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【『成金本』東京かわら版出版 寄稿】2016.12.31 Saturday
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東京かわら版から出ました、
『成金本』
に寄稿しました。
「成金」とは、落語芸術協会という団体の若手のユニットで、
現在二つ目の人たち11人のメンバーで構成されています。
で、毎週金曜日に定期公演をしていたり、
人気が出てくると「成金」を売り興行にしたりと、
「グループで動けることのメリット」
を最大限に活かしているグループで、
現在の若手の勢いと、若いお客さんの増殖にまちがいなく一役かっている、
業界では知らぬものはいない存在です。
二つ目のユニットが、書籍を出すこと自体異例なことなのですが、
それを、落語会唯一の専門情報誌「東京かわら版」が出したことは歴史的な意味があります。
今回、このお話を受けたときに、担当になったのが、東京かわら版の田村さんでした。
田村さんは、実は『笑芸人』という雑誌の編集をずっとなさっていて、
私は22歳くらいのときからお世話になっていた方でした。
笑芸人は、米粒写経で漫才をしはじめたときに、東京の漫才師ベスト50に入れてくださった記念すべき雑誌でもあり、
また高田文夫先生の責任編集ということもあり、演芸係数の高い雑誌でした。
ライターとしてもちょくちょく参加させていただいていたり、いまだに背筋が伸びるものです。
今回、8ページを頂戴して「成金」の社会的存在意義と、
メンバーそれぞれに個人的に思っていることなどを生意気にもしゃべらせてもらったわけですが、
このインタビューをうけて文字化してくれたのが田村さんだったのです。
田村さん、相変わらずの演芸バカみたいな感じで、情熱があって、私は尊敬をあらたにしたのでした。
出来上がった本を読み、「ああ、田村さんが作った本だなあ……」とじんわり実感できるほどの、
文字の密度の濃さ、行間の狭さ、フォントの圧、
なんかものすごく感動しました。
しかもこの本に載っているのは、渋谷らくごを盛り上げてくださっている気鋭の二つ目たち!
自分がこの時代に生きた役目を果たせたなと思える一冊でした。
成金の皆さん、田村さん、本当にありがとうございます。
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【『新潮45』1月号 寄稿 「落語ブーム」と呼んでくれるな】2016.12.31 Saturday
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現在の落語をとりあげるメディアの状況も含めて、4ページにわたって寄稿しております。
落語ブームっていうけど、もう何年も前から落語会はたくさんあるしお客さんもたくさんいた。
「ブーム」ってことにすればみんな損しないからそういうことにしている風潮あるけど、
業界を支え続けてきた人たちがたくさんいるし、演者さんもずっとがんばっているわけで、
その人たちに還元する形でなければいけないと思うの。
想いのたけをぶちこみました。神田松之丞さん、瀧川鯉八さん、立川吉笑さんなどを紹介しました。
落語を扱った雑誌が今年後半から立て続けに出ていますが、
雑誌が落語を料理しはじめたということは、
ブームが沈静化することのはじまりだと思います。
雑誌で特集が組まれるというのは、もっとも遅い時代の流れに乗った、ということなので。
落語はまた次のステージにあがるのかもしれません。
この記事と、早稲田大学演劇博物館の「落語とメディア」展の図録を買っていただければ、
現在の落語に対する、渋谷らくごキュレーターとしての立場はたっぷり表明しているので、
ご理解いただけるかと思います。
新潮45の記者さん、私なんかに4Pもくださってありがとうございます。
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【『声優ラジオの時間』 対談掲載 中村繪里子さんと】2016.12.31 Saturday
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にて、
声優の中村繪里子さんと対談した様子が掲載されています。
もちろん声優としての実力はいわずもがな、なんですが、この中村繪里子さんという方は、
個人的に、「文化」の匂いがする人なんですよね。
以前、ニコニコ生放送の仕事でご一緒したときに、自分の言葉を持っている人だなという印象だったんですが、
彼女もそのことを覚えていてくださり、
その後「声優落語天狗連」などのイベントを観に来たりしていて、
ニッポン放送の吉田アナとかにもばっちりハマっているわけです。
よくよく聞いたらものすごいラジオリスナーで、デイキャッチとかまで聴いている!
