や落語会の楽しみ方、師弟関係の面白さ、新作・古典関係ない落語の新しい風、そして江戸の薫り漂う落語。
落語の世界の端から端まで、いいところかき集めて2時間にぎゅっとまとめた、非常に贅沢な会でした。

(つぐはらさとむ、25歳、会社員)

タツオコメント:
この回では、吉笑さんの高座の途中に、照明がひとつ消えるというハプニングがあったようです。
吉笑さん、本当にすみません!
 
posted by: サンキュータツオ | 渋谷らくご | 14:59 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク #rakugo)3/14土 14-16時「渋谷らくご」 レビュー 立川志の春/玉川太福/雷門小助六/橘家文左衛門
3月14日 土 14:00-16:00
「渋谷らくご」
立川志の春-金明竹
玉川太福/玉川みね子-大浦兼武
雷門小助六-お見立て
橘家文左衛門-猫の災難

 ◎トーク「落語体験」:三浦しをん(作家)

▼タツオによるプレビュー

 だれが聴いても楽しめる落語をしてくれる志の春さんは、すでに売れっ子の二つ目さん。談志師匠は志の輔師匠を評して「立川流の最高傑作」と言いましたが、志の春さんはそんな志の輔師匠の最高傑作になるのかもしれません。創作、古典、自在にあやつり会場のお客さんをひとつにしてくれる、「渋谷らくご」の大事なポジション、一番手をお任せしています。
 太福さんは浪曲。みなさん、いきなりこの人が歌いだしても驚かないでね。浪曲は、曲師さんとの二人一組のアドリブ芸。信じられないかもしれませんが、合いの手によってどんどん演者さんが乗っていくさまは、気持ちいい「餅つき」を見ているかのよう。臼に水を入れる合いの手があるからこそ、気持ちよくモチをつけるのとおなんじ。また太福さんが「うなる」顔が、いい! 楽しそうで気持ちよさそうで、聞く人みんなを幸せにしてくれます。
 小助六師匠の怪しい感じもたまりません。高座は非常に重厚でありながら明るいですが、芸に厳しい目をしていらっしゃいます。前回の出演時はちょっとした怪談噺をしてくださいました。今回はなにをやってくださるのか、楽しみです!
 そして最後は文左衛門師匠。いかつい師匠ですが、この人の落語を聴いていると、かわいく見えてくるのです。それがこの落語家さんの腕なのです。安心して、手のひらの上で踊ってみましょう! いろんな「骨太な個性の回」です。
 ゲストには、作家の三浦しをんさんをお呼びしました。いろんなジャンルに造詣の深い先生に、落語はどう映るのでしょうか、楽しみです!


▼タツオによるレビュー

開演前トーク サンキュータツオ、三浦しをん
作家の目に落語はどううつるだろうか。
聴けば、白鳥師匠とか、喬太郎師匠とか、実際に聞きに行った人ではないと出てこないような名前をご存じでした。
何回か、生の落語には触れたのだそう。


立川志の春「金明竹」

安定感のある志の春さん。金明竹。役割を理解しての、確実な噺。そりゃあうまいさ!
でも、力のある二つ目さんをトップに出しているのは、置きにいってください、という意味じゃない。
ご機嫌はそんなにうかがわなくてもいいのにな、と思いつつ、それでも確実にウケるネタをやってくださったことに感謝。
忙しいなか、ありがとうございます!



玉川太福「大浦兼武」
太福さん。古典と新作どっちかな、と思っていたのだけれど、この方の浪曲は結局のところ「太福浪曲」。
人が人を語るとき、その人が出る。それとおなじで、人物のどこを伝えたいのか、太福さんの人柄がでる。
おもしろいエピソードを誠実に伝える、その雰囲気のやわらかさ。決してバカにしない、だけれどもコミカルに描く、四角四面な純朴な人物。
太福さんの高座は人をほぐす。あたたかい気持ちにさせる。うなる姿もかわいらしい。芸人がもつべき華を、持っているように思う。
もしかしたらご本人、いままで暗いとか、ムスッとしているとか、言われてきているかもしれないが、芸人としての華はもっている。いいよねえ、太福さん!