おなじ人種じゃないか。
これを言うと多くの人に反感をかうことを覚悟でいいますが、
声優さんに対する私の不満は、「文化」を知らないことです。
そして自分の「言葉」を持たないことです。
たしかに、めちゃくちゃ忙しい職業であることは重々承知しているのですが、
せめて移動中ラジオを聴いたり、週刊文春を読んだり、文庫本の一冊でも読んでほしいのです。
というのは、社会的影響力がめちゃくちゃある人たちだからです。
この人たちが、本気で「文化」に興味をもち、発信してくれたら、こんなに素敵なことはないんです。
マンガやアニメ以外のことにも、ちゃんとアンテナを張ってほしいし、好奇心をもってもらえたら最高だなって。
またそれを伝える言葉を、台本なしでちゃんと紡げるかということ。
こんなことを、若手の芸人とかには言わないし、アイドルには言いません。
声優さんだから言うんです。すごい職業だから。声優というのは、おそらく日本で最高のエンタメ人だと思うので。
ある種、ジャニーズなどに匹敵する影響力をもったジャンルなのです。
こういう想いのなか、中村さんに出会えたことは非常に有意義なことでした。
彼女は、上記の条件をすべてあわせもった声優さんでした。
ものすごくたくさんしゃべりました。
写真入りで11ページも掲載してくださった編集部には感謝です。
この記事のなかに、私がラジオについて考えていることのすべてが詰まっています。
普段はなかなかしゃべる機会がないのでしゃべれないけれど、ずっと思っていたことをかなりぶちまけています。
ラジオリスナー全員に読んでほしい。
中村繪里子さん、ありがとうございます。
ちなみに、中村さんはとっても頼もしい奥さんになると思います。
いいねこういう人を嫁にもてる人は。
「俺の嫁だ!」って自己申告している人はたくさんいるんだろうけども。なみの覚悟じゃこういう人に対峙できませんよ。
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【『このBLがやばい!2017年度版』選者で参加しました】2016.12.31 Saturday
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今年も選者で参加しました。
とにかくBLに関しては、年々アブノーマルな扉を開き続けているような気がします。
私の年間トップ5は、ぜひ本書で確認してみてください。
全体の順位にほぼ文句なし!
それにしても毎年、ほんとにっすごい才能が開花するジャンルだ。
おげれつたなか先生、はらだ先生、
個人的にはこのお二人なくして2016年語れぬくらい幸せにしてもらいました。
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【早稲田大学演劇博物館「落語とメディア」展 図録 寄稿】2016.12.09 Friday
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早稲田大学演劇博物館で、
「落語とメディア」展
が開催されています。
2017年の1月中旬までやっています。
素晴らしい展示なのでぜひ見に行っていただきたいです。
こちらはその展示の図録です。
この1年で読んだどの落語特集の雑誌よりも内容が充実し、
また「いま」を切り取ろうとした努力がにじむ、最高の一冊です。
喬太郎師匠のインタビューや、SPレコード収集でおなじみの岡田則夫さんの寄稿なども歴史的な価値もあれば、
落語会主催者でもある加藤さんのインタビューなども掲載されていて、通時的に落語を考える非常に有意義な読み物です。
今後の落語に関する書籍は、かならずこの図録を参考図書にあげるべきです。
画像がさかさになっちゃってるんですけど、面倒くさいからこのまま。
私は「渋谷らくご」のこの2年の動きを、リアルタイムで報告するドキュメントにしました。
なにを狙って、どういう手法で落語会を継続しているのか、
手の内をすべて明かした8000字。
予定の文字数の4倍になってしまったのですが、
嫌な顔ひとつせず掲載に踏み切ってくださった、
宮信明先生に、敬意を表します。
宮先生、ありがとうございます。
演博に務めるのが夢でしたが、このような形で関われたことをうれしく思います。
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【サンキュータツオ著『国語辞典の遊び方』 文庫 発売されました! あとがき:三浦しをん先生】2016.12.09 Friday
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2013年に発売した拙著『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方』が、
このたびめでたく文庫化されました!
角川文庫に自分の書いたものが入るなんて!
しかも、三浦しをんさんの「あとがき」付きですよ!
うれしい!
思えば、『舟を編む』がヒットしてくれていなければ、出版されていなかったであろうこの本。
TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」でしゃべらせてもらったことがキッカケで、それを角川学芸出版の方が聴いていてくださり、書籍化したわけです。
この秋、『舟を編む』がアニメ化されると、ノイタミナのナインナップ発表会で知り、
「春よりも、アニメ化のタイミングで文庫化したい」とお願いしたら、それをかなえてくれました。
いまはなき、角川学芸出版というレーベルですが、KAODKAWAの白井奈津子さん、麻田江里子さん、本当にありがとうございます。
というか、三浦しをん先生には足向けて寝られねえっす!
今年は『昭和元禄落語心中』と『舟を編む』がアニメ化されるという、落語と国語辞典とアニメを愛するサンキュータツオのための年みたいなところがありまして、雲田はるこ先生と三浦しをん先生に、食わしてもらった的なところのある私ですが、このお二人の情熱に報いるためにも、業界のためのコツコツと仕事をしていきたいと思います。
国語辞典、マジで楽しい本です。
一冊だけではなく、二冊は持ちましょう、ということで日本全国いろんなところでお話してきましたが、
日本人の国語教育という面からも、外国人の日本語教育という面からも、学校指定で一種類を全員が持つ、というのはあまりにもったいないです。
どこかでお話する機会をいただければ、日本全国うかがいます。
オフィス北野 伊従(いより)までご連絡いただければスケジュール調整いたします。
そういえば、この2017年の2月1日から3月1日まで、毎週水曜日の夜に
早稲田大学エクステンションセンターで「国語辞典を読む」という講座を開きます。
(上記クリックしていただければ、シラバスが読めます)
12月16日には、早稲田大学の全額共通科目「日本の言葉と文学(応用)」という授業でゲスト講師として国語辞典のお話をします。
12/16(金) 16:30〜18:00@早稲田大学14号館102教室
早稲田大学「日本の言葉と文学(応用)」水藤新子先生水藤先生は中村ゼミの大先輩です。
私のお姉ちゃんのような方ですね。
一般の方でも聴講できますし、出席もとらない全学共通科目なので、お時間作って来てみてくださいね。
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【雑誌『My Girl』インタビュー掲載 #netsumoji】2016.12.09 Friday
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女性声優さんを特集する雑誌『My Girl』(KADOKAWA)。
攻めてるよねKADOKAWA。
表紙、花澤香菜さん。
裏表紙、南條愛乃さん。
ちょっと待って、どっちも好きだぞ。
で、こんなたっとい生き物しか特集しない雑誌になぜ?と思われるかもしれないリスクを追って謎インタビューに応える。
自分の前のページが、ニッポン放送の吉田さんだったので、あ、なるほど、という感じ。
いいなあ、これ毎年恒例にしてほしいなあ。それだったら語ること考えるわー。
なんか偉そうにいっちょ前に語ってる感じですけど、なんかこの日髪の毛がきもくなってました。
全体的にきもい感じで良かったです。
読み終わって気付いたんですが、上坂すみれさんのことを語るのを忘れていた!
私は、上坂すみれさんが好きです。彼女のことはなにがあっても応援し続けたいと思ってます。
読み応えもあって、グラビアなども充実している雑誌なのでぜひオタのみんなは買ってね!最優先事項よ?(このネタふるい)
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【『悲劇喜劇』対談掲載:「未来のための落語論、演劇論」 九龍ジョーさんと #シブラク】2016.12.09 Friday
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現在発売中の、
特集「落語と演劇」
に九龍ジョーさんとの対談が7Pちかく掲載されています。
九龍ジョーさんは、立川吉笑さんの『現在落語論』などの編集者でもあり、
日本の古典や演劇文化に非常に精通していらっしゃる方です。
「古典はZIPファイル」という発想を私にタイ料理屋で教えてくれた人です。
この雑誌で落語の特集が組まれるのははじめてのことだそうです。
いまはどこの雑誌もこぞって落語特集ですが、
演劇との接点をさぐるあたりはこの雑誌のオリジナリティですね。
豪華な執筆陣です。
喬太郎師匠の落語の文字資料がこれだけ大量に出るというのも歴史的価値の高い一冊です。
編集顧問の矢野誠一さんは、『三遊亭圓朝の明治』で、永井啓夫さんの圓朝観や、藤浦敦さんの圓朝像よりも、かなり現実に肉迫した圓朝観・圓朝像を示した方です。
というか、落語界隈では知らない人がいない、というほどの大家ですので恐れ多いのですけれども。
楽しい対談でした。
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【『栄養と料理』連載:1月号「鯛」 サンキュータツオの そのコトバ、国語辞典に聞いてみよっ】2016.12.08 Thursday
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毎月連載の『栄養と料理』、
「サンキュータツオの そのコトバ、国語辞典に聞いてみよっ」
今月は1月号、年末年始に読んでくださる方が多いと思うので、「鯛」!