雷門小助六「お見立て」
小助六師匠は、郭話で「お見立て」。
しつこい爺に会いたくない花魁は、「病気だといえ」と使いのものに伝える。
「病気なら見舞いさせろ」と言われたと伝えると、花魁は「死んだといえ」と言う。
「死んだなら墓参りするぞ」と言われたと伝えると、花魁は「じゃ、墓参り行ってらっしゃい」と言う。
田舎者の大尽と花魁の間で、お互いの無理な伝言をすることになってしまった小間使いの悲哀。
名人たちが挑み、いたるところに膨らませる部分があるけれど、小助六版はこの「悲哀」に焦点をあてあっさりと演じていた。



橘家文左衛門「猫の災難」

出ました文左衛門師匠「猫の災難」。
はやい話が、「酒好きが、目の前にある飲んじゃいけないお酒を、我慢しきれなくなって飲んじゃう話」。それを猫のせいにするという。
噺の中身がほぼないぶん、「いかに酒が好きか」を、酒を好きとか絶叫するわけでもなく、独白としぐさだけで伝えていく、非常に難しい噺だが、お客さん的にはとってもわかりやすくて見やすい噺。
もー、文左衛門師匠の芸がいかんなく発揮された一席でしょう!
少し口をつけ、最初はそれだけで済ませるつもりが、もう一口、一杯、もう一杯、と後を引く。エスカレートしていくごとに、しっかり言い訳のロジックを考えていく。次第に呂律がまわらなくなる。
もうこのプロレスがおかしすぎてたまらん!
場内大爆笑。文左衛門師匠、すげえ!

終演後にも、三浦しをん先生が、すべての演者さんの素敵なところを絶賛。
初の浪曲、そして「酒を飲みたくなった」という文左衛門師匠の高座。

この日も四者四様、個性の光る高座が繰り広げられました。
演者のみなさん、ありがとうございます!

お客様もご来場ありがとう。

(文・サンキュータツオ)


 
posted by: サンキュータツオ | 渋谷らくご | 16:34 | comments(0) | trackbacks(0) |-
「渋谷らくご」(#シブラク #rakugo)3/13金 20-22時「渋谷らくご」 レビュー 柳家わさび/三遊亭歌太郎/神田松之丞/春風亭正太郎

3/13 金 20:00-22:00
「渋谷らくご」

柳家わさびー純情日記横浜編
三遊亭歌太郎ー厩火事
神田松之丞ーボロ忠売り出し
春風亭正太郎ー愛宕山

この回は、定期モニターをお願いしている、23歳の大学院生、重藤暁さんにレポートをお願いしました。

タツオによるプレビュー

 「二つ目さんだけの回」です。二つ目さん、といっても、力がないと誤解しないでくださいね、この人たちは二つ目にしてすでに輝きを放っている落語界の宝です。
 わさびさん、折り目正しくて、端正で、真面目でいい!
 歌太郎さん、ちょっと腹黒いところなんかも魅力!
 松之丞さん、元気のいいおじいちゃん!
 正太郎さん、明るくて気取ってなくてわかりやすい!
 待ってください、松之丞さんを「おじいちゃん」って言ってしまいましたが、これにはわけがあります。だって、普通に生きてて、講談って触れませんよね? どうやったら講談触れて、講釈師になろうと、いまの若者が思うのでしょう? しかもです、松之丞さんはどこかで長く働いてて、脱サラしてどうしても長年の夢だった講釈師になろうとしたとか、そういうわけじゃないんです。二十代前半にして講釈師になったのです。おじいちゃんですよ! こんな若年寄いません。オタクなら、もっと自分にうっとりしそうですが、この人はそんなことありません。講談界を背負ってます。だから、元気のいいおじいちゃんなんです。おじいちゃんが、「もし今のワシの脳みそのまま、若い肉体に戻れたら……」と、不毛な妄想をしたとしたら、きっとこういう人が生まれるんでしょう。松之丞さんはそういう、ファンタジーだとしか思えません。感覚やスピード感は、「今の人」なのに、テクニックは「老獪」。


◆レビュー

いま私は、とても充実した気持ちで、幸せな満腹感です。とても満たされています。それは今回の「渋谷らくご」は時間的にもたっぷり聴く事ができたからということはもちろんあると思いますが、それ以上に、「二つ目さんだけの回」だからこそ、出演者の方々の迫力や気概を存分に感じられたからです。大熱演で大満足の回でした!