各国語辞典で「鯛」をどう解説しているか、読み比べしました。
ハナダイさんのイラストがかわいい。
12月9日発売です。
よろしくどうぞ。
主婦の方が読んでいてくれたりしたら、うれしいなあ。
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【渋谷らくご短観 2016年11月】2016.12.03 Saturday
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2014年11月、突如としてはじまった「渋谷らくご」は4日間開催でした。
というのも、10月に呼び出されて「来月からやってください」と言われたので、さすがに無理だから12月とか、キリのいいとこ2015年からはじめましょうよ、と提案してみたものの、それでもどうしても、ということだったので、いそいで会のコンセプトを決め、公演の時間帯や空間の演出を決め、出ていただける演者さんにお声がけし、自分のスケジュールもやりくりして、なんとかやってみたわけです。なかば強制的に。
会の立ち上げは入念にしないと痛い目にあう、というのは長年の経験からわかっていたので、これはいきなりつまづく羽目になると覚悟をしていたのですが、つまづくどころではない大けがで、ひたすらに演者さんに申し訳ないですと謝り続けた2年前。
11月はプレ公演ということにして、12月からが本番だと思ったんだけど、それでもうまく回るはずもなく、これはまずいことになるぞと胃を痛めまくって現在に至ります。
そんな「渋谷らくご」も気づけば2年。11月は特別な月と位置付けて、いつもより一日多い、6日間12公演。
メインは二つ目の瀧川鯉八さん。
6日間すべて出演していただくという、「鯉八まつり」にしてみました。
お客さんが入りすぎないようにコントロールしつつ、でも入らなかったら最悪なので、小屋や私を信用してくれるような人をどれだけ増やすかって話なのだが、注目度が高まっているのなら、強いメッセージを発信したいなと思って、こういう興行にしてみたのです。
とにかく渋谷らくごに行ってみよう、と、どこかで情報を入手して興味を持ってくれた人に、とにかく鯉八さんを見せる、
という非常にシンプルな導線をひいてみたのです。
これに関しては、なんで鯉八ばっかりなんだと、もちろん演者さんのなかにも、お客さんのなかにも思う人はいるかもしれないのですが、昨年末、おもしろい二つ目賞(渋谷らくご大賞)に選んだからには、多くの人に届けるまでを劇場の仕事にしないと、変な色をつけてしまいかねないので、責任が取れないなと思ったわけです。
とはいえ鯉八さんも、この一年で少しずつではありますが仕事が増えてきたようで(渋谷らくごなんかでプッシュされているから、うちはいいや、と言う人がいるものなのです)、そこまで強烈な色をつけないで済んだかなと、安心しています。
ですが、鯉八さんの才能は、落語会に足を運んでいる人はもちろんですが、落語を聴いたことない、普段映画やお笑いやお芝居を見ている人にこそ知ってほしいので、それくらい惚れ込んだ才能に対する責任としても、こういう興行がベストだなと思い至ったわけです。
6日間、鯉八さんは走り切りました。
いままでないくらいのストレスを与えてしまったようでしたが、鯉八さんなりに自分の課題と成果を見つめてくれたみたいでした。
足りない部分とできている部分を確認できる、おなじ若手の芸人として、そういう場があれば決して損ではないはずなので、なにかを持ち帰ってくれたと思っています。
ネタはすべての高座において、安定したパフォーマンスでした。最高でした。どのネタも大好きなものでした。
で、鯉八さん、あるいは「渋谷らくご」を聴きにきて、お気に入りの二つ目さんができた、という人に、
まだ生で聴いたことがなかった師匠たちを聴いてほしいなと思ったのでした。
定期的に寄席に出ている、あるいは、なんらかの形でハブとしての活躍をなさっている師匠方。
お名前を出してしまうと、目当てのお客さんで埋まるかもしれないけれど、渋谷らくごは動員がすべてではないのです。
メッセージを発信する落語会であり、「いまオレたちの世代にとってはこういう人が面白いんだ」という新しい価値観を提案する会であるべきなのです。
個人的にはそういうメッセージが強い会には足を運びたくないなという「保守の自分」がいるのですが、「リベラルな自分」を興行では優先することにしています。
なので、あくまでお目当ては若手、主役は若手で、彼らを聴きに来たお客さんに、お楽しみゲストを聴いてもらって、彼らにとってはまた新しい価値観を知ってもらいたいなと思ったのです。
これはリスクもあって、すごい師匠に出ていただきながら、客席がまったく埋まっていない、というケースが想定されるわけです。
また、自分目当てではないお客さんの前でトリをとる、という、師匠方にとってもストレスのかかる環境でした。
あくまでメインは若手なので、お楽しみがだれかなんてあおることも一切しませんでした。それでは本末転倒なのです。
これは恐怖でした。普通に告知していればお客さんもくるし、演者さんも安心だし、だからこそほかの会はこういうことをしないのです。しないにはしない理由があります。
ですが、「渋谷らくご」を信じて、若手の活躍を楽しみにしてくださっているお客さんがいることを信じて、6日間走り切りました。
おかげさまで、なんとか形になりました。ありがたい限りです。
お楽しみゲストはだれなのかと予想したり、出囃子であの人だ!とわかってしまうような落語通の方もいらしたようですが、そういう楽しみ方もあっていいと思いました。そこまで注目していただけるのは光栄です。ただ、そこに向けたアイデアではありません。
そもそも名前を知らない、出囃子を聴いてもわからない、という人をメインに設計したものだったので、「こういう真打がいるんだ、すごい!」と思ってくれた人が一人いれば、それでいいと私は思っています。
いまやるべきことは、こういう「はじめての一人」のほうをちゃんと向く、ってことだからです。
通ならば、その意味も理解してくださっていると勝手に思っています。
初日の古今亭菊之丞師匠は、私が落語を聴き始めたころは二つ目になりたてだったと記憶しています。
あのとき若手と言われていた人が、いまは第一線の超絶技巧真打になっている。
こんな胸が熱くなるような思いを、いま、そしてこれから落語を知る人たちに体験してもらいたい。
寄席で聴く円菊師匠の高座はスピード感があって圧倒的でした。メリハリがあってわかりやすくて。
そんな遺伝子をたしかに継承しながら、菊之丞師匠にしかできない落語を構築しているので最高。
二日目は入船亭扇遊師匠。
言わずと知れた大看板。どうしても、出ていただきたかった師匠です。
この5月、渋谷らくごスタート以来ずっと出演してくださっていた、柳家喜多八師匠の盟友。
高座でも、「今年は親友を亡くしました」とサラっと言ってくださっていたけど、あの一言に、その日はじめてきて事情を知らない人に対する師匠の配慮も感じ、それでいて事情を知っている人をキュンとさせるような男気を感じもしました。
長年磨き上げた話芸が炸裂した一席でした。
三日目は立川志らく師匠。
以前、雑誌の対談でご一緒したことがあったのですが、私の学生時代はこの志らく師匠が、二つ目から真打へと挑戦しているときでした。あんなにドキドキする経験が、落語会で味わえるとは思っていなかったし、歴史の一ページに立ち会っているんだなとそのっ瞬間に思えたことにも感激しました。
寄席に出られない、世間も自分に興味がない、そんなとき自分でどう動けば状況が変わるのか、そしてそこからどう展開させていくのか、まさに興行の基本を見る想いでした。
で、この師匠は進化を止めない、これでよい、ということをあまりしない、というのも見ていて楽しい。去年ああいっていたのに、今年全然ちがうこと言っているぞ、と、考えをアップデートしていくのです。
またその師匠のアップデート具合に振り回されていく弟子たち、という構図も面白かったのです。こういう師弟関係も、こしら師匠とかしめさんに継承されていくんだろうか。
四日目は柳家喬太郎師匠。
この師匠にも思い出がたくさんありますし、また、どうしても出ていただきたかった師匠です。
喜多八師匠が愛した仲間でもありますし、個人的にも落語受難の時代に、どんな環境の落語会でも飛び込んでいって連戦連勝するというめちゃくちゃカッコいい方でした。
場の空気を一瞬でつかんで、その場のベストチョイスを常に選択できるという、まさに芸人の鏡のような存在です。
古典も新作も隔てなく、おもしろいこととマジなこと、硬軟織り交ぜて落語そのものの魅力をいろんな角度から伝えてくれる師匠です。
渋谷らくごに登場した瞬間、キャー!という歓声が聞こえたのも喬太郎師匠だからこそ。老若男女人気がありすぎる師匠です。
出てもらえて、ほんとにうれしかったなあ。
この師匠との縁は、今年の5月31日、末広亭の余一会、喬太郎師匠と文蔵師匠の会に米粒写経で出させてもらったところからです。
引き合わせてくれたのは、だから、喜多八師匠だったんです。
五日目は、一之輔師匠と、三三師匠。
渋谷らくごの心臓ともいうべき存在の一之輔師匠、目下、破天荒な落語の無双状態が数年続いていると思いますが、鯉八さんと一騎打ちするところをどうしても見たかった! ありがとう、一之輔師匠!