まずはトップバッターのわさびさん。ニコニコしながらの登場でした。その笑みがとってもキュート。始まって間もないのに会場の空気は明るくなり、「落語が始まるぞー!わーい!」という一体感からスタートしました。枕では、この一体感がどんどん強くなっていき、わさびさんの体験談が心地よく受け入れられる空気に会場はなりました。特にマクドナルドでのエピソードが最高。このエピソード自体がとっても面白いのですが、わさびさんのキュートな語り口が作用してか、私たちもその場に居たかのような錯覚になり、爆笑を呼ぶドキュメンタリーになっていました。とっても良い空気から、新作落語の「純情日記横浜編」がスタート。

わさびさんの目線がとても細かく、登場人物の心の機微が手に取るように伝わってきます。わさびさんの体型も細身であり、その体型が登場人物のキャラクターの印象にぴったりで、爽やかなんだけど、どこか内気で、でも強引なところもあって、そんな落語の登場人物に客席は感情移入してしまったと思います!

落語の登場人物の恋の成就を、会場のみんなで応援している。オチを聴いて「あー」といったため息が聴こえたのは、落語の登場人物を本気で応援してしまったお客さんの心からの嘆声だったんだろうなぁと思います。ダメ男がすごく可愛くて、とても楽しかったです!



次の歌太郎さん。枕では、大先輩の落語家さんのおかみさんをしくじりそうなったエピソードを披露。普段の落語界の様子が垣間見えるようなエピソードが抜群に面白くて、落語がはじめての方には、絶好の落語業界プレゼンテーションだったのではないかなぁと思います。
「厩火事」は大きな声と確かな口調でくっきり演じ分ける演出。落語初心者の方にも聴きやすく、笑いどころがわかりやすかった落語でした!
特記すべきは、お崎さんが亭主の本心を知りたくて最後大事なお皿を壊すクライマックスシーン。歌太郎さんのはっきりとした口調が抜群に効いていたのではないでしょうか。亭主の声が徐々に大きくなっていくことで、描かれていないお崎さんが、意を決してお皿を壊す様子が目に浮かびます。その声が小さくなって優しくなったとき、亭主のお崎さんへの愛と心の声が入り交じった本音を聴く事ができたと思えてしまいました。しっかりとした落語が聴けたという心地よさがありました。


2分のインターバルを挟んで、松之丞さん登場。とても堂々たるものでした。



説明不要の圧巻・圧倒・ど迫力の高座。ジェットコースターに乗っているようなスピード感で、客席の熱がどんどん上がっていきます。刀を抜こうとする殺気立ったヤクザ者も、煙草盆が壁に投げつけられ、割れて灰がふわぁっと賭場に舞う様子も、松之丞さんの語りにかかれば、観客の目に確かに映ってくる不思議さ!
任侠映画を見ているような、それ以上の緊張感と緊迫感が充分に味わいました!
もちろん毎度同じく大爆笑の連続です。「果敢だねぇ〜」というフレーズ、今日聴いた人はたぶんいま思い出しても吹き出してしまうでしょう。講談ならではの、抜群のフレーズ力がお客さんにビタッとハマって爆笑をかっさらっていました。

古い時代の様子だからわからない言葉もチラホラと出てきましたが、そのわからない言葉につっかかる暇もなく、そのまま受け入れられる事ができる松之丞さんの語り口のすごさをあたらめて実感しました!ほんとすごかったです!圧巻でした!


そして最後に正太郎さん。松之丞さんが最高にあげた客席の熱を自分のものにする見事さがありました。ぽろぽろと枕を語って「愛宕山」がスタート。



いままで気づかなかったのですが、愛宕山を幇間・太鼓持ちが登っていく様子がこの噺の面白いところだったと今回の正太郎さんの落語を聴いて感じました!大発見です!
この山登りのシーンを丁寧に描く事で、このシーンでも笑いが起こるし、山の高さにリアリティが生まれて、山の上から一望する京都の街の様子が目に浮かぶ。谷底を見下ろす時に「すごい高さがあるんだなぁ」とお客さんも足がすくんだと思います。山の高さにリアリティが生まれちゃえば、谷底へ落ちていく様子と、なんとか戻ってくる様子が、ほんとに面白いこと!最高でした!
谷底から上がってくる時に使われいたオノマトペ、もういま思い出してもニヤニヤしてしまいます!
そういえば竹がしなって緊張が生まれて、しゅるしゅるっと元に戻る様子、これドキドキするくらい見えましたよね!
「愛宕山」がこんなに新しく感じられた最高の一席でした。



気づいたら終演になっていて、時計をみると時間もたっぷり。落語初心者も落語ご通家も大満足できる四者四様の盛りだくさん「渋谷らくご」でした。

(文・重藤暁 しげふじぎょう 23歳 大学院生)

posted by: サンキュータツオ | 渋谷らくご | 12:28 | comments(0) | trackbacks(0) |-