協会もちがうし、縁もゆかりもない若手のために、ひとつも得にならない番組にも喜んで出てくださる。こんなありがたい存在はいません。
「どがちゃか」(どがちゃが)という渋谷らくご公式読み物の名前の由来ともなっている「味噌蔵」。実は渋谷らくごで演じられたことがなかった演目なので、かかったときはうれしかったなあ。大好きあの噺。
三三師匠は、渋谷らくごがスタートした11月、その初日のトリで出ていただいた師匠です。どうしても、どうしても2周年、出ていただきたかった師匠です。
出演してくださると決まった時から、師匠のおかげで、2年続きました、とお伝えしようと思っていました。
そして伝えることができました。こんなにうれしいことはありません。
「元犬」を演じてくれましたが、あの噺があれほどの爆笑巨編になるという、落語の神髄に触れてとてもうれしいです。
はじめて落語を聴きに来た人が、ああいう落語に触れてくれたらいいなと思っていたことが、かなえられた瞬間でした。
最終日は、瀧川鯉昇師匠。
鯉八まつりの最終日、出るのはこの師匠しかいません。
というか、鯉昇師匠のスケジュールが確定したときから、このプロジェクトは動き出したのです。
鯉昇師匠のあとに、弟子の鯉八さんがあがる。6日間のラストは、これしかないです。
「時そば」を演じてくださいましたが、桃太郎師匠が亜空間殺法で空間を歪ませたあと、古典で空気を整えるのかと思いきや、トリで創作をかけるであろう鯉八をつぶさないネタのチョイスでありながら、アヴァンギャルドな味付けのくすぐり多数。まさに鯉八さんが自然に落語に入れる空気づくり。職人技でした。これしかない!というネタのチョイスに感動しました。
特別に出ていただいた師匠方、ありがとうございます。
師匠たちの想いあって、若手の二つ目・真打の奮闘あって、渋谷らくごは成り立っています。
だれが出てくるのかわからないドキドキを、それがあたりだろうがはずれだろうが、感じることのできる機会って、ほんとに減りました。
ですが、こういう場を作っていくことが大事なのだと思います。
昔、「談志・圓楽二人会」とか、志の輔師匠のはじめてのパルコ公演とか、昇太師匠が本多劇場でやったときとか、桃太郎師匠が古典やるぞ、落語ジャンクションで今日はなにをやるんだろう、といったときに、落語会に足を運ぶ時間のドキドキしたあの感じを、どうやったら共有できるか、考えに考えました。
演者ではなく劇場を信用して足を運ぶような人が出てくると、これは演芸場につくファンのように、次第に寄席ファンになってくれるのではないかとも考えました。
来月からはまた通常運転です。
とはいえ、12月は「渋谷らくご大賞」と、「創作大賞」を発表する最終日もあります。
初日の20時回は完売しました(すみません)。
ほかの日程はまだまだお席の余裕がありますので、みなさまどうぞ詰めかけてください。
当日券を多数用意してお待ちしています。
